召還社畜と魔法の豪邸

紫 十的

文字の大きさ
254 / 830
第十四章 異質なるモノ、人心を惑わす

うさぎにのったおとこのひと

しおりを挟む
 大平原の旅は順調に続いた。
 順調すぎるくらい順調だったので、ついつい気が緩む。
 昨日はずいぶんとのんびりと夜遅くまで起きていたので、朝寝坊してしまったようだ。

「では、行きますゾ」

 イアメスの掛け声で目が覚める。
 海亀の背にある小屋の二階から外を見ると、イアメスが勇ましい掛け声と共にハロルドへ剣を突き立てていた。
 トッキーとピッキー、そしてミズキにノアが遠巻きに彼ら2人を眺めている。楽しげな雰囲気から争っている様子はない。
 何やってるんだろ。
 気になったので、外へ出て近くで見ることにした。

「うむ。その調子で打ち込むでござるよ」

 よく見ると、ハロルドはイアメスに稽古をつけているようだ。
 カンカンと金属の打ち付ける音が響く。イアメスは結構必死になって剣を突き立てているが、ハロルドはそれを軽くいなしている。見るからに実力の差は歴然としていた。

「んなんな!」
「なかなかの太刀筋」
「んな! んな!」

 イアメスの掛け声は独特だな。

「うむ。イアメス殿は前のめりに過ぎてるように感じるでござる」
「前のめりですか?」

 イアメスの剣を軽くいなしたかと思うと、くるりと体を回し、トンとイアメスの肩をハロルドが押した。流れるような動きで肩を押されたイアメスは、よろめき倒れる。

「こうやるでござるよ」

 そういったかと思うと、ハロルドは何かのステップを踏んだ。

「もう1度やるでござるな」

 ハロルドは、さらにもう一回ゆっくりと足を動かす。
 それから剣をぐいっと前に突き立てる動作をした。

「なるほど……」
「では、先の動きを拙者めがけてやってみるでござるよ?」

 軽く頷いたイアメスが立ち上がり剣を構える。ヒュンヒュンと剣を数回振り回した後、先程のハロルドを真似て足運びをし、剣を突き立てる。先程の剣戟とは全く違う、身体をしならせるような動きで、イアメスの剣はハロルドの体を捉えた。

「おっとっと」

 剣をブンと大きく振り回したあと、ハロルドは後ろへと飛び退き笑った。

「これはもしや……」

 剣を突き出した格好のまま、イアメスが言葉を発する。

「そうでござる。これはかの金獅子という一団が使っていた剣技でござるよ。イアメス殿は筋が良い。簡単にモノにできたでござるな」
「次は私!」

 ノアが手を上げる。

「では、次は姫様でござるな。かかって参られい」

 今度はノアが相手になるらしい。ノアは短剣を手に持ちくるりと体を回転させて、ハロルドに斬り掛かる。遠心力を利用した動きが鋭い。
 ハロルドはそれを余裕な様子で受け止め。そして弾き返した。

「その調子でござる」
「えい!」

 ハロルドに言われて、またすぐにノアは地面に伏せるように身体を倒したかと思うと、足で地面を蹴った。そのまま剣を下から上へ振り上げる。
 ニコリと笑ったハロルドその攻撃を手で受け止め「ハハハ」と笑った。

「あ!」
「大丈夫でござるよ。姫様。先程の動きは、ラノーラ殿の足運びでござるな。なかなかのものでござった。では、姫様こういう風に」

 そう言ってハロルドは剣を振り回す。
 その動きを見てノアは何かを感じ取ったのか、同じように剣を振り回した。

「そうでござる。これからしばらくはそういう風に剣を回す稽古をするでござるよ」

 あんな動きだけでノアは自分が何をすればいいのかを掴んだのか。
 なんだかどんどん上達していくな。
 それからハロルドはイアメスに向き直った。

「何ですか?」
「うむ、少しトッキーとピッキー、それに姫様に稽古をつけてあげてほしいでござる。拙者以外の者の太刀筋を見るというのもなかなかの稽古になるでござるからな」
「分かりましたゾ」

 そう言って、イアメスは大きく頷いた。

「リーダ」

 その様子を小屋から出て満足げに頷いた後、柵に手をつき見ていたオレを見つけて、ハロルドが近寄ってきた。

「朝から元気だな」
「たまには身体を動かさねばなまってしまうでござるよ」
「イアメスに稽古をつけてたのは?」
「実力の差を分からせるというのがひとつ。それから、ちょっとした礼でござるよ」
「礼?」
「ピッキーから聞いたでござるが、姫様の誕生日プレゼントを作るの手伝ってるらしいでござる」
「そんなことしてたのか」
「ヌネフ殿も、もう悪意を感じないと言っていたので、これくらいの礼はよかろうと考えたでござる」

 あいつ、本当に馴染んでいるよな。

「ノアのプレゼントを作るのも手伝っていたというのは予想外だよ」
「悪意が無くなったことといい、カガミ殿の機転が利いたということでござろう」

 あれが機転とは思ってはいないが、とりあえずハロルドに言葉に頷いておく。

「まぁ、無事に道案内をしてくれれば問題ないよ」

 ノアの楽しそうな声と、ピッキー達の掛け声、そしてイアメスの何やら色々と説明する言葉をバックに、ハロルドとそんな話をする。
 いい匂いがしてきた。
 今日はプレインが朝食を作っているようだ。
 あいつの朝食は見なくてもだいたいわかる。
 どうせマヨネーズだ。
 何かしらマヨネーズを使っている。
 別にマヨネーズが嫌いってわけではないからいいのだけれども、あいつ本当に好きだよなと思ったりする。
 予想通り辺りマヨネーズをふんだんに使った朝ごはんを食べる。
 いつも朝食を作ってくれていたカガミが魔法にかかりきりなので、皆で料理を分担している。
 明日はオレが作ることにしよう。
 オレが朝食を作ると、毎度毎度皆が驚くし、ノアが美味しいと褒めてくれるのでやる気がでる。だからと言って毎朝作る気にはなれない。朝は眠い。
 そんなカガミはサムソンと一緒にずっと魔法を作っている。
 だいぶ出来上がってきた。試着はカガミとミズキがやって、皆で批評する。背中の大きなリボンがパッと見、アニメで出てくる魔法少女っぽい風貌の服だ。もっとも、ノアは魔法が使える少女で、魔法少女というのは嘘ではないので、問題ない。
 デザインに凝りすぎたようで、使う魔法量も多い。
 1日に3回が限界ということだ。オレ達で魔力が厳しくてもノアなら楽勝だろう。だが、試行錯誤が必要な製作段階での燃費の悪さは少々きつい。
 しかも計算式をミスると1部がうまく生成されないそうだ。
 サムソンが言うには、3Dゲームのポリゴン欠けのような状況が発生するらしい。
 そんなわけで、試着しチェックするカガミとミズキの責任は重大だ。

「ごちそうさまっと、トッキーピッキーお願い」

 食事が終わり、ミズキの掛け声でトッキーとピッキーがパタパタと動く。
 変形させた小屋を元に戻して出発する。
 というのも、海亀を止めて夜休む時、この小屋は変形し床が広がるようにできている。結果、寝室が大きく取れて、ゆったりと休めるのだ。
 それまでは、手狭な小屋で寝るか、テントを海亀の側に設置するかしていたが、やはり家でゆったり寝られるのは最高だ。
 トッキー、ピッキー様々だ。
 寝床をカチカチと片付けていって、小屋を元に戻して出発の準備が終わる。

「出発進行!」

 ピッキーの掛け声がこだまする。
 誰から習ったのか知らないがピッキーは、最近出発の時にこういう掛け声と共に進む。
 その誇らしげな様子が、微笑ましいので結構気に入っている。
 トッコトッコと軽快な調子で、海亀が走り出す。
 飛翔魔法になれた海亀は、亀とは思えないような足取りで軽快に前に進む。
 ロバに横乗りになったミズキが海亀に併走する。そして海亀の前にはイアメスが、馬を走らせ先導する。
 朝食から全て、ここ最近の見慣れた様子だ。
 いつも通り進んでいく。
 ところが……。

「こんにちは」
「変な奴だ」
「変なのだー」

 今日は、少し違った。
 人に会ったのだ。

「可愛い!」

 ミズキが嬉しそうな声を上げる。
 いつの間にかすぐ側まで来ていた2匹の巨大ウサギ。
 そして、その背には1人の優しそうな男性と、2人の女の子が乗っていた。
しおりを挟む
感想 7

あなたにおすすめの小説

【完結】身代わり皇妃は処刑を逃れたい

マロン株式
恋愛
「おまえは前提条件が悪すぎる。皇妃になる前に、離縁してくれ。」 新婚初夜に皇太子に告げられた言葉。 1度目の人生で聖女を害した罪により皇妃となった妹が処刑された。 2度目の人生は妹の代わりに私が皇妃候補として王宮へ行く事になった。 そんな中での離縁の申し出に喜ぶテリアだったがー… 別サイトにて、コミックアラカルト漫画原作大賞最終候補28作品ノミネート

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

3歳で捨てられた件

玲羅
恋愛
前世の記憶を持つ者が1000人に1人は居る時代。 それゆえに変わった子供扱いをされ、疎まれて捨てられた少女、キャプシーヌ。拾ったのは宰相を務めるフェルナー侯爵。 キャプシーヌの運命が再度変わったのは貴族学院入学後だった。

婚約破棄? めんどくさいのでちょうどよかった ――聖女もやめて、温泉でごくらくしてます

ふわふわ
恋愛
婚約破棄を告げられた聖女リヴォルタ・レーレ。 理由は、「彼女より優秀な“真の聖女”が見つかったから」。 ……正直、めんどくさい。 政略、責任、義務、期待。 それらすべてから解放された彼女は、 聖女を辞めて、ただ温泉地でのんびり暮らすことを選ぶ。 毎日、湯に浸かって、ご飯を食べて、散歩して。 何もしない、何も背負わない、静かな日常。 ところが―― 彼女が去った王都では、なぜか事故や災害が相次ぎ、 一方で、彼女の滞在する温泉地とその周辺だけが 異様なほど平和になっていく。 祈らない。 詠唱しない。 癒やさない。 それでも世界が守られてしまうのは、なぜなのか。 「何もしない」ことを選んだ元聖女と、 彼女に“何もさせない”ことを選び始めた世界。 これは、 誰かを働かせなくても平和が成り立ってしまった、 いちばん静かで、いちばん皮肉な“ざまぁ”の物語。

断罪まであと10分、私は処刑台の上で「ライブ配信」を開始した〜前世インフルエンサーの悪役令嬢、支持率100%でクズ王子を逆処刑する〜

深渡 ケイ
ファンタジー
断罪まで、あと10分。 処刑台の上で跪く悪役令嬢スカーレットは、笑っていた。 なぜなら彼女は―― 前世で“トップインフルエンサー”だったから。 処刑の瞬間、彼女が起動したのは禁忌の精霊石。 空に展開された巨大モニターが、全世界同時ライブ配信を開始する。 タイトルは―― 『断罪なう』。 王子の不貞、聖女の偽善、王家の腐敗。 すべてを“証拠付き・リアルタイム”で暴露する配信に、 国民の「いいね(=精霊力)」が集まり始める。 そして宣言される、前代未聞のルール。 支持率が上がるほど、処刑は不可能になる。 処刑台は舞台へ。 断罪はエンタメへ。 悪役令嬢は、世界をひっくり返す配信者となった。 これは、 処刑されるはずだった悪役令嬢が、 “ライブ配信”で王子と王国を公開処刑する物語。 支持率100%の先に待つのは、復讐か、革命か、 それとも――自由か。

異世界で貧乏神を守護神に選ぶのは間違っているのだろうか?

石のやっさん
ファンタジー
異世界への転移、僕にはもう祝福を受けた女神様が居ます! 主人公の黒木翼はクラスでは浮いた存在だった。 黒木はある理由から人との関りを最小限に押さえ生活していた。 そんなある日の事、クラス全員が異世界召喚に巻き込まれる。 全員が女神からジョブやチートを貰うなか、黒木はあえて断り、何も貰わずに異世界に行く事にした。 その理由は、彼にはもう『貧乏神』の守護神が居たからだ。 この物語は、貧乏神に恋する少年と少年を愛する貧乏神が異世界で暮す物語。 貧乏神の解釈が独自解釈ですので、その辺りはお許し下さい。

夢幻の錬金術師 ~【異空間収納】【錬金術】【鑑定】【スキル剥奪&付与】を兼ね備えたチートスキル【錬金工房】で最強の錬金術師として成り上がる~

青山 有
ファンタジー
女神の助手として異世界に召喚された厨二病少年・神薙拓光。 彼が手にしたユニークスキルは【錬金工房】。 ただでさえ、魔法があり魔物がはびこる危険な世界。そこを生産職の助手と巡るのかと、女神も頭を抱えたのだが……。 彼の持つ【錬金工房】は、レアスキルである【異空間収納】【錬金術】【鑑定】の上位互換機能を合わせ持ってるだけでなく、スキルの【剥奪】【付与】まで行えるという、女神の想像を遥かに超えたチートスキルだった。 これは一人の少年が異世界で伝説の錬金術師として成り上がっていく物語。 ※カクヨムにも投稿しています

処理中です...