召還社畜と魔法の豪邸

紫 十的

文字の大きさ
177 / 830
第十一章 不思議な旅行者達

みなとまちクイットパース

しおりを挟む
「これくらいの大きさの馬車がいいと思うんです。思いません?」

 大きめの馬車にゆられクイットパースに向かう途中、カガミがしみじみと言う。
 今、影の中に入れている馬車は、確かに小さい。
 全員で乗ると狭い。
 だからといって二手に分かれるより、皆で一緒の方が、何気ない旅も楽しく感じる。

「クイットパースに行ったら新しい馬車を買った方がいいかもな」
「そうっスね」

 雑談をしながら、馬車からの景色を楽しむ。進んでいくうちに道は舗装された道になり、馬車の揺れもずいぶん減ってきた。
 城壁が見えてくる。

「あれがクイットパースなんですか?」
「そうよ。あれがクイットパースですよ」
「港町!」

 馬車を運転してくれていた御者のおばちゃんと子供、2人が声を揃える。

「この辺りは兵士が見回ってくれてるので、平和なものです」

 馬車から降りて、クイットパースへと入る。関所で何か言われるかと少しだけ身構える。だが、テストゥネル様から貰ったペンダントを見た兵士達は恭しく礼をして、すぐに通してくれた。
 ボディーチェックなども何も無しだ。
 ありがとう、テストゥネル様。
 クイットパースはとても賑やかな町だった。

「わぁ、店がいっぱい」
「通路も大きいっスね」

 ギリアよりも栄えているな。
 色々な肌の人、獣人をはじめ、多種多様な人種の人が所狭しと歩き回っている。
 店もたくさんあって、目移りする。
 ストリギとはまた別の賑やかさがあった。ストリギよりもオープンな印象だ。
 町を少し歩いて、驚くべきことがあった。うっすらと船が見える。おそらく相当大きな船だ。

「あれ、すごい、山のような船だ」
「巨人さんの船かも!」

 本当だ、かなり遠くにある船なのに、はっきりと見える、とんでもなく大きな船だ。

「とりあえず行ってみません?」

 目を輝かせて、そわそわしている、トッキーとピッキーをみてカガミが提案する。

「まだまだ時間はあるし、船を見に行くことにしよう」

 大通りを歩いて進む。大型の馬車が行き交う様子をみるだけでも楽しい。
 随分とたくさんの馬車が走っている。道がとても広いのが印象的だ。あのスカスカのギリアでも、これほど広い道はなかった。
 広い道をすすむ馬車には、たくさんのツボやタルなど、雑多な物が乗せてある。恐らくこれらは船に摘まれていたものや、船に積み込む荷物なのだろう。
 商業が盛んな町という印象だ。屋台などもいっぱいあって、店先でテーブルが置いてあり、色々な人が食べ物を食べている。どれもこれも美味しそうに見える。少しだけお腹がすいてきたので、何か食べたいが、目移りしてしまってなかなか決められない。

「あのさ、リーダ。今回は迷子にならないでね、探せなくなっちゃう」

 人を子供扱いするミズキの一言にカチンとくるが、なぜか皆が頷いていた。

「ノアちゃん。リーダが迷子にならないように見張っていてね」
「はい!」

 ノアが元気よく返事して、オレの袖をギュッと掴む。
 遠くに見える船を目指し、ゆっくりと進む。

「すごいな」

 船の近くに来た時、驚きあまり声が裏返る。
 停泊する船を眺める。木造の帆船だが、とても大きくカッコいい。

『ドボドボォ』

 オレの見ていた巨大帆船のすぐ近くにある小さめの船から、魚が陸地に置いてある箱めがけてドボドボと落ちてきた。すごいなこの量。
 何10匹という魚が箱にはいっていく。ただ、船から箱に魚を詰め替えているだけなのに、迫力があっていつまでも見ていられる。
 遠回しにすごいすごいなどと言っていると1人のおじいさんが近づいてきた。

「魚が珍しいのかね?」
「いや。こんなにたくさんの魚を見る機会がなかなかなくて、すごいなと思ったんです」

 まるで自分のことを褒められたように、おじいさんは相好を崩す。

「そうじゃろ。そうじゃろ。陸路でやってきたのかね」
「はい、ギリアから」
「ふーむ。ギリアとは随分と遠回りになろうかな」
「そうなんですかね。橋を渡って、それからあのー……テンホイル遺跡に行って、そこから川を下って来たんですよ」
「ふむ、橋なんかあったかいの……確かにあそこに橋があれば、ずいぶん早く着くかもしれんの」

 そんなことを言いながら、老人は聞きもしないのに、船の説明などをしてくれる。
 あの大きな船はガレオン船というらしい。
 元の世界でも聞いたことがある気がするが、その辺はこちらの現地の言葉を、風の精霊であるヌネフが適当に解釈してくれたのだろう。

「んでな、こちらの船は、北回りでアロントット港へ向かうんじゃ。んでな……」

 おじいさんは、ゆっくりと歩きながら、港に泊まる数々の船について色々と教えてくれる。他の港へと向かう船は大きく、魚をとる船はやや小さいようだ。もっとも、どの船もギリアやストリギにある船より大きい。

「へー。なかなか楽しいっスね」
「まぁ、船に乗って旅をするのなら、まず予約が必要じゃな。早くても一月先じゃて。今日明日のことにならんからのぉ。宿は決まっとるかね?」
「宿は決まってませんね」

 早くても一ヶ月か。もっと頻繁に船って出ていないのか。
 少しは滞在しようと思っていたが、一月はちょっと長い。船に乗る以外の事も考えていたほうがいいかもしれない。

「そうじゃな。うちはどうかね? 宿をやっとんじゃよ」

 なるほど。親切にいろいろと教えてくれると思っていたら宿の客引きか。せっかく色々と案内してもらったことだし、今日はこの人の宿に泊めてもらうことにしようかな。

「あてもないですし……」

 話を進めようとしていた時に歓声が聞こえた。

「何があったんだろ?」

 気になったので、皆で見に行く。
 ゴトンと音がして、船から何かが落ちてきた。
 青緑色の塊……。楕円形の塊から、にょきにょきと手足……そして首が生えてきた。
 亀だ。
 そう。見に行った先には大きな亀が上がっていた。

「あれは海亀じゃな」
「すごい大きいですね」
「ありゃ、ノレッチャ亀じゃな」

 聞けば南方の方にいる海亀らしい。南方ではこの海亀に乗って漁をする人もいるそうだ。すごい偏食のため、残念ながらこの辺りで口に合う食べ物がないため、すぐに衰弱して死んでしまうらしい。
 数年に一度、こうやって流れ着くこともあるが、食べる物の問題で飼育することはできない。結局のところ、扱いに困ってしまうらしい。

「綺麗に処理された肉や甲羅はとっても高価なんじゃが、残念ながらこの辺には腕の良い職人もおらんから、甲羅も肉もうまくさばけんのがのぉ」

 スライフなら何とかできるかもしれないな。
 おじいさんの解説を聞き、海亀が首を思い切りのばしてこちらをみた。大きな瞳だ。子供の亀がそのまま大きくしたような印象をうける。

「あれ、この子可愛い」

 いつもの調子でミズキが言う。カガミも心なしか目を輝かせているように見えた。
 亀はしばらくこちらをみている。

『バン!』

 そして、前足で飛ぶようにこちらに近づいてきた。
 勢いに驚き、周りを取り囲んでいた漁師達はさっと道をあける。
 バタバタと音をたて、勢いは衰えることなく接近してきた巨大な海亀は、オレ達を見下ろしパチクリと目をまばたきする。
 そして……大きな口をあけノアを飲み込もうとした。
しおりを挟む
感想 7

あなたにおすすめの小説

【完結】身代わり皇妃は処刑を逃れたい

マロン株式
恋愛
「おまえは前提条件が悪すぎる。皇妃になる前に、離縁してくれ。」 新婚初夜に皇太子に告げられた言葉。 1度目の人生で聖女を害した罪により皇妃となった妹が処刑された。 2度目の人生は妹の代わりに私が皇妃候補として王宮へ行く事になった。 そんな中での離縁の申し出に喜ぶテリアだったがー… 別サイトにて、コミックアラカルト漫画原作大賞最終候補28作品ノミネート

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

3歳で捨てられた件

玲羅
恋愛
前世の記憶を持つ者が1000人に1人は居る時代。 それゆえに変わった子供扱いをされ、疎まれて捨てられた少女、キャプシーヌ。拾ったのは宰相を務めるフェルナー侯爵。 キャプシーヌの運命が再度変わったのは貴族学院入学後だった。

婚約破棄? めんどくさいのでちょうどよかった ――聖女もやめて、温泉でごくらくしてます

ふわふわ
恋愛
婚約破棄を告げられた聖女リヴォルタ・レーレ。 理由は、「彼女より優秀な“真の聖女”が見つかったから」。 ……正直、めんどくさい。 政略、責任、義務、期待。 それらすべてから解放された彼女は、 聖女を辞めて、ただ温泉地でのんびり暮らすことを選ぶ。 毎日、湯に浸かって、ご飯を食べて、散歩して。 何もしない、何も背負わない、静かな日常。 ところが―― 彼女が去った王都では、なぜか事故や災害が相次ぎ、 一方で、彼女の滞在する温泉地とその周辺だけが 異様なほど平和になっていく。 祈らない。 詠唱しない。 癒やさない。 それでも世界が守られてしまうのは、なぜなのか。 「何もしない」ことを選んだ元聖女と、 彼女に“何もさせない”ことを選び始めた世界。 これは、 誰かを働かせなくても平和が成り立ってしまった、 いちばん静かで、いちばん皮肉な“ざまぁ”の物語。

断罪まであと10分、私は処刑台の上で「ライブ配信」を開始した〜前世インフルエンサーの悪役令嬢、支持率100%でクズ王子を逆処刑する〜

深渡 ケイ
ファンタジー
断罪まで、あと10分。 処刑台の上で跪く悪役令嬢スカーレットは、笑っていた。 なぜなら彼女は―― 前世で“トップインフルエンサー”だったから。 処刑の瞬間、彼女が起動したのは禁忌の精霊石。 空に展開された巨大モニターが、全世界同時ライブ配信を開始する。 タイトルは―― 『断罪なう』。 王子の不貞、聖女の偽善、王家の腐敗。 すべてを“証拠付き・リアルタイム”で暴露する配信に、 国民の「いいね(=精霊力)」が集まり始める。 そして宣言される、前代未聞のルール。 支持率が上がるほど、処刑は不可能になる。 処刑台は舞台へ。 断罪はエンタメへ。 悪役令嬢は、世界をひっくり返す配信者となった。 これは、 処刑されるはずだった悪役令嬢が、 “ライブ配信”で王子と王国を公開処刑する物語。 支持率100%の先に待つのは、復讐か、革命か、 それとも――自由か。

異世界で貧乏神を守護神に選ぶのは間違っているのだろうか?

石のやっさん
ファンタジー
異世界への転移、僕にはもう祝福を受けた女神様が居ます! 主人公の黒木翼はクラスでは浮いた存在だった。 黒木はある理由から人との関りを最小限に押さえ生活していた。 そんなある日の事、クラス全員が異世界召喚に巻き込まれる。 全員が女神からジョブやチートを貰うなか、黒木はあえて断り、何も貰わずに異世界に行く事にした。 その理由は、彼にはもう『貧乏神』の守護神が居たからだ。 この物語は、貧乏神に恋する少年と少年を愛する貧乏神が異世界で暮す物語。 貧乏神の解釈が独自解釈ですので、その辺りはお許し下さい。

夢幻の錬金術師 ~【異空間収納】【錬金術】【鑑定】【スキル剥奪&付与】を兼ね備えたチートスキル【錬金工房】で最強の錬金術師として成り上がる~

青山 有
ファンタジー
女神の助手として異世界に召喚された厨二病少年・神薙拓光。 彼が手にしたユニークスキルは【錬金工房】。 ただでさえ、魔法があり魔物がはびこる危険な世界。そこを生産職の助手と巡るのかと、女神も頭を抱えたのだが……。 彼の持つ【錬金工房】は、レアスキルである【異空間収納】【錬金術】【鑑定】の上位互換機能を合わせ持ってるだけでなく、スキルの【剥奪】【付与】まで行えるという、女神の想像を遥かに超えたチートスキルだった。 これは一人の少年が異世界で伝説の錬金術師として成り上がっていく物語。 ※カクヨムにも投稿しています

処理中です...