闇に飲まれた謎のメトロノーム

八戸三春

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第五章

バリケードに囲まれた施設

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ヘリの中で過ごした数十分は、緊張とわずかな安堵が交錯する不思議な時間だった。疲労の中にも、異形との遭遇やユキの異変に対する不安が全員の胸に影を落としていた。外から聞こえるプロペラ音だけが一定のリズムで響き、彼らの心を落ち着かせるのには程遠い。



ついにヘリが基地へ近づくと、周囲の景色が変わり始めた。広大な森林を抜けた先に現れたのは、異形対策のために建設されたバリケードに囲まれた施設だった。高いフェンスと監視塔が見える敷地は、まるで小さな要塞のようだ。外周には砲台が並び、侵入者を徹底的に排除する準備が整えられているのが一目でわかった。



「見ろ……あれが基地か?」アリスが窓の外を見ながら低く呟いた。



「まるで世界が終わった後の避難所みたいだな」と空が答えた。その声には安堵よりも、どこかやりきれない気持ちが滲んでいた。



「これだけの設備があっても、異形が押し寄せてきたらどこまで持つか……分からないわね」とアリスが続けた。



「今はそれを考えるより、ここで何ができるかを考えるべきだろう」と空が静かに返す。窓の外に広がる異形対策施設を見つめながら、彼は拳を握りしめた。



ヘリが着陸すると、エンジン音が徐々に静まり、機内にいた全員が出口へと向かった。外では防護スーツを着たスタッフが彼らを出迎え、迅速に誘導を始めた。



「こちらへどうぞ。検査とブリーフィングの準備が整っています」と自衛隊の一人が冷静に声をかける。



ユキは少し戸惑いながらも、空とアリスに支えられて歩き出した。レナは3人を見渡し、「すぐに状況を整理して対策を考えるわ。私が案内するからついてきて」と短く指示を出した。



彼らは施設内へと足を踏み入れた。中は近未来的なデザインで統一され、清潔で効率的な空間が広がっている。廊下の壁にはさまざまなモニターが埋め込まれ、異形に関するデータや映像が次々と映し出されていた。



「すごいな見た目とは裏腹に……完全に異形との戦争を想定した場所だ」と空が感心したように言った。



「ここは最先端の設備が整っているけど、それでも全てが未知数よ」とレナが答える。「私たちが直面している脅威は、これまでのどんな戦争とも違う」



彼らは検査室に案内され、それぞれ簡単な身体チェックを受けた。ユキは特に詳しく調べられたが、医療スタッフたちの表情は硬く、結果について多くを語ろうとはしなかった。



検査が終わると、レナが再び彼らを会議室へと案内した。そこには大きなモニターと作戦図が設置されており、複数の軍事関係者が待機していた。



「まず、今回の異形の特徴と行動パターンを整理する。そして、ユキの状態についても話すわ」とレナが説明を始める。



モニターに映し出されたのは、先ほど彼らが遭遇した異形たちの映像だった。スタッフが解析結果を報告する中、レナが静かに続けた。



「今回の異形は以前にも増して多様化している。小型から大型まで、これまで確認されていないタイプが多数含まれていたわ。そして、彼らは単なる生物ではない可能性が高い。何かしらの意志や目的が感じられる。」



空はその言葉に眉をひそめた。「意志?それは……どういうことだ?」



「詳細はまだ分からないけれど、まるで彼らが何かに操られているかのような動きが見られるの」とレナが答えた。



「操られている……?」アリスも驚いたように呟いた。



ユキは静かに座りながら、その会話を聞いていた。彼女の瞳に一瞬不安がよぎったが、すぐにそれを隠すように目を伏せた。



「そして、ユキの状態についてだけど……彼女は異形と何かしらの接触があった可能性が高いわ」とレナがユキに視線を向けた。



「どういう意味ですか?」ユキが小さな声で尋ねる。



「君の中で何が起きているのか、まだ正確には分からない。ただ、一部のデータでは君の脳波に異常が見られた。まるで外部からの信号を受信しているかのような波形だったわ」とレナが慎重に説明する。



「外部からの信号……?」空はユキを見つめながら驚きを隠せない様子だった。



「もしかすると、彼女は異形と何らかの形でリンクしているのかもしれない。それが偶然なのか、それとも意図的なものなのかはまだ不明よ」とレナが続けた。



その場に緊張が走る中、ユキは戸惑いながらも静かに言った。



「私……自分がどうなっているのか分からない。でも、何かが私の中にいるような気がして怖いんです。」



その言葉に、空とアリスは彼女を支えるように寄り添った。レナも冷静な表情を崩さずに言った。



「大丈夫よ、ユキ。私たちが必ず解明してみせる。そして、君を守る方法も見つけるわ。」



その瞬間、モニターに緊急警報が表示され、施設内の照明が赤く点滅し始めた。スタッフたちが慌ただしく動き始め、緊張感が一気に高まった。



「どうした?」空が身構える。



「外部で異形の反応を検知!群れがこちらに向かっている!」スタッフの一人が叫ぶ。



「なんてこと……!準備を急がなきゃ!」レナが即座に指示を出した。



空とアリスもすぐに立ち上がり、武器を手に取った。ユキは動揺しながらも、震える手で懐中電灯を握りしめた。



「またかよ……休む間もないってわけか」と空が苦笑しながら言った。



「いいえ、ここで迎え撃つのよ。全力でね」とレナが冷たい決意を込めて答えた。



施設全体が戦闘態勢に入る中、彼らは再び異形に立ち向かうため、準備を整え始めた。



施設内の警報が鳴り響く中、緊張がピークに達していた。赤いランプが廊下を照らし、軍事スタッフや研究者たちが次々と指示を受け、対応に追われている。空、アリス、そしてレナは、戦闘準備のために武器庫へと急いだ。

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