闇に飲まれた謎のメトロノーム

八戸三春

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第五章

ヘリコプターの救援

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その瞬間、何処からか無数のプロペラ音が響き渡った。



「何だ……ヘリコプターか?」空が一瞬手を止めて空を見上げた。音の方向は霧の向こうから聞こえてくる。



「来たぁぁあ!!ブラボー!!」



アリスも射撃を続けながら、嬉しそうに叫んだ。



霧の向こうから現れたのは、一機ではなく複数のヘリコプターだった。そのうちの一機が低空飛行で近づき、機体の横に取り付けられた強力なスポットライトが異形たちを照らし出した。ライトの眩しい光に一瞬ひるむような動きを見せた異形たちに向かい、ヘリコプターから機銃の激しい銃撃が放たれた。



「救援が来たぞ!これで形勢逆転だ!」空が叫びながら、再び銃を構えて応戦した。



機銃の音が森全体に響き渡り、異形の薄い膜を貫いて赤黒い液体が周囲に飛び散る。ヘリコプターの火力は圧倒的で、異形たちの動きが徐々に鈍っていくのが見て取れた。



「やった!これで勝てる!」アリスも歓喜の声を上げながら、残りの異形に向かって射撃を続けた。



一方、ユキは木陰に隠れながらその光景を見守っていたが、その表情はどこか不安げだった。彼女は再び頭を押さえ、小さな声で何かを呟いている。



「ユキ、大丈夫か!」空が一瞬振り返り、彼女に呼びかけた。



ユキはふらつきながら立ち上がり、震える声で答えた。「私……大丈夫。でも……頭の中が……おかしい……」



その言葉を聞いたアリスが急いで駆け寄り、ユキの肩を掴んだ。「しっかりして、ユキ!私たちがここにいるわ!」



しかし、ユキの瞳が再びピンク色に輝き始め、彼女の動きが一瞬止まる。そして、低い声で呟いた。



「……近づいている……もっと大きなものが……」



その瞬間、ヘリコプターのパイロットから通信が入った。「こちらBAチーム、目標の殲滅を確認中。しかし……複数の複数の反応が接近中こちらにも支援を要請する!」



「またかよ……!」空が叫び、銃を再装填しながら周囲を見渡した。



異形の小型個体が全て撃破され、辺りが静寂に包まれたかと思った瞬間、地響きのような音が遠くから近づいてきた。霧の中で複数の影がゆっくりと動いているのが見える。



「来るぞ……これまでのどれよりも多い……!」アリスが警戒しながら銃を構えた。



霧を切り裂いて姿を現したのは、これまでの異形の量をはるかに超える異形の群れだった。小型から大型まで多種多様な形状の個体が混ざり合い、地面を埋め尽くすように動いていた。その中央には、他の異形とは比較にならない巨大な存在が、地を揺るがすような足音を立てながら進んでくる。



「こんなのどうやって相手にするのよ!」アリスが絶望的な声を上げた。



「わからない!でも、やるしかない!」空は銃を構えながら、機銃を放つヘリコプターを見上げた。「援護を頼む!できる限り撃ちまくってくれ!」



ヘリコプターは次々と攻撃を開始し、空中からの銃撃が群れを切り裂くように炸裂した。しかし、異形たちはまるでそれに意を介さないかのように動きを止めず、徐々に3人に迫ってきた。



するとその時、上空から笛を鳴る音が聞こえると同時に巨大な閃光が辺りを包んだ。それは爆撃のような威力を持つ光弾で、異形の群れに直撃した瞬間、凄まじい爆発音と共に地面が揺れた。爆発の中心にいた異形たちは跡形もなく吹き飛ばされ、残されたものは焦土と化した地面だけだった。



「なんだ今の!?援軍か?」空が驚きの声を上げた。



上空を見上げると、ヘリコプターとは別方向から現れた大型の無人航空機が次々と同じような爆撃を繰り返し、異形の群れを狙い撃ちにしていた。その正確な攻撃と圧倒的な火力は、まるで戦場そのものを制圧するかのようだった。



「新しい支援部隊が来たみたいね。でも、あれは普通の軍用機じゃない……」アリスが焦点を絞りながら呟いた。



「確かに……あの機体、見たことがない形だ」空も不審そうに無人航空機を見つめた。「どこから来たんだ?」



その時、通信機から女性の声が響いた。



「こちらBC01、神薙くん。私だよ後ろ見て」




「……後ろ?」空は驚きの表情で振り返った。そこには、一機の大型輸送ヘリが静かに降下してきていた。ヘリの側面には見覚えのあるエンブレムが描かれている。通信機越しの女性の声はどこか懐かしく、同時に緊張を漂わせていた。



「まさか……」空が低く呟きながら、そのヘリから降り立つ人影を見つめた。



霧の中から現れたのは、黒いジャケットに身を包んだ女性だった。短い黒髪が風になびき、鋭い眼差しが状況を一瞬で見極めているかのようだった。手には高性能なライフルを携えており、周囲に漂う緊張感をものともしない落ち着いた立ち振る舞いだった。



「神薙くん、危なかったね。私が居なかったらどうなったやら」女性は冷静な口調で言いながら、空に向けて歩み寄る。



「レ、レナ!?どうしてここに!?」空は驚きの表情を浮かべながら問いかけた。



「事情はあとで説明するわ。それより、早くヘリ乗って基地へ向かうわ。ここに長居していると、さらに厄介な状況になる可能性があるわ。」レナは鋭い目つきで周囲を警戒しながら言った。



空は一瞬戸惑いを見せたが、状況の深刻さを理解してすぐに頷いた。「分かった」



「へー、ヤリ女としてはいい手伝いじゃないの?」とアリスが軽く皮肉を混ぜながらも安堵の笑みを浮かべた。



「アリスちゃん、後で面談室ね。さあ、急いで」とレナが手を差し伸べると、空とアリスはユキを支えながらヘリに向かって歩き出した。レナの冷静な態度と的確な判断が、彼らに一瞬の安心感を与えた。



ヘリに乗り込むと、内部には最新鋭の装備が整っており、複数の兵士が武器を点検していた。レナは指揮官のように振る舞い、素早く指示を出していた。



「彼女がユキね?」レナが静かに尋ねる。



「そうだ。彼女が……何かおかしいんだ。瞳がピンク色に光ったり、異形に関することを話したり……説明がつかないことばかりだ」と空が答えた。



「なるほどね。その兆候はすぐに解析が必要ね」とレナが冷静に言い、ユキに優しい視線を向けた。「怖い思いをしたわね。でも大丈夫、ここからは安全だから。」



ユキはかすかに頷きながら、「……ありがとう。でも、もう大丈夫です」と安心そうに呟いた。



レナはその言葉を重く受け止めた様子で、「詳しく調べるわ。君たちはしばらく休むべきね。ここから先は私たちが対応する」と力強く言った。



ヘリは異形の群れが残された地帯を飛び越え、安全な拠点へと向かい始めた。しかし、窓の外にはまだ動く異形の影がちらついていた。



「終わりじゃないな、これは」と空が低く呟いた。



「そうね。これが始まりである可能性が高い」とレナが静かに答えた。



ヘリコプターの音が徐々に遠ざかり、地平線に薄く光が差し始める中、彼らは荒れ果てた地帯を後にした。空、アリス、そしてユキはそれぞれ複雑な思いを抱えながらも、一時的な安堵を感じていた。しかし、レナの言葉が彼らの心に影を落としていた。
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