召還社畜と魔法の豪邸

紫 十的

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第四章 冬が始まるその前に

とーくちょう

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「話もまとまったから、ギルドに依頼を取り下げにいかにゃならんな」
「依頼の取り下げですか?」
「小僧2匹でワシは手一杯だ。すぐにでも依頼を取り下げて、その後は、小僧共の道具を買わなきゃいかん」

 それだけ言うと、オレ達の返答も待たずに扉を開けて外へ出て行く。

「小僧共、早くついてこんか!」

 バタンと閉められた扉の向こうから大声がした。
 レーハフさんは嫌々引き受けたという感じがしない。ノリノリじゃないか。
 でも、商業ギルドへ行くのはオレとしても願ったり叶ったりの流れだ。契約関係のことを商業ギルドで確認できる。

「ハーイ」
 
 元気よく答え外にでた獣人達についていく。
 程なく商業ギルドへ到着し、レーハフさんはカウンターでギルドの職員と話を始めた。ここに来るまでずっとレーハフさんに付き添い何やら話をしていた獣人達が戻ってくる。

「あのリーダ様。親方が、これからおいら達の道具を買ってくれるそうです」
「お金は?」
「心配するな……と」

 いきなり道具を買ってくれるというのは、頼りすぎな気がする。
 トッキーの言葉が弱々しいのは、遠慮の気持ちがあるのだろう。

「いきなり甘えすぎだと思うんです。最初に用意する道具くらいは、私達でお金を出すべきだと思いません?」

 カガミが言うとおりだ。
 いきなり道具代を出して貰うのは少し甘えすぎだ。道具の件を伝えに来たトッキーも、カガミの言葉にホッとしたような表情で頷いている。

「そうだな。それじゃ、カガミはトッキー達についていって道具代を払ってもらえる?」
「リーダはどうするの?」

 オレは胸元から手紙を取り出す。ヘイネルさんに貰った商業ギルドへの紹介状だ。

「ヘイネルさんから貰った小会場を使って商業ギルドで手続きをしようと思う。ついでに、今後のことを考えて契約関係のことを聞いておきたい」
「そうだな。この世界は、口約束で回ってるのか、契約書なのか知っておきたいな」
「じゃ、ボクは先輩に同行するっス」

 最終的に、獣人達とレーハフさんにカガミとミズキが、残りはオレと商業ギルドに残ることになった。
 買い物にいった獣人達と別れたあと、手持ち無沙汰にあくびしていたギルド職員に紹介状を見せ声を掛ける。

「今度、この町で商売をしようと思っているんです。それで、この紹介状を貰ったのですが……、勝手がわからないので教えていただけないでしょうか?」
「はい、商会の設置ですね。承りますので、そのお手紙を拝見します」

 しばらく目を通していたギルド職員だったが「上の者に相談しますので、待っていてくださいまし」と言ったきり後ろへと引っ込んでしまった。

「どっかいっちゃったね」
「随分と待たせるなぁ」

 暇を持て余してノアですら、しびれをきらせた頃になって、ようやくギルド職員がもどってきた。
 奥にある応接室に通される。
 席には、カットされた果物にお茶の入ったカップが一人分置いてあった。

「おかけになって下さい」

 二人が座れるサイズの椅子を勧められる。チラリとノアがこちらを向いた。

「俺とプレイン氏は立ってるから気にするな」

 サムソンの言葉を聞いたノアとオレはギルド職員に促されるまま席についた。
 それから、さらに時間がたって二人の男が入ってきた。一人は大きな鳥かごに入った鳥と、箱を抱えている。
 立ち上がろうとしたオレに男のうち一人は「そのまま、そのまま」と言いつつ、ドスンと音を立てて椅子にすわった。みると汗びっしょりだ。

「いやはや、お待たせして申し訳ない。てっきり本館に来られると思っていましたので。もう焦りに焦ってしまいまして、あのヘイネル様よりの紹介ですもので、諸々ありまして、その。あー、挨拶が遅れました。商業ギルド商会事務担当モルトンと申します」
「これはご丁寧に。こちらがノアサリーナ様、私は筆頭の僕リーダと申します」

 挨拶を交わして話を進める。
 相手は手なれたもので、いくつかの質問に答えて、出された書類に書き込むだけで商会のための手続きが終わってしまった。
 もっとも、ヘイネルさんがあらかじめ商業ギルドへ何か指示をだしていたようで、屋敷の場所や、ノアのことを先方が知っていたことが大きいと思う。
 商会の名は、ノアサリーナ商会。代表はノア、というより他は奴隷階級の者ばかりなので代表になれない。
 一番返答に困ったのは、主にどんな仕事をするのかといったこと。何も考えていなかった。

「じゃ、マヨネーズ売るっス」

 結果的には、その一言でノアサリーナ商会はマヨネーズ屋としてスタートすることになった。あれって大量生産できるのかな……。

「それでは、これでノアサリーナ商会はギルドの会員として認められることになります。共に町を盛り上げていきましょう。……さて、それから、ヘイネル様よりお祝いとしてトーク鳥をお預かりしています」

 商業ギルドのモルトンは、後ろにいる鳥かごを持っている男を手招きする。
 あの手にもっていたのがトーク鳥なのか。バルカンの話でも出てきたな。遠隔地への情報伝達に使う鳥だったはずだ。
 手に持っていた籠と箱をテーブルのうえにゴトリと置いた。
 見た感じ、太めの鷹といった風体をした鳥だ。あまり賢そうに見えないが、以前聞いた話では少しくらいなら言葉を覚えておけるらしいし、頭のいい鳥なのだろう。

「立派ですね」
「はい。さすがに貴族様が普段使いされるようなトーク鳥は見事なものでございます。見事といえば、こちらの笛もございます」

 テーブルに置かれた箱を開けると、小さな笛が束ねられたような笛が2つ入っていた。うち一つには小さな風車がついている。

「サンポーニャっぽいっスね」
「もう笛の並びが決まってるのねぇ」

 しげしげとその奇妙な笛を眺めていると、後ろからプレインとロンロのつぶやきが聞こえた。

「並び?」
「そうですね。ヘイネル様より伝言があった際に、すでに笛の並びは用意させていただきました。お好みの並びがあるのかもしれませんが、この町においては商業ギルドが領主様より並びの管理を仰せつかっていますので、ご容赦願います」

 ロンロのつぶやきを反芻しただけだったが、それを疑問と受け取ったのか商業ギルドのモルトンは、言い訳のようにまくし立てる。
 先ほどの挨拶もそうだったが、とても早口な人だ。

「トーク鳥は、風車がついている方の笛の音に引き寄せられるのぉ。他の人が私達になにかを伝えたいときには並びを調べてから、その音をトーク鳥に教えて飛ばすのよぉ」

 電話番号やメアドのようなものか。自分で決められないから、どちらかというと電話番号の方がちかいのかもしれない。
 ロンロの話から推察すると、もう一つの笛を並び替えて、音を聞かせてトーク鳥を飛ばすと望みの相手へ鳥が飛んでいくということなのか。

「他の人の並びは、商業ギルドで教えているのですか?」
「そうですね。軒先につるす笛の並びについては、えぇ、多少の手数料はいただきますが、お調べしますよ……あぁ、隠したいのであれば隠しますのでご心配なく」

 商業ギルドは電話帳がわりにもなるのか、ついでに隠すこともできると……。詳しいことはロンロに聞けばいいか。
 せっかくのプレゼントだ。ありがたくもらっておこう。
 でも、なんとなくだが、このトーク鳥での情報伝達の仕組みはセキュリティ面でガバガバでないかと思ったりした。
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