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溺愛道の教え、その11 真実の愛は無敵の基本を忘れるべからず

溺愛道の教え、その11 真実の愛は無敵の基本を忘れるべからず⑧

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 ほしいままに貪りたいのを抑えているとみえて、ぴくりともしない腰に足をからめて急かす。それより手っ取り早く迎えにいっちゃえ、とばかりに自ら尻たぶを広げた。

「まったく、そなたの性根が据わっていることといったら脱帽する」

「へへ、チュウもおらい、っと」

 じわじわと攻め入ってこられるなかで交わすくちづけは、互いに対する愛しさも相まって、砂糖菓子に蜂蜜をこってり塗ったように、とびきり甘い。ただし屹立が深みに到達するのに先立って舌と舌で睦み合えば、ときめくあまり秘道が狭まって、ニッチもサッチもいかなくなるのが玉に瑕だが。
 
 ところで番いおおせるまで秒読み段階に入った折も折、単騎、草原を駈ける姿があった。手綱を取るのはジリアン。

 ──従兄殿とハルちゃん、やけに遅いなあ。村に戻る途中で何か問題が発生したのかも、ということで、ひとっ走り様子を見にいってこようっと。

 そう、親切ごかしに村長むらおさに掛け合って村一番の駿馬しゅんめを借り受けたのだ。もちろん、おためごかしにすぎなくて本当の目的は別のところにあった。
 やせ我慢を張り合ったすえに元の鞘におさまったからには辛抱たまらずそのへんで乳繰りあっているに違いない→邪魔をするのが僕の使命→いざ、行かん! と、まあ野次馬根性丸出しの三段論法に基づいてのこと。
 しかも羅針盤がそこを指しているように、ぽつりと在る木立めざしてまっしぐらに馬を駆るあたり、

「苦心惨憺、イチモツがずっぽしの大事な場面を台無しにしてやるんだ、ひっひっひっ」
 
 よくも悪くも血族の勘が働いたのだ。
 
 かたや、イスキアは悪魔の哄笑を聞いたように感じて総毛立った。ひとまず中断して場所を移すのが正解、と第六感が告げるものの、それは酷というもの。
 よわい三十にしての初体験は、声がれるまで素晴らしいと繰り返しても言い尽くせないくらい素晴らしい。
 内壁、それ全体が意思を持ったようにしなしなとまといついてきて、縁起でもないが、暴発の二文字が脳裡をよぎるほどの快感を味わっているさなかなのだから。

「ねんごろにもてなしを受けているというのに困るとは、贅沢な悩みだ。万一、道なかばで陥落することがあっても嗤ってくれるな」

「一回や二回、失敗してもくよくよしない。おれ、何度でも再挑戦につき合うよ?」

 呼吸いきが合いはじめて、コツさえ摑めばめきめきと上達する。すなわち愛の賜物だ。花筒が陽物になじんで、一ミリ、また一ミリとつながりが深まっていく。
 そして名実ともに初恋が成就する瞬間が、ついに訪れた。和毛にこげが双丘をかすめて根元まで埋没したと物語る。

「ううむ。〝皿〟がうれし涙に濡れそぼるやもしれぬ」

「はあ……イスキアので、おなかいっぱい」

 試み程度の抽挿に草のしとねがしだかれるのと相前後して、馬用の鞭が枝葉をかき分けた。

「従兄殿とハルちゃん見ーっけ!」

 イスキアが凍りついたのに反して、ますます陽根はいきり立つ。

「おやおやあ、領主さまともあろう御方が野天で事におよぶとは、なんたる破廉恥、なんたるエンガチョ、憤死ものに嘆かわしい」
 
 にやにや顔をわざとらしく馬のたてがみに伏せるさまに、冗談抜きに殺意を抱いた。イスキアは淫らに収縮する花芯に素早くマントをかぶせると、馬上めがけて飛礫つぶてを打った。

「おのれ、即刻ぬるがよい! さもなくば貴様の〝皿〟を粉々に砕いて羊の餌にしてくれる……うっ!」

「羊は賢いから、よけて通ると思、う……あ、ん……奥のほう、どぴゅって……熱いのが、弾けた……」
 
 かくして闖入者ちんにゅうしゃの執念が実って、脱・童貞ならびに処男喪失はちょっぴり残念な結果に終わった。
 その後、池のほとりを舞台にイスキア対ジリアンによる修羅場が演じられたことは言うまでもない。

 余談だが、ある種の生き物は成長する過程において脱皮を繰り返す。実は〝皿〟にも似通った性質がそなわっていた。筆おろしをすませたのを機に、より乾きに強いものへと生え変わる──という。

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