召還社畜と魔法の豪邸

紫 十的

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第十四章 異質なるモノ、人心を惑わす

つなひきとちーむぷれー

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「ぬぅん!」

 ハロルドが鎖を掴み大きく引っ張る。

『ドォン』

 ティラノサウルスは一瞬だけ大きくよろめきはしたものの、足で地面を叩くようにして体勢を立て直した。
 ハロルドが鎖を引きながらゆっくりと後ずさる。
 呻きながらティラノサウルスは抵抗するが、大地を掴んだ足が地面を削りながらゆっくりとハロルドに引きずられる。
 凄い。あの巨体に力比べで勝っている。
 ハロルドは必死の形相で、鎖を引く。暴れるティラノサウルスを逃がさないように、鎖を引く方向を細かく調整していた。まるで魚釣りのように。

「がんばるでち!」
「ハロルド様!」
「あと少しです!」

 獣人達3人の応援が聞こえる。

「おぉぁああ!」

 雄叫びを上げながらハロルドはさらに力を込めたようだ。
 大地を掴んでいたティラノサウルスの足が、宙に浮き、今度こそ倒れるかと思われた。
 だが、ヤツも負けていない。

「ギャアァウゥ」

 大きく頭を振り、いっきに引き戻すと、そのままハロルドと雷槍オクサイルの砲身ごと持ち上げた。

「ハロルド!」

 そのまま宙になげだされそうになるハロルドの足を、側に駆け寄ったプレインがだきつくようにして掴む。自分の体重込みで地面につなぎ止めようというつもりだ。
 オレも、雷槍オクサイルの砲身を掴みハロルドの加勢をする。

「リーダ!」

 そこにミズキも加わる。そこでようやくハロルドが地面に着地することができた。
 だが、ティラノサウルスの抵抗は終わらない。

「ギャルルル」

 今までとは違う甲高い叫び声をあげて、鎖を引くオレ達に抵抗する。
 さらに自分の身体を倒すようにして、抵抗した。
 ハロルド、プレインの身体が再度宙に浮く。首をがむしゃらに振り回し、それによって、オレやミズキごと雷槍オクサイルの砲身が宙に浮いた。
 一気に抵抗が無くなったことでティラノサウルスは大きく駆け出す。

「足に踏ん張りが効かねば!」

 ハロルドの悔しそうな声が響く。ミズキが砲身から手を離した。そして着地し、ハロルドに駆け寄り足を掴む。

『ズザザッ』

 ミズキの足が地面を滑り、再び空中にその身体が持ち上げられる。
 焼け石に水か。

『ジャララ』

 このまま全員がティラノサウルスに空中に投げ出されるかと思った時、鎖のすれる音がした。とても澄んだ綺麗な音色。
 そして、雷槍オクサイルの砲身が金色の鎖に包まれる。

「ピッキーお願い!」

 カガミの声が聞こえる。カガミが魔法の鎖で援護してくれたのか。さらにグンと大きく身体が別方向に引っ張られる。
 海亀が走り出した。いつもよりゆっくりと、だが確実に。
 あれだけ劣勢だった状況が一気にひっくり返る。
 ダンダンと海亀の足音が響きティラノサウルスの抵抗なんて無いかのように進む。
 すぐに雷槍オクサイルの砲身が地面に落ちて、それからハロルドも地面に足をつけることができた。

「おぉぉ!」

 再度、ハロルドが叫ぶ。

『ドォォン』

 大きく地面を揺らし、ティラノサウルスの身体が横倒し地面へと叩きつけられた。

「今でござる! 姫様!」

 ハロルドの言葉とほぼ同時に、ティラノサウルスの側に円形の光が出現した。
 円形の光はユラユラと動き、ティラノサウルスの頭を照らす位置で止まった。

『ヒィ……ン……』

 ん? 何の音だ?

『ドゴォォン』

 ティラノサウルスの頭が爆発し、衝撃波が巻き起こる。
 ビリビリとした空気の振動がして、気がつけばティラノサウルスの頭が大きくへこんでいた。
 そして、ヤツの身体はピクリとも動かなくなった。

「倒したの?」
「そのようでござるな」
「あれって……もしかして」
「そうでござる。姫様の、星落としでござる。星降りに比べれば大した事の無い威力でござるが、こやつを倒すにはこれで十分でござったな」

 これで大した事がないとは。すさまじい威力だな。

「最後の綱引きはダメかと思ったっス」

 プレインが笑いながら言う。
 確かに全員が空中に浮いたときは、手がないと思った。
 カガミの機転がなければ確実にアウトだった。

「やったね!」

 ピョンと海亀から飛び降りノアがこちらへと駆け寄ってくる。
 満面の笑みでオレにタックルするように抱きついてきた。

「そうだね。ありがとうノア」
「えへへ」
「最後の一撃は、姫様無くしては無理でござったよ」
「ハロルドも、ぬうんって引っ張って凄かったよ」
「なんの!」

 ノアの言葉に、ハロルドは胸をドンと叩いて応じる。
 なるほどな。鎖を引っ張った後どうするのかと思ったけれど、動きを封じてノアの魔法でとどめを刺す計画だったのか。
 確かに星とか言っていたな。

「じゃ、茶釜のとこ行ってくるね」
「わたしも」

 こちらは終わったとばかりに、ミズキとカガミは向こう側で突っ立っているエルフ馬の茶釜へと駆けて行った。

「マジか。オレの事は放置かよ」

 ギシと音を立てて海亀の背中にある柵に体をあずけたサムソンがぼやく。

「大丈夫か?」
「ちょっとした魔力切れだ」
「一瞬ダメかと思ったよ」
「自信があったからな」
「ハハッ」
「へっへへ」

 サムソンも無事、そしてサエンティも無事。
 皆無事。万事オッケーだ。

「皆さん、ご無事ですか?」

 オレ達が、無事にティラノサウルスを倒せた達成感に笑っている所へ、ラッレノーが駆けつけてきた。その後には、パエンティとそのお兄ちゃん。
 加えて、鹿のような角が生えた馬に乗る3人の男。
 威圧的な雰囲気を纏った3人の男がいた。
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