闇に飲まれた謎のメトロノーム

八戸三春

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第五章

レオナ対決

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一方、アリスは少女が放つ強大なエネルギーを警戒しながら、空に指示を出した。「空、私があの障壁を壊すから、隙を作ったらすぐに撃って。」



空は短く頷き、ピストルをしっかりと握り直す。「了解だ。ただ、あの力…どこまでやれるかは分からないぞ。」



アリスはエネルギーをさらに集中させ、全身から眩い光を放ち始めた。その光が水色の少女の障壁を照らすと、少女はわずかに首を傾げた。「面白い。どこまで届くのか見てみよう。」



アリスは全力で拳を突き出し、巨大なエネルギー波を放つ。その波が障壁に直撃し、激しい爆発音と共に光が弾けた。だが、障壁は揺らぐものの、完全に崩壊することはなかった。



「やっぱり、普通の力じゃ無理ね…!」アリスは歯を食いしばりながらもう一度力を溜め始めた。



その瞬間、ムラトが動いた。彼は高速で障壁に近づき、一瞬の隙をついて斬撃を放つ。刀の刃は障壁に食い込み、光が飛び散ったが、それでも完全には貫通しない。



「やれやれ、強情な壁だ。」ムラトが一歩下がりながらつぶやく。



エリザベスは口元に手を当てて笑い、「強情じゃなくて、完璧って言いたいんでしょ?」と軽く挑発するように言った。



空は再びピストルを構え、アリスに向けて叫ぶ。「お前が隙を作れれば、あとはこっちでやる!」



アリスは静かに頷き、再び拳に力を集め始めた。「今度こそ…!」



その時、水色の少女が冷静に手を上げると、障壁が一瞬消えたかと思えば、代わりに彼女の周囲に複数の闇の触手が現れた。それらはまるで意思を持っているかのように動き、攻撃の準備を整えている。



「なるほど、隙を狙うつもりね。でも、私が許すかしら?」少女は冷たく微笑むと、連射した弾丸が一斉に彼らに向かって襲いかかってきた。



…《本気で行かせてもらう》



ムラトの声が静かに響いた瞬間、彼の刀が淡い光を帯び始める。その輝きは次第に強さを増し、周囲の闇を押し返すようだった。その光景に空は一瞬見惚れるが、すぐにピストルを再び構え直し、隙を見逃さない態勢を取る。



「ムラト、それ本気モード?」エリザベスが口元に笑みを浮かべながら問いかける。



「当たり前だ。あいつがただの障壁で済むわけがない。」ムラトの声は冷静だが、その言葉には決意がこもっている。



アリスは隣で肩を並べる空に目を向けた。「この二人が全力を出すなら、私たちも引き下がれないわね。」



「当然だ。」空は短く答えると、水色の少女に鋭い視線を送る。「それにしても、この状況でまだ余裕そうなのが気に入らないな。」



水色の少女は無表情のまま、全員を順に見回した。彼女の目には何の感情も浮かんでおらず、その静けさが逆に戦場の緊張感を一層高めている。「結局、どれだけ足掻いても同じよ。あなたたちは私を越えられない。」



その言葉とともに、彼女の背後に巨大な黒い翼のようなエネルギーが現れた。それは彼女の存在をより圧倒的に見せつけ、周囲の空気を凍りつかせる。



エリザベスはその姿を見て、微笑んだ。「ベータとは違う個体だね」



「アリス、俺たちは後方から援護だ。お前が力を溜めている間、奴を引き付ける。」空が低く指示を出しながら、アリスに向かって短く頷いた。



アリスはその提案を受け入れ、深呼吸をしてエネルギーを集中させる。「分かったわ。でも、無理はしないで。あの子、ただのエネルギー体じゃない…もっと何かがある。」



「そんなこと、考えてる暇はない。」空が言い放つと同時に、水色の少女が手をゆっくりと上げた。



「なら、終わらせてあげる。」彼女の声が冷たく響くと、周囲の闇が一斉に動き始めた。空気が渦を巻き、彼女の周囲を覆い尽くす。



ムラトは一瞬の隙を逃さず、障壁に向かって刀を振り下ろした。その一閃は障壁に直撃し、衝撃音とともにエネルギーが弾ける。しかし、障壁はわずかに揺れるだけで、破れる気配を見せなかった。



「やっぱりそう簡単にはいかないか。」ムラトは歯を食いしばりながら再び構え直す。



エリザベスはムラトの隣に並び、鋭い笑みを浮かべる。「なら、もう少し力を合わせるべきかしらね。」



アリスはその隙にエネルギーを解放し、空へと合図を送った。「空、今よ!」



空はピストルを水色の少女に向け、連続で引き金を引く。弾丸は正確に飛び、水色の少女の体へと向かっていくが、彼女はわずかに手を動かすだけで空気を操作し、弾丸を全て防ぎ切った。



「効かない。」水色の少女は冷たい声でそう呟く。



だが、その瞬間、ムラトとエリザベスが同時に動いた。ムラトの刀が障壁を切り裂こうとする一方、エリザベスは鋭いステップで少女の背後を取ろうとする。アリスのエネルギー波が後方から援護の形で撃ち込まれ、空が再びピストルを連射した。



その全ての攻撃が、一斉に少女へと迫る。



「これで決める!」全員の声が重なる瞬間――



「遠慮なく行かせてもらう。」ムラトの声が鋭く響き、彼女は障壁を破るべく再び一歩踏み出した。その刀先には、彼女自身の気を凝縮したような輝きが宿り、一撃で突破する気迫がみなぎっていた。



エリザベスはその様子を静かに見守りつつ、アリスと空に目を向けた。「あなたたちも準備しておいたほうがいいわ。あの子は…ただの脅威じゃない。おそらく、この場で全てを終わらせるつもりよ。」



空は緊張した面持ちで頷き、ピストルを構えた。「分かってる。でも、ムラトの力でどれだけやれるか…。俺たちも動かなきゃ、いつまで経っても進めないだろう。」



アリスはその言葉に短く頷きつつ、自分の中に残るエネルギーをさらに高めていく。「ええ。でも、あの少女の力、想像以上に厄介ね。ただの障壁じゃない…おそらく、私たちの攻撃を無効化する術がある」



エリザベスは冷ややかな笑みを浮かべた。「なら、それを崩す方法を見つけるだけよ。」



水色の少女はそんな三人の会話を一切気に留めることなく、ムラトの動きを注視していた。その瞳は、まるで敵の意図をすべて読み取るような鋭い輝きを放っていた。



「来なさい。」少女は小さな声で告げたが、その言葉は戦場全体に響き渡り、挑発と取れるほどの余裕を感じさせた。



ムラトは障壁の前で一瞬静止し、深い呼吸を整える。そして、次の瞬間―― 轟音とともに、彼の刀が障壁に叩き込まれた。



衝撃が周囲に波及し、地面が激しく揺れた。しかし、障壁はびくともしないどころか、そのエネルギーがムラトを押し返そうと逆流を始めた。



「やはり硬いか…!」ムラトは歯を食いしばりながら押し返されないように踏ん張る。



その隙を突くように、水色の少女は手を軽く動かした。障壁がさらに巨大化し、ムラトの動きを完全に封じ込めようとする。



「くっ…!」ムラトが声を漏らした瞬間、横からアリスのエネルギー弾が飛び込んだ。



「今よ、ムラト!私が隙を作る!」アリスが叫び、強力なエネルギー波を放つ。その衝撃は障壁に激突し、一部がわずかに揺らぐ。



「ナイス援護だ!」ムラトはその一瞬の隙を逃さず、全力で刀を振り下ろした。次の瞬間―― 障壁が裂けるようにひび割れ、激しい光が迸った。



空はその隙にすかさずピストルを構え、裂け目を狙い撃つ。「これでどうだ!」



弾丸が障壁の内部に命中し、水色の少女の防御が徐々に崩れ始める。しかし、彼女は全く動揺することなく冷静に呟いた。



「悪くないわ。でも…」その瞬間、彼女の体からさらに強烈な暗黒エネルギーが噴き出し、全てを押し返した。



「ぐあっ!」ムラト、アリス、そして空はその衝撃で後方へと吹き飛ばされる。



「次はあなたたちの番」水色の少女の冷たい声が響く中、彼女の周囲のエネルギーが螺旋を描き始めた。それは、まるで次の一撃で全てを終わらせるかのような威圧感を伴っていた。



空はふらつきながら立ち上がり、アリスに声をかけた。「アリス、大丈夫か?」



アリスは肩で息をしながらも、笑みを浮かべて頷いた。「イテテ……骨折れたかも」



ムラトは刀を地面に突き立てて体勢を立て直しながら、再び構えを取った。「足がどうだろうと、絶対壁をぶち壊す」



全員さっきの衝撃で骨折、動きが鈍くなっていたが、それでも戦意は失われていなかった。敵はその隙を見逃すはずもなく、敵のMP5から放たれる銃弾が空気を切り裂き、周囲に激しい音を響かせた。空はアリスを庇うように前に出て、素早く障害物の影に隠れた。



「くそっ、こっちはボロボロなのに容赦ないな!」



アリスは手元に落ちていた金属片を拾い上げ、眉をひそめた。



「物資が底をついた。弾薬もない、武器もほとんど役に立たない。どうする、空?」



空は荒い息を整えながら、瞬時に周囲を見渡した。状況は最悪だ。遮蔽物は徐々に崩れ、敵は執拗にこちらを狙ってくる。何とかして状況を打開しなければ、全滅は免れない。



その時、機関銃を射撃するような音が響き轟音とともに、車の音が遠くから近づいてきた。
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