召還社畜と魔法の豪邸

紫 十的

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第二十一章 行進の終焉、微笑む勝者

まおうのふっかつ

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 この世界には6体の魔王と魔神がいる。
 魔神と6体の魔王は、全て眠りについていて、近々復活するらしい。
 新たに生まれる7体目の魔王と一緒に。
 酒場の吟遊詩人から聞いたことがあり、神官達も同様に言っていた。
 国の首脳などは、魔神の復活が近日中となれば、それを把握できるという。
 だから、遠くない未来に魔神は復活するが、まだその時期ではないと断言できるそうだ。
 その予測はとても正確で、魔神がこの地に現れてから、一度も予想外の時期には復活することがなかった。
 魔王の復活や誕生は、魔神の復活と同時。
 例外はない……はずだった。

「第6魔王デュデュディアが復活したとのことです!」

 ユテレシアからもたらされた報告。
 7度目の魔神復活を前にして、魔王のみが復活した。
 いままでに無い状況。
 魔神復活と同時ではなく、単独での復活。
 それから毎日のように続報が届いた。

「魔王デュデュディアは、ケルワテにある魔神の柱にて復活したようです」
「かねてより聖地ケルワテは対策を立てております。それに、勇者の軍も向かった模様」

 ここから遙か南で復活した魔王の討伐には、勇者の軍が行くらしい。
 遠く離れた場所での出来事ということで、聖地タイアトラープに住む人々は安堵していた。
 だが、警戒を緩めない人もいる。

「あれ、霧が……」
「霧がまとまって、巨人?」
「あぁ、あれはウォータージャイアント。聖地タイアトラープを守り、魔神の柱を見つめる存在です」

 神殿は警戒をゆるめない。
 おそらく安堵し楽観的なのは一般の人だけで、神殿やお偉いさんは違うのだろう。
 このような状況でも、オレ達は仕事を粛々と進める。
 行進参加者の意向調査。
 マークシートを配布して、回収。
 それをパソコンの魔法に取り込んで、集計。
 そんなことをしていると、あっという間に月日は経った。
 しかも、そろそろ芽吹きが近い……つまりもうすぐ春だという。
 だが、イブーリサウトはまだ来ない。
 もっとも、まだまだ意向調査が終わっていないので、来ないのは助かる。
 どうやら魔王復活という報告をうけて、途中の町で部隊は動いていないようだ。

「それにしても、いつの間にか年を越していたんだな」

 こっちの人は、収穫祭は祝うけれど新年はほとんど祝わないので、いつ新年を迎えたかわかりにくい。

「今年はほとんど雪が降らなかったっス」
「帝国で雪が積もらないことなんて、いままでなかったことだと聞きました」
「雪はともかくさ。お菓子の祭典には間に合わないってことだよね」
「しょうがない。いきなり妙なことになったんだ。行進しつつ仕事は無理だったからな」

 あとはイブーリサウトという奴が来るまでに、なんとか間に合わせるだけだ。

「領地が心配なのです」

 そんな中、諸侯から派遣された騎士や戦士団のいくつかが、帰郷することを申し出てきた。
 魔王が復活し、領地が心配になってきたという。

「では、皆様ありがとうございます。無事、帰郷することを願っています」
「ノアサリーナ様。こちらのわがままをお聞き入れいただきありがとうございます」

 引き留める理由はないので、気持ちよく送り出すことにした。
 ついでに、思いつきを打診してみる。

「いえ、ところでお願いがあるのです」
「お願い……ですか?」
「リーダ。説明を」
「はい。ノアサリーナ様のお願いというのは、あなた方の領地に住んでいた者、帰り道に故郷のある者がいます。その者達を守り、無事に故郷へと戻れるよう助けて欲しいのです」
「かしこまりました。では、希望する者を募り、送り届けましょう」
「それには及びません。すでに把握しています。それから、旅の間に必要となる食料等もお渡ししましょう」

 せっかくなのでと、帰郷を願う人のうち、今回帰郷するグループの通り道にかかる人の護衛をお願いした。
 ダメ元だったが、即答でOKをもらえた。
 加えて物資の提供と、すでに希望者は把握していることを伝え、リストを渡すと、めちゃくちゃ驚かれた。
 しばらく声を出せない人がいたほどだ。
 マークシートを書いてもらったのだから、そのくらいすぐに分かりそうなものなのに。
 もしかすると、この世界におけるリアクション芸だったのかもしれない。
 リストを受け取った人、芝居がかっていたしな。
 混迷を深める世界情勢とは違い、オレ達は順調だ。
 民衆からのマークシートの回収に、ほとんど時間が掛からなかったことは、嬉しい誤算だった。
 ほんの数日で、行進に参加していたうち一般の人は全員が回答をくれた。
 なかなか返してくれなかった人は、お守りにしたいという人だけだった。
 そういう人には、後日マークシートを返却することにする。
 諸侯から派遣された人達は、大部分が故郷に相談してから回答するということで保留中だ。
 というわけで、回答をくれた人からリストを作成する。
 そうやって作ったリストを渡し、帰郷を願った人達が集められる。

「我らは誤解しておりました。ノアサリーナ様、お元気で」
「私達にできることがあればいつでもお申し付けください」

 諸侯から派遣された騎士数人が代表として、お別れの言葉をノアにかける。
 それから、大神殿前の広場で、ちょっとした送別会のような催しをした。
 特に企画したわけではないが、なりゆきでそうなった。
 急ごしらえの船にのり、一団が去って行く。
 大神殿を取り囲む湖のような水路を進む一団。

「いっちゃった」
「そうだね」
「あのね、皆ありがとうって」
「いっぱいカロメー作ったしね、ラーメンも」
「うん」

 少しだけ笑った後、ノアは去りゆく船をじっと見ていた。
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