召還社畜と魔法の豪邸

紫 十的

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第十七章 立ちはだかる現実

こんごについて

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 不機嫌なノアが寝た後、夜遅く。
 同僚たちと話をした。
 オレが、この世界とは別の異世界で体験したこと。
 そこで話をしたこと。
 さらには今後のことについてだ。

「ということは、何かすごい人達が殺しに来るってことっスか?」
「まあ、そうなるな」
「マジか」
「で、結局さ相手は?」
「うーん……なんとかなんとかの、イ・アっていう人の仲間らしいよ」
「なんとかなんとかって……」
「いや、いきなりだったし、早口で名前の前についた言葉が長かったんだよ」

 名乗りをもうちょっとちゃんと聞いておけばよかったと思うが、覚えきれなかった。
 でも、なんだかなじみのある言葉でもあったな。
 もう一回聞けば思い出せるかもしれない。
 逆に、名前は二文字だったので、簡単に覚えることができた。

「情報は多い方がいいと思うんです」
「おいおい、何かヒントはないのか?」
「あとは、モルススの者だって、赤い髪の人が言ってたよ。で、イ・アっていう人はそれを否定していた」
「モルスス、毒をばらまいた国っスね」
「病の王国だっけかな。まぁ、正確なところはわからないけど」
「うーん」

 オレの言葉を聞いて、サムソンが椅子に座ったまま大きくのけぞった。
 サムソンを始め、皆、冷静だった。
 カガミは頬杖をついて前をぼんやりと見ている。
 ミズキと、プレインは、興味のない会議での態度そのものだ。

「なんか急にスケールが大きくなっちゃって、分かんないっスね」

 プレインはいつもの調子でぼやくように言った。

「まぁ、何とかなるでしょ」

 ミズキも、いつもの調子だ。しかも人が真面目な話をしているのに酒を飲んでいる。
 まったく。

「真面目な話をしてるのに、酒なんか飲みやがって」
「まあまあ」

 そう言ってオレのコップに、ミズキが酒を注ぐ。

「まだ、お茶残ってたんだけど……」
「つまみも、あるんだしさ」

 そんなこと言って干し肉を入れた皿を差し出してきた。
 まったく。やる気があるのか。
 しょうがないので、干し肉を手に取り、モグモグと食べる。

「で、問題は、これから更に危険なことになるってことだ」
「それで?」
「いや、もう一度、身の振り方を考えた方がいいんじゃないかなと思ってね」
「リーダは帰るの?」
「そんなわけないだろ」
「ですよね」
「私もさ、そのうち帰ることになるとは思ってるよ。でもさ、危ない状況にあるって言われて、ノアノアやチッキー達を置いて帰るわけないじゃん」

 ミズキが当然のことのように言う。

「俺もだな、残るぞ」
「ボクも残るっスよ」
「私も残ります。そうなれば、対策をした方がいいと思うんです。思いません?」

 皆が残ると言った後、カガミが対策を立てることを提案する。
 確かに対策は必要だな。

「リーダ。お前がやった、あの魔改造聖水。あれもう一回作るべきだと思うぞ」

 確かにそうだな。
 同じような敵にあたった時、あれは武器になる。

「じゃ、もう一個の樽で神殿周りするよ」
「他にも、神殿で何かお役に立ちそうなもの……いえ、とりあえず、なんでもかんでも買っといた方がいいと思うんです。思いません?」
「そうだな」

 今回、聖水が偶然役にたったのだ、先入観なしで、道具は準備したほうがいいだろう。

「聖なる武器とかあるのかな」
「神殿で、武器を売っている場面は見たことないが、もしかしたら、あるかもしれない」
「俺は、魔導具に、屋敷にある目録、そのあたりを当たってみるぞ」

 その後も夜遅くまで皆で話し合った。
 結局、誰1人として元の世界に帰るつもりはないこと。
 襲いかかってくると予告のあった敵について、対策を立てる話で盛り上がった。
 それが、オレにはなんとなく嬉しかった。

「ギャーギャー」

 翌日は、うるさい鳥の声で目が覚める。
 二日酔いで頭が痛い中、さらに鳥の叫び声でガンガンと痛みが増した。
 なんなんだ一体?
 ノソノソと起き上がり、広間へと向かう。
 すると広間には、カガミとチッキーが話をしていた。

「あっ、おはようございます。顔でも洗ってきたらどうですか?」
「そうなんだけどさ、鳥の声がうるさくて。あと、薬飲みたいんだけど」
「飲めば? 影の中にあるんですよね?」

 そうだった。
 しゃがみこみ、薬を取り出し、エリクサーを飲み干す。
 一瞬で二日酔いが治るので、この世界は便利だなと思う。

「領主様が、すぐに城へと来るように。ですって」

 オレがそうやって、二日酔いからの解放でスッキリ気分を味わっていると、カガミが声を上げた。
 あのうるさい鳥は、領主の送ってきたトーク鳥か。

「まぁ、近々行くつもりだったけどさ。じゃあ今日やることは決まりだな。とりあえずオレが行けばいいだろう? カガミ達は部屋を掃除して……」
「いや、全員で来るようにということですよ」
「全員? チッキー達も?」
「いえ、ノアサリーナと5人の従者、全員で来ること……だそうです」

 そっか。
 すぐそばのチッキーが安心した様子で、小さく息を吐いていた。
 相変わらずお偉いさんは苦手なようだ。
 オレも嫌だけど。

「全員で来い……か。しょうがない。じゃ、他のやつもたたき起こして、朝食食べたら出発しようか」
「ミズキ以外、皆起きてますよ。そうですね。ついでにレーハフさんのところにも寄っていきましょう」

 帰って早々、のんびりする暇もなく、城へと出発する。
 もっとも御者はピッキーに任せるし、海亀の背には小屋を乗せた状態のままなので、特に苦労もせず町へと着くことができた。
 ゴロゴロしつつ、町へと行けるのは凄く快適だ。
 ギリアの町で、オレ達の様子は珍しいようで、指さされたりしていた。
 おかげで、小屋の外には出にくい。
 ノアは小屋の窓からチラチラと外を見て、すごく嬉しそうにしていた。
 城へと着くと、ヘイネルさんとエレク少年、それに数人の兵士が待っていた。
 いつもとは違い、大所帯で出迎えられ、こちらも全員が揃っている状態だ。
 いつもの執務室は、人数的に無理だという判断なのだろう。
 大きな部屋に通される。
 そこには領主と、そして、青い髪をして、金属製の仮面をつけた男が待っていた。
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