4 / 37
ひとつちょうだい
しおりを挟む
2月15日。
恋が広がる1日も収束を迎え、
男二人でチョコを頬張るなんて惨めなことこの上ない。
「ひとつちょうだい」
「ん」
ほとんど無言でチョコを手渡す。
渡したところでため息。
食べたところでため息。
小学校と中学校はバレンタインにお菓子を持ってくるのは禁止されていた。
高校に上がり、そういう縛りは消え2月14日に希望を抱くのは悪いことだろうか。
高校2年生の二人は、
バレンタインが終わり安売りしているチョコレートをコンビニで購入した。
舐めているのはチョコか心の傷か。
どちらにせよ噛み締めていることには違いない。
「それもひとつちょうだいよ」
「ん」
先ほどと全く同じやりとりを入れ替わりで行う。
今度も同じく無言で頬張り、ため息をつく。
曇天、今にも降りそうな空模様。
いやここは雪でも降ってくれないだろうか。
せめてこれ以上惨めにしないでほしい。
すると、一粒の雪が学生服に落ちた。
「雪だ」
「積もるかな」
「積もってくれ~。学校休みて~」
積もってくれたら、少しは楽しくなるだろうか。
二人で空を見上げる。
「ひとつちょうだい」
「え?」「え?」
お互いではない、誰かに言われた。
目の前を見ると50代くらいの男性がいた。
ホームレス、ではなさそうだ。
綺麗な身なりとは言えないが、汚いわけでもない。
男性はもう一度言う。
「ひとつちょうだい」
他人にそんなことを言われ動揺するが、
その場の空気に負けてひとつ渡す。
「ありがとうなぁ。何個もあっても仕方ないからなぁ」
貰っておいてそんなこと言うのか。
男性はチョコレートを頬張ると、にんまりといった表情で声もなく笑う。
とても不気味な顔だ。
半開きで笑う口の中はよだれが糸を引いている。
「そっちのお兄ちゃんも、ひとつちょうだい」
「いや、僕はもう食べちゃって」
友人は、空になった袋を振り中身がないことを示す。
「ひとつちょうだい」
「だからもう無いんですよ」
「独り占めをする気だな」
男性はそう言うと怒ったような表情を見せ、
次にゴキゴキと音を鳴らすとそのまま180度首を縦に回転させた。
ギョロギョロとした目は焦点があってなく、
ばっくりと開いた口からは獣のような牙が見える。
明らかに人間ではなかった。
吐き気を模様す口臭と恐ろしい形相。
動くことができない、息もできない。
「ヒ、ヒトツチョウダイ」
目を逸らすこともできない。
恐怖で何もできない。
「ジ、ジジ、ジンゾウ、ジンゾゾウチョウダイ。フタツアッテモ、ショウガナイデショ」
ジンゾウ?腎臓と言ったのかこの化け物は。
化け物は友人の腹をガッと掴むと、またニンマリと笑った。
友人の叫び声で我に返った。
化け物を背にして一心不乱に走る。
苦しそうな友人の手を引いて、逃げる。
雪はいつの間にか雨に変わっていた。
恋が広がる1日も収束を迎え、
男二人でチョコを頬張るなんて惨めなことこの上ない。
「ひとつちょうだい」
「ん」
ほとんど無言でチョコを手渡す。
渡したところでため息。
食べたところでため息。
小学校と中学校はバレンタインにお菓子を持ってくるのは禁止されていた。
高校に上がり、そういう縛りは消え2月14日に希望を抱くのは悪いことだろうか。
高校2年生の二人は、
バレンタインが終わり安売りしているチョコレートをコンビニで購入した。
舐めているのはチョコか心の傷か。
どちらにせよ噛み締めていることには違いない。
「それもひとつちょうだいよ」
「ん」
先ほどと全く同じやりとりを入れ替わりで行う。
今度も同じく無言で頬張り、ため息をつく。
曇天、今にも降りそうな空模様。
いやここは雪でも降ってくれないだろうか。
せめてこれ以上惨めにしないでほしい。
すると、一粒の雪が学生服に落ちた。
「雪だ」
「積もるかな」
「積もってくれ~。学校休みて~」
積もってくれたら、少しは楽しくなるだろうか。
二人で空を見上げる。
「ひとつちょうだい」
「え?」「え?」
お互いではない、誰かに言われた。
目の前を見ると50代くらいの男性がいた。
ホームレス、ではなさそうだ。
綺麗な身なりとは言えないが、汚いわけでもない。
男性はもう一度言う。
「ひとつちょうだい」
他人にそんなことを言われ動揺するが、
その場の空気に負けてひとつ渡す。
「ありがとうなぁ。何個もあっても仕方ないからなぁ」
貰っておいてそんなこと言うのか。
男性はチョコレートを頬張ると、にんまりといった表情で声もなく笑う。
とても不気味な顔だ。
半開きで笑う口の中はよだれが糸を引いている。
「そっちのお兄ちゃんも、ひとつちょうだい」
「いや、僕はもう食べちゃって」
友人は、空になった袋を振り中身がないことを示す。
「ひとつちょうだい」
「だからもう無いんですよ」
「独り占めをする気だな」
男性はそう言うと怒ったような表情を見せ、
次にゴキゴキと音を鳴らすとそのまま180度首を縦に回転させた。
ギョロギョロとした目は焦点があってなく、
ばっくりと開いた口からは獣のような牙が見える。
明らかに人間ではなかった。
吐き気を模様す口臭と恐ろしい形相。
動くことができない、息もできない。
「ヒ、ヒトツチョウダイ」
目を逸らすこともできない。
恐怖で何もできない。
「ジ、ジジ、ジンゾウ、ジンゾゾウチョウダイ。フタツアッテモ、ショウガナイデショ」
ジンゾウ?腎臓と言ったのかこの化け物は。
化け物は友人の腹をガッと掴むと、またニンマリと笑った。
友人の叫び声で我に返った。
化け物を背にして一心不乱に走る。
苦しそうな友人の手を引いて、逃げる。
雪はいつの間にか雨に変わっていた。
1
あなたにおすすめの小説
(ほぼ)1分で読める怖い話
涼宮さん
ホラー
ほぼ1分で読める怖い話!
【ホラー・ミステリーでTOP10入りありがとうございます!】
1分で読めないのもあるけどね
主人公はそれぞれ別という設定です
フィクションの話やノンフィクションの話も…。
サクサク読めて楽しい!(矛盾してる)
⚠︎この物語で出てくる場所は実在する場所とは全く関係御座いません
⚠︎他の人の作品と酷似している場合はお知らせください
意味が分かると怖い話(解説付き)
彦彦炎
ホラー
一見普通のよくある話ですが、矛盾に気づけばゾッとするはずです
読みながら話に潜む違和感を探してみてください
最後に解説も載せていますので、是非読んでみてください
実話も混ざっております
怪異の忘れ物
木全伸治
ホラー
千近くあったショートショートを下記の理由により、ツギクル、ノベルアップ+、カクヨムなどに分散させました。
さて、Webコンテンツより出版申請いただいた
「怪異の忘れ物」につきまして、
審議にお時間をいただいてしまい、申し訳ありませんでした。
ご返信が遅くなりましたことをお詫びいたします。
さて、御著につきまして編集部にて出版化を検討してまいりましたが、
出版化は難しいという結論に至りました。
私どもはこのような結論となりましたが、
当然、出版社により見解は異なります。
是非、他の出版社などに挑戦され、
「怪異の忘れ物」の出版化を
実現されることをお祈りしております。
以上ご連絡申し上げます。
アルファポリス編集部
というお返事をいただいたので、本作品は、一気に全削除はしませんが、ある程度別の投稿サイトに移行しました。
www.youtube.com/@sinzikimata
私、俺、どこかの誰かが体験する怪奇なお話。バットエンド多め。少し不思議な物語もあり。ショートショート集。
いつか、茶風林さんが、主催されていた「大人が楽しむ朗読会」の怪し会みたいに、自分の作品を声優さんに朗読してもらうのが夢。
百物語 厄災
嵐山ノキ
ホラー
怪談の百物語です。一話一話は長くありませんのでお好きなときにお読みください。渾身の仕掛けも盛り込んでおり、最後まで読むと驚くべき何かが提示されます。
小説家になろう、エブリスタにも投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる