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第六章
Δ-07制圧任務
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エリア全体が、感染源ではなく“戦術上の障害物”として処理されていく。
ドローン部隊による熱源スキャンと空中マッピングが連動し、未確認個体を順次座標データとして隊員に送信。
戦術データリンク(TDL)によって、隊員たちは視界にHUD(ヘッドアップディスプレイ)情報を共有。
「次、座標F-12。ビル3階に複数体反応。規模は小。恐らく潜伏系」
「突入班、支援班を随伴して制圧。ガスグレネード装填、E-7構成で散布開始」
逃げ惑う人々、泣き叫ぶ子ども。
そのどれにも引き金は止まらない。
なぜなら――この作戦において、“無抵抗”は無関係だからだ。
感染の可能性がある者は、現場レベルで即時「除染処理」される。
それが、Δ-07制圧任務における絶対的ルールだった。
10:17、戦闘状況報告。制圧対象確認数 126名
、即時排除 92名、拘束保護 14名、不明 20名(潜伏または死亡未確認)
作戦指揮本部は、この状況を「予定通り」と評価。
ただし、G6-αの第3段階発症者とみられる個体が1体確認されており、
今後の戦況において変異体型戦術への移行が示唆されている。
午後、封鎖線はさらに強化され、空路を含むすべての出入り口が閉鎖。
東京という都市は、今や\\“監視・殲滅圏”\\と化していた。
そのなかで、少女たちは何を思い、何を選ぶのか――
まだ、誰も知らなかった。
10時42分、制圧任務群第2分隊は特異汚染区域Δ-07内、廃墟と化した一般住宅街にて戦術突入を開始した。
標的となったのは、老朽化した木造2階建ての住宅。
構造は単純、だが隠匿行動には適していた。周辺のスキャンでは体温反応は希薄で、通常の熱源センサーでは「無人」と識別されていた。
にもかかわらず、隊員の一人――伍長・片桐翔(かたぎり しょう)は、感覚的な違和感を覚えた。
「反応なし…? 嘘だろ、気配がありすぎる」
彼は、ベテランの第8普通科連隊出身。幾度となく都市型掃討戦を経験してきた。
靴底から伝わる微かな振動、空気の密度、静けさの“不自然さ”。すべてが警鐘を鳴らしていた。
「突入、ドア破壊」
先頭の機動隊員が、\\ブリーチングツール型カッター(BT-C7)\\をドアヒンジに当て、強制開錠。
ドアが軋みを上げて開くと同時に、5名の戦術班がクリアリングを開始した。
「一班、リビングクリア」
「二班、階段上クリア」
「三班、南側の和室――異常なし」
内部には生活感が残っていた。冷蔵庫には消費期限の切れた食材、ソファに散らばるぬいぐるみや児童用教科書。
明らかに“誰かがいた”形跡。しかし、姿はない。
片桐は、ふと足元の音の違いに気づいた。
通常より低音域に寄った反響音――床下に空洞がある可能性を示す。
「床板の異常発見、構造的に不自然。隠蔽工作の痕跡あり」
彼はすぐに匍匐姿勢になり、ライトを照射。
微細な切れ込みと、塗装でカモフラージュされた点検口らしき構造を発見した。
「バールで行ける」
躊躇なく、片桐が多機能カーボンバールを突っ込み、隙間をこじ開ける。
ガコッ…!
その瞬間――
空間の奥から、かすれた声と、かすかなすすり泣きが漏れた。
そこには、5人の少女たちがいた。
年齢は8歳から12歳ほど。全員が衣服を乱し、恐怖に震えながら、狭い床下空間で身を寄せ合っていた。
「民間人…?いや、この区域で?」
片桐は思わずフルフェイスマスクを外しかけた。
すぐに生体スキャナで確認を取る。
――陽性反応:G6-α 感染ステージI/判定強度:0.74(中度)
全員、感染者だった。
しかし彼は撃てなかった。
震える瞳、喉の奥で押し殺した声。
――「怖いよ、ママ……助けて」
その一言が、片桐の手を止めた。
そこに、不意に現れたのは、第2小隊の隊長、西堂(さいどう)一尉だった。
全身を戦術防護服で覆い、顔の見えぬその男は、静かに現場を視察した。
片桐が敬礼しながら報告を始める。
「対象は未成年女子5名。全員G6-α陽性反応確認。ただし現時点で発症症状なし。非攻撃的。射殺対象への再検討を――」
だが、その言葉が終わる前に、西堂は命令を口にした。
「対象、感染陽性。即時除去」
「……ま、待ってください! 対象はステージI、まだ自我も正常で――!」
「命令だ、下がれ」
片桐が言葉を継げずにいる間に、西堂はゆっくりと標準制式アサルトカービン Type-98Rを構えた。
そして、少女たちの存在に一切の躊躇を見せず、
フルオートでトリガーを引いた。
ダダダダダッ――!
音が室内に反響する。
少女たちの悲鳴は途中で途切れ、薄暗い床下には、赤黒い液体が静かに染みていった。
「……なぜだ」
片桐はただ呟いた。
他の隊員も、誰も声を出せなかった。
感染者を排除する――それは任務の一部。
だが、この行為には“処理”以上の何かがあった。
それは、「合理性」ではなく、「命令の狂気」だった。
西堂一尉は振り向きもせず、通信に一言だけ報告した。
「Δ-07、該当個体全滅。床下構造、掃討完了」
その声に、誰も返事を返さなかった。
そして、そこにあったはずの「正義」も、「任務の意義」も、もう誰の中にも残っていなかった。
――東京。そこは既に、“守るべき市民”のいない都市だった。
ドローン部隊による熱源スキャンと空中マッピングが連動し、未確認個体を順次座標データとして隊員に送信。
戦術データリンク(TDL)によって、隊員たちは視界にHUD(ヘッドアップディスプレイ)情報を共有。
「次、座標F-12。ビル3階に複数体反応。規模は小。恐らく潜伏系」
「突入班、支援班を随伴して制圧。ガスグレネード装填、E-7構成で散布開始」
逃げ惑う人々、泣き叫ぶ子ども。
そのどれにも引き金は止まらない。
なぜなら――この作戦において、“無抵抗”は無関係だからだ。
感染の可能性がある者は、現場レベルで即時「除染処理」される。
それが、Δ-07制圧任務における絶対的ルールだった。
10:17、戦闘状況報告。制圧対象確認数 126名
、即時排除 92名、拘束保護 14名、不明 20名(潜伏または死亡未確認)
作戦指揮本部は、この状況を「予定通り」と評価。
ただし、G6-αの第3段階発症者とみられる個体が1体確認されており、
今後の戦況において変異体型戦術への移行が示唆されている。
午後、封鎖線はさらに強化され、空路を含むすべての出入り口が閉鎖。
東京という都市は、今や\\“監視・殲滅圏”\\と化していた。
そのなかで、少女たちは何を思い、何を選ぶのか――
まだ、誰も知らなかった。
10時42分、制圧任務群第2分隊は特異汚染区域Δ-07内、廃墟と化した一般住宅街にて戦術突入を開始した。
標的となったのは、老朽化した木造2階建ての住宅。
構造は単純、だが隠匿行動には適していた。周辺のスキャンでは体温反応は希薄で、通常の熱源センサーでは「無人」と識別されていた。
にもかかわらず、隊員の一人――伍長・片桐翔(かたぎり しょう)は、感覚的な違和感を覚えた。
「反応なし…? 嘘だろ、気配がありすぎる」
彼は、ベテランの第8普通科連隊出身。幾度となく都市型掃討戦を経験してきた。
靴底から伝わる微かな振動、空気の密度、静けさの“不自然さ”。すべてが警鐘を鳴らしていた。
「突入、ドア破壊」
先頭の機動隊員が、\\ブリーチングツール型カッター(BT-C7)\\をドアヒンジに当て、強制開錠。
ドアが軋みを上げて開くと同時に、5名の戦術班がクリアリングを開始した。
「一班、リビングクリア」
「二班、階段上クリア」
「三班、南側の和室――異常なし」
内部には生活感が残っていた。冷蔵庫には消費期限の切れた食材、ソファに散らばるぬいぐるみや児童用教科書。
明らかに“誰かがいた”形跡。しかし、姿はない。
片桐は、ふと足元の音の違いに気づいた。
通常より低音域に寄った反響音――床下に空洞がある可能性を示す。
「床板の異常発見、構造的に不自然。隠蔽工作の痕跡あり」
彼はすぐに匍匐姿勢になり、ライトを照射。
微細な切れ込みと、塗装でカモフラージュされた点検口らしき構造を発見した。
「バールで行ける」
躊躇なく、片桐が多機能カーボンバールを突っ込み、隙間をこじ開ける。
ガコッ…!
その瞬間――
空間の奥から、かすれた声と、かすかなすすり泣きが漏れた。
そこには、5人の少女たちがいた。
年齢は8歳から12歳ほど。全員が衣服を乱し、恐怖に震えながら、狭い床下空間で身を寄せ合っていた。
「民間人…?いや、この区域で?」
片桐は思わずフルフェイスマスクを外しかけた。
すぐに生体スキャナで確認を取る。
――陽性反応:G6-α 感染ステージI/判定強度:0.74(中度)
全員、感染者だった。
しかし彼は撃てなかった。
震える瞳、喉の奥で押し殺した声。
――「怖いよ、ママ……助けて」
その一言が、片桐の手を止めた。
そこに、不意に現れたのは、第2小隊の隊長、西堂(さいどう)一尉だった。
全身を戦術防護服で覆い、顔の見えぬその男は、静かに現場を視察した。
片桐が敬礼しながら報告を始める。
「対象は未成年女子5名。全員G6-α陽性反応確認。ただし現時点で発症症状なし。非攻撃的。射殺対象への再検討を――」
だが、その言葉が終わる前に、西堂は命令を口にした。
「対象、感染陽性。即時除去」
「……ま、待ってください! 対象はステージI、まだ自我も正常で――!」
「命令だ、下がれ」
片桐が言葉を継げずにいる間に、西堂はゆっくりと標準制式アサルトカービン Type-98Rを構えた。
そして、少女たちの存在に一切の躊躇を見せず、
フルオートでトリガーを引いた。
ダダダダダッ――!
音が室内に反響する。
少女たちの悲鳴は途中で途切れ、薄暗い床下には、赤黒い液体が静かに染みていった。
「……なぜだ」
片桐はただ呟いた。
他の隊員も、誰も声を出せなかった。
感染者を排除する――それは任務の一部。
だが、この行為には“処理”以上の何かがあった。
それは、「合理性」ではなく、「命令の狂気」だった。
西堂一尉は振り向きもせず、通信に一言だけ報告した。
「Δ-07、該当個体全滅。床下構造、掃討完了」
その声に、誰も返事を返さなかった。
そして、そこにあったはずの「正義」も、「任務の意義」も、もう誰の中にも残っていなかった。
――東京。そこは既に、“守るべき市民”のいない都市だった。
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