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秘密の地下室が

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どうしよう…っ!いや本当にどうしたらいいんだっ!

前回、リアムの部屋から追い出された時に間違って持ってきてしまった緑色に輝く瓶を握りしめるコネリー。


今から返しにいく?いや!!そんなの絶対に無理だっ!さらに機嫌が悪くなったらミンチにされるかもしれない!



ーーー隠す?


いやでも…


戻して怒られる姿と、持ってるのがバレて怒られる姿を想像する。


隠そう
もうこれ以上怒られるのは胃がもたないよ!


そういえば今は使われていない離れがあったはずだ。そこならーー


コネリーは、周りを気にしながら離れへと急いだ。

誰もいないことを確認して、離れの奥の部屋を開ける。


あれ?


扉を開けてみると、いやに小綺麗にされていることに気づいた。ほこりも思ったより少なかった。


誰もきてないはずだよね?

ま、いいか。とりあえず、どこに隠そう?


ーーーゴッ!


「うわっ!」


ドシン!
パリンッ!


「いったた!くそうっ、誰がこんなところに箱なんかっ!おかげでぶつーーん?」


割れた瓶が床に転がっていた。中の緑色の液体が溢れ床がキラキラと光に反射している。

コネリーの顔から血の気が引いた。足が震え出す。


や…やってしまった…っ
ど…どうすればーー

そうだーー液体を他の容器に移し替えーーーー


コネリーが膝をつき、液体に触れた瞬間であった。

ーーさああああああああ


「ーー!!」


突然、床に散らばっていた緑色の液体が舞い上がり、コネリーを覆う。まるで光の粒子のようだった。
それは、やがて人の形を作る。

「り…アム様っっ!?」

その人物を見た瞬間、コネリーは真っ青になり慌てて床に額を擦り付けて叫んだ。

「ごめんなさい!わざとじゃないんです!転けてしまって…っ!許してください!!!」


コネリーが叫んでしばらくしても全く返事がない。不審に思い、少し顔をあげた。

「あれ?」


いつのまにか殺風景だった部屋はいつのまにか見たことのない部屋に変わっていることに気づいた。リアムは窓の外を見ているようで、こちらに気づく素振りは全くなかった。
普段の自信たっぷりのリアムとは違い、何にかは分からないがひどく焦っているようだった。服装も少し、粗末になっている。そのかわりように、コネリーは疑問に思った。

こんな表情してるのは初めて見る。
何があったんだろう。
というか、いつのまに別の部屋に来たんだろ


『なんで…っ!僕だけーー』


コネリーが考えていると、リアムの声がし、我に返る。


体が震えてる。一体ーー


『どうして…僕だけを置いてーーーー』


置いて?ますますわからないぞ?


「あの…、リアム様?」



ーーードゴッ!


コネリーがリアムに話しかけようとした時、突然鈍い音と共にリアムが崩れ落ちる。あたりには赤い液体が広がっていった。
コネリーは驚きすぎて言葉を失う。
すると、背後から声がした。

『おい!やりすぎだろ。傷が残ったらどうする』

振り返ると、二人組の男が立っていた。
でかい図体に、金属バッド。明らかに正常ではない。コネリーがその場に尻もちをつく。腰が抜けたようだった。しかし、2人はコネリーに気づく様子はなくリアムを殴った男がリアムを持ち上げる。

『問題はない。どうせ頭だ。みえはしない。値段が下がることはねえさ。力も加減してるし、大丈夫だろ』


『いくら暴れられちゃ困るからって普通殴り倒すかね?ーーま、売れればいいんだけどよ』


もう1人の男が少し同情しながらリアムを見る。

『しかし、可哀想だよな。なんせこいつは両親から見限られたんだから。大統領の不正が暴かれた後、即座に他国へ逃げたって聞いたぜ?こいつだけを捨ててな。足手まといだとでも思ったんだろうけどよ』


不正?見限られた?一体何を言ってるんだ?


『好都合さ、なんせ両親がいないこいつは親戚の家に預けられてけったいな扱いを受けてたそうだからな。つーか、その親戚が金のためにこいつを俺らに売るんだが。おかげで俺たちの懐はあったかくなりそうだ。』


『違いない!ーー早く行くぞ』



ーーーさあああああああ


「ーー!!」

また気がつくと、先程の部屋や、リアムたちは消え元の部屋に戻っていた。


「な…何が起きたんだ?今のは…夢?」


やけに生々しい夢だな


瓶に目を落とすと、先程の緑色の粒子が奥の隅の方へ続いていた。まるでついてこいと言わんばかりだった。

コネリーは息を呑んで粒子の跡を辿った。その先には棚があったが、粒子は棚の奥へ入っていく。


どけろってことかな?


棚をどけると隠し扉を発見した。これも光の粒子で出来ているようで薄暗く光っていた。
恐る恐る扉を開けると、階段があった。
どうやら地下へ繋がっているようだった。
粒子は地下のさらに奥へ続いている。


コネリーは意を決して足早に階段を駆け降りていった。 

中は広く少し肌寒かった。

突然血生臭い匂いが鼻腔をつく。ふと、隣を見て、驚きのあまりまた腰が抜けそうになる。

なんと先程見たでかい図体の2人だったのだ。力なく椅子に座り項垂れていた。


やっぱりあれは…夢じゃなかった!
し…死んでるのか?じゃあ、さっきのは一体ーー
ここは本当になんなんだろう


さらに奥へ進むと、書斎のようなところにでた。沢山の本がきちんと整理整頓されて棚に並んでいた。


ふと、手前に置いてあった黒い本を手に取る。


「な…なんだこれ」


本には先程の男2人のプロフィールが載っていた。出身や具体的な詳細が事細かに載っていた。


調べ出したってこと?
こんがらがってきたぞ…さっきの不正のことだって…


次のページをめくる。
次は黒髪の目つきが悪い少年が出てきた。コネリーたちと歳が近い印象を受ける。

カイル・トリバー?
アッシュ・トリバーの息子ーー

「アッシュ・トリバーだって?!」


驚きのあまり叫ぶコネリー。


アッシュ・トリバーといえば世界的に有名な起業家ーー
男前で仕事ができるって使用人たちの間でも盛り上がっていた。
なんでその息子がーーていうか息子がいたなんて聞いたことがない!
そもそも結婚してないはずーー

この本はーー


詳細を読終わりまた震える手でめくる。
次は真っ白な少年だった。極め付きはオッドアイ。

「どれどれ、次はミシェル・ローズブレイドーー

ローズブレイドだって?!?!」


これーー

ローズブレイドは…王室の名前じゃ…

でもミシェルなんて聞いたことがない。
今の王太子の子供は2人ーーミア王女とロゼ王子のはずーーー
しかもこんな目立つ白髪にオッドアイなら忘れるはずがない!

しかも17歳ということは15歳のミア王女よりも上…

本当は兄がいたのか?


何ページか一気にペラペラとめくった。


ーーその中にはコネリーとアイザック、エリーゼの写真も一瞬見えたが、コネリーは気づかなかった。



次はーーあれ?
写真がないーー

時の番人…?
なんだろうこれ。
時の支配者?肉体改造を受けた平和ボケどもーーうわ、すごい憎しみだな

悪口ばっかり書かれてる。下にもーー

1番下の走り書きを見ると、突然コネリーに悪寒が走った。

絶対にーーこんなふうにならない。

この字だけはブレており、急いで書いたと言うよりも一字一字、憎しみを込めて書いたような感じだ。


どれだけ憎んでーーー

ーーーブーッ!


「わあ!!」

突然の内線に腰が抜けかけるコネリー。

「やばい!忘れてた!今日の昼は給仕当番だったんだっ!急いで戻らなきゃ」





ーーようやく、棚も元に戻し離れをでる。



まだ少ししか見てないけどーーこれは重大ニュースだ


リアム様は何かを隠している…
それもやばいことを

少しずつでいい。少しずつ暴いていくんだ。なんだかワクワクするな
エリーゼとアイザックのこともあるしやることは盛り沢山だな


怒られない程度にーー


コネリーは、湧き上がる好奇心にウキウキしながら離れから屋敷に繋がる廊下を走っていったのだった。



この時、有名企業の対談まであと一週間を切っていた。





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