ローザタニア王国物語

月城美伶

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Soupir d'amour 恋の溜息

第6話

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「はぁ…ダメだわ…今日本当にダメだわ…。私いったい何やってるんだろう…」

はぁ~っと思いっきり大きな溜息をつきながら、セシルは一心不乱にゴシゴシと洗濯をして洗い終えた洗濯カゴを抱えてお庭へと出てきました。雲一つない青空に心地よい風が吹き抜け、爽やかな石鹸の香りがするのに、セシルの心はどこかモヤモヤとして晴れ渡りそうにもそりませんでした。

「いけないいけない…仕事に私情を持ちこんではダメよセシル!こんなんじゃ姫様付のメイドとしてやっていけないわ!!」

モヤモヤを晴らそうと頭を激しく横に振って両手で頬をパンッと挟むと、セシルはよし!と自分を鼓舞して仕事にとりかかろうとします。パーンッとシーツを叩き、洗濯干しに掛けようとした時にセシルはお庭のすぐ横の廊下でたくさんの書類の束を抱えてげっそりとしてフラフラと歩いているケヴィンの姿を見つけました。
あ、ヤバい隠れなきゃっと思ったのもつかの間、廊下を歩いていたケヴィンもセシルの姿を見つけるとお互い真顔で見つめ合い、しばし二人の間に沈黙が流れました。

「よ…よぉ!セシル元気?」
「う、うん。そっちこそ…調子はどう?」
「お…俺はこの通り、こんなにもたくさん書類の束持てるほど元気だよ…っ!」
「そ、そう!それはよかったわ!わ…私は今からたっくさん洗濯物干さないといけないのっ!じゃあねぇ~!!」

なんだか少しよそよそしい様子で、二人は顔は合わせているもののまったく目が笑っていない状態でした。セシルは早くケヴィンにこの場から去ってほしいというオーラを出しまくっておりましたが、当のケヴィンはそれを無視してセシルに声を掛けようと近寄ったその時、ちょうどすぐ足元にあった洗濯カゴを蹴飛ばしてしまい中に入っていた洗濯物が派手に飛び散ってしまいました。そして運が悪いことにお庭のお花の植え替えの時期でしょうか、土がたくさん露出しておりその上に無残にも洗濯物がたくさん舞い降りたのです。
セシルはあーーーーーーーっ!!と叫んで土まみれになった洗濯物を急いで拾いに行きました。

「ちょっとケヴィン!」
「ごっ!ごめんセシルっ!!」
「あ~…もう…っ!!もう一回洗濯し直さなきゃいけないじゃない…っ!まったく…っ!!」
「ごめんってば…っ!」
「…もう!ケヴィンのバカっ!!」

土だらけになってしまった洗濯物を拾い上げ、セシルは思いっきり溜息をつくとケヴィンの横を足早に駆け抜けてもう一度洗濯場へと足早に向かって行きました。
セシルに無視されてしまったケヴィンは戸惑いマックスな顔のまま去っていくセシルの後姿を見つめておりました。

「踏んだり蹴ったりで…いったい何なんだよぉ~…」

思わずはぁ…と溜息をつきながらケヴィンは肩をがっくりと落としてしゃがみこみました。ふと空を見上げると白い雲がゆっくりと流れ去っていきます。
ケヴィンは頭を掻きながら、セシルの去って行った方向を振り返りますがもうそこにはセシルの姿はありませんでした。
はぁ…と大きく肩を落とし、ケヴィンはもう一度流れて行く雲をぼんやり見つめて一人ぽつんっとお庭で黄昏ているのでした。

・・・・・・・・・・

 「聞いたぞシャルロット。今日のピアノとダンスのレッスンなかなか良かったそうじゃないか」

さてさて、日が沈むのが少し早くなり紫色の空が広がってオレンジ色の太陽と混ざり合い静かに夜の帳を告げております。
やがて深い瑠璃色の空にどっぷりと沈んで清らかな虫の音が奏でられる時分、少し遅めのディナーでは、芳醇な赤ワインのグラスを手にウィリアム様がにこやかにシャルロット様に話しかけられております。

「…陛下、ちゃんと私の報告聞いていました?」
「もちろん聞いていたとも。ワルツステップも大分様になって来たようだって」
「なぜか訳の分からないタイミングで転調するピアノソナタを延々と聞かされ、何度私の足が踏まれそうになったか、陛下…私申し上げましたよね?」
「ん?でもだいぶマシになったんだろう?」
「そりゃ始めた頃よりかは」
「じゃあよかったじゃないか」
「…」

後ろに控えていたヴィンセントが呆れた顔でニコニコと微笑んでいるウィリアム様を見つめております。
シャルロット様はもぅ!とヴィンセントの方を見て頬っぺたを膨らませてふくれっ面を見せますが、それをヴィンセントは涼しい顔でシレッと見返します。

「明日もレッスンがあるんだろう?私も少し時間があるから一緒に踊ろうか」
「本当!?お兄様と一緒に踊れるなんて夢みたい!」
「陛下、頑丈な靴を履かれることをお勧めいたします」
「もぅ!ヴィーったらっ!!」

ヴィンセントのツッコミにシャルロット様はさらに頬っぺたを膨らませます。相変わらずハイハイ、と言った顔でヴィンセントがシャルロット様を見返しておりますと、ウィリアム様はワインを一口口に含んだあと笑いながらお二人を諌めます。

「あははは!まぁまぁ二人とも。でもシャル、ヒールで男性の足を踏んでしまったら大けがになるから気を付けないと」
「それもそうよね。でもドレスの裾捌きが難しくて」
「まぁこればっかりは慣れだろうな。私たち男性側もマントの捌き方とか難しいぞ?」
「そうなの?」
「あぁ」
「どうしてあんなに踊りにくい格好で踊らなければならないのかしら。もっとドレスの裾も短い方が良いわ」
「扱いにくいものをいかに難なく扱えるかがエレガントさなんだよ、シャル」
「変なの」
「まぁ最初から快適にしていた方が良いに決まっているけどな。基本的に大半の貴族なんて暇だからな。こねくり回すんだよ」
「…訳分かんないわ」
「まぁそういうものなんだよ」

空になったグラスに給仕係の青年がワインを注ぎます。ありがとう、と一言告げてもう一口ウィリアム様はワインを飲んで喉を潤されました。

「お兄様飲み過ぎじゃない?」
「そうか?」
「いつもよりお替りが多いわ。そんなに飲んだら酔っぱらっちゃうじゃない!」
「私は酔わないから大丈夫だよ」
「でも心配しちゃうから飲みすぎないで」
「わかったよ。じゃあもうこれでおしまいにしよう」

大きな瞳でジッと心配そうに見つめられてしまったのでウィリアム様は仕方ないなぁと言った様子で了承されました。そしてゆっくりとワインを口に含んで堪能されると、給仕係の青年に合図をして紅茶をリクエストされました。

「そう言えばお兄様、今日はどちらまで行かれていたの?」
「ん?今日はラフィーヌ市だよ」
「ラフィーヌ?」
「あぁ。二年後に行われる博覧会の下見だ」
「博覧会!」
「あぁ。ラフィーヌは昔から染物が有名だし、あの一帯は織物や工芸品も有名だしな。他国でも買い付けに来るほどだし我がローザタニアで博覧会を行うにはあそこが最適だろう」
「楽しみだわ!」
「博覧会の会場の付近に複合施設や飲食店、宿泊施設も出来るだろうし、あの辺りはもっと賑わうだろうな」
「ラフィーヌ…行ったことが無いから是非行ってみたいわ!」
「そうだな」
「博覧会も今から楽しみだわ!」
「そのためにも今からダンスをしっかりと練習しておかないとな」
「…はーい」
「じゃあ明日も宜しく頼むぞ、ヴィンセント」
「明日もですか?」
「もちろん」

ニッコリとウィリアム様が微笑まれると、エッと眉間に眉を思いっきり顰めながらヴィンセントはパッとウィリアム様の方を振り向きます。シャルロット様も手に持っていたチョコレートを落としそうになるくらい驚いて目を見開き、ヴィンセントと同じくウィリアム様の方を思いっきり見つめました。

「ヴィーとは嫌よ!厭味ばっかり言ってくるし!」
「私だってもうこりごりですよ。陛下、今日一日だけと言うお約束で姫様のお相手をさせていただきましたが」
「どうせ明日の会議はただの報告だけだから30分で終わるだろう?だったら時間が空くし、お前も時間取れるだろう?だったらいいじゃないか」
「いや、そうじゃなくて…」
「仕事に復帰して以来毎日毎日ずーっとデスクで書類とにらめっこじゃあ窮屈だろう?たまにはリフレッシュでいいんじゃないか?」
「…違うストレスが溜まりそうですけど」
「身体を動かすのは気持ちいいからなぁ、ダンスのレッスンで気分転換だ」
「陛下、私の話聞いてます?」
「ん~?聞いているとも」
「聞いてないし」

ニコニコと微笑みを崩さずにウィリアム様はヴィンセントとテンポよく言葉を飛びかわします。
こりゃもうダメだ、とヴィンセントが諦めてはぁ…と一つ大きく溜息をついて分かりましたよ…と呟きました。

「…お兄様も教えてくださる?」
「んー?もちろんだとも」
「…お兄様だけが良いわ」
「私だって他の仕事したいですよ。でも陛下の命令ですから」
「まぁまぁ二人とも。シャル、ヴィンセントは私よりダンスが上手いんだから教えてもらうようお願いするのは当たり前だろう?多少毒も吐くけど、教え方は分かりやすくて上手かっただろう?」
「…確かにそうだったけど」
「お前に厳しく言う人間も必要だよ。私だとつい甘くなってしまう」
「甘いだけが良いわ」
「そんなんじゃ世知辛い世の中渡っていけませんよ姫様」
「世知辛いって何?」
「…ほら。ね?勉強しなさいってことですよ姫様」
「何もそんな厭味ったらしく言わなくったっていいじゃない」
「エスプリと言ってください」
「もう!訳分かんない!」
「こらこら二人とも…その辺にしておきなさい。さぁシャルロット、もう明日に備えて休もうか。先に失礼するよ」
「えぇお兄様。おやすみなさい」
「おやすみ、私の可愛いシャルロット」

ウィリアム様はスッと席を立たれ、シャルロット様の滑らかで柔らかい頬にキスをすると口元に笑みを浮かべて踵を返されました。ですがすぐにあ…とふり返り、ヴィンセントの顔を見ながら話しかけます。

「あぁそうだ…ヴィンセント、後ほど私の書斎に来てくれるか?」
「…は」

そう告げるとカツカツカツ…とヒールの音を響かせて食堂を出て行かれました。
シャルロット様は頭上で交わされる二人のやり取りを追っておりましたが、ヴィンセントの方を小首を傾げて覗き込みます。

「なんですか?」
「ヴィー何かしたの?」
「今日は姫様の相手しかしてません」
「そう?じゃあお仕事の話かしら。…いいなぁヴィーは」
「は?」
「だってお兄様とずっと一緒に居られるんだもの」
「仕事上のパートナーですからね」
「私もずっとお兄様と一緒に居たわ」
「…ブラコンですね」
「お兄様は世界で一番かっこよくて素敵なんですもの!当たり前よ!」
「…兄離れできるように頑張りましょうね」
「お兄様以上に素敵な方なんて居るのかしら…」
「姫様、男性に対するハードルめちゃめちゃ高くなってますよね」
「そうねぇ…。いつか素敵な殿方と夢のような恋が出来る日が来るのかしら」
「その場合は頑張って社交界パーティーに出るしかないですね。だからダンスレッスンが必要なんですよ」
「…分かったわよ、明日もちゃんと頑張るわ」
「珍しく素直ですね」
「一言余計よ」
「…失礼いたしました。それでは姫様もお部屋に戻りましょうか」

ヴィンセントに促されてシャルロット様は立ち上がると、目の前に差しだされた手を取って皆にごちそう様でしたと一言告げるとヴィンセントと共に食堂をあとにしたのでした。
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