召還社畜と魔法の豪邸

紫 十的

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第六章 進化する豪邸

えのつかいみち

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「全部任せるって、リーダ……大丈夫か?」

 サムソンが何か言いたげに問いかけてきた。

「大丈夫さ。オレ達が切れるカード……ギリアの絵には、その価値がある。自信があるんだ」

 その自信は嘘では無い。ヘイネルさんとの話でも、少し気にかかっていた。それがカガミからの情報で裏付けられた。
 ギリアの絵には十分な価値がある。
 どうせ売ることができないなら、可能な限り活用するのみだ。

「マジか……。それならリーダに任せる。代わりに、俺は温泉の温度を上げる方法を探すぞ」
「あぁ、まかせろ」
「でもな、二兎を追う者は一兎をも得ずって言うぞ」

 サムソンは、不安になるようなことを言うと部屋から出て行った。
 入れ違いにトタタっと足音がして、チッキーが入ってきた。

「トーク鳥がもう一羽来たでち」

 チッキーから手紙を渡される。バルカンからだ。
 誰だろうと思って手紙を開く。

「誰っスか?」
「バルカンからだ」

 手紙には、今後の予定に連絡手段と、契約書を同封していることが書いてあった。
 連絡手段のことをすっかり忘れていた。あやうく、またバルカンを探してウロウロするはめだった。
 バルカンへの連絡手段は2つ。ひとつは、屋敷に来ているトーク鳥はバルカンの元へと戻るらしい。だから、何かあれば、このトーク鳥に手紙を渡してくれとのことだ。もう一つは、ロドリコ商会という所へ連絡する方法だ。バルカンは、しばらくロドリコ商会に身を寄せるそうだ。
 今後の予定としては、3日後には簡単な計画書を作りあげるつもりらしい。
 計画書ができあがるまで、手紙を持ってきたトーク鳥を預かったまま待っていて欲しい、と手紙は結ばれていた。

「まじでやる気っスね。バルカン」

 3日か。それなら、計画書の完成をまって領主へと連絡すればいいだろう。
 元々、領主に対してバルカンが温泉を運営できると証明する必要もある。

「サムソン先輩じゃないっスけど、何か保険的な事は考えておいたほうがいいと思うっス。第2プランって感じで」
「第2プランか……。確かにいろんなケースを想定して対策を立てるのは良い考えだな。うん。あと、3日はあるわけだし考えてみるか」
「そうっスね。付き合うっスよ」

 プレインと、いくつかのケースを想定しての検討を行う。
 次の日には、帰ってきたミズキとノアそしてロンロも加えて検討を進めた。
 3日、バルカンからトーク鳥が飛んできた。
 あと2日欲しいらしい。
 多少待つのは別に問題ないこと、完成品を送って欲しいことを返答する。
 1羽預かっているので、2羽目……バルカンは複数トーク鳥を持っているのか。
 5日め、バルカンから計画書が届いた。
 さっそく送ってもらった計画書に、皆で目を通す。

「これ、たった5日で作ったんだ。バルカンやるじゃん」
「温泉と宿泊施設を作るんだな……町への道を舗装する事も含まれているのか」

 温泉を整備して、その側に宿泊施設を作ることが計画の基本として書かれていた。
 他にも、工事の手配、仕入れルート、宣伝の方法なども書いてある。

「例年なら、今頃雪が降り始めてるんスね」
「突貫工事なら、2倍以上の経費がかかるんだな」

 バルカンの計画書には、経費の見積もりについても書いてあった。
 工事費用として金貨900枚が計上してある。
 ただし、この見積もりは雪の季節が終わった後での工事を想定した場合だ。
 というのも例年であれば、今頃には雪が降り出すそうだ。
 今年は全体的に温暖らしく、見込みでは来月の中頃あたりから雪が降る予想らしい。
 その前提で、本格的に雪が降る前に工事を済ませる場合は、金貨2000枚が必要と書いてあった。

「なるほど。バルカン氏はよその温泉を参考にしたのか。俺らにはできない芸当だな」
「この国にはぁ、他にも温泉ってあるのねぇ」

 この計画書はヨラン王国にある他の湯治場を参考にしたらしい。
 ベースとなる物があるとしても、相当立派な代物だった。

「この内容をキチンと説明できれば大丈夫だと思います……って、カガミ姉さんだったら言うくらい立派っスね」

 苦笑しながら、サムソンが頷く。
 カガミはこの場所にはいない。イザベラの所で、礼儀作法を学ぶという仕事をしている。
 最低限の礼儀を知っていないと広告塔にもなれないそうだ。
 ちなみにミズキは、ノアを連れ帰るという名目で採寸を済ませた後に、逃げ帰るように屋敷へ戻ってきた。

「息がつまる。もう、カガミ様々って感じ」

 帰ってくるなりそんな愚痴をこぼしていた。

「一応、準備は整ったな」
「そうっスね。早速、お城に連絡するっスか?」
「あぁ。準備は万全だ。隙はない。……ところでお城にはどうやって連絡しよう」
「おいおい、大丈夫かよ。いきなり……」

 ギリアの絵を手に入れましたと、どうやって連絡すればいいのかわからない。
 最悪、直接城へと行くしかないが……なんというか、いきなり領主を訪問してもいいものだろうか。
 サムソンのあきれたような顔をみると不安になってくる。

「大丈夫っスよ。ヘイネル様へトーク鳥飛ばしたら、多分領主さまに取り次いでくれるっスよ」
「連絡できるのぉ? ヘイネル様へトーク鳥を飛ばす時に使うぅ、笛の並びを知ってるのぉ?」
「トーク鳥と一緒にもらった笛の箱に書いてあるっスよ」

 そうだったのか、ちゃんと見ていなかった。
 同僚が頼りになるので助かる。
 とりあえずヘイネルさんへの連絡はプレインに任せることにした。
 もう権利やらの対策は面倒くさい。とっとと決めてしまうのだ。
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