個生院の患者のみなさん

さとう たなか

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しばらく先生の前で泣き続け、気づけば傷も薄くなっていた。
これを見るのも何度目だろう。もう違和感すら感じなくなってしまった。
俺が少し落ち着いたところで先生が「今日はもうお休みになりませんか?」と診察を切り上げてくれた。先生にそう言われてすぐに俺は大きなあくびをしてしまう。

「続きは明日にしましょう。お部屋にご案内しますね」

と先生が立ちあがったところで俺が持ってきたスポーツバックからスマホの着信音が鳴った。見なくてもわかる、母親からだ。

「すみません、出ます」

涙を拭いて、息を吐く。ボタンを押して、スマホを耳元に当てる。

「もしもし、お母さん。…、…、聞いて…、聞いて、お母さん。…うん、お願いだから、聞いて…。勝手に出た事は、ごめんね。ホントにごめん。俺は大丈夫だよ、何もされてない、変な所とかじゃないから、大丈夫。……、さっき話して、施設の人はちゃんとしてた。この病気、治してくれると思う、ここなら、大丈夫。だから安心して」

俺はスマホから耳を離す。

「先生と代わってくれって」

先生にスマホを渡すと、口パクで「大丈夫ですよ」と先生は言って電話に出た。

「もしもし、お電話代わりました、副院長の進導大地と申します。初めまして…」

先生が母親と電話越しに話をしているのを横で見守る。

「私は息子様のような症状の研究をしているものでして…」「特別な許可を得てやっています、…病院というよりは研究施設に近いですね、」「あくまで症状の改善、症状を個性として生かし、社会で生きていくためのお手伝いをさせて頂きます、息子さまの体を裂くような事は致しません」「先ほどお話させて頂いて、息子様は我々の専門内の症状であると確信しました」「私が、必ず症状を改善させます」

まだ、俺にも話されていなかった情報が次々と先生の口から出てくる。
羽の生えたカドルと人の傷が出てくる俺の症状は同じ?どう関係があるのだろう。

「…はい。はい。ありがとうございます!絶対に、治ります。···ありがとうございます!」

先生の様子を見ると、どうやら母親は許してくれたようだ。俺はほっと胸を撫でおろす。

「そうですね、まずは一週間ほど、お預かりさせて頂きます。大丈夫ですか?…あ、そうでしたか、わかりました。もし、まだ気になる点がございましたら、国のホームページをご確認に…」

先生は何度も電話をしながら頭を下げると、スマホを俺に戻す。

「もしもし、…うん、わかった、うん、うん、…じゃ、」

スマホを切る。なんとか母親に話を付けることができた。母親に本音を言うのは初めてかもしれない。やりきった感がある。
先生を見ると「良かったですね」と笑ってくれた。それをみて俺もうなずいて笑った。
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