278 / 830
第十五章 おとぎ話にふれて
めいきゅうとしへ
しおりを挟む
カガミの使う壁を作る魔法は超便利だ。
色々な形に簡単に作れるのがいい。
今日のように寒い日は周りを囲むようにして。
雪が降れば、ドーム状にして。
環境に応じて形を変えて東へと進む。
目指すは迷宮都市フェズルード。
気がつけば途方もない距離を進んでいる。いつの間にか年も明けてしまったらしい。
最初のあたりは日付を考え数えていたが、どうでもよくなって、ぼーっとしていく中で、ついに風景が変わった。
「終わった……」
風景が変わったのを確信したとき、なんとも言えない達成感があった。
大平原が終わったのだ。
永遠に広がるように思えた草原は消え失せ、うっすらと積もる雪からのぞかせるのは茶色い地肌。ゴツゴツとした岩が見える場所もある。小石が落ちていたり、いわゆる荒れ地だ。
巨獣もいなくなり、代わりに徘徊するのは痩せた狼。ゴブリン。
その後、何度か襲い掛かってくる狼などを魔法の矢で撃退する。
すばしっこく統率の取れた狼は、怖かった。
追尾性能の高い魔法の矢があるのでなんとかなったが、魔法がなければ苦戦しただろう。
初めて襲いかかられたとき、茶釜の子供である子ウサギがやられるのではないかと心配した。
だが、そんな心配をよそに子ウサギ達は狼をあっさりと撃退した。
エルフ馬は、大平原の巨獣……恐竜と渡りあっていた種族という点を失念していた。
子ウサギに遅いかかった狼は、次々と後足で蹴り飛ばされ、遙か遠くまで吹き飛ぶ。
それをみた他の狼たちが「マジで?」と言いたげな表情に変わったのは忘れられない。
茶釜達は、世界樹の葉とカロメーの両方を食べる。
世界樹の葉の方が好みのようだ。
餌をあげるのはもっぱらカガミとミズキだ。
可愛い可愛いと、毎日飽きずに見ている。
特に世界樹の葉は、コリコリと時間をかけて食べるので、餌をあげる2人にとっても、カロメーよりあげていて楽しいらしい。
よく飽きないもんだと感心する。
昨日なんて、お湯で洗っていた。
しかも自分達用に買った石鹸を大量につかって、ピカピカに磨き上げる。
やっていることは洗車だ。
この世界は石鹸が高価だ。しかも、カガミ達が使っている石鹸は、高級品らしいので、今回使った石鹸代がいくらになるのか聞くのが怖い。
ちなみにオレ達が使う石鹸は、どっかの神殿で買った安物。
「ドライヤーの魔法を改良したんです」
そのうえエルフ馬専用にドライヤーの魔法まで作っていた。
茶釜達、エルフ馬にかける情熱がすごい。
「本格的に雪が降る前に着きそうで良かったです」
延々と続く荒れ地にも見慣れたころだ。
カガミが遠くの景色をみて、しみじみと言う。
やっと見えてきたのだ。
迷宮都市フェズルード。
注意して見なくては、ただの山にしか見えない。茶色い塊。
「ならず者の集まりでござるよ」
ハロルドに聞くと迷宮都市フェズルードは治安が悪いらしい。
「へー」
「少なくとも拙者が、しばし滞在していたあの頃は、治安が悪かったでござるよ」
「領主はいないんスか?」
「居てはいたが、ほとんど統治してなかったでござるな」
いままで行った町は、どこも治安が良かった。
なんだかんだと領主が仕事をしていたということだろう。
だが、今度行くところは違うらしい。
「どうしよう。茶釜がさらわれちゃったらどうしよう」
ミズキはそんな心配をしていた。
「一応あてはあるでござるよ。任せてくだされ」
頼りにはハロルドだけだ。
「私はぁ、この辺のことを知らないしぃ」
ロンロはいつも通りのんびりとしたものだ。
「この辺りは、悪意だらけで居心地が悪いのです」
ヌネフも少々警戒モードだ。
「悪いな」
サムソンが責任を感じたように謝る。
「気にすんな」
町が近づくにつれ、人もパラパラと見かけるようになった。
馬車の一団、もしくは10人に満たない集団。
皆、何かしらの武装をしている。
たまに、小さな村のような場所もみかけた。
「あれは、迷宮入り口の待合場所でござるよ」
ちょうど満月の夜がきたので、いろいろとハロルドに聞くことができた。
「待合所?」
「そうでござる。迷宮入り口で、物資を売ったり、痛んだ装備を補修したりできるでござるよ。いうなれば迷宮入り口に作られた、とても小さな村といったところでござろうか」
フェズルードの周りには数多くの迷宮があるそうだ。
超巨大な町が過去に存在していて、まるごと土砂に埋もれた結果、かって町だったものが迷宮の体を成しているらしい。
そのような地面を掘れば迷宮にあたるような土地を進んでいる。
迷宮は、地下深くに眠る赤龍による力や、横穴からの魔物の流入により、探検するにふさわしい場所になる。赤龍の財宝や魔物がため込んだ財宝を目当てに、探索するのだ。
実入りのいい迷宮入り口には、人が集まり、そこで商売をする者も出てくる。そんな話らしい。
興味深いが目的は別なので、無視してずんずんと進む。
ようやくたどり着いた迷宮都市フェズルードは、山の斜面に沿って作られた町並みだった。
町並みを照らす光は、うっすらと積もった雪の白さもあいまって、より美しさを際立たせる。
ひょっとして、治安が悪いというのは嘘でないのかと考えるくらいの美しさだ。
もっともそう思うのは一瞬だけ。
目を回りに向けると、武装した集団。
ガッチャガッチャと金属のすれる音が頻繁に響き、ガラの悪い集団をみると、やはり不安になる。
遠目では美しい山も、近くでみるとゴミだらけ。
昔聞いた言葉を思い出す。
迷宮都市フェズルード。周りがどうであれ、平和にすごしたいものだ。
色々な形に簡単に作れるのがいい。
今日のように寒い日は周りを囲むようにして。
雪が降れば、ドーム状にして。
環境に応じて形を変えて東へと進む。
目指すは迷宮都市フェズルード。
気がつけば途方もない距離を進んでいる。いつの間にか年も明けてしまったらしい。
最初のあたりは日付を考え数えていたが、どうでもよくなって、ぼーっとしていく中で、ついに風景が変わった。
「終わった……」
風景が変わったのを確信したとき、なんとも言えない達成感があった。
大平原が終わったのだ。
永遠に広がるように思えた草原は消え失せ、うっすらと積もる雪からのぞかせるのは茶色い地肌。ゴツゴツとした岩が見える場所もある。小石が落ちていたり、いわゆる荒れ地だ。
巨獣もいなくなり、代わりに徘徊するのは痩せた狼。ゴブリン。
その後、何度か襲い掛かってくる狼などを魔法の矢で撃退する。
すばしっこく統率の取れた狼は、怖かった。
追尾性能の高い魔法の矢があるのでなんとかなったが、魔法がなければ苦戦しただろう。
初めて襲いかかられたとき、茶釜の子供である子ウサギがやられるのではないかと心配した。
だが、そんな心配をよそに子ウサギ達は狼をあっさりと撃退した。
エルフ馬は、大平原の巨獣……恐竜と渡りあっていた種族という点を失念していた。
子ウサギに遅いかかった狼は、次々と後足で蹴り飛ばされ、遙か遠くまで吹き飛ぶ。
それをみた他の狼たちが「マジで?」と言いたげな表情に変わったのは忘れられない。
茶釜達は、世界樹の葉とカロメーの両方を食べる。
世界樹の葉の方が好みのようだ。
餌をあげるのはもっぱらカガミとミズキだ。
可愛い可愛いと、毎日飽きずに見ている。
特に世界樹の葉は、コリコリと時間をかけて食べるので、餌をあげる2人にとっても、カロメーよりあげていて楽しいらしい。
よく飽きないもんだと感心する。
昨日なんて、お湯で洗っていた。
しかも自分達用に買った石鹸を大量につかって、ピカピカに磨き上げる。
やっていることは洗車だ。
この世界は石鹸が高価だ。しかも、カガミ達が使っている石鹸は、高級品らしいので、今回使った石鹸代がいくらになるのか聞くのが怖い。
ちなみにオレ達が使う石鹸は、どっかの神殿で買った安物。
「ドライヤーの魔法を改良したんです」
そのうえエルフ馬専用にドライヤーの魔法まで作っていた。
茶釜達、エルフ馬にかける情熱がすごい。
「本格的に雪が降る前に着きそうで良かったです」
延々と続く荒れ地にも見慣れたころだ。
カガミが遠くの景色をみて、しみじみと言う。
やっと見えてきたのだ。
迷宮都市フェズルード。
注意して見なくては、ただの山にしか見えない。茶色い塊。
「ならず者の集まりでござるよ」
ハロルドに聞くと迷宮都市フェズルードは治安が悪いらしい。
「へー」
「少なくとも拙者が、しばし滞在していたあの頃は、治安が悪かったでござるよ」
「領主はいないんスか?」
「居てはいたが、ほとんど統治してなかったでござるな」
いままで行った町は、どこも治安が良かった。
なんだかんだと領主が仕事をしていたということだろう。
だが、今度行くところは違うらしい。
「どうしよう。茶釜がさらわれちゃったらどうしよう」
ミズキはそんな心配をしていた。
「一応あてはあるでござるよ。任せてくだされ」
頼りにはハロルドだけだ。
「私はぁ、この辺のことを知らないしぃ」
ロンロはいつも通りのんびりとしたものだ。
「この辺りは、悪意だらけで居心地が悪いのです」
ヌネフも少々警戒モードだ。
「悪いな」
サムソンが責任を感じたように謝る。
「気にすんな」
町が近づくにつれ、人もパラパラと見かけるようになった。
馬車の一団、もしくは10人に満たない集団。
皆、何かしらの武装をしている。
たまに、小さな村のような場所もみかけた。
「あれは、迷宮入り口の待合場所でござるよ」
ちょうど満月の夜がきたので、いろいろとハロルドに聞くことができた。
「待合所?」
「そうでござる。迷宮入り口で、物資を売ったり、痛んだ装備を補修したりできるでござるよ。いうなれば迷宮入り口に作られた、とても小さな村といったところでござろうか」
フェズルードの周りには数多くの迷宮があるそうだ。
超巨大な町が過去に存在していて、まるごと土砂に埋もれた結果、かって町だったものが迷宮の体を成しているらしい。
そのような地面を掘れば迷宮にあたるような土地を進んでいる。
迷宮は、地下深くに眠る赤龍による力や、横穴からの魔物の流入により、探検するにふさわしい場所になる。赤龍の財宝や魔物がため込んだ財宝を目当てに、探索するのだ。
実入りのいい迷宮入り口には、人が集まり、そこで商売をする者も出てくる。そんな話らしい。
興味深いが目的は別なので、無視してずんずんと進む。
ようやくたどり着いた迷宮都市フェズルードは、山の斜面に沿って作られた町並みだった。
町並みを照らす光は、うっすらと積もった雪の白さもあいまって、より美しさを際立たせる。
ひょっとして、治安が悪いというのは嘘でないのかと考えるくらいの美しさだ。
もっともそう思うのは一瞬だけ。
目を回りに向けると、武装した集団。
ガッチャガッチャと金属のすれる音が頻繁に響き、ガラの悪い集団をみると、やはり不安になる。
遠目では美しい山も、近くでみるとゴミだらけ。
昔聞いた言葉を思い出す。
迷宮都市フェズルード。周りがどうであれ、平和にすごしたいものだ。
0
あなたにおすすめの小説
【完結】身代わり皇妃は処刑を逃れたい
マロン株式
恋愛
「おまえは前提条件が悪すぎる。皇妃になる前に、離縁してくれ。」
新婚初夜に皇太子に告げられた言葉。
1度目の人生で聖女を害した罪により皇妃となった妹が処刑された。
2度目の人生は妹の代わりに私が皇妃候補として王宮へ行く事になった。
そんな中での離縁の申し出に喜ぶテリアだったがー…
別サイトにて、コミックアラカルト漫画原作大賞最終候補28作品ノミネート
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
婚約破棄? めんどくさいのでちょうどよかった ――聖女もやめて、温泉でごくらくしてます
ふわふわ
恋愛
婚約破棄を告げられた聖女リヴォルタ・レーレ。
理由は、「彼女より優秀な“真の聖女”が見つかったから」。
……正直、めんどくさい。
政略、責任、義務、期待。
それらすべてから解放された彼女は、
聖女を辞めて、ただ温泉地でのんびり暮らすことを選ぶ。
毎日、湯に浸かって、ご飯を食べて、散歩して。
何もしない、何も背負わない、静かな日常。
ところが――
彼女が去った王都では、なぜか事故や災害が相次ぎ、
一方で、彼女の滞在する温泉地とその周辺だけが
異様なほど平和になっていく。
祈らない。
詠唱しない。
癒やさない。
それでも世界が守られてしまうのは、なぜなのか。
「何もしない」ことを選んだ元聖女と、
彼女に“何もさせない”ことを選び始めた世界。
これは、
誰かを働かせなくても平和が成り立ってしまった、
いちばん静かで、いちばん皮肉な“ざまぁ”の物語。
3歳で捨てられた件
玲羅
恋愛
前世の記憶を持つ者が1000人に1人は居る時代。
それゆえに変わった子供扱いをされ、疎まれて捨てられた少女、キャプシーヌ。拾ったのは宰相を務めるフェルナー侯爵。
キャプシーヌの運命が再度変わったのは貴族学院入学後だった。
【完結】クビだと言われ、実家に帰らないといけないの?と思っていたけれどどうにかなりそうです。
まりぃべる
ファンタジー
「お前はクビだ!今すぐ出て行け!!」
そう、第二王子に言われました。
そんな…せっかく王宮の侍女の仕事にありつけたのに…!
でも王宮の庭園で、出会った人に連れてこられた先で、どうにかなりそうです!?
☆★☆★
全33話です。出来上がってますので、随時更新していきます。
読んでいただけると嬉しいです。
断罪まであと10分、私は処刑台の上で「ライブ配信」を開始した〜前世インフルエンサーの悪役令嬢、支持率100%でクズ王子を逆処刑する〜
深渡 ケイ
ファンタジー
断罪まで、あと10分。
処刑台の上で跪く悪役令嬢スカーレットは、笑っていた。
なぜなら彼女は――
前世で“トップインフルエンサー”だったから。
処刑の瞬間、彼女が起動したのは禁忌の精霊石。
空に展開された巨大モニターが、全世界同時ライブ配信を開始する。
タイトルは――
『断罪なう』。
王子の不貞、聖女の偽善、王家の腐敗。
すべてを“証拠付き・リアルタイム”で暴露する配信に、
国民の「いいね(=精霊力)」が集まり始める。
そして宣言される、前代未聞のルール。
支持率が上がるほど、処刑は不可能になる。
処刑台は舞台へ。
断罪はエンタメへ。
悪役令嬢は、世界をひっくり返す配信者となった。
これは、
処刑されるはずだった悪役令嬢が、
“ライブ配信”で王子と王国を公開処刑する物語。
支持率100%の先に待つのは、復讐か、革命か、
それとも――自由か。
異世界で貧乏神を守護神に選ぶのは間違っているのだろうか?
石のやっさん
ファンタジー
異世界への転移、僕にはもう祝福を受けた女神様が居ます!
主人公の黒木翼はクラスでは浮いた存在だった。
黒木はある理由から人との関りを最小限に押さえ生活していた。
そんなある日の事、クラス全員が異世界召喚に巻き込まれる。
全員が女神からジョブやチートを貰うなか、黒木はあえて断り、何も貰わずに異世界に行く事にした。
その理由は、彼にはもう『貧乏神』の守護神が居たからだ。
この物語は、貧乏神に恋する少年と少年を愛する貧乏神が異世界で暮す物語。
貧乏神の解釈が独自解釈ですので、その辺りはお許し下さい。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる