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第十四章 異質なるモノ、人心を惑わす
ゆうぼくみんのかぞく
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「お前ら、面白いものに乗ってるなぁ」
「乗ってるな」
前を進む女の子が乗ったウサギについていく。
ノアと年があまり変わらないのに、ずいぶんと子供っぽい。
いや……ノアが大人じみているのか。
それも違うか。ノアは、一生懸命に背伸びして皆の役に立とうと、迷惑かけないようにしようとしている。
あんな風に好き勝手にできるようになったらいいなと思う。
そのためにはオレ達大人がしっかりしないとな。
「そのウサギもかわいいじゃん」
「あたし達、かっこいいほうがいいの!」
さっきから2人はとても偉そうだ。
軽快に飛び跳ね進むウサギをミズキが楽しそうに見ていた。
「最近、可愛いものがいっぱいあって嬉しいよね。イアメスに今度はもふもふウサギ」
「はいはい」
「うん!」
オレの空返事に、ミズキが楽しそうに笑う。
「イアメスってさ、あいつって結構年上だと思うんだよな」
「そうだろね、少なくとも今の私達よりは」
「その年上の人をつかまえて、かわいいとか言うのはちょっとやめた方が……」
「はいはい。本人の前に言ってないからいいじゃん」
そういう問題ではないと思う。やっぱり人を敬う心とか、そういうのは大事だと思うのだ。これ以上何か言うと、また妬いているとか言われそうなので、その言葉を心の中にそっと留めておく。
「何話してたんだ?」
1人の女の子が、ウサギからこちらの海亀の方へ飛び乗ってきた。
「きゃははは。面白い、ぴょんぴょん跳んでる」
オレの返答を聞くまでもなく。小屋の周りを手すりに沿って走り回りゲラゲラと笑う。
「あっ! あたしも! あたしも!」
ウサギに残っていたもう1人の女の子も、こちらへ飛び乗ってきた。
誰も乗っていないウサギが走っているが、大丈夫なのだろうか?
すごく騒がしい。
どうしたものかと、困っていたら、また別のウサギに乗った人影が近づいてくるのが見えた。
2匹。それぞれに男性と女性が一人ずつ乗っている。
「おい! エルフ馬をほっぽり出してどうした!」
先頭走っていたウサギに乗っていた男が立ち上がり、大声をあげる。
「ああ、あれは」
「皆さん、気をつけてください。あいつは悪いやつです!」
「ゲンコツしてきます」
そう言って2人は身振り手振りでオレ達にまくし立てる。
もう一匹のウサギに乗っていた女性が、その様子を見て、さらに声をかけた。
「2人ともいらっしゃい。お客様をお送りするのがあなた達のお仕事でしょ?」
「あっ、お母さまだ」
「この亀、すごいの。飛ぶように速く走ってるんだよ!」
「見ればわかる。とっとと降りてこい!」
「ゲンコツしない?」
「しない」
その言葉を聞いて、ピョンと前を走っていたウサギに飛び乗る。
走っている海亀から、ウサギに身軽に飛び乗る姿は純粋に凄いと思う。
2人のアクロバティックな様子を見て、母親も一緒にいる男性も何も言わない。
遊牧民にとってはこの程度はたいしたことがないのだろうか。
その後、男の方が、さっと素早い動きで女の子2人が乗ったウサギに横付けする。それから、女の子2人が乗ったウサギに飛び乗り、ゴンゴンとゲンコツを落としていた。
「兄さま、ゲンコツしないって言ったじゃん」
「言った! 言った!」
「うるさい! 全く、お前達が案内しなかったらどうするんだ? あのままついて行ったら全く違うところに行ってたじゃないか」
結構、酷いこと言っているな。
「ごめんなさい。あの子達たら、いつもあんな調子で」
前を走るウサギに乗る3人がわいわい騒いでいる中、お母さまと呼ばれたが併走しつつ声をかけてきた。
「いえいえ、案内していただいて、もてなしていただけるというだけで、とても嬉しいものです」
「私達にとっても楽しい経験になります。今から楽しみですよ」
「ところで先程の男性の方が、ノアサリーナお嬢様の名前と聞いた後、サムソンの事も聞いていましたが、サムソンが何か?」
遊牧民の話題に上がるようなことをサムソンがしたとは聞いたことがない。
というか、ここに来たのも初めてだ。ギリアならともかくこんな遠方の地まで、名前が知れ渡るような偉業をしたとは到底思えない。
考えられるのが人違いということだが、ノアの名前を聞いたあとサムソン名前を聞いたということで、これもちょっと考えにくい。
疑問は早いうちに払拭しておきたい。
「ええ、それについてはうちの家長が伝えるかと思いますので、まずはテントまでいきましょう」
そう言って女性はニコリと笑ったあと、前を進む。
「外の騒動を聞き付けたのがカガミが小屋の中から出てきた」
「何かあったんですか?」
「遊牧民に出会って案内してもらうことになったんだ。ついでにもてなしてくれるそうだよ」
「もう少しですね」
「ああ、そうだな」
「みてみて、カガミ。あれ、あれ」
ミズキがウサギを指さす。
「わぁ! みてみてリーダ!」
「分かってるよ」
カガミも落ちるのではないかと思うくらい柵から身を乗り出して、ウサギをみる。すごい嬉しそうだ。
「そうそう、イアメスが居なくなったよ」
「えぇ?」
カガミが寂しそうな声をあげる。
「元々、あいつは遊牧民のいる場所までの道案内だったし、役目を果たしたってことかもな」
「仕事が終わったから……やっぱりノルマが厳しいんじゃ」
ノルマはともかく、イアメスとは仲良くなってきただけに、突然の別れは少し寂しい。それはカガミも同じようだ。
最も、そのうち再会しそうな予感もある。
ああいう登場の仕方をしたのだ。
またひょっこり出てくるかもしれない、あまり考えすぎないようにしよう。
「ところで、あのウサギすごいな。遊牧民がウサギに乗っているとは思わなかったよ」
「そうですよね。可愛い。乗ってみたいと思います。思いません?」
相変わらず可愛いものには目がないよな。カガミも、ミズキも。
そんな話をしている間も軽快にウサギも海亀も走り続ける。
延々と変わらない大平原の風景に飽きてきたオレは小屋に戻り昼寝をすることにした。
「リーダ! 着いたよ。おっきいテントがたくさん!」
ノアに揺さぶられ目が覚める。
大興奮のノアに手をひかれ外に出ると、大きなテントが目の前に見えた。
「あ、起きた。見てみて、いくつもあるテント!」
「私達のテントに着きました。あと少しです」
先導していた女性が、オレ達の方に振り返り笑う。
気の柵に囲まれた先には、黒っぽい色をした沢山のテントが見える。
あれが遊牧民のテントか。
後少しで肉。
交渉するまでもなくお肉が食べられそうだ。なんだかワクワクしてきた。
「乗ってるな」
前を進む女の子が乗ったウサギについていく。
ノアと年があまり変わらないのに、ずいぶんと子供っぽい。
いや……ノアが大人じみているのか。
それも違うか。ノアは、一生懸命に背伸びして皆の役に立とうと、迷惑かけないようにしようとしている。
あんな風に好き勝手にできるようになったらいいなと思う。
そのためにはオレ達大人がしっかりしないとな。
「そのウサギもかわいいじゃん」
「あたし達、かっこいいほうがいいの!」
さっきから2人はとても偉そうだ。
軽快に飛び跳ね進むウサギをミズキが楽しそうに見ていた。
「最近、可愛いものがいっぱいあって嬉しいよね。イアメスに今度はもふもふウサギ」
「はいはい」
「うん!」
オレの空返事に、ミズキが楽しそうに笑う。
「イアメスってさ、あいつって結構年上だと思うんだよな」
「そうだろね、少なくとも今の私達よりは」
「その年上の人をつかまえて、かわいいとか言うのはちょっとやめた方が……」
「はいはい。本人の前に言ってないからいいじゃん」
そういう問題ではないと思う。やっぱり人を敬う心とか、そういうのは大事だと思うのだ。これ以上何か言うと、また妬いているとか言われそうなので、その言葉を心の中にそっと留めておく。
「何話してたんだ?」
1人の女の子が、ウサギからこちらの海亀の方へ飛び乗ってきた。
「きゃははは。面白い、ぴょんぴょん跳んでる」
オレの返答を聞くまでもなく。小屋の周りを手すりに沿って走り回りゲラゲラと笑う。
「あっ! あたしも! あたしも!」
ウサギに残っていたもう1人の女の子も、こちらへ飛び乗ってきた。
誰も乗っていないウサギが走っているが、大丈夫なのだろうか?
すごく騒がしい。
どうしたものかと、困っていたら、また別のウサギに乗った人影が近づいてくるのが見えた。
2匹。それぞれに男性と女性が一人ずつ乗っている。
「おい! エルフ馬をほっぽり出してどうした!」
先頭走っていたウサギに乗っていた男が立ち上がり、大声をあげる。
「ああ、あれは」
「皆さん、気をつけてください。あいつは悪いやつです!」
「ゲンコツしてきます」
そう言って2人は身振り手振りでオレ達にまくし立てる。
もう一匹のウサギに乗っていた女性が、その様子を見て、さらに声をかけた。
「2人ともいらっしゃい。お客様をお送りするのがあなた達のお仕事でしょ?」
「あっ、お母さまだ」
「この亀、すごいの。飛ぶように速く走ってるんだよ!」
「見ればわかる。とっとと降りてこい!」
「ゲンコツしない?」
「しない」
その言葉を聞いて、ピョンと前を走っていたウサギに飛び乗る。
走っている海亀から、ウサギに身軽に飛び乗る姿は純粋に凄いと思う。
2人のアクロバティックな様子を見て、母親も一緒にいる男性も何も言わない。
遊牧民にとってはこの程度はたいしたことがないのだろうか。
その後、男の方が、さっと素早い動きで女の子2人が乗ったウサギに横付けする。それから、女の子2人が乗ったウサギに飛び乗り、ゴンゴンとゲンコツを落としていた。
「兄さま、ゲンコツしないって言ったじゃん」
「言った! 言った!」
「うるさい! 全く、お前達が案内しなかったらどうするんだ? あのままついて行ったら全く違うところに行ってたじゃないか」
結構、酷いこと言っているな。
「ごめんなさい。あの子達たら、いつもあんな調子で」
前を走るウサギに乗る3人がわいわい騒いでいる中、お母さまと呼ばれたが併走しつつ声をかけてきた。
「いえいえ、案内していただいて、もてなしていただけるというだけで、とても嬉しいものです」
「私達にとっても楽しい経験になります。今から楽しみですよ」
「ところで先程の男性の方が、ノアサリーナお嬢様の名前と聞いた後、サムソンの事も聞いていましたが、サムソンが何か?」
遊牧民の話題に上がるようなことをサムソンがしたとは聞いたことがない。
というか、ここに来たのも初めてだ。ギリアならともかくこんな遠方の地まで、名前が知れ渡るような偉業をしたとは到底思えない。
考えられるのが人違いということだが、ノアの名前を聞いたあとサムソン名前を聞いたということで、これもちょっと考えにくい。
疑問は早いうちに払拭しておきたい。
「ええ、それについてはうちの家長が伝えるかと思いますので、まずはテントまでいきましょう」
そう言って女性はニコリと笑ったあと、前を進む。
「外の騒動を聞き付けたのがカガミが小屋の中から出てきた」
「何かあったんですか?」
「遊牧民に出会って案内してもらうことになったんだ。ついでにもてなしてくれるそうだよ」
「もう少しですね」
「ああ、そうだな」
「みてみて、カガミ。あれ、あれ」
ミズキがウサギを指さす。
「わぁ! みてみてリーダ!」
「分かってるよ」
カガミも落ちるのではないかと思うくらい柵から身を乗り出して、ウサギをみる。すごい嬉しそうだ。
「そうそう、イアメスが居なくなったよ」
「えぇ?」
カガミが寂しそうな声をあげる。
「元々、あいつは遊牧民のいる場所までの道案内だったし、役目を果たしたってことかもな」
「仕事が終わったから……やっぱりノルマが厳しいんじゃ」
ノルマはともかく、イアメスとは仲良くなってきただけに、突然の別れは少し寂しい。それはカガミも同じようだ。
最も、そのうち再会しそうな予感もある。
ああいう登場の仕方をしたのだ。
またひょっこり出てくるかもしれない、あまり考えすぎないようにしよう。
「ところで、あのウサギすごいな。遊牧民がウサギに乗っているとは思わなかったよ」
「そうですよね。可愛い。乗ってみたいと思います。思いません?」
相変わらず可愛いものには目がないよな。カガミも、ミズキも。
そんな話をしている間も軽快にウサギも海亀も走り続ける。
延々と変わらない大平原の風景に飽きてきたオレは小屋に戻り昼寝をすることにした。
「リーダ! 着いたよ。おっきいテントがたくさん!」
ノアに揺さぶられ目が覚める。
大興奮のノアに手をひかれ外に出ると、大きなテントが目の前に見えた。
「あ、起きた。見てみて、いくつもあるテント!」
「私達のテントに着きました。あと少しです」
先導していた女性が、オレ達の方に振り返り笑う。
気の柵に囲まれた先には、黒っぽい色をした沢山のテントが見える。
あれが遊牧民のテントか。
後少しで肉。
交渉するまでもなくお肉が食べられそうだ。なんだかワクワクしてきた。
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