9 / 15
第九話 整理。
しおりを挟むーー次の日が来た。
マクは、朝来るとすぐ、ゆりあにチケットを返してた。ゆりあは、抵抗しようとしてたけど、真剣なマクの本心が伝わってきたのか、渋々うなづいた。
その後、マクはちゃんと感謝もゆりあに伝えて、そのまま身を翻す。
マクが席に戻ってくる。
その時に、自然とあたしと目が合った。
「おはよう、かおりちゃん」
マクが、柔らかいそよ風のようにあたしに微笑んでくれた。昨日まで、喧嘩してたのがウソみたい。
「おはよう、マク」
あたしも、満面の笑みでマクに微笑み返す。
授業が始まった。
あたしは、チラリとマクの顔を見る。
朝日に照らされて、普段にも増して、透き通ってた。
毛先の七色が、マクが動くたびにゆらゆら揺らめいてそのたびにキラリと光ってる。
これからはずっと、一緒
もう二度と離れたくないーー
『タイムリミットは、もうそこまできてる』
あの時の教室にいた金髪の男の言葉が、ふいに蘇った。
ーー違う。
そんなわけない
マクはあたしの前から突然、いなくなったりしないもの。
歳とるまで一緒に、幸せに暮らしていくのーー
「そうだよね?マク」
あたしは、思わず隣にいるマクに、小声で尋ねた。
マクが、こっちを見る。
「別れなんて、来ないわよね?」
マクが、ハッとした顔になった気がした。
ーーその時だった。
「お前ら!!授業中だぞ!!!!」
クラスの担任兼、国語の篠崎が、あたしたちを見て、やれやれと、にやけながら、怒った。
クラスメートがあたしたちを一斉に見る。
罰として、あたしたちは教科書を読むことになったのだった。
あたしは、マクにごめんね、と目くばせすると、マクは、ただーー笑っているだけだった。
ーーこの日は土曜だったから、午前中のみで授業が終わった。
この日、マクは日直で、先生に日誌を届けるために、職員室に行ってた。
あたしが片付けをしていると、水無瀬と幸也が絡んできた。
「明日だろ?デート」
幸也がニヤニヤしながら、あたしに言う。
やっぱりあの時、聞いてたのね
相変わらず、抜け目がないわ…
「うるさいわね。あんたたちに関係ないでしょ」
「あーあ、せっかく俺らがかおりんに、助言してやろうと思ったってのによぉ」
水無瀬が、両手を上げて、首をすくめた。
「かおりんのことだから、どーせ、隣町のショッピングモールも、あんま行ったことないだろ?俺がおすすめの場所を教えてやるよってこと」
水無瀬の言葉に、あたしは間髪入れずに食いつく。
「な、何よ。一応聞いてあげるわ」
あたしが聞くと、水無瀬がニヤッとして耳打ちする。
「隣町は、最近」
あたしは、息を呑んで次の言葉を待つ。
すると、水無瀬が笑いながら言った。
「夜な夜な怪しげな不審者が、よく目撃されるんだって!!」
あたしの真剣な顔に、水無瀬が、腹を抱えて笑い出した。
「もう!!真剣に答えてよ!!ぶっ飛ばすわよ?!」
あたしが怒ると、ごめんごめんと水無瀬が言う。
「かおりんがあまりにも真剣だったから、つい。
で、ショッピングモールだよな。
いいか。I階に行ったら、広場があるんだ。
そこには、噴水があって、色とりどりの花が咲いた花壇も植えてある。」
あたしは、ようやく熱心に聞く。
「そこで告白すれば、その人とこの先も末長く愛しあえるって噂なんだぜ?」
「おお、今度はちゃんとしたやつだったな」
幸也が、驚いたように言う。
あたしは、興奮して叫んだ。
「決まりね!!
あたしは、マクと最後にそこへ行って、気持ちを伝えるわ!」
「おお!じゃあ、俺らもついてーーー」
「来なくて良いわよ!!」
あたしは、水無瀬たちをこづきながら、心の中でうっとりしてた。
告白……
マクはどんな顔するんだろ
頭に、嬉しそうに、はにかんだマクの顔が、思い浮かんだ。
楽しみだわ
早く明日にーーならないかしらーー
ーーおれは、日誌を先生に届けに行ってた。
職員室の扉を開けると、担任の篠崎先生がこっちに気づく。
「おおう、野亜池!
日誌か!サンキューな」
先生が笑って日誌を受け取る。先生は、国語の先生だ。
「そういや、お前、さっきは湊崎とイチャイチャしやがって!次したら、全文読ませるからな」
先生が、冗談めかして言う。
「ーーにしても、湊崎もなんか丸くなったよな!前は尖ってたけど、今は別人みたいだ。お前のおかげか?」
そう言うと、バシバシとおれの肩を叩いた。
「痛いってば、先生」
おれが痛がってるのを見ると、先生が思い出したように、優しい顔で目を細めた。
「最初、俺はお前がきた時、目を疑ったぞ。
なんせ、全身真っ白だったからな。しかも、どこから来たのかも上から教えてもらえなかった」
おれは曖昧に笑った。
だって、未来からだもん。
教えられるわけないよ
おれが思ってると、先生が言う。
「結構やばいとこから来たのかとヒヤヒヤしたが、それは杞憂だったようだ。
現にお前が来た瞬間、パァッと教室が華やかになったようだったからな。みんなともすぐ打ち解けていってたようだし
まぁ、ーー結果として、お前を受け持つことが出来て良かったよってことだ」
「!」
おれはそれを聞いて、胸が熱くなるようだった。
おれが過去へ来た意味は、ちゃんとあった……
「先生」
おれは、居住まいを正して言った。
「今までありがとう。
ーーおれのこと、忘れないでね」
その言葉に、先生は不思議そうな顔をする。
きっと忘れるけど
でも、伝えたい
この時代にこれて、本当に良かった。
おれの目から、温かいものがこぼれ落ちた。
「なんだ?なんで泣いてるんだ、お前。
相変わらず女々しいな。3年といっても、卒業まではまだあるだろ?」
先生が、おかしそうに笑った。
俺も泣き笑いしながら、うなづく。
しばらくして、おれは、微笑み見返すと、しずかに瓶を渡す。
「これ、来週の月曜になったらーーー開けてください」
「なんだ?告白か?」
先生が、おどけておれの顔を見て、また笑う。
しばらく、先生と雑談した後、おれは最後に、精一杯のお辞儀をして、職員室を出た。
廊下には、翠川たちが立っていた。顔には、幸也が殴ったあざがあった。
「ゆりあちゃんから、ようやく手を引いたな。身の程がわかればいいんだよ」
翠川が、おれにいう。
「翠川」
おれが。近づくと、少しだけ後退りする。
「お前らは、嫌なやつで、最後まで分かり合えることはなかったけど、別れの挨拶くらいは言うよ」
俺の言葉に、翠川たちは、首を傾げる。そして、小馬鹿にしたように言った。
「もしかして、また痛いこと言ってんのか?まじで笑えるーーー」
「これ」
おれは、人数分の瓶を差し出した。
「来週の月曜日の午後5時に、開けて」
戸惑っている翠川の手に強引に、渡すと、おれはみんなに頭を下げた。
「今まで、お世話になりました。元気でね」
ああ、大丈夫。
まだ月曜もあるんだ。会える。
こいつらには、殴られたり、やなこと言われたり、散々な思い出ばっかりだったけど、いざ別れるとなると、寂しいなぁ…
「うう…」
おれは、気づいたら、翠川たちの前で泣いてた。
それも、大号泣。
恥ずかしいけど、おれは嫌なことされたことも忘れて、泣き続けてた。翠川たちが引くくらい。
「おれのこと…忘れないでね……っっ」
最後に、ハグを求めたけど、それは拒否された。
最後は、満面の笑みで、終わりたかったけど、おれにはそんなこと無理だった。
とぼとぼと帰っていると、かおりちゃんが照れたような顔で、おれのバックを持って立ってた。
ーーあとは、かおりちゃんだけだ
月曜までに渡せば大丈夫。
まだ…時間は、ある
はぁ。一緒にいられる時間が、永遠に続けばいいのに
おれは、居た堪れなくて、かおりちゃんに伝えられない自分にも、不甲斐なさすぎて、胸が痛んだ。
0
あなたにおすすめの小説
ため息ひとつ――王宮に散る花びらのように
柴田はつみ
恋愛
「離縁を、お願いしたいのです」
笑顔で、震えずに、エレナはそう言った。
夫は言葉を失った。泣いてくれれば、怒ってくれれば、まだ受け止め方があった。しかしあの静けさは、エレナがもう十分に泣き終わった後の顔だと、ヴィクトルにはわかった。
幼なじみと結ばれた三年間。すれ違いは静かに始まり、深紅のドレスの令嬢によって加速した。ため息を飲み込み、完璧な微笑みを保ち続けた公爵夫人が、最後に選んだのは――。
王宮に散る花びらのような、夫婦の崩壊と再生の物語。
「がっかりです」——その一言で終わる夫婦が、王宮にはある
柴田はつみ
恋愛
妃の席を踏みにじったのは令嬢——けれど妃の心を折ったのは、夫のたった一言だった
王太子妃リディアの唯一の安らぎは、王太子アーヴィンと交わす午後の茶会。だが新しく王宮に出入りする伯爵令嬢ミレーユは、妃の席に先に座り、殿下を私的に呼び、距離感のない振る舞いを重ねる。
リディアは王宮の礼節としてその場で正す——正しいはずだった。けれど夫は「リディア、そこまで言わなくても……」と、妃を止めた。
「わかりました。あなたには、がっかりです」
微笑んで去ったその日から、夫婦の茶会は終わる。沈黙の王宮で、言葉を失った王太子は、初めて“追う”ことを選ぶが——遅すぎた。
はじめまして、私の知らない婚約者様
有木珠乃@『ヒロ弟』コミカライズ配信中
ファンタジー
ミルドレッド・カーマイン公爵令嬢は突然、学園の食堂で話しかけられる。
見覚えのない男性。傍らには豊満な体型の女性がいる。
けれどその女性から発せられた男性の名前には、聞き覚えがあった。
ミルドレッドの婚約者であるブルーノ王子であることを。
けれどミルドレッドの反応は薄い。なぜなら彼女は……。
この世界を乙女ゲームだと知った人々による、悪役令嬢とヒロイン、魔女の入れ替え話です。
悪役令嬢を救いたかったはずなのに、どうしてこんなことに?
※他サイトにも掲載しています。
公爵令嬢は結婚式当日に死んだ
白雲八鈴
恋愛
今日はとある公爵令嬢の結婚式だ。幸せいっぱいの公爵令嬢の前に婚約者のレイモンドが現れる。
「今日の結婚式は俺と番であるナタリーの結婚式に変更だ!そのドレスをナタリーに渡せ!」
突然のことに公爵令嬢は何を言われたのか理解できなかった。いや、したくなかった。
婚約者のレイモンドは番という運命に出逢ってしまったという。
そして、真っ白な花嫁衣装を脱がされ、そのドレスは番だという女性に着させられる。周りの者達はめでたいと大喜びだ。
その場所に居ることが出来ず公爵令嬢は外に飛び出し……
生まれ変わった令嬢は復讐を誓ったのだった。
婚約者とその番という女性に
『一発ぐらい思いっきり殴ってもいいですわね?』
そして、つがいという者に囚われた者の存在が現れる。
*タグ注意
*不快であれば閉じてください。
さようならの定型文~身勝手なあなたへ
宵森みなと
恋愛
「好きな女がいる。君とは“白い結婚”を——」
――それは、夢にまで見た結婚式の初夜。
額に誓いのキスを受けた“その夜”、彼はそう言った。
涙すら出なかった。
なぜなら私は、その直前に“前世の記憶”を思い出したから。
……よりによって、元・男の人生を。
夫には白い結婚宣言、恋も砕け、初夜で絶望と救済で、目覚めたのは皮肉にも、“現実”と“前世”の自分だった。
「さようなら」
だって、もう誰かに振り回されるなんて嫌。
慰謝料もらって悠々自適なシングルライフ。
別居、自立して、左団扇の人生送ってみせますわ。
だけど元・夫も、従兄も、世間も――私を放ってはくれないみたい?
「……何それ、私の人生、まだ波乱あるの?」
はい、あります。盛りだくさんで。
元・男、今・女。
“白い結婚からの離縁”から始まる、人生劇場ここに開幕。
-----『白い結婚の行方』シリーズ -----
『白い結婚の行方』の物語が始まる、前のお話です。
初夜に暴言を吐いた夫は後悔し続ける──10年後の償い【完結】
星森 永羽(ほしもりとわ)
恋愛
王命により、辺境伯ロキアのもとへ嫁いだのは、金髪翠眼の美しき公爵令嬢スフィア。
だが、初夜に彼が告げたのは、愛も権限も与えないという冷酷な宣言だった。噂に踊らされ、彼女を「穢れた花嫁」と罵ったロキア。
しかし、わずか一日でスフィアは姿を消し、教会から届いたのは婚姻無効と慰謝料請求の書状──。
王と公爵の怒りを買ったロキアは、爵位も領地も名誉も奪われ、ただの補佐官として生きることに。
そして十年後、運命のいたずらか、彼は被災地で再びスフィアと出会う。
地位も捨て、娘を抱えて生きる彼女の姿に、ロキアの胸に去来するのは、悔恨と赦しを乞う想い──。
⚠️本作はAIの生成した文章を一部に使用しています。
元恋人が届けた、断りたい縁談
待鳥園子
恋愛
シュトルム辺境伯の末娘ソフィに隣国の帝国第二皇子から届けられた『縁談』の使者は、なんと元恋人のジョサイアだった。
手紙ひとつで別れることになったソフィは、素直になれずジョサイアから逃げ回る。
「私に届けなければ、彼は帝国に帰ることが出来ない」
そう思いようやく書状を受け取ろうと決意したソフィに、ジョサイアは何かを言い掛けて!?
どうぞ添い遂げてください
あんど もあ
ファンタジー
スカーレット・クリムゾン侯爵令嬢は、王立学園の卒業パーティーで婚約もしていない王子から婚約破棄を宣言される。さらには、火山の噴火の生贄になるように命じられ……。
ちょっと残酷な要素があるのでR 15です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる