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過去拍手 3 (三章一学期~ 伝言 (side 一条) 以降推奨です)
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「……っ、何故腕を掴む? 口で言えば良いだろ?」
「えぇ? でも書き順間違えた時は咄嗟にこうする方が覚えるんだよ? 彰が書き順間違えたときはいつもこうして止めているんだけどなぁ?」
……紗綾、あんたが今国語のテキストのチェックをしている相手は、小学生の従兄弟じゃ無い。
恐らくは、あんたに惚れているんであろう健全な中学生男子だ。
「お前、眼鏡作っただろうが、見にくいなら掛ければ良いだろ!」
「黒板見るわけじゃ無いし、出すの面倒臭いんだよ」
「それじゃ作った意味ないだろ! 見にくいならちゃんと使え……」
掛けてやんなよ、さっきからあんたが乗り出してテキストを覗き込むたびに身体を引いている一条は紳士的だとは思うけど、ずっとそれでは身が持たない。
隣で勉強をされるのは気が散るからと、離れた一番後ろの席で勉強をしているのは良いのだけれど、時たま聞こえてくる何処か悲鳴のような一条の紗綾を怒る声と、その意味が全く分かっていない紗綾との会話が気の毒でもあり、心配でも有り、つい気になって振り向けばその紗綾の振る舞いに軽く頭痛がする……。
「紗綾! 何やってるんだあんたは」
今月末に出展予定の作品に必要な書類を取りに職員室まで行って、戻ってきたら、奥の席で一条と大人しく勉強して居た筈の彼女は、机を乗り出して目の前の彼に
「一回位いいじゃ無い? お願い」
なんて、怪しげな事を言って居た。
一条はポーカーフェィスを辛うじて保ちつつも、薄っすら赤い顔で必死に首をふって
「何を考えてるんだっ!」
と、抵抗していて、美術室に入ってきた私を見つけるとホッとしたように
「……こいつを何とかしてくれ」
と疲れた様に言った。
「え~、何で? 腕相撲位付き合ってくれても……、あっ、優樹審判してくれない?」
何でまたそんな話に……、そう思って居ると、私が戻ってきた事で少し余裕を取り戻したらしい一条が言う事には、私が居ない間に注文していた大判のキャンバスが届いて、それを一条が受け取ってくれたらしい。
それは良かったのだけれど、紗綾には少し重く感じたそれを軽々と持ち運んだらしい一条に……
「腕の太さは似たような物に思えるのに、何か悔しい! ……ねぇ? 腕相撲しない?」
などと言い出したとか。
二人きりの教室、至近距離で相手の顔を見つめ合いつつ、手を握り合うその遊びは、そりゃぁ一条は必死になって抵抗もするだろう……。
こうして、二人の勉強会の様子を見ていると、紗綾の無防備さは想像以上で、一条の理性が良く保って居るとも言える状況。
私も度々こうでは集中して絵を描くどころでは無い。
だから、突然言い出した紗綾の言葉はナイスアイディアに思えた。
「ねぇ? 鳴木もこの会に参加したいって言うんだけど良いかな? 一人増えたら優樹にはうるさい?」
いやいやいや……、多分きっと却って静かになる。
一条もこのままでは勉強にならないと思っているはず。
「良いね! うん、私は賛成、一人二人増えても問題ないから!」
そう答えると、紗綾は私の乗り気な様子に少し不思議そうな顔はしたけれど、要望が通ったことに関してはぱっと顔を明るくして
「そっか、ありがと優樹! ごめんね? なるべく迷惑にならないようにするから……」
なんて……大丈夫、きっと増えた方が私の迷惑にはならないよ?
何処までも鈍くて、天然な私の親友。
けれど、何処にも計算の無い、いつでも想いが透けて見えるような所は魅力でもあって、ひねたところのある私を大好きと言ってくれる紗綾が、本人には上手く伝えられないけれど私にも大切な存在で。
だから、ずっとそのままで居て欲しいと……
「藤堂! いい加減にしろ! 書き順なんて、手を握られなくても、目の前で書いてくれれば覚える!!」
ああ、うん、……でも、もうちょっと年相応の成長はして欲しいかな?
じゃないと、まだ中学生なのに一条の血圧が、私は心配だ。
「えぇ? でも書き順間違えた時は咄嗟にこうする方が覚えるんだよ? 彰が書き順間違えたときはいつもこうして止めているんだけどなぁ?」
……紗綾、あんたが今国語のテキストのチェックをしている相手は、小学生の従兄弟じゃ無い。
恐らくは、あんたに惚れているんであろう健全な中学生男子だ。
「お前、眼鏡作っただろうが、見にくいなら掛ければ良いだろ!」
「黒板見るわけじゃ無いし、出すの面倒臭いんだよ」
「それじゃ作った意味ないだろ! 見にくいならちゃんと使え……」
掛けてやんなよ、さっきからあんたが乗り出してテキストを覗き込むたびに身体を引いている一条は紳士的だとは思うけど、ずっとそれでは身が持たない。
隣で勉強をされるのは気が散るからと、離れた一番後ろの席で勉強をしているのは良いのだけれど、時たま聞こえてくる何処か悲鳴のような一条の紗綾を怒る声と、その意味が全く分かっていない紗綾との会話が気の毒でもあり、心配でも有り、つい気になって振り向けばその紗綾の振る舞いに軽く頭痛がする……。
「紗綾! 何やってるんだあんたは」
今月末に出展予定の作品に必要な書類を取りに職員室まで行って、戻ってきたら、奥の席で一条と大人しく勉強して居た筈の彼女は、机を乗り出して目の前の彼に
「一回位いいじゃ無い? お願い」
なんて、怪しげな事を言って居た。
一条はポーカーフェィスを辛うじて保ちつつも、薄っすら赤い顔で必死に首をふって
「何を考えてるんだっ!」
と、抵抗していて、美術室に入ってきた私を見つけるとホッとしたように
「……こいつを何とかしてくれ」
と疲れた様に言った。
「え~、何で? 腕相撲位付き合ってくれても……、あっ、優樹審判してくれない?」
何でまたそんな話に……、そう思って居ると、私が戻ってきた事で少し余裕を取り戻したらしい一条が言う事には、私が居ない間に注文していた大判のキャンバスが届いて、それを一条が受け取ってくれたらしい。
それは良かったのだけれど、紗綾には少し重く感じたそれを軽々と持ち運んだらしい一条に……
「腕の太さは似たような物に思えるのに、何か悔しい! ……ねぇ? 腕相撲しない?」
などと言い出したとか。
二人きりの教室、至近距離で相手の顔を見つめ合いつつ、手を握り合うその遊びは、そりゃぁ一条は必死になって抵抗もするだろう……。
こうして、二人の勉強会の様子を見ていると、紗綾の無防備さは想像以上で、一条の理性が良く保って居るとも言える状況。
私も度々こうでは集中して絵を描くどころでは無い。
だから、突然言い出した紗綾の言葉はナイスアイディアに思えた。
「ねぇ? 鳴木もこの会に参加したいって言うんだけど良いかな? 一人増えたら優樹にはうるさい?」
いやいやいや……、多分きっと却って静かになる。
一条もこのままでは勉強にならないと思っているはず。
「良いね! うん、私は賛成、一人二人増えても問題ないから!」
そう答えると、紗綾は私の乗り気な様子に少し不思議そうな顔はしたけれど、要望が通ったことに関してはぱっと顔を明るくして
「そっか、ありがと優樹! ごめんね? なるべく迷惑にならないようにするから……」
なんて……大丈夫、きっと増えた方が私の迷惑にはならないよ?
何処までも鈍くて、天然な私の親友。
けれど、何処にも計算の無い、いつでも想いが透けて見えるような所は魅力でもあって、ひねたところのある私を大好きと言ってくれる紗綾が、本人には上手く伝えられないけれど私にも大切な存在で。
だから、ずっとそのままで居て欲しいと……
「藤堂! いい加減にしろ! 書き順なんて、手を握られなくても、目の前で書いてくれれば覚える!!」
ああ、うん、……でも、もうちょっと年相応の成長はして欲しいかな?
じゃないと、まだ中学生なのに一条の血圧が、私は心配だ。
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