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Jardin secret ~秘密の花園~
第9話
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「それにしても見事なバラですこと!」
「えぇホント…。とても綺麗な赤色みたいなピンク色ね。花弁の手前に向かってだんだんと濃いグラデーションになっていて…綺麗なバラね」
「庭師のニックが『ロゼッタローズ』じゃないかと申しておりましたよ。ウチのお庭には無い種類のバラですって」
「『ロゼッタローズ』…カルロ様が仰っていたバラだわ。確かに芳醇な香りと爽やかな香りが入り混じって今まで嗅いだことのない香りだわ」
キラキラと輝くクリスタルの花瓶に活けられたバラを見ながらシャルロット様は何やら物思いにふけっております。その様子をみたばあやはニヤニヤしながらシャルロット様の近くに寄ってきました。
「チラッとしか拝見していないんですがカルロ様ってウィリアム様に引けを取らない位のハンサムな方でしたねぇ❤品のいい身だしなみにどことなく甘い香りを漂わせた金髪の長身の紳士…あぁ…ばあやがもうあと30若ければ…っ!」
「ばあや!?」
「やだ冗談ですよぉ~!あぁ、それとこちらも。陛下の前でお渡しするのはちょっとアレだったので…」
「なぁに?」
ばあやはポケットをゴソゴソと探りやっとこさ探り当てるとこれまたニヤニヤした笑顔でスッとシャルロット様の前にあるものを差し出されました。
「お手紙…」
「ラブレターでしょうかねッ!?」
封を切ってお手紙を開くとばあやがツツツ…と寄ってきて肩でシャルロット様を小突きます。そしてそーっとお手紙の内容を盗み見しようとしましたが、シャルロット様はパッとお手紙を折り畳み読めないように胸元でしっかりとガードしております。
「そんなんじゃないわよ!ただの送り状よ!」
「でしたら隠さなくても良いではありませんか~!」
「人の手紙を盗み見しようなんて、ばあやはしたないわっ!」
「まぁ~!」
「んもぅ!ばあやはもぅ下がっていいわ!」
「はいはい」
からかわれて少し怒っているシャルロット様に対してばあやはずっとニヤニヤしたままお辞儀をしてお部屋を出て行きました。パタン…としっかりドアが閉まったのを確認するとシャルロット様は早速、送り状という名のお手紙を開けました。
「えっと…『シャルロット様へ。先日お話ししておりましたロゼッタローズが見事に咲きましたので是非シャルロット様にと思い、急ではありますがお送りさせていただきました。また貴女と是非バラの咲き誇る庭にてたくさんお話が出来ることを願っております。バラの様に気高く可憐で美しいシャルロット様へ愛をこめて―――…』…カルロ様ったら…」
「んまっ❤『愛をこめて―――…』ですってっ!!」
「ば…ばあやっ!いつの間に…っ!!」
「やだ姫様、ちゃんと鍵を掛けないとダメですよ~❤」
先程お部屋から追い出したはずのばあやがまたいつの間にかちゃっかり戻ってきており、シャルロット様の横にぴったりとくっ付いてて、眼鏡を遠く近くよく見えるように動かしながらお手紙を覗き見しておりました。
お手紙を読まれて少し頬を赤く染めて惚けていらっしゃったシャルロット様はいきなり横からお手紙を音読されて心臓が飛び出るくらい驚かれております。
イヒヒヒヒとばあやは笑いながら未だ心臓がバクバクと高鳴っているシャルロット様をツンツンと小突き続けます。
「『また貴女と是非バラの咲き誇る庭にてたくさんお話が出来ることを願っております。』ってもうこれはデートのお誘いじゃないですかぁ❤あらやだ~❤姫様もついに大人の階段を登られて行くのですねぇ~」
「だからそんなんじゃないってば!こんなの社交辞令じゃないのっ!?」
「その社交辞令に頬を赤く染めていらっしゃったのはどこのどなたでしょうねぇ~」
「そ…それはっ!この部屋が暑かったからよ!」
「確かにカルロ様はおそらく陛下やヴィンセント様よりも少し年上とお見受けいたしますが、甘ったれでワガママでお子ちゃまの姫様にはあれくらい大人の紳士な方の方がきっと良いに違いないですよ!きっと姫様を優しく包み込んでくださるはずです!」
「だから!そんなんじゃないってば!」
「まぁまぁ姫様、素直におなりなさいな。とりあえずお返事書きましょう!」
ばあやは真っ赤になって反論するシャルロット様をなだめて、滅多に使うことの無いお部屋の端に置かれているお勉強用の立派なデスクの方へとシャルロット様を押しやり無理やり座らせます。
「お…お返事だなんて…一体何を書けばいいの…!?」
「思ったままのお気持ちを書けばいいんですよぉ~!!」
「で…でもばあやが変なこと言うからっ!何かもの凄く書きづらいわっ!」
「まぁ❤」
「『まぁ❤』じゃないわよぉ!んもぅ!何か変に意識しちゃって…どうしよう…」
「意外としおらしいところもあるんですねぇ!」
「んもぅ!からかわないでよ!」
手足をバタバタとさせてシャルロット様は落ち着かない様子で座っております。ばあやはそんなシャルロット様の肩に優しく手を置いてにっこり微笑み、目の前にどこからか取り出したレターセットとペンをシャルロット様に差し出します。
「はいはい、すみませんすみません!まずは深呼吸をして!はい大きく息を吸って―、吐いてー!落ち着きましたね?はい、じゃあ、まず…純粋にお花をいただいてどう思われました?」
「…嬉しかったわ」
ばあやに促されて大きく深呼吸をしたあと、シャルロット様はまだ少しドキドキとしている心臓を落ち着かせる様に胸に手を置いてご自分の気持ちを確認するように答えました。
ばあやはパチンっと指を鳴らし、シャルロット様の背中をポンポンと叩いて鼓舞します。
「まずはそのお気持ちを書いてみましょう!そして姫様はカルロ様ともう一度お会いしたい?」
「…えぇ、お会いしたい…」
「じゃあそう素直に書きましょう!難しく考えていたらお手紙なんて書けません!大丈夫、お会いした時にたくさんお話しして…その人の人となりを知って好きになって行けばいいんですよ!」
「待ってばあや!先走り過ぎよ!!」
「先走りから始まる恋もあるのですよ❤さぁさぁ…!」
ばあやに唆され、シャルロット様はゆっくりではありますが白い便箋にペンを走らせていきます。時おりうーん…と唸って色々と考えられてはばあやに励まされ、シャルロット様は何とかご自分の気持ちを文字に変えて、紙の上で踊らせておりました。
「さぁ…っ!お手紙書かれましたね。じゃあこれはセシルにでも届けてもらいましょうかねぇ~❤」
「あんっ!ちょっとばあや待ってってば!まだ読み直してないわ!」
「読み直したら変わっちゃうでしょ!もうこれでいいんですよ!」
「でも推敲しないと…きっと変な事書いてるわっ!!」
「そんなの面白くないでしょうっ!さぁさぁ恋には勢いも大切ですよ~❤」
シャルロット様がツッコミを入れまくっているにも関わらずばあやはニヤニヤ笑いながらシャルロット様の書かれたお手紙をサササッと封に仕舞い、大事に抱えるとスキップしながらお部屋を出て行きました。
「ばあやったらっ!!」
まるで嵐の様に駆けて行った一連のばあやの行動に、シャルロット様はもう何が何だか訳の分からないといった具合でポカーンとして入り口付近を見つめておりました。
フワッと優しい風が窓からカーテンを揺らして流れ込んできました。風に乗ってバラの香りが部屋中に満ち渡ります。
「…良い香り」
ぽそっとシャルロット様は呟かれると、花瓶を置いているベッドサイドのチェストの方へと近づき、すとんっとベッドに腰掛けました。
「ばあやったら一人で盛り上がっちゃって…!そりゃあ確かにカルロ様は大人で紳士でイケメンで…少し浮世離れしているかも知れないけれど…ヴィーなんかより優しくてとても素敵な方だけれども!…はぁ…ばあやのせいで私まで何だかカルロ様のことが気になっちゃったじゃない…っ!…って!だから違うってばぁ~ッ!!」
ふぅ…っと大きな溜息と共にバタンっとベッドに倒れられてぶつくさ言っておりましたが、ハッとされてガバッとベッドから飛び起きて叫びだします。
「…やだ…なに…?どうして…?カルロ様のことを考えると…この辺がモヤモヤするわ…?」
シャルロット様は胸の辺りを押さえ、神妙な顔つきで自問自答を繰り返します。
「…んもぅっ!」
メイドたちが綺麗に並べてくれたであろうクッションをパッと一つ手に取り、シャルロット様はお顔を埋めてバタバタとどこにも置きようのない気持ちをぶつけております。
窓の外のテラスでは、黒猫のノアがそんなシャルロット様のお姿を見ておりましたが、くぁ…っと大きな欠伸を一つして頭を降ろしてゴロンとお昼寝の体勢になりました。
シャルロット様の叫びがこだまする中、今日も麗らかなお昼が過ぎていくのでした―――…。
「えぇホント…。とても綺麗な赤色みたいなピンク色ね。花弁の手前に向かってだんだんと濃いグラデーションになっていて…綺麗なバラね」
「庭師のニックが『ロゼッタローズ』じゃないかと申しておりましたよ。ウチのお庭には無い種類のバラですって」
「『ロゼッタローズ』…カルロ様が仰っていたバラだわ。確かに芳醇な香りと爽やかな香りが入り混じって今まで嗅いだことのない香りだわ」
キラキラと輝くクリスタルの花瓶に活けられたバラを見ながらシャルロット様は何やら物思いにふけっております。その様子をみたばあやはニヤニヤしながらシャルロット様の近くに寄ってきました。
「チラッとしか拝見していないんですがカルロ様ってウィリアム様に引けを取らない位のハンサムな方でしたねぇ❤品のいい身だしなみにどことなく甘い香りを漂わせた金髪の長身の紳士…あぁ…ばあやがもうあと30若ければ…っ!」
「ばあや!?」
「やだ冗談ですよぉ~!あぁ、それとこちらも。陛下の前でお渡しするのはちょっとアレだったので…」
「なぁに?」
ばあやはポケットをゴソゴソと探りやっとこさ探り当てるとこれまたニヤニヤした笑顔でスッとシャルロット様の前にあるものを差し出されました。
「お手紙…」
「ラブレターでしょうかねッ!?」
封を切ってお手紙を開くとばあやがツツツ…と寄ってきて肩でシャルロット様を小突きます。そしてそーっとお手紙の内容を盗み見しようとしましたが、シャルロット様はパッとお手紙を折り畳み読めないように胸元でしっかりとガードしております。
「そんなんじゃないわよ!ただの送り状よ!」
「でしたら隠さなくても良いではありませんか~!」
「人の手紙を盗み見しようなんて、ばあやはしたないわっ!」
「まぁ~!」
「んもぅ!ばあやはもぅ下がっていいわ!」
「はいはい」
からかわれて少し怒っているシャルロット様に対してばあやはずっとニヤニヤしたままお辞儀をしてお部屋を出て行きました。パタン…としっかりドアが閉まったのを確認するとシャルロット様は早速、送り状という名のお手紙を開けました。
「えっと…『シャルロット様へ。先日お話ししておりましたロゼッタローズが見事に咲きましたので是非シャルロット様にと思い、急ではありますがお送りさせていただきました。また貴女と是非バラの咲き誇る庭にてたくさんお話が出来ることを願っております。バラの様に気高く可憐で美しいシャルロット様へ愛をこめて―――…』…カルロ様ったら…」
「んまっ❤『愛をこめて―――…』ですってっ!!」
「ば…ばあやっ!いつの間に…っ!!」
「やだ姫様、ちゃんと鍵を掛けないとダメですよ~❤」
先程お部屋から追い出したはずのばあやがまたいつの間にかちゃっかり戻ってきており、シャルロット様の横にぴったりとくっ付いてて、眼鏡を遠く近くよく見えるように動かしながらお手紙を覗き見しておりました。
お手紙を読まれて少し頬を赤く染めて惚けていらっしゃったシャルロット様はいきなり横からお手紙を音読されて心臓が飛び出るくらい驚かれております。
イヒヒヒヒとばあやは笑いながら未だ心臓がバクバクと高鳴っているシャルロット様をツンツンと小突き続けます。
「『また貴女と是非バラの咲き誇る庭にてたくさんお話が出来ることを願っております。』ってもうこれはデートのお誘いじゃないですかぁ❤あらやだ~❤姫様もついに大人の階段を登られて行くのですねぇ~」
「だからそんなんじゃないってば!こんなの社交辞令じゃないのっ!?」
「その社交辞令に頬を赤く染めていらっしゃったのはどこのどなたでしょうねぇ~」
「そ…それはっ!この部屋が暑かったからよ!」
「確かにカルロ様はおそらく陛下やヴィンセント様よりも少し年上とお見受けいたしますが、甘ったれでワガママでお子ちゃまの姫様にはあれくらい大人の紳士な方の方がきっと良いに違いないですよ!きっと姫様を優しく包み込んでくださるはずです!」
「だから!そんなんじゃないってば!」
「まぁまぁ姫様、素直におなりなさいな。とりあえずお返事書きましょう!」
ばあやは真っ赤になって反論するシャルロット様をなだめて、滅多に使うことの無いお部屋の端に置かれているお勉強用の立派なデスクの方へとシャルロット様を押しやり無理やり座らせます。
「お…お返事だなんて…一体何を書けばいいの…!?」
「思ったままのお気持ちを書けばいいんですよぉ~!!」
「で…でもばあやが変なこと言うからっ!何かもの凄く書きづらいわっ!」
「まぁ❤」
「『まぁ❤』じゃないわよぉ!んもぅ!何か変に意識しちゃって…どうしよう…」
「意外としおらしいところもあるんですねぇ!」
「んもぅ!からかわないでよ!」
手足をバタバタとさせてシャルロット様は落ち着かない様子で座っております。ばあやはそんなシャルロット様の肩に優しく手を置いてにっこり微笑み、目の前にどこからか取り出したレターセットとペンをシャルロット様に差し出します。
「はいはい、すみませんすみません!まずは深呼吸をして!はい大きく息を吸って―、吐いてー!落ち着きましたね?はい、じゃあ、まず…純粋にお花をいただいてどう思われました?」
「…嬉しかったわ」
ばあやに促されて大きく深呼吸をしたあと、シャルロット様はまだ少しドキドキとしている心臓を落ち着かせる様に胸に手を置いてご自分の気持ちを確認するように答えました。
ばあやはパチンっと指を鳴らし、シャルロット様の背中をポンポンと叩いて鼓舞します。
「まずはそのお気持ちを書いてみましょう!そして姫様はカルロ様ともう一度お会いしたい?」
「…えぇ、お会いしたい…」
「じゃあそう素直に書きましょう!難しく考えていたらお手紙なんて書けません!大丈夫、お会いした時にたくさんお話しして…その人の人となりを知って好きになって行けばいいんですよ!」
「待ってばあや!先走り過ぎよ!!」
「先走りから始まる恋もあるのですよ❤さぁさぁ…!」
ばあやに唆され、シャルロット様はゆっくりではありますが白い便箋にペンを走らせていきます。時おりうーん…と唸って色々と考えられてはばあやに励まされ、シャルロット様は何とかご自分の気持ちを文字に変えて、紙の上で踊らせておりました。
「さぁ…っ!お手紙書かれましたね。じゃあこれはセシルにでも届けてもらいましょうかねぇ~❤」
「あんっ!ちょっとばあや待ってってば!まだ読み直してないわ!」
「読み直したら変わっちゃうでしょ!もうこれでいいんですよ!」
「でも推敲しないと…きっと変な事書いてるわっ!!」
「そんなの面白くないでしょうっ!さぁさぁ恋には勢いも大切ですよ~❤」
シャルロット様がツッコミを入れまくっているにも関わらずばあやはニヤニヤ笑いながらシャルロット様の書かれたお手紙をサササッと封に仕舞い、大事に抱えるとスキップしながらお部屋を出て行きました。
「ばあやったらっ!!」
まるで嵐の様に駆けて行った一連のばあやの行動に、シャルロット様はもう何が何だか訳の分からないといった具合でポカーンとして入り口付近を見つめておりました。
フワッと優しい風が窓からカーテンを揺らして流れ込んできました。風に乗ってバラの香りが部屋中に満ち渡ります。
「…良い香り」
ぽそっとシャルロット様は呟かれると、花瓶を置いているベッドサイドのチェストの方へと近づき、すとんっとベッドに腰掛けました。
「ばあやったら一人で盛り上がっちゃって…!そりゃあ確かにカルロ様は大人で紳士でイケメンで…少し浮世離れしているかも知れないけれど…ヴィーなんかより優しくてとても素敵な方だけれども!…はぁ…ばあやのせいで私まで何だかカルロ様のことが気になっちゃったじゃない…っ!…って!だから違うってばぁ~ッ!!」
ふぅ…っと大きな溜息と共にバタンっとベッドに倒れられてぶつくさ言っておりましたが、ハッとされてガバッとベッドから飛び起きて叫びだします。
「…やだ…なに…?どうして…?カルロ様のことを考えると…この辺がモヤモヤするわ…?」
シャルロット様は胸の辺りを押さえ、神妙な顔つきで自問自答を繰り返します。
「…んもぅっ!」
メイドたちが綺麗に並べてくれたであろうクッションをパッと一つ手に取り、シャルロット様はお顔を埋めてバタバタとどこにも置きようのない気持ちをぶつけております。
窓の外のテラスでは、黒猫のノアがそんなシャルロット様のお姿を見ておりましたが、くぁ…っと大きな欠伸を一つして頭を降ろしてゴロンとお昼寝の体勢になりました。
シャルロット様の叫びがこだまする中、今日も麗らかなお昼が過ぎていくのでした―――…。
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