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りんごのもとへ来た男と
しおりを挟む「りんご、お前赤点な」
担任である山部がりんごに無情にもテストの紙を突きつけ、言い放った。
「なぬっっ?!?!俺、あんなにーー」
「頑張ってねえよなぁ?!?!この前も高松たちと放課後遊びいってたよなぁ?知ってんだぞ、舐めんなよ」
「ぐああああああっっっ」
山部の言葉に、りんごは床になだれ込んだ。
「ーーで、いつまでこんな茶番続けてるわけ?」
しばらくしてさゆが、呆れたように冷ややかな目で2人を眺めながら言った。
「いや、これは俺は悪くないぞ。ただこいつに結果を伝えただけだからな。」
「ぐっっっ」
「つーわけで、お前放課後居残りな。あと10分後にも一回くるから準備しとけよ」
と、山部が教室から出ながらりんごに言うと、そのまま職員室の方へ向かっていった。
すると、美知が自分の席でりんごににやにやしながら言った。
「まぁたお前と一緒だな。
あーあ。今度は別のやつと居残りしたいんだがな」
「こっちのセリフだわ。
つーか、まじかー!帰りてえ。」
そういいながら、わしゃわしゃと髪を撫でくりまわすりんごに、さゆは絡まれないように黙ってカバンを担ぐ。
「せいぜい2人で頑張んなさいよ。えみりとたかしは委員会みたいだし、あたしはもう帰るわね」
「そんなぁ~」
美知が悲しそうにかすれた声でさゆに言うが、それも虚しくさゆは静かに教室を出て行く。
そのまま廊下を通り抜け、階段を一歩ずつ降りて行くさゆ。
まぁ、予想通りね。
結果を聞くまで待っていたけど分かりきってたわ。全く美知ったら最後までーーー
まって。
そういえばさっきりんごの声が聞こえなかったわね。
ーーどこへ
思い出し、パッと振り返るさゆ。
後ろを見た瞬間、ため息が出た。
「あんた…どこ行くつもりなのよ」
後ろには、こそこそとさゆの後をついてきていたりんごがいた。振り返ったさゆに気まずそうな顔でりんごが言う。
「や…!その…っ。
とととトイレだよ!!」
「さっき行ってたじゃない」
「うっっ」
さゆのじとっとした目に、諦めたのか黙ったまま、いそいそと教室へと戻り出し始めた。
「言っとくけど逃げたりしたら張り倒すからね。」
りんごが階段を登り切ったところで、下からさゆの脅し文句が響き渡る。
「しねーよ!
サボろうとしてすいませんでしたぁっっ。戻りますぅー」
くっそぉっっ!いけると思ったんだけどなっっ!!さゆのやつ、勘が良すぎるんだよ!!
今日は早く帰りたかったのに!
逆に今日以外ならいつでもよかったよっ!
りんごが意味のわからない言い訳を並べながら教室へ戻っていると、聞いたことあるような声がした。
「居残りですか。なんというか。頭がたいそうお悪いようですねぇ?」
「あ?」
イラッとして、振り返ると、
そこにはいるはずのない見覚えのある人物が立っていた。
深い緑色の髪の毛に、黒い瞳。
身長はりんごよりも若干高く、ローブと制服を合わせたような服を、きっちり着込んでいる男。顔はそこそこ整ってはいたのだが、上に乗っかっている濃い眉毛のせいで全てが残念であった。
たしかこいつーー
未来でーーロストなんちゃらのなんちゃらだとか…っ!
「ふふふ。覚えてないですかね?ま、無理はないです。居残りとか言う貴方の頭ではーー」
「ああ!まゆげだ!!」
「は?」
まゆげという言葉に、オスカーの眉間が痙攣した。しかし、りんごが思い出したことに感激しているようでまったくオスカーの顔を見ていない。
「久しぶりだから忘れたかと思ったわぁ!よかった!覚えてて!」
「いえーーあの」
「や、忘れるわけねえか!眉毛なんて今どきそんな珍しい名前ねえしな!!」
「ですからーー」
「それで、何のようだ?まゆーーー
ーーーふぐぅっ?!?!」
突然、りんごの頭に鋭いチョップが飛んできた。痛さに頭を抱え、涙目になる。
「ふん。当然の報いです。どうやら貴方は年上に対する礼儀がなっていないようですね」
チョップを飛ばした相手が満足げにりんごを見下ろして言った。
「ーーぐっ!大人げなっっっ!!番人よりも大人げねえんだけど!!」
「はぁ?番人?困りますねぇ。あんな年寄りのじじ様なんかと比べられてしまっては」
「ーーっあんたこそ年上に対する礼儀がなってねえじゃねえか。あいつらお前よりも何百倍も年上だろ?」
「ふん。ここにいないのなら礼儀なんぞ入りません」
理不尽な理論に納得していないりんごから背を向け、オスカーが喋り出す。
「一度しか言わないのでよく聞いてくださいね。
私の名前はオスカー。イアン・オスカー。未来政府、ロストチャイルド管理長です。ああ。こんなこと言っても貴方の小さな脳みそでは到底理解しえませんよね。」
「今バカにーーー」
「ああ!まだ私のターンですーー
私は、過去を調査しに来たと同時に、貴方の見張りでもあります。
ーー単刀直入に言いますと、過去の番人にあったそうですね」
りんごが反論するのを止めるようにオスカーが言った。それと同時にりんごの方へ向き直る。
「誰に会ったんですか?そして、どうでした?思春期真っ只中のじじ様たちは?」
「やけに嬉しそうだな」
「ええ。普段余裕ぶっこいてる方々の弱みを握れそうですから」
「あ…そう」
性格悪っっっ
だからそんな眉してんだよ
心の中でそう呟くと、諦めたように、言った。
「俺が会ったのは、ひーふーみー…
3人だ。ノアとミシェルとレグルス。でも、レグルスもミシェルもここ最近見てねえな。レグルスの方は学校にも来ないし。
それで?
なんであんたがきたんだ?
あいつらの過去が変わったんなら、あいつらが来た方がよくねえか?」
「ふふん。そういえば、貴方は知らないんでしたね。彼らは現在、未来政府に過去を変えた容疑で捕らえられているんですよ」
「なっっ?!あいつらが?!」
りんごの反応に、オスカーはかなり満足しているようだった。愉快そうに、また続ける。
「彼らのみが唯一、タイムスリップ出来ますしね。変わった時代も、過去の彼らですし。どこからどうみても、怪しいとしか言えないでしょう」
「いや、俺と一緒にリアムは過去に来て、変わってたのに気づいたんだぞ?あいつらなわけーーー」
「ふん。なんとでもほざいてなさい。たしかに、まだ証拠がありません。ですから、私自ら、彼らの容疑を暴きに来たんです。必ず、あの傲慢な方々の鼻をおり、豚箱に入れてやります」
「いい性格してんな。
でも絶対違うと思うけどな」
「貴方の意見なんて、聞いていません。
それで、学校?
レグルス・エドワードがですか?ふぅん。
ま、学校に在籍しているのなら今後も会う機会はいつでもありそうですね」
意地悪そうににたぁと笑うオスカー。
「それでは、ノア・アルフォンスの方は?」
「ああ。あいつは、兄貴の職場で働いてるらしい。」
「では、決まりですね」
「え?何が?」
「決まってるじゃないですか」
オスカーがどこからともなく、キャッシュカードくらいの、青く光るカードを取り出した。
カードには、真ん中に、円柱のような縁取りに、内部が光っている模様があった。
オスカーがりんごを見て言う。
「今からカードを床に置くので、そのお兄様の建物を想像してください。」
「は?え?」
「じゃ、行きますよ」
オスカーがりんごの返事を聞く前に、カードを床に向かって落とした。
「待っーーー」
ピカッと床がりんごたちを囲い、円形に光る。それと同時に、オスカーが叫んだ。
「さあ、今です!
お兄様の顔でもいいので思い浮かべてください!」
「へ?あにき?ーーちょっまって?!?!俺、突然に弱いタイプなんだってえええ!」
ーーーーギュンッ!!
りんごの抗議もあえなく、体に突然ものすごい重力がかかり、そのものすごい重力とともに、とある場所へ投げすてられたのであった。
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