召還社畜と魔法の豪邸

紫 十的

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第十六章 異世界のさらに先

きんのトーテムポール

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「なにあれ?」
「ノイタイエル……潰れちゃった」
「トーテムポールが落ちてきた?」

 予想外の事態だ。
 トーテムポールの顔の部分が、ガクンと音を立てて動き、口から金色の粉を吐き出す。
 何だろう?

『ドサリ』

 背後で音がした。

「にい、ちゃ……ケホッケホッ」

 振り向くとチッキーが苦しそうに小さく咳き込んでいた。
 ピッキーとトッキーは倒れていて、トッキーはビクビクと痙攣していた。
 モルススの毒。
 そうだ。迷宮ランフィッコでスライフが言っていた。
 モルススの毒は人間には効かないが、獣人には効く。
 それを思い出す。
 放っておくことはできない。
 すぐにこの場から離れなくてはならない。

「ミズキ!」

 放心状態で、チッキーを見ていたミズキに声をかける。
 ショックで、呆然としたミズキがぼんやりとこちらを向いた。

「ミズキ! 茶釜に乗って3人を別の場所に!」

 影から無造作にエリクサーの入った小瓶を取り出し、ミズキに投げ渡し大声をあげる。
 小瓶がコツンと胸元にあたったところで、ミズキがようやく状況が飲み込めたように頷いた。

「わか……わかった!」

 ミズキはコクコクと頷き、跳ねるように駆け出していく。
 まるで、ミズキの動きに呼応するように、茶川が走り寄ってきた。
 そのままふわりと慣れた調子で、茶釜に跨がったミズキは、3人を抱えて遠く離れていく。
 とりあえず、獣人3人は心配だが、ミズキに任せる。
 離れてエリクサーを飲ませれば、きっとなんとかなるはずだ。
 次は。

「カガミ!」
「壁で囲むんでしょ? もうやってる!」

 オレが名前を呼んだ直後、カガミの怒鳴り声のような返答が聞こえた。
 さすがだ。
 そういえば、ハロルドは?
 モルススの毒は、人以外にとって毒だったはずだ。

「ハロルド」
「拙者は大丈夫でござる!」

 ハロルドは胸をドンとたたき返事する。
 あいつは平気なのか。
 あの様子であれば、ほっておいても大丈夫だろう。

「先輩! あれ、壊しましょう」
「あぁ! まかせろ! オレがぶっ壊す」

 こんな物騒なものはとっとと破壊するに限る。

「ヌネフ! 頼む! 風で粉をとばしてくれ」

 オレが魔導弓タイマーネタを取り出している途中、サムソンの声が聞こえた。
 風で、飛ばすか。
 確かに、町に粉が充満するのは避けたい。

「遙か遠くへ、飛ばしてあげますよ」
「てやんでぇ」

 真面目な顔したヌネフがオレ達の側へと降りて、そう言った。
 なぜか、ノームも、ツルハシで地面を叩いている。
 ヌネフの応援でもしているのだろうか。
 だがヌネフの言葉を聞いて、安心できた。
 タイマーネタをトーテムポールへと向ける。

「下から、こいつで貫く! サムソン、手伝ってくれ」
「まかせろ」

 カラカラと音を立てながら金色の粉を吐くトーテムポールを破壊すべく行動する。
 今度は大丈夫、射線上には何もない。広い空が広がるだけだ。

「ラルトリッシに囁き……」

 躊躇無くタイマーネタを発射する。もちろん、フルパワーでだ。
 光の柱がトーテムポールを貫く。

『ガァン』

 けたたましい轟音。まるで鐘が鳴るような音がして、トーテムポールが真っ二つに破壊される。

『ドォン、ドォン』

 2度大きな音がして、大きな破片となったトーテムポールが倒れた。

『ガガ……ガ……』

 倒れた後も、少しだけトーテムポールの顔は震えていたが、すぐに止まり、金色の粉も吐かなくなった。
 とりあえず、モルススの毒を吐くことはなくなったようだ。
 タイマーネタを影に直し、一息つく。

「焦ったぞ」
「これで、ミズキ姉さんが連れて行ったピッキー達が無事だったら、一安心っスね」

 プレインの言葉に頷く。

「それにしても、こいつ何だったんだ」
「わからないが、ノイタイエルはアウトだぞ」

 粉々になったノイタイエルに視線をやり、サムソンが呟く。

「魔法が……認証が失敗したってことっスかね?」
「うーん、どうなんだろうな。わからないことだらけだ」
「ちょっとボク、ミズキ姉さんを追いかけてくるっス」

 終わったことを伝えにプレインが動き出そうとした時。

「気をつけろ、そいつは爆発するぞ!」

 聞いたこともない男の声が辺りに響いた。
 えっ?
 その言葉を聞いて、トーテムポールを見ると、そこで初めて異常に気がついた。
 バラバラになったトーテムポールの破片が小刻みに震え、そして少しだけ膨らんでいたのだ。
 ゆっくりゆっくり、震えながら膨らみは大きくなる。

『チチチチチチチ』

 しかも、気持ち悪い音がこだましていた。
 小さな音だ。
 見逃していた。
 まるで、秒針の動く音。
 そう、映画でみる爆弾のタイマーが進むような音だ。
 爆発する?
 秒針が動くような音はどんどんと間隔が短くなっていく。
 やばい。爆発する。
 妙な確信があった。ここから逃げるどのくらい爆発どうかわからない。
 トーテムポールの破片が、黄色い光を放ちだした。
 時間がない。

「皆、伏せろ!」

 大声をあげる。幸い、深くは積もっていないとはいえ、周りは雪だ。雪に埋もれるように体を沈めれば凌げるかもしれない。

『ドゴォン……ゴッゴォォン』

 伏せろと、オレがそう言って、地面にダイブしたのとほぼ同じタイミングで、轟音が響いた。
 2度。
 2度?
 そしてパラパラと土煙が空から落ちてくる。
 ふと顔を上げると、先ほどまでトーテムポールの破片が転がっていた場所が大きく盛り上がっていた。
 まるで、地面が円柱状に隆起したように。

「ひょっとして、ノームが……トーテムポールの破片を地面ごと盛り上げたっスか?」
「てやんでぇ」

 プレインの問いかけに、まるでそうだと言わんばかりにツルハシを頭上で振り回した。

「助かったよ。ノーム」

 これで終わりだよな。
 さすがに、これ以上なにも起こらないだろう。

「それにしても……」
「毒に、自爆って、あぶなすぎっスね」
「確実に俺達を殺しにきてたぞ。あれ」

 オレ達というより、獣人を、殺す気満々な挙動だった。
 なんだったんだ、一体。

「でもこれで大丈夫……っスよね?」

 プレインが同意を求めるように質問してきたときだ。
 空がいきなり暗くなった。

『ポチャン……』

 とても澄んだ水音があたりに響いた。
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