紗綾 拍手お礼&番外編

萌葱

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過去拍手 7 (二章~「修学絵旅行 2」以降推奨です)

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「ひどいよ……あの時助けてくれたときからずっと好きだったのに」
「ごめん」
「あの時プリントの整理を手伝ってくれたのも、勉強教えてくれたのも……違ったんだね」
「……ごめん」
「……っ!」

 他に言葉が無くて、二度目のごめんを言うと彼女はくるりと踵を返し、パタパタと軽い足音を立てて俺の前から走り去った。
 走り去る直前の涙を溜めた潤んだ瞳を思い返せば僅かに胸は痛む、……一、二年同じクラスで今は委員も一緒の彼女を別に嫌いでは無かったから。

実は三日前も似た様な事はあった。

「ごめん」
「ううん……、伝えられただけでも良かった」
 無理をした様な笑顔に罪悪感に似た苦さを感じる。
 小柄な彼女は、……どこか危なっかしさを感じた一年の時のクラスメイト。
 ちょこまかと動き回る癖に、何処かにぶつかったり物を落としたりしていることが多く、けれどその小動物じみた容姿も相まって、可愛いと噂する友達も多かった。
 彼女とは二学期で席が隣になり、転がる消しゴム、シャーペンなんかは良く拾って居たし、ぶちまけたプリントをまとめて渡したこともあった。
 目の前でそんなことがあれば手を出す方が普通だとも思うんだが、そんなやり取りがきっかけだと、その日机に入って居た手紙にはあって……。

 そんな些細な関わりの意味が今は少しずつ変わって来たというを最近は感じる。
 何も考えずに助けになればと差しだしたその手が、結果的にその相手を傷つける事になるのなら、もうそれは止めた方が良いのかもしれないとさえ思ってしまう。

 人に好かれるのは悪い事ではない、ありがたいとも思わなければならないのだろう。
 だが、その流れで請われる付き合って欲しい、彼氏になって欲しいと言う要求には答えられない。
 友達の中にはその時は好きでなくても、付き合って見るうちに惹かれて行ったなんて話も聞くが……恋愛感情もなく付き合うなんて、俺には考えられない。

「こうも続くと、何だか人と接するの考えるようになるよな?」
「まぁ、今はクリスマス前だし、仕方がないさ」
 俺のため息混じりの言葉に、少し困った様に答えるのは一条。
 手紙には答えが欲しいと有るのが殆どだし、告白も大抵は放課後の教室や校舎裏、屋上なんて場所で、放課後の大半は部活が有る俺はその度に顧問への伝言をこいつに頼んで居て、逆にこいつから頼まれる事も少なくない。

 正直気が重いなんてことを言うのは、ともともすれば鼻持ちならない自慢にしかならず、だから、こんな気持ちを吐けるのはこいつ位だった
「なんでクリスマスだからって、一気に増えるんだ?」
「イベントにかこつけての切っ掛けは原動力にはなるし、一種のステータスも有るかもな? イブの日にはデートとか」
「イブの夜って、……塾じゃないか?」


「うん、だからね? うちは明日やるんだ、ママの得意のローストターキーにヴィシソワーズ、生ハムのサラダに……次の日のターキーのサンドイッチがまた最高なんだよ!」
「紗綾の楽しみって全部食べ物?」
 塾の開始前、今日の授業の後彼氏と待ち合わせするらしい藍沢とクリスマスの話している藤堂のセリフに、思わず耳を疑う。
 同学年の女子が色恋沙汰に必死なこの時期100%食い気っておまえ……。

「あー、風が気持ちいいね~」
 先にビルから出て自転車のチェーンを外していると、そんな事を言いながら藤堂も駐輪場へと出て来た。
「……ま、ちょっと中は暖房効き過ぎかもな?」
 俺たちはまだ一年有るけれど、上の学年は最後の追い込みの時期なのも有ってか、塾の予防もかなり神経質で、各教室には空気清浄機が稼働し暖房の設定温度も少し高いと感じる程なのは確かで
「喉渇いちゃった、……帰る前にちょっとお茶飲んでいって良いかな?」
 そう言って自動販売機に近寄ると、ふと何かを思い付いたように藤堂は俺を振り向いた
「鳴木も何かいらない? 今日も教えて貰っちゃったし」
「は? あんなの教えるって程でも無いだろ?」
「そんな事無いよ、すっごく助かったし、……あ、じゃぁ、クリスマスプレゼント!」
 良いことを思いついたとでも言うように言い募るのに、何となく断るのも野暮な気がして
「じゃ、コーラ」
 そう答えながら自販機に近づくと、了解と答えてボタンを押しそれを取るのにかがむ隣に立ち同じ自販機に小銭をほおりこみ
「おまえは? ま、どうせ緑茶だろ?」
 茶って言ってたし、大体こいつはいつもそればかり飲んでいるから返事も聞かずに、ボタンを押せば、あぁぁ……なんてワタワタして居るのをよそにカコンって落ちたそれを取り出して、あいつの手元からコーラを抜き取り緑茶を押しつけた。
「これじゃお礼にならないよ」
 すると、少し頬を膨らませるから
「いーじゃん? クリスマスなんだろ? 交換」
 そう答えて、コーラの缶を緑茶の缶に軽くぶつけた。

「あっ……」
「ん?」
 それを見つめると拗ねていた顔が嬉しげに緩み
「二本揃うと本当にクリスマスだね? ……明日はターキーだ~」
 耳に入った言葉に思わずコーラを吹き出しそうになる。
 
 勉強を教えたりしても、礼は言ってきてもおかしな手紙を渡してきたりはしないし、こんな風に二人で居ても頭の中は明日のメニューで一杯。
 全く、幾つなんだよ? って思う。
 だけど……、呆れて見つめる俺にふと視線を合わせて軽く缶を上げて
「メリークリスマス」
 へらりと笑ってみせる顔につられて
「メリクリ」
 もう一回、コーラの缶をあいつの緑の缶にカコンとぶつければ。
 
 こんなクリスマスも悪くないって、気がした。
 
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