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悪ふざけ

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「すっかり遅くなったな」


自習室での学習を終えた時、夜9時を回っていた。
高校三年生の村田は同じく学習を終えた木村と一緒に居た。


塾は住宅街にあるため、周辺でたむろすることは禁止されている。
なので二人は5分程歩いて近くの公園に行き、束の間の休息を得る。


それが二人の日常だ。


「帰ってからもやるんだろ?」
「まぁな」
「だよなぁ。俺もまだ少し不安だし」


なんて事のない会話だ。勉強詰めになるとはいえ、それだけでは息がつまる。
たった10分友人と休憩したからといって、悪い結果にはならないと思う。


「最近楽しいことある?」
「いや、無いな。受かって初めて楽しくなるよ」
「はは」


クラスの中には、
もう受験を終えたり端から受験しないやつも多くいる。


彼らの楽しそうな最後の高校生活を見ていると、
少し虚しい気持ちになるのも無理はない。


そんな感傷に浸っていた時、隣にいる木村が手を振った。


「お~い。こっちこっち!」
「え?だれ?」


木村は離れたところにいる友人を呼ぶかのように、
手を振り、声を上げた。


しかし、その目線の先には誰もいない。
視力云々の問題ではないし、この公園は街灯も多くよく見える。


一瞬、木村がおかしくなったと思った。
勉強のしすぎで幻覚が見えていると。


「お前、誰に向かって言ってるの?」
「え?あそこにいるだろ?俺の友達」


あまりに恐ろしい返答に絶句していた。
あんぐり口を開け固まる俺を見て木村は吹き出した。


「え?」
「冗談だよ冗談。ドッキリ」
「は?」
「怖かった?」


木村は腹を抱えて笑い出す。
少しムッとしたが、釣られて笑ってしまう。


きっとこいつなりに俺を楽しませようとしてくれたんだろう。
やり方はいささか乱暴だが、今はありがたい。


「笑わせてもらったよ。そろそろ行こう」
「夜は長いからな」


ベンチから立ち上がり、
近くに止めてある自転車に跨ろうとした時だった。










「僕のこと見えてるんだね」


突然体が動かなくなった。
金縛りとは違う。本能的に動けない。蛇に睨まれた蛙のよう。


目の前には同じくらいの背丈をした何かが立っていた。
そいつは頭がパンパンに膨れ上がっていた。


バランスボール大の顔はところどころ膿が出ていて、
髪の毛はまばらに伸びていて言葉を出すたびに泡を吹いている。


僕らはそれを見たまま動けなくなっていた。


「ウレジィナァァ。ト、トモダヂガホジガッッダンダァァ」
顔半分をばっくりと口を開ける。腐った臭いが広がる。


勉強をし過ぎたんだ。それできっと幻覚を見ているんだ。
こんなの幻覚に決まってるよ。
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