闇に飲まれた謎のメトロノーム

八戸三春

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第五章

ユキの危機

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「ユキ!」空が叫びながらレオナを一瞬だけ振り返る。その隙を見逃さず、レオナは素早く空に狙いを定め、数発の銃弾を放った。



「くそっ!」隙を作れず、空は咄嗟に身を伏せたが、弾丸が右肩をかすめ、鋭い痛みが走った。



「空、大丈夫!?負傷してるじゃない!」アリスが叫びながら駆け寄ろうとしたが、巨大な異形の攻撃がそれを許さない。



「構うな!それより、ユキが!」空は痛みを押し殺しながら叫んだ。



弾丸が降り注いだその場所から、煙と土埃が晴れると、ユキは両手で頭を押さえながら屈むいていた。しかし、ユキの周囲には異様な静けさが広がっていた。地面には無数の弾痕が刻まれているものの、彼女自身には一切の傷が見当たらない。まるで弾丸がそのユキの身体に触れた瞬間に弾かれていたようだった。



「……何だ、これ……?」ユキ自身もその状況に気づき、驚きの声を漏らす。



「ユキ、大丈夫なのか!?」空が声を張り上げながら、肩の痛みに耐えて立ち上がる。



ユキは震える手を握りしめ、「大丈夫……、生きてる……?」と呟いた。その瞳は全くピンク色に光らず、元の透明な色のままだった。



しかし、その異様な状況にレオナが微笑を浮かべながら口を開いた。「やっぱり……君は特別ね、ユキ。私たちの側に来れば、その力を完全に制御できるようになるわよ」



「何を言ってるの?」ユキが困惑しながら問いかけた。



「君は選ばれている。私たちの一部になれば、この無意味な争いも、恐怖も終わる。君の力は、人間の中に収まるものじゃない……」レオナはまるで甘い誘惑のように静かに語りかけた。



「そんなわけない!」空が叫び、レオナに銃口を向けた。「ユキはお前たちの道具じゃない!俺たちは必ずお前を倒して、ユキを守る!」



「守る?空……まだ分からないの?彼女を守るには、私たちの側につくしかないのよ」とレオナは冷ややかに返す。



その瞬間、巨大な異形が再び動き出し、機関銃の追撃が再開された。アリスは再びその攻撃を避けながら叫ぶ。「空!時間がないわ!あの少女と大男を止めないと、ここは持たない!」



「分かってる!だが……ユキを安全な場所に退避させるのが先だ!」空は痛みを押し殺しながら叫び、ユキに向き直る。「ユキ、聞け!今すぐここを離れるんだ!」



「でも……私、あの子の声が……まだ聞こえるの。私の中に何かが……」ユキは胸を押さえながら苦しげに言った。



「いいから行け!ここにいると危険だ!」空がユキの肩を掴み、必死に説得する。



その時、アリスが叫んだ。「空!このままじゃ防衛ラインが突破される!何とかして!」



「分かった……アリス!ユキを頼む!俺が奴らを引きつける!」空は覚悟を決め、レオナと巨大な異形に向かって歩み寄った。



「待って、空!」ユキが手を伸ばそうとしたが、アリスが彼女を強く抱きしめ、「彼を信じなさい!」と言い放った。



空は銃を構え、レオナに目を向けた。「レオナ……お前を止める。どんな手を使ってもな!」



レオナは冷たい笑みを浮かべ、「いいわ、来なさい。あなたがどこまでやれるか見せてちょうだい」と呟いた。



その瞬間、空は全力で走り出し、巨大な異形とレオナに向けて銃弾を浴びせた。アリスはユキを安全な場所に退避させるため、必死にその場を離れた。



基地全体が崩壊の危機に瀕する中、空は一人で異形たちに立ち向かう。彼の中にはただ一つの思いがあった――「必ず任務を遂行する」という。空は前進を続けながら、弾丸を浴びせ続けた。



周囲の混乱が激しさを増す中、彼の視界には巨大な異形とレオナが立ち塞がっていた。異形の大男は機関銃を再び構え、火力の嵐を吹き荒らす。しかし、空はその攻撃を遮蔽物を利用して巧みにかわしながら、わずかな隙を狙って反撃した。



「レオナ!お前を止めるためなら、俺は何だってする!」空の叫び声が銃声に混じって響いた。



レオナは冷静に空を見据えながら微笑む。「あなた一人で?無駄よ、空。私たちの力は、あなたたちが相手にできるものじゃない。」



彼女の声が終わる前に、空は遮蔽物から飛び出し、レオナに向かって突進した。その目は、かつての仲間としての情を封じ込めた決意に満ちていた。



「お前がどう変わったとしても、俺には関係ない!」空は銃を撃ち込みながら叫んだ。



しかし、レオナはその弾丸を驚異的な反応速度で避けると、片手で空を押しのけるようにして反撃を開始した。彼女の動きは異形としての力を存分に活かしたもので、人間の空には到底追いつけない速度だった。

一方、アリスとユキは避難ルートを走っていた。



「ユキ、大丈夫?しっかりついてきて!」アリスが振り返りながら声をかけた。



ユキは息を切らしながら頷く。「……ごめんなさい、アリス。私が……」



「いいから謝らないで!あなたは何も悪くない!とにかく安全な場所に行きましょう!」アリスは強い口調で言いながら、ユキを引っ張るようにして進んだ。



しかし、その時、ユキが立ち止まり、耳を押さえた。「待って……声がまた聞こえる……!」



「何の声!?今はそんなこと――」アリスが言葉を切り、ユキの顔を見た。



ユキの瞳が再びピンク色に輝き始めていた。その光は以前よりも強く、まるで彼女自身が何かに目覚めようとしているかのようだった。



「ユキ……?」アリスは不安げに呼びかけた。



「……私、分かった……この力……私が使わなきゃいけないんだ……」ユキの声は震えていたが、どこか確信を伴っていた。



「そんなのダメ!あなたが何かする必要なんてない!」アリスがユキの肩を掴んで強く言った。



「でも、空さんが……空さんが戦ってる……私が……助けなきゃ……」ユキは涙を浮かべながらアリスを見つめた。



アリスは一瞬迷ったが、すぐに頷いた。「……分かった。でも、無理はしないで。私も一緒に行くから!」



ユキは小さく頷き、2人は再び戦場へと引き返すことを決意した。



その頃、空はレオナと一対一の激しい戦闘を繰り広げていた。



彼は右肩の痛みを無視しながら、遮蔽物を使って巧みに反撃を繰り返していた。しかし、レオナの反応速度と力は人間離れしており、彼の攻撃はほとんど通用していなかった。



「さすがに疲れてきたんじゃない?」レオナが冷たく言った。「私の力を甘く見た罰よ」



「……罰だろうが何だろうが……俺はお前を止める……!」空は息を荒げながらも、銃を構え直した。



その時、基地全体が大きく揺れた。遠くの防衛ラインが崩壊し、異形の群れが一斉に侵入を開始していた。



「くそっ……!持ちこたえられないのか!」空が歯を食いしばった。



「空!」レナの声が響き渡った。
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