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第五章 空は近く、望は遠く
たいしょうじっけん
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ギルドに戻ってみると、プレインが待っていた。
ミズキは馬車に乗っているという。
「へぇ、神殿ってそんな所なんスね」
町でのことを話しながら帰路につく。
ミズキは飲んでいて御者を任せることが不安だったので、馬車のなかで大人しくしてもらった。
「2年縛りとか、信徒契約料金の前払いだとか。カルチャーギャップを感じまくりだったよ」
「まるで携帯の契約みたいっスね。それで信徒になると良いことあるんスか?」
そうだ。何処かで聞いたような話が続くと思っていたら、携帯電話の契約だ。
いままで違和感しかなかった信徒契約が、ずっと身近に感じる。
「そういえば、信徒になるメリット聞いてないな……もっとも、信仰の話だから、メリットなどと言ってはいけないのかもしれないけどさ」
でも、何か利点がないとあんな勧誘しない気もする。ロンロなら知っているかもしれないし、聞いてみるかな。
「最近は、このカルチャーギャップが楽しくなってきたっすよ」
「前向きだなぁ」
そんなとりとめの無い話をしているうちに、屋敷へと到着した。
互いに1日の首尾を報告しあう。
サムソンは召喚魔法を調べていて収穫があったそうだ。明日実演してくれるという。
チッキーは、門の側に肉を置いたらしい。ハロルドが探しあててくれると嬉しい。
カガミとノアは、ハロルドを再度召喚できたとき用に、ハロルドに持たせる手紙付きの首輪を作ったそうだ。お花の形に器用に結ばれたリボンが可愛らしい。
ミズキとプレインも首尾は上々で、ハロルドを見かけたらトーク鳥で連絡してくれることになった。
オレも、ギルドへの依頼と、タイウァス神殿の協力を得られたことを伝える。ついでに使徒の契約や物販で買った物を見せる。
「この紙……チラシか。本当に2年契約や違約金とか書いてあるな。何処の世界の人間も考えることは同じってことか」
「へーへー、神殿でお酒売っているんだ」
「石鹸、欲しかったんです」
物販で買った物は高評価だった。カガミは石鹸が気に入ったようで、近いうちに買いにいくつもりらしい。
「そうだ。エレク少年がさ、大魔法使いは神様のことを知らないだとか、加護の事を言っていたけど、ロンロは何のことかわかる?」
「そうねぇ……リーダはぁ、神様の加護について何処まで知っているのぉ?」
ここにいる誰よりも神様に詳しそうなロンロに質問する。
「まったく知らない」
「信徒契約を、結ぶとぉ、加護を得られるのねぇ。加護は、魔法陣や触媒を必要としない、言葉のみで動かす魔法みたいなものなのぉ」
魔法陣や触媒を使わない魔法か……。手軽に使えそうで便利だな。
「魔法より便利そうっスね」
「でもぉ、たいしたことできないのねぇ。汚れた手を綺麗にするとかぁ、今の時間や、経過した時間を調べたりぃ。できることは小さいことだわぁ」
「神様は沢山いるのに加護が同じというのは、不思議に思います。思いません?」
「さあぁ。どこかの神様が新しい加護を始めるとぉ、すぐに他の神様でも同じ加護が使えるのよぉ。だから、どこの信徒になっても同じねぇ」
ますます携帯電話のサービスに似ている。しかし、今の流れからは魔法使いは神様に詳しくないというのが理解できない。
「それだと、魔法と加護の両方使えるとより便利だな」
「それがねぇ。加護は言葉のみで発動するからぁ、魔法の詠唱の邪魔になるのよぉ。魔法を唱えている途中で加護が始まってぇ……手が綺麗になったりするのぉ」
誤作動?
「ロンロ氏が言っているのは、魔法唱えている途中で加護が起動することで、魔法の起動が中断するってことか? それで、誤作動で魔法が上手くいかないなら、最初から信徒契約を結ばないと?」
「そういうことねぇ」
ロンロは我が意を得たりといった様子で、肯定した。
オレ達は魔力も結構あって、自分達で新しい魔法を作ったりと便利に魔法を使っている。
誤作動などを考えると、加護は持たないほうがいいのかもしれない。
「今のままでも、問題ないからオレには必要ないな」
「難しい話してるとお腹すいちゃった」
ミズキのお腹すいた発言で話はおしまい。
当面の間、神殿との契約も、加護も、必要がないという話になった。
食後、影収納の魔法で収納していたものを取り出し倉庫に並べる。
聖水の入った2つの樽も当然のように取り出す。
「そういえば、片方の樽にしか祝福してもらってないな……」
聖なる力をもった湧き水は、2つの樽に入っている。タイワァス神の祝福も、ケルワッル神の祝福も、2つの樽のうち一方に偏っていることに気がついた。
つまりは湧き水をくんだ時のまま、もう一方は祝福済みということだ。
看破でみると、微弱聖水、祝福された弱聖水、2つの樽にそれぞれ異なる表示がされている。
ふと思いつく。
このまま一方に祝福を重ね続けることにした。スーパー聖水を作るのだ。
どれだけ差がつくのか、興味は尽きない。
さっそくルタメェン神殿で購入した聖印を取り出す。
たしか、これに水を垂らせばよかったはずだ……めんどくさいな。
『ポチャン』
そのまま樽へと投げ込んだ。
垂らすってことは、水が聖印に触れていればOKってことだろう。
だったら投げ込んでも問題ないはずだ。
二つの樽にどんな違いがでるのか、これぞ対照実験。
すこしだけ楽しみに1日を終えた。
ミズキは馬車に乗っているという。
「へぇ、神殿ってそんな所なんスね」
町でのことを話しながら帰路につく。
ミズキは飲んでいて御者を任せることが不安だったので、馬車のなかで大人しくしてもらった。
「2年縛りとか、信徒契約料金の前払いだとか。カルチャーギャップを感じまくりだったよ」
「まるで携帯の契約みたいっスね。それで信徒になると良いことあるんスか?」
そうだ。何処かで聞いたような話が続くと思っていたら、携帯電話の契約だ。
いままで違和感しかなかった信徒契約が、ずっと身近に感じる。
「そういえば、信徒になるメリット聞いてないな……もっとも、信仰の話だから、メリットなどと言ってはいけないのかもしれないけどさ」
でも、何か利点がないとあんな勧誘しない気もする。ロンロなら知っているかもしれないし、聞いてみるかな。
「最近は、このカルチャーギャップが楽しくなってきたっすよ」
「前向きだなぁ」
そんなとりとめの無い話をしているうちに、屋敷へと到着した。
互いに1日の首尾を報告しあう。
サムソンは召喚魔法を調べていて収穫があったそうだ。明日実演してくれるという。
チッキーは、門の側に肉を置いたらしい。ハロルドが探しあててくれると嬉しい。
カガミとノアは、ハロルドを再度召喚できたとき用に、ハロルドに持たせる手紙付きの首輪を作ったそうだ。お花の形に器用に結ばれたリボンが可愛らしい。
ミズキとプレインも首尾は上々で、ハロルドを見かけたらトーク鳥で連絡してくれることになった。
オレも、ギルドへの依頼と、タイウァス神殿の協力を得られたことを伝える。ついでに使徒の契約や物販で買った物を見せる。
「この紙……チラシか。本当に2年契約や違約金とか書いてあるな。何処の世界の人間も考えることは同じってことか」
「へーへー、神殿でお酒売っているんだ」
「石鹸、欲しかったんです」
物販で買った物は高評価だった。カガミは石鹸が気に入ったようで、近いうちに買いにいくつもりらしい。
「そうだ。エレク少年がさ、大魔法使いは神様のことを知らないだとか、加護の事を言っていたけど、ロンロは何のことかわかる?」
「そうねぇ……リーダはぁ、神様の加護について何処まで知っているのぉ?」
ここにいる誰よりも神様に詳しそうなロンロに質問する。
「まったく知らない」
「信徒契約を、結ぶとぉ、加護を得られるのねぇ。加護は、魔法陣や触媒を必要としない、言葉のみで動かす魔法みたいなものなのぉ」
魔法陣や触媒を使わない魔法か……。手軽に使えそうで便利だな。
「魔法より便利そうっスね」
「でもぉ、たいしたことできないのねぇ。汚れた手を綺麗にするとかぁ、今の時間や、経過した時間を調べたりぃ。できることは小さいことだわぁ」
「神様は沢山いるのに加護が同じというのは、不思議に思います。思いません?」
「さあぁ。どこかの神様が新しい加護を始めるとぉ、すぐに他の神様でも同じ加護が使えるのよぉ。だから、どこの信徒になっても同じねぇ」
ますます携帯電話のサービスに似ている。しかし、今の流れからは魔法使いは神様に詳しくないというのが理解できない。
「それだと、魔法と加護の両方使えるとより便利だな」
「それがねぇ。加護は言葉のみで発動するからぁ、魔法の詠唱の邪魔になるのよぉ。魔法を唱えている途中で加護が始まってぇ……手が綺麗になったりするのぉ」
誤作動?
「ロンロ氏が言っているのは、魔法唱えている途中で加護が起動することで、魔法の起動が中断するってことか? それで、誤作動で魔法が上手くいかないなら、最初から信徒契約を結ばないと?」
「そういうことねぇ」
ロンロは我が意を得たりといった様子で、肯定した。
オレ達は魔力も結構あって、自分達で新しい魔法を作ったりと便利に魔法を使っている。
誤作動などを考えると、加護は持たないほうがいいのかもしれない。
「今のままでも、問題ないからオレには必要ないな」
「難しい話してるとお腹すいちゃった」
ミズキのお腹すいた発言で話はおしまい。
当面の間、神殿との契約も、加護も、必要がないという話になった。
食後、影収納の魔法で収納していたものを取り出し倉庫に並べる。
聖水の入った2つの樽も当然のように取り出す。
「そういえば、片方の樽にしか祝福してもらってないな……」
聖なる力をもった湧き水は、2つの樽に入っている。タイワァス神の祝福も、ケルワッル神の祝福も、2つの樽のうち一方に偏っていることに気がついた。
つまりは湧き水をくんだ時のまま、もう一方は祝福済みということだ。
看破でみると、微弱聖水、祝福された弱聖水、2つの樽にそれぞれ異なる表示がされている。
ふと思いつく。
このまま一方に祝福を重ね続けることにした。スーパー聖水を作るのだ。
どれだけ差がつくのか、興味は尽きない。
さっそくルタメェン神殿で購入した聖印を取り出す。
たしか、これに水を垂らせばよかったはずだ……めんどくさいな。
『ポチャン』
そのまま樽へと投げ込んだ。
垂らすってことは、水が聖印に触れていればOKってことだろう。
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