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3巻
3-2
しおりを挟むそんなことを思いながら、呑気に文字を書いていると、ウルフが思い切って攻勢に転じる。
ゴブに対して、右前足の外側を利用して、右方へと球を軽く蹴り飛ばす。そしてゴブがすかさず飛びついた瞬間、右足を大きく外に出して内側に切り返した。
エラシコという技だ。俺の知識がいつの間にか伝わっていたようだ。
このわんこ、侮れないな。俺ですらできないというのに、気がついたら習得しているとは。
しかし惜しむらくは、ウルフの足は長くないことだ。もし人のように二足歩行であったなら、名プレイヤーになっていたことだろう。
ウルフが足の短さのせいで引きつける前に切り返してしまったため、ゴブは一瞬フェイントに引っかかったものの、すぐさま球へと飛びついていく。
ゴブが迫ってくると、ウルフは一か八か、思い切り球を突き飛ばした。紙の球は、ゴールの枠ギリギリ目がけて飛んでいく。見事なコントロールだ。
だが、ゴブは思い切り手を伸ばす。そして指先が球に引っかかった。
紙製だから大した重みはなく、それだけで軌道が逸れてしまう。
そうしてふわふわと宙を舞い、落ちていき――大きな欠伸をしていたケダマの口にすっぽりと納まった。
突如振ってきたそれに、ケダマはまん丸な目をさらに丸くし、翼をぱたぱたと動かして驚きを露わにする。
しかし、ケダマはケダマだった。口の中の紙の塊を、ごっくん、と呑み込んだのである。
……おい、お前自分がなに食ったかわかってないだろうに。
ウルフとゴブは揃ってケダマを眺める。しかし、すでに腹の中に入ってしまったものは取り返しがつかない。仕方がないのでケダマをさらに小型化してボールサイズにすると、ウルフとゴブは楽しげに転がしたり投げたりし始めた。
さて、俺も集中してやるか。
そう思って手を動かし始めたときには、すでにクーナがいろいろと纏め終わった後だった。彼女はこういうのが好きとはいえ、俺よりずっと手早くて優秀だ。
魔物たちを連れるリーダーとしての役割ってなんだろう。
そんなことを考え直さずにはいられないのだった。
◇
コフンに着いてから一週間。俺たちは今日、休みにしていた。
最近、勉強漬けだったおかげで古代文字の読解は進んでいたのだが、皆に疲れが溜まっているだろうと配慮したわけだ。こうした気遣いが、人の上に立つ以上、肝要なのは間違いない。闇雲にやるよりも、このほうが能率もいい。
もっとも、俺たちが書物を読んでいる間、ゴブやウルフ、ケダマはケージの中で寝転がっていたので、普段よりもぐうたらしているのだが。
そんな俺たちは休日を満喫すべく、朝ごはんを食べたらしばらく昼寝をして、昼過ぎになってから起きてくるという生活をしていたが、起きてみるとライムの姿が見えない。ついでにケダマも。
まさか家出かと考えていると、クーナが窓のほうを示す。俺は彼女の指示通り、窓を開けて庭を覗いた。
そこにはライムとケダマがいた。眺めていると、遊んでいるわけではないことがわかる。
ライムは桶の中にケダマをぎゅっと押し込んでいる。ぐいぐいとはまっていくケダマと目が合った。ちょっぴり切なそうな、しかし楽しそうな様子なのはなぜだろう。
それからライムは桶を、遠く離れた桶に向ける。向こう側のものは、こちらに口を向けてある。
そして次の瞬間、勢いよくケダマが噴出した。
桶の中に入っていた水が噴き出す勢いでケダマが飛んでいくのである。なるほど、ライムは水魔法を覚えているから、そんなことができるんだろう。
そうしてケダマは飛んでいき、心地よい音とともに桶を弾き飛ばした。あれ、すっぽり入る予定だったんじゃ……?
ライムはケダマのところに駆け寄っていって、頭を撫でている。毛で覆われているから、大して痛くもなかったようだ。
「あれは、なにをやってるんだ?」
「訓練だそうですよ。シンさんも飛ばされてみますか?」
「いや、遠慮しておくよ」
クーナは俺の使っていた枕を抱きかかえながら、そんなことを言ってみる。
しかし、ライムとしては本気なんだろう。思えば、彼女には最近、なにも魔物を合成していない。クーナやケダマ、さらにはゴブまで強くなってしまったことを考えると、なにかしなければならないと思ったのかもしれない。彼女は頑張り屋だから。
そうして励む姿を見ていると、ふと思うことがあった。
俺はケージの中で菓子を食い漁っているゴブと、食後にリラックスしているウルフを見る。すっかり腹が出てきていた。ケダマもそうだが運動不足なのだ。
「寒くなってきたこの時期が肝要なんだ。ここで鍛えておけば、風邪もひきにくい。運動するぞ!」
宣言とともに、俺はゴブとウルフを掴んで庭に飛び出した。
宿の外に出ると、やはり寒気が強い。
インドア派な俺は、引き返そうかなあ、とはやくも心が折れかけてしまう。しかし、この世界で培った冒険の経験が、俺を駆り立てる。このまま自堕落な生活をしていては、ただでさえ低い運動能力がますます低下するのだと。
「シン。どうしたの?」
ライムが俺を見て首を傾げる。しかし、どちらかと言えば俺のほうが首を傾げたくなった。桶から噴き出す水は噴水のようになっており、ケダマがぷかぷかと浮いている。楽しげなんだが寒そうだ。ちょっと震えている。
「運動しようと思って。あと、ケダマは乾燥させてあげよう。風邪をひいてしまうから」
俺はそう言って、ウルフとゴブに準備運動を言いつけ、ケダマを手に取る。それから、まずはぎゅっと押し潰して脱水。ケダマは毛がしっとりして小さくなってしまう。次に炎魔法と風魔法を利用して、ドライヤーのように温風を当てていくと、ケダマは心地よさげに目を細めた。
しばらくして、ほっかほかのケダマが出来上がったところで、こいつにも運動するよう指示を出す。すかさず転がろうとしたケダマにちゃんと歩けと伝えたら、すごく嫌そうな顔をされた。しかし、転がってばかりじゃ運動機能が落ちるだろう。
「……ナマクラ丸。お前も走ってこい」
「無茶言うなよ。俺は刀なんだが」
「というか、お前はなに食って生きてるんだ?」
「そりゃあ、刀なんだから、油とか鉱石とか食ってるに決まってるだろう」
「聞いたことねえよ、そんなの。というか、生きてる刀がおかしいんだ」
近くにある小石を押しつけてみるも、そういうのではダメらしい。贅沢なやつめ。
魔物たちが動き出すのを見てから、俺がストレッチを始めると、クーナとライムも一緒にやってくれる。しかし、反復横跳びを開始した途端、奇妙なものを見るような目を向けられた。
「……それは一体、なんの儀式ですか?」
「いや、運動だよ、運動」
一緒にやるのが嫌だったのか、彼女たちは俺をじっと眺めている。
と、そこにケダマがやってきて、ぴょんぴょんと跳ねる……お前の脚、毛に隠れててどうなってるのかわからないんだけど。
さらにはゴブまでやってきて、俺の前でひょいひょいと動いて、「ふふん」みたいな顔をしやがった。くそう、舐められてる!
確かにゴブは強くなった。ステータスだけ見ればかなり高い。
しかし、俺には仲間から還元されたステータスと、戦いの中で培った剣の技術がある!
俺はそこらに立てかけてある木の枝を一本、ゴブに投げ渡し、俺自身も一本持って構える。
「さあ、かかってくるがいい!」
ゴブはこちらを威嚇するようにぶんぶんと枝を振るう。けれど俺は動じない。なぜなら、俺はナマクラ丸を使って歴戦の戦士たちの技術を体得してきたことで、剣技が磨かれているのだから!
ゴブはぐっと足に力を込めると、勢い任せに突っ込んできた。
……あれ、これもう技術云々関係なくないか? 反応速度の問題だろう。
一歩下がると、ゴブの枝が力任せに振り下ろされる。眼前すれすれを進んでいく枝先。俺は対応できずに、さっと距離を取る。
「どうなってんだナマクラ丸! 俺の剣技、全然上達してないじゃないか!」
「そりゃあ、そうよ。あれはあくまで一時的に感覚を共有してただけだからな。俺を使ってなけりゃ、当然さ。今は『昔は達人だったけど、すっかりぼけちゃって、お鍋を振るってるの』って近所で噂されるレベルだ」
「そこまでひどくねえよ! っていうか鍋かよ、お玉じゃないのかよ!」
剣技が通用しないとなれば、身体能力的にゴブには勝てやしない。悔しいが、そこは俺とて認めざるを得ない現実である。
しかし――万策尽きたわけではない。
俺は枝を構える。たった一撃凌げば俺の勝ちなのだ。勝算はある。
俺は集中力を研ぎ澄ませ、ゴブの動きを見る。すると、小馬鹿にしたような顔を見せてきた。安い挑発だ、そんなものに乗るものか。
しかし、ゴブは油断したようだ。力のこもっていない一撃が放たれる。
――ここだ!
思い切り、俺は枝をゴブの枝に叩きつけた。パキッと音が鳴り、枝が折れる。
そう、俺が先ほどゴブに手渡した枝は、ひびが入っているものだったのだ!
ゴブは慌てるが、もう遅い。俺はゴブの頭に一撃をお見舞いすると、ペシッと音が鳴った。
「どうだ、俺の勝ちだ。油断するからそうなるんだ」
俺の作戦勝ちである。
ゴブはちょっと落ち込んでいたが、すぐさま顔を上げ、俺に再戦を挑んできた。
嫌だよ、次やったら絶対勝てないじゃん。
「クーナ、代わりに相手をしてくれないか」
「はい、わかりました!」
「よし、ゴブを鍛えてやってくれ」
ゴブはかかってこいと言わんばかりに、木の枝をぶんぶんと振る。今度は折れてもいいように、二本持っていた。しかしお前、二刀流とか絶対無理だろ。間違いなく、両手が同じ動きをするタイプだ。
そうして両者が対峙するが、予想通りの結末にしかならないだろう。
ゴブはすっかり強くなった気分でいるが、きれいさっぱり失念していることがある。
「ゴブ! ゴブブ!」
果敢に突進していくゴブ。クーナはさっと足払いしてゴブを転ばせる。ゴブはすぐさま起き上がって再び攻めるも、またしても転ばされた。
やつは忘れている。クーナは元々、ゴブとはかけ離れたステータスの高さだったということを。そして現在も差があるということを。
不思議そうな顔でかかっていくゴブ。今度はクーナがゴブの攻撃をいなして、腕、胴体、頭と次々に叩いていく。
身体能力だけでなく、技術でもかなりの差があるのだ。敵うはずもあるまい。
「精進するがいい、ゴブよ」
俺は言い放ち、放置を決め込むと、こちらを見て尻尾を振っているウルフに向き直る。そして跳び越えるためのハードルを用意してから、適度な高さになるようウルフを小型化。
ウルフが跳び越えるうち、ぎりぎり飛べるかどうか、という高さまでハードルを徐々に上げると、日ごろは失敗なんかしないウルフも、引っかかることが増えてくる。
しかし、すぐに慣れてしまったのか、特に失敗もしなくなる。優秀すぎるのだ。これでは練習にならない。
そんなところで、ライムがこちらを眺めているのに気がついた。
「水魔法でウルフを撃てないか? ああ、怪我はしないようにして」
水なら当たっても被害がないはず。
ライムは承諾し、早速実行。ウルフはどれも見事に回避していく。それを見たケダマが、アトラクションかなにかだと思ったのか、飛び込んでいく。
そして空中に躍り出たケダマは狙撃され、水の勢いで飛んでいった。
……あいつに俊敏な動作を期待するのはやめよう。
それから俺は一人、離れたところで炎魔法を使用し続ける。延々と燃やしていると、ナマクラ丸が話しかけてきた。
「なにしてるんだー?」
「実戦じゃあ、スキルの影響で体力を使い切った状態で戦うことが多いだろう? だから、その状態まで疲弊させるんだ」
「なるほどなあ。親友はマゾだってことか」
「全然違うっての」
と、そこで俺は、こんなことをするよりもっと手早い方法があった、とナマクラを抜く。そしてナマクラ丸のスキル「エナジーキャパシタンス」によりナマクラ丸へとエネルギーを充填。
「はー、やっぱ生き返るねえ。若いってのはいいもんだ」
「エネルギーをいつまでも溜めとくことってできないのか?」
「無理だなあ、半日もしないうちに放散していっちまうから」
「ま、そう都合よくはいかないか」
とはいえ、あらかじめ敵が出てくることがわかっているなら、体力がすぐに回復できる程度に少しずつ溜めておけばいい。
ナマクラ丸が満腹になるまで溜め込むと、俺はすっかり疲弊しきっていた。
疲れた体に鞭打って刀を握り、訓練を始める。これまで我流の剣術だったことを考えれば、見直すのは効果的なはずだ。
「力を抜けよ、そんなんじゃうまく振れないぜ」
「わかってる」
「女性を抱くときのように優しく、リラックスしてだな」
「緊張してガチガチになるっての。だいたいお前がそれを語るか」
「おっかしいな。前にそう言ってたやつがいたんだけどなあ」
もちろん、ナマクラ丸にそんな経験があるわけはない。
当てにならないアドバイスを貰いながら、俺は足さばきから素振りといったものを見直し、型の訓練に入る。
ただそれだけでも集中力を要するし、疲労も半端じゃない。
へたり込んだときには、もう長い時間がたっていたような気がするが、全然そんなことはなかった。この体力のなさはちょっと課題かなあ。
寝転がって地面すれすれの目線になると、あたかも死んでいるようなゴブリンが見えた。
「ゴブ、立ち上がるのです! 敵は待ってくれませんよ、戦うしかないのです!」
どうやらクーナはあれで結構、指導は熱血派なようだ。
ゾンビのように、ゴブがゆらりと起き上がる。たぶん、寝てたらバシバシ叩かれるんだろう。目が本気だ。
が、起きていても同じことかもしれない。すぐにクーナに打ちのめされて、倒れ込んだのだから。
うーん。強くなるかな、ゴブ。いや、あいつだけじゃなくて、皆そうなればいいな。
俺は魔物たちを見回し、そう思うのだった。
2
その日も俺は発掘者ギルドで勉強をしていたのだが、ビッグニュースが飛び込んできたので、勉強そっちのけで受付付近の人だかりに加わらずにはいられなかった。
集まっているのは、多くが発掘者ギルド所属の学者たちだ。彼らはああでもないこうでもないと、盛んに議論を交わしている。
今日、ある遺跡の新しい通路が発見されたらしい。しかも、そこには厳重な罠が仕掛けられており、いかにも怪しいとのことだ。
怪しければ避けて通るのが傭兵たちの常であるが、そこに突っ込んでいくのが学者というものなのかもしれない。
彼らの中では「調査する」ことが確定済みで、どのような計画で、あるいはどのような技術を用いて進めていくのか、なかば罵声にも近いほど声高に持論を言い合っている。ときおり予算などの話も上がるが、大きな声にかき消されていくばかりであった。
その中には、ちょっと興味深い情報もある。なにやら、俺が調べているのと同時代と思しき様式が見つかったようなのである。となれば、俺の求めている情報がたくさんあるはずだ。
大人しく調査が済むのを待っているのも悪くはないが、いかんせん、彼らも自身の立場は弁えている。自らの不利益となるような情報をこうした場では話さないし、聞かれてもいい、あるいは聞かれることに意味のある会話しかしないのである。
そしてこの場合の、聞かれて価値が出ることとはすなわち、俺たちのような者が興味を示すことだ。もっとも大多数の者は調査自体ではなく、護衛の報酬が気になっているのだが。
ともかく、そうしているうちに調査関連の仕事が舞い込んでくるようになる。俺は最近、ろくに稼いでいなかったので好都合だ。
早速、条件を確認していくと……やけに金額が高い。胡散臭く思われるほどに。
なにかあるのかなあ、と思っていると、それだけ危険度が高い仕事になるらしいことが告げられる。
やっぱりやめようかな?
「なんだシン、美味しい仕事は独り占めか?」
声をかけてきたほうに振り返ると、そこにはライルたち一行の姿があった。
「いえ、そういうわけでは……」
「冗談さ。今しがた出たばっかりなんだろ? で、ほかのやつらはどうだ?」
「あまり受ける者はいないみたいです。罠が多く、危険らしいですから」
そう聞くと、ライルは早速、受付のところに行って交渉を始める。
どうやら、報酬において魔物を頭数に入れるかどうかは、これといった取り決めはなく個別に決められるらしい。
「俺の魔物なら、そこらの兵よりずっと役に立つぜ。なんたって、人間なら槍を食らえば死ぬが、こいつはすぐに戻っちまうんだからな。何人分もの働きは保証する」
ライルはそう豪語する。
俺にはとても言えないなあ。だって、ゴブは半人前の仕事すらこなせないだろうし。変な罠を踏んだりして、かえって場を混乱させそうだ。
しかしながら、一人だけの報酬となると割安になってしまうため、俺も交渉せねばならない。
受けるかどうかをクーナ、ライムと相談すると、二人ともやる気いっぱいに応えてくれる。古代文字の読解に精を出してきたのは俺だけではなかったのだ。さらなる情報が手に入るとなれば張り切るのも当然だろう。
俺も早速交渉に入ると、俺とクーナ、ライムの三人分で妥協することになった。人と同等の働きをするとなれば、それ相応の知性、あるいは命令通りに働く能力が必要になるからである。ケダマやゴブが大人しくしている保証なんかないのだから仕方あるまい。
そうして仕事を引き受けると、数日後の猶予があったので、俺たちは再び学習に励むことにした。けれど、やはり身が入らないものであった。
◇
いよいよ、調査が開始される日になった。
俺たちは都市から半日ほど行ったところにキャンプを設営し、そこを拠点に遺跡内を探っていくことになる。
辺りをぐるりと見回せば、見張りとして立っている兵たちが見える。彼らは遺跡内の調査に随伴することはなく、魔物の襲撃に備えているのだ。安全ではあるが、もちろん給料は高くない。
それからゴーレムの姿も多い。この都市で活動する標準的な魔物使いが皆、ゴーレムを従えているからである。そのため、俺のように異なる魔物を連れていれば、他の都市からやってきた魔物使いであることは一目瞭然だ。
やがて学者たちの準備が整うと、いよいよ内部の調査に乗り出すことになる。俺たちは調査班の護衛に当たるメンバーとともに歩き出す。
「そいつら、前に行かせてよ」
と、三十かそこらの女性が俺に声をかけてきた。長いこと護衛の仕事を続けているらしく、使い込まれた装備が多い。彼女は俺の魔物たちに視線を向けている。
「え?」
「だからー……魔物でしょ? そいつらに危険を確かめさせるの」
「いや、それは……」
「あー、もう。わかったって。そんなに自分のものを失うのが惜しいワケ? 確かにレアっぽいけどさ。これだからヨソモノは。もういいよ、ほかのヤツに頼むから」
彼女はほかのゴーレム持ちに話をつけることにしたようだ。嘲笑らしい声が聞こえてくる。
俺がそんな彼女を見ていると、ケダマが突っついてきた。
「なにすんだよ」
ケダマだけじゃなく、ウルフまで頭を摺り寄せてくる……慰められてるのか? それとも自分たちが行くということか。しかし、俺には彼女の意見に同意することはできない。
それにしても、まさかケダマにまで気を遣われるとはなあ。
「シンさん、出発するみたいですよ」
「よし、じゃあ行くか」
クーナが剣を持って張り切る。負けじとライムも前に出るが、そんな彼女を俺は押しとどめた。スライムだから貫かれてもなんとかなるかもしれないが、俺はそういう魔物の使い方をしたくはない。
居眠りしかけていたゴブを叩き起こし、俺たちは移動し始める。
0
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