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第二十章 聖女の行進
たいれつとじょれつ
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明日には、帝国へ入るという時のことだ。
「報告があります」
小屋の中でくつろいでいると、オレの所までピッキーがやってきてそう言った。
「どうしたの?」
「神官の皆様がリーダ様を呼ばれています」
「そっか」
いったいなんだろうと軽い気持ちで出てみると、各神殿の代表者たちが一堂に会していた。
「えっ、誰が先頭で入るかってことですか?」
「そうトヨ」
「まぁ、皆さんで話し合っていただければ……」
帝国領に一行が足を踏み入れるにあたって、先頭や隊列をどう組むのかという話らしい。
パレードしつつの入国しようというのが、神官達の決定事項らしい。
「えぇ。すでに話し合いました」
「そこでですな。ここはやはり、この海亀。しいてはノアサリーナ様を先頭にということになりました」
「へぇ。そうなんですね」
神官同士の話会いなのに、オレ達が先頭だと勝手に決めやがった。
今回の騒ぎで少しだけ見直したのに。
まったく。
聞けば、これから向かうアサントホーエイの町では、多くの民衆が俺たちの到着を待っているという。
聖なる力を撒き散らし、アンデットを蹴散らし進む。
そんなオレ達はいつの間にか英雄になっていた。
アサントホーエイから度々やってくる迎えの人達は、口々にオレ達を褒め称えた。
あまりにべた褒めなので、自分達のこととは思えない。
何も考えずにダラダラと進んでいただけであったが、周りの目はそうは捉えなかったようだ。
「町とこの丘陵地帯を分かつ壁上から見れば、アンデッドを消し去り進む皆様は、神の使いと見られても間違いのない様子でございました」
なんてことを、アサントホーエイからやって来た伝令役の神官は楽しそうに言った。
それほどの盛り上がりであれば、隊列は大事……だそうだ。
「先頭を進む隊は、この一行の代表を示します。加え最も名誉ある立場ということもなります」
今回の場合は、神々の力を束ね進んでいる。
だから、1つの神殿が栄誉を受けるわけにはいかない。
なので是が非でも、オレ達を先頭に、入らなくてはならないということだそうだ。
代表はともかく、民衆の前で拍手喝采を浴びながらの帝国入りか。
うーん。
さすがに目立ち過ぎだろう。
ノアが嫌われるのは嫌だ。
とはいえ、過剰に持ち上げられるのも、手放しでは喜べない。
「これはノアサリーナ様にとっても良いことトヨ」
オレの考えを見透かしたかのようにエテーリウが声を上げる。
「良いこと?」
「有名とはいえ異国の呪い子であるノアサリーナ様が、帝国での安全を保障されるにはそれなりの実績が必要ヨ。野心さえ抱かなければ、民衆の支持は、最高の実績になるトヨ」
なるほどな。
一応、紋章付きの手紙があるから何とかなるとは思っている。
だが、安全を保証するネタは沢山あったほうがいいだろう。
功績がある呪い子ということであれば、より立場がよくなるか。
「先頭を進むって、小屋の中に引きこもるわけにも行かないですよね? 皆で表に立って手を振ったりすればいいのでしょうか?」
「むぅ。手を振るかどうかは、どちらでもいいと思うトヨ」
「そうですか」
とりあえず、神官達のイメージとオレが持っているイメージをすりあわせる必要がありそうだ。
ここは異世界。
常識的なところに、ズレがあると、ノアのイメージが逆に悪くなりかねない。
「これは一般的な話なのですが」
どうしようかと考えていると、挙手をした後、犬顔の獣人が発言した。
ケルワッル神田の代表者だ。
垂れ耳、細顔で落ち着いた風貌。
「ええ一般的な話として?」
この人は短いやり取りの中でも調整役としては優秀だと分かる立派な人だ。
助言なら聞きたいと思う。
「コホン」
彼は小さく咳をしてから言葉を続けた。
「主が栄光あるパレードの代表となる場合については、信頼する従者が先頭に立ち、印を持ち進むというのが習わしでございます」
なんとなく言っていることはわかる。
つまりは露払い的な先頭車両につづいて、その後を優雅に車に乗ったお偉いさんが手を振りながらパレードするみたいなものか。
おきかえると、茶釜に乗った誰かが先導役になって、その後をノアが乗った海亀が走ると。
「先頭は……茶釜、いやあのエルフ馬。その後に海亀って感じか」
「そういうことになります。難しく考えることはございません。ノアサリーナ様こそが主であり、自らは臣下であるということを示した上で、先頭に立ってアサントホーエイに入ればよいのです」
「そうですか。ノアが……いや、ノアサリーナ様が姿を見せたほうがやはりいいと?」
ノアは自分の呪いにより、何かを引き起こすのではないかと考えるふしがある。
神官達の言いたいこともわかるが、あんまり目立つのはノアが望むことなのか不安だ。
「そうですね。不必要に姿をお隠しになるのは、平民はともかく貴族相手には良い方法とは思えません。名誉を受けるべきときに、きちんと作法に基づき振る舞えることは先ほどのエテーリウ様の言葉ではありませんが、一人前として見られるためには大事なことかと。今後のことを考えると姿をこういった公の場で見せられた方がよろしいのではないかと愚考します」
オレがあまり前向きでないことを感じとったのか、少しだけケルワッル神官は念を押すように説明した。
だが、無理強いしようというより、心配してのコメントといった感じだ。
エテーリウも、ノアにとって良いことだといっているしな。
助言にはありがたく従うかな。
ノアが1人で姿を見せるわけでもない。
皆も一緒だから大丈夫だろう。
あとは先導役か。まぁ茶釜に乗ったミズキにでも任せりゃいいかな。
「報告があります」
小屋の中でくつろいでいると、オレの所までピッキーがやってきてそう言った。
「どうしたの?」
「神官の皆様がリーダ様を呼ばれています」
「そっか」
いったいなんだろうと軽い気持ちで出てみると、各神殿の代表者たちが一堂に会していた。
「えっ、誰が先頭で入るかってことですか?」
「そうトヨ」
「まぁ、皆さんで話し合っていただければ……」
帝国領に一行が足を踏み入れるにあたって、先頭や隊列をどう組むのかという話らしい。
パレードしつつの入国しようというのが、神官達の決定事項らしい。
「えぇ。すでに話し合いました」
「そこでですな。ここはやはり、この海亀。しいてはノアサリーナ様を先頭にということになりました」
「へぇ。そうなんですね」
神官同士の話会いなのに、オレ達が先頭だと勝手に決めやがった。
今回の騒ぎで少しだけ見直したのに。
まったく。
聞けば、これから向かうアサントホーエイの町では、多くの民衆が俺たちの到着を待っているという。
聖なる力を撒き散らし、アンデットを蹴散らし進む。
そんなオレ達はいつの間にか英雄になっていた。
アサントホーエイから度々やってくる迎えの人達は、口々にオレ達を褒め称えた。
あまりにべた褒めなので、自分達のこととは思えない。
何も考えずにダラダラと進んでいただけであったが、周りの目はそうは捉えなかったようだ。
「町とこの丘陵地帯を分かつ壁上から見れば、アンデッドを消し去り進む皆様は、神の使いと見られても間違いのない様子でございました」
なんてことを、アサントホーエイからやって来た伝令役の神官は楽しそうに言った。
それほどの盛り上がりであれば、隊列は大事……だそうだ。
「先頭を進む隊は、この一行の代表を示します。加え最も名誉ある立場ということもなります」
今回の場合は、神々の力を束ね進んでいる。
だから、1つの神殿が栄誉を受けるわけにはいかない。
なので是が非でも、オレ達を先頭に、入らなくてはならないということだそうだ。
代表はともかく、民衆の前で拍手喝采を浴びながらの帝国入りか。
うーん。
さすがに目立ち過ぎだろう。
ノアが嫌われるのは嫌だ。
とはいえ、過剰に持ち上げられるのも、手放しでは喜べない。
「これはノアサリーナ様にとっても良いことトヨ」
オレの考えを見透かしたかのようにエテーリウが声を上げる。
「良いこと?」
「有名とはいえ異国の呪い子であるノアサリーナ様が、帝国での安全を保障されるにはそれなりの実績が必要ヨ。野心さえ抱かなければ、民衆の支持は、最高の実績になるトヨ」
なるほどな。
一応、紋章付きの手紙があるから何とかなるとは思っている。
だが、安全を保証するネタは沢山あったほうがいいだろう。
功績がある呪い子ということであれば、より立場がよくなるか。
「先頭を進むって、小屋の中に引きこもるわけにも行かないですよね? 皆で表に立って手を振ったりすればいいのでしょうか?」
「むぅ。手を振るかどうかは、どちらでもいいと思うトヨ」
「そうですか」
とりあえず、神官達のイメージとオレが持っているイメージをすりあわせる必要がありそうだ。
ここは異世界。
常識的なところに、ズレがあると、ノアのイメージが逆に悪くなりかねない。
「これは一般的な話なのですが」
どうしようかと考えていると、挙手をした後、犬顔の獣人が発言した。
ケルワッル神田の代表者だ。
垂れ耳、細顔で落ち着いた風貌。
「ええ一般的な話として?」
この人は短いやり取りの中でも調整役としては優秀だと分かる立派な人だ。
助言なら聞きたいと思う。
「コホン」
彼は小さく咳をしてから言葉を続けた。
「主が栄光あるパレードの代表となる場合については、信頼する従者が先頭に立ち、印を持ち進むというのが習わしでございます」
なんとなく言っていることはわかる。
つまりは露払い的な先頭車両につづいて、その後を優雅に車に乗ったお偉いさんが手を振りながらパレードするみたいなものか。
おきかえると、茶釜に乗った誰かが先導役になって、その後をノアが乗った海亀が走ると。
「先頭は……茶釜、いやあのエルフ馬。その後に海亀って感じか」
「そういうことになります。難しく考えることはございません。ノアサリーナ様こそが主であり、自らは臣下であるということを示した上で、先頭に立ってアサントホーエイに入ればよいのです」
「そうですか。ノアが……いや、ノアサリーナ様が姿を見せたほうがやはりいいと?」
ノアは自分の呪いにより、何かを引き起こすのではないかと考えるふしがある。
神官達の言いたいこともわかるが、あんまり目立つのはノアが望むことなのか不安だ。
「そうですね。不必要に姿をお隠しになるのは、平民はともかく貴族相手には良い方法とは思えません。名誉を受けるべきときに、きちんと作法に基づき振る舞えることは先ほどのエテーリウ様の言葉ではありませんが、一人前として見られるためには大事なことかと。今後のことを考えると姿をこういった公の場で見せられた方がよろしいのではないかと愚考します」
オレがあまり前向きでないことを感じとったのか、少しだけケルワッル神官は念を押すように説明した。
だが、無理強いしようというより、心配してのコメントといった感じだ。
エテーリウも、ノアにとって良いことだといっているしな。
助言にはありがたく従うかな。
ノアが1人で姿を見せるわけでもない。
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