召還社畜と魔法の豪邸

紫 十的

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第十八章 未知への道は皆で

しょうじきものとぶらうにー

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「なんとかなったな」
「いきなり月への道を修復することになって焦ったよ」

 農村での一泊を経て、悠々自適に帰宅の途へとつく。

「私は心配してなかったけどさ」
「ミズキお姉ちゃんは心配じゃなかったの?」

 いつもの調子のミズキに対して、ノアは驚いた様子で質問する。

「だってさ、ノアノア、いつも何とかなってたじゃん」
「うん」
「そうだな皆で一緒にやればなんとでもなるさ」
「皆で……一緒に?」
「そうそう。例えば、怖い話聞いた後で、夜に1人でトイレに行くのはこわいけど、誰かについてきてもらえば怖くないだろ?」

 こういうときは例え話だ。
 身近な事例に当てはめればわかりやすく説明できる。

「え?」
「いや、ちょっと待ってリーダ」
「お前、それ、たとえが違うだろ」

 ところがオレの例え話は、凄い勢いで皆にダメだしされた。

「数の暴力を感じる」
「何が数の暴力なんだか」

 しょうがない別の例え話……。

「そうだな。失敗したかもって思ったり、どうしたらいいかわからない事ってあるだろ?」
「うん」
「そんな時に、皆に相談するんだ。そうしたら、仕様ってことにして乗り切ろうって意見が……」
「シヨウ?」
「ちょっとリーダ。もう黙ってて」
「ノアちゃん、仕様とか言われてもわからないだろう。それに、それ仕事の話じゃないか」

 くそ。またダメだしされた。
 でも、確かにサムソンの言うとおりか。仕事の話をしても、ノアにはわかんないよな。

「そうだよ。リーダ、例え話が下手すぎ」
「では、ミズキさん。どうぞ」
「あのさ。食べ物屋さんに入るでしょ?」
「うん」
「どれ食べようかなって思った時、皆でいろんな料理を頼めば、いろんな料理が食べれるでしょ?」
「うん」
「そういうことだよ」
「いや。違うだろ」
「えー。結構自信あったんだけど」

 帰りながら、例え話を皆で出し合って進んだ。
 結局のところ、最後まで皆が納得する例え話は出なかった。
 案外、誰でもわかるような例え話というは難しいようだ。
 でもノアは、最後には解ってくれたようで、笑って頷いていた。
 帰り道も順調。
 いろんな場所を旅していたオレ達にとって、穏やかで緑あふれるギリア付近など、おちゃのこさいさいなのだ。
 ギリアの町に帰りがてらより、成功報酬を貰い意気揚々と帰る。
 帰宅してからは、また日常の再会だ。
 仕事をして、借金返済。
 カガミとミズキ、それからノアとチッキーはブラウニーの監督。
 トッキーとピッキーは、ギリアの町で大工のお仕事。
 それぞれが、仕事にあけくれ、そして充実した日々が続く。

「呪い子が答えをださぬだと?」
「えぇ。お嬢様にとっては急な話。一月は短すぎます」
「は? お前は、何を言っているのだ? 呪い子にわざわざ父親と名乗った方に対し、返事を渋るような娘など、力尽くで連れていけばいいだろう?」

 手紙を貰ってから一月が経過したので、事情を説明しにいったら、すごい剣幕で怒られた。
 どうにも価値観の相違があるようで、ムカつきっぱなしの会話だった。
 とりあえず、回答期限を半年ほど延長するという事になった。
 もっとも、そんな回答期限など知ったことではない。
 勝手に言っていろという感じだ。

「あんまり、ノアノアにとっては良い話じゃないかもね」

 その時の話を皆にしたとき、ミズキが言った一言にオレも同感だった。
 だが、日常生活は順調に進む。
 借金もついに残すところ金貨800枚になった。
 もっとも、利息は別。
 だけれど、秋頃に元本完済できればいいねと話をしていたが、それより早く完済できる状況が嬉しい。
 そして、そんなある日。
 昼も過ぎ、そろそろ夕方という頃、地下室でブラウニー共の監督をしているはずのチッキーが広間へとやってきた。

「ひとやすみ? なにかお菓子を出しましょう」
「ちがうでち。お嬢様が、お話があるから、皆様に地下室に集まって欲しいそうでち」

 そして、チッキーはそう言った。
 お話?
 地下室でか。

「なんでしょうか? 手紙の返事でしょうか?」

 サムソンの部屋へと、駆けて行くチッキーを見送ったカガミが、首を傾げて言う。
 ノアが全員に話があるというからには、手紙の返事なのだろうな。
 どんな結論であれ、ノアの望みは叶えてあげるつもりだ。

「言ってみればわかるさ」

 同僚達と一緒に向かった地下室では、予想外の光景が広がっていた。

「ブラウニーがいっぱい」

 カガミが地下室に降りた途端、発した一言。
 いつもの1人あたりブラウニー7人。2人でブラウニー14人という数ではない。
 何10人という数のブラウニーたちが手分けして魔法陣を描き写していた。
 ノアは床に四つん這いになって、魔道具を一生懸命操作している。
 だが、変装の魔法を使っていない。
 いつものノアだ。

「リーダ」

 ノアが、オレ達に気がつき、トコトコとこちらへと向かってきた。

「変装は?」
「あのね。ブラウニーさん達に正直に言ったの」
「正直に?」
「うん。騙してごめんなさいって」

 騙してごめんなさい……。
 その言葉を聞いて、オレは一つ、大きな間違いをしていたことに気がついた。
 ノアはブラウニーを騙していたことについて、罪悪感を抱いていたのだ。
 カガミもそれに気がついたようで、無言でうつむいていた。

「そっか」
「そうしたらね。ブラウニーさん達は最初から知ってたんだって」
「知ってたの?」
「うん、面白いから黙ってたって言ってた。だからワシらもごめんなさいって」

 ノアの視線を感じて、1人のブラウニーがこちらへとやってきて、ドンと胸を叩いた。

「そうじゃ。そもそも、我らが友、ジラランドルの恩人たる嬢ちゃんの願いを聞かんアホは、ブラウニーにおらんけん」

 そうか、最初から知っていたのか。

「それでね。いっぱい色んなお話したの。お手紙を読んで、お父さんに会いに行くって話も。この魔法陣を全部描き写して、早く調べなくちゃダメだってことも。そうしたらね、ブラウニーさん達が今回だけ、今日中に全部やってくれるって」
「今日中に? 今日中にですか? それはすごいと思います。思いますが……」

 カガミがうろたえた様子で声をあげる。

「いや、まだたくさんあるぞ。これ」

 サムソンも同じ感想を抱いたようだ。
 困惑した様子で大声をあげた。

「ワシらがやるって言ったらやるけん。黙って見とけ」

 そんなカガミとサムソンに対し、ブラウニーが笑いながらそう答えた。

「早くお父さんに会いに行くんだろ? だったら、こんな仕事はちょちょいのちょいとすぐに片付けてやるわい」

 別のブラウニーも、こちらに向かってそう言った。
 それからは、ブラウニーは全員がテキパキと動く。

「あれがブラウニーの本気か」

 いつもとは全然違う。
 統率のとれた動きだ。しかし、楽しそうに歌いながら仕事をしている。

「だからね。あのね」

 ノアは改まった様子で、オレ達を見た後で言葉を続ける。

「一緒に……皆、一緒についてきてほしいの」
「ノアノアのお父さんのところに?」
「うん」
「もちろん。いいよ」

 言われなくても着いていくつもりだった。同僚達ともその予定で話をしていた。
 断る理由はない。

「当たり前だよ。ついていくよノアノア」
「そうですよ。また海亀に乗っての旅、今度はもっと快適に進めると思います」
「そうそう。楽しく行くっスよ」
「いろいろ魔導具も準備しているぞ」
「兄ちゃん達も、ぜったい一緒にいってくれるでち」

 全員が、快諾。

「うん!」

 その言葉を聞いて大きくノアは頷いた。
 それからは、皆で協力して一気に作業を進める。
 オレ達、男性陣は、紙の運搬。
 女性陣は、魔導具の操作に、ブラウニー達のバックアップ。
 いつもはノアも、チッキーも、寝る時間になっても作業を進めた。
 ちょっとだけ夜更かしをしたが、予想を遙かに超えるスピードで魔法陣の転記が終わった。

「ちと疲れたワイ」

 そういって消えていくブラウニー達を見送る。

「ね。言った通りでしょ。リーダ」
「なにが?」

 得意気なミズキに聞き返す。

「何が言った通りなんだ?」
「ブラウニーって、良い奴らだってこと」
「まぁ。そうだな。いや。待て待て……あいつら、最初から解ってたって言ってたよな?」
「そういや、そうっスね」
「ということは、最初からオレの変装だってわかってて、あの態度だったってことじゃないか。くそ、ふざけやがって。オレを騙すなどと」
「お互い様じゃん」
「あのね。ブラウニーさんたち、リーダの事も大好きだって言ってたよ」
「そうなの?」
「うん。反応が楽しいから大好きだって」
「やっぱり馬鹿にしてやがるじゃないか」

 1人憤慨するオレに、同僚達は笑い、そんな同僚達につられてノアも笑った。
 まったく。
 しょうがない。
 まぁ、今回だけは許してやるか。
 そうして、少しだけノアが夜更かしした夜は終わった。
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