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第二十一章 行進の終焉、微笑む勝者
けんじゃリーダとおうじのてがみ
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てっきりノアが畏まった挨拶をして、話が始まるのかと思っていたが、いきなりのことで調子が狂う。
ノアはすごく嬉しそうにニコニコと笑って、オレと神殿長を見ていた。
「確かに私が、リーダです。そして、こちらが主であるノアサリーナ様です」
なんとか、挨拶をひねり出すことができた。
「ようこそ、おいでくださいました。ノアサリーナ様、そしてリーダ様。本神殿長をしておりますタウブーンと申します。此度は、長旅のなか、我らが聖地へとお越しいただき、言葉にできないほどに感謝しております。お手伝いできることであれば、何なりと」
「ありがとうございます。何かあれば是非よろしくお願いします。ただ、私はノアサリーナ様の僕にございます。主はともかく私はそこまで神殿長ほどのお方に頭を下げられるのは……」
とりあえず主はノアで、オレはその配下だよと念を押す。
なんというか、こういう場でノアを差し置くことはまずいのではないかという考えからだ。
身分関係上は、ノアが上だからな。
ここには他の人いるわけだし。
「何をおっしゃいますか!」
サイルマーヤと神殿長は声を揃えて反論する。
そして別の神官がバタバタと一枚の大きな板を持ってきて、側の壁に立て掛けた。
「ご覧ください」
神殿長がトコトコと壁にかかった板の側まで進み、オレ達に向かって声をあげる。
「棒グラフなんてのがあるのか」
サムソンが興味深そうに呟く。
確かに板には棒グラフが書かれていた。
「これは?」
「ゴホン」
小さく咳払いをして、神殿長が説明を始める。
「これはヨラン王国における、信徒の伸びを示したものです。少し独特な表記なので、説明が難しいですが、こちらの低い背の方、これが前回の調査でまとめた信徒の数です」
「では、今は、その横にある背の高い方ですか?」
「左様でございます。さすがリーダ様! 見てください。倍なのです! この伸びは、かのルタメェン神殿を大きく上回っていると推測されます」
「おぉ!」
「そこまで……トヨ」
「賢者とささやかれるリーダ様の助言が、これほどまでの結果を出していたとは」
サイルマーヤが感嘆の声を上げ、エテーリウと、ユテレシアが驚愕している。
というか、ユテレシア……何? その賢者って?
神官達のリアクションを見て、満足げに神殿長は頷き、言葉を続ける。
「この通りです。湧き水に意味を示し、おもむきのある深い眉ある犬の絵により、タイワァス神殿の進む道を示していただいた。リーダ様の行動、そして導く力が、これほどまでにタイワァス信徒を増やしたのです。これぞ、神の使い! リーダ様には本当に感謝してもしきれません、そこでリーダ様には、この聖域でもゆるりと過ごして頂き、さらなるお知恵を借りたいと思います」
「知恵ですか?」
何をやらせようというのだろうか。
さっきからこの人たちの前向きなノリについていけない。
というか、オレはタイワァス神殿を盛り上げたいとは思っていない。
それ以前に、オレの言動を良いように解釈しているだけにしか思えない。
「えぇ。ここはタイワァス神の聖地です。本当は、もっともっと人が来ていいはずなのです。ですが、暑い夏の日であっても、まだなお、この聖地が埋まることはありません。寒い今のような時期となれば言わずもがなでございます」
「はぁ」
この聖地を盛り上げる知恵を出せということか。
勝手にしてくれていた感じだ。
眉の絵のある犬というのは、ハロルドの手配絵のことだろうし、水というのはタイワァス神殿での一件のことだろう。
別にタイワァス神殿を盛り上げようとしてやったことではない。
「きっとリーダ様なら、もう既にお気づきかもしれません。この地を潤す秘策を編み出していただき、この聖地を盛り上げようとお手伝いをしていただきたいのです」
「はぁ」
先ほどから生返事が止まらない。
何か思いついたことがあれば提案する程度かな。
なんだか積極的に考える気にはなれない。
クイクイと小さく袖を引っ張られたので、なんだろうかとノアを見ると、ノアはキラキラとした目で「がんばろうね」と小声で囁いていた。
ノアはやる気らしい。
何にでもノアは前向きだなぁ。
「すぐに何か教えてくださいというわけではありません。ゆるりと過ごしていただく中で何か思いついたことがあれば教えていただきたいのです」
「それは構いませんが」
「さすがリーダ様やはり我々の同志」
サイルマーヤが呟くように言って頷く。
同志?
いつの間にか、仲間扱いにされていた。
これはまずいのではないかと不安になる。
「さて、皆さんをもてなす館の準備は出来ております。この本神殿のそばにある客人用の館を設けさせていただきました。そちらで気が済むまでごゆるりとお過ごしください」
「ありがとうございます」
最も、終始タイワァス神殿側は友好的だ。
この場で、無駄なことを言って関係を悪化させる必要もない。
好意には甘える。
「館には、タイワァス神より加護を受けた、聖なる水が沸き起こる神像もありますし、高台へと進む階段もございます。きっと、この聖地が好きになっていただけるものだと考えております」
こうして神殿長との面会が終わり、オレ達が立ち去ろうとしていた時「うっかりしていました」と神殿長が声を上げた。
そして、ノアに小さな筒を手渡す。
手紙が入っている筒だ。
「これは?」
「皆さんが訪れる前、イブーリサウト皇子からのノアサリーナ様に宛てたお手紙でございます」
「リーダ」
ノアが手紙を受け取り、オレに手紙を渡す。
「こちらで読まれますか? それとも館にいってから?」
神殿長が、ちらりと部屋に置いてあるテーブルを見て言う。
中を少しだけ確認するくらいはここでもいいかな。
館に行ってからだと、忘れちゃうかもしれないし。
手紙に目を通すと、簡潔な内容だった。
皇子イブーリサウトの名において命じる。
お前達には二つの選択肢がある。
私に従い、お前達の配下共々、我が一軍へ組み入れるか。
もしくは死か。
私がお前達に出会うまでに決めろ。
シンプルな手紙の内容。それはオレ達に、配下になるか、それとも死ぬかを選ばせてくれる内容の、とってもありがた迷惑な手紙だった。
ノアはすごく嬉しそうにニコニコと笑って、オレと神殿長を見ていた。
「確かに私が、リーダです。そして、こちらが主であるノアサリーナ様です」
なんとか、挨拶をひねり出すことができた。
「ようこそ、おいでくださいました。ノアサリーナ様、そしてリーダ様。本神殿長をしておりますタウブーンと申します。此度は、長旅のなか、我らが聖地へとお越しいただき、言葉にできないほどに感謝しております。お手伝いできることであれば、何なりと」
「ありがとうございます。何かあれば是非よろしくお願いします。ただ、私はノアサリーナ様の僕にございます。主はともかく私はそこまで神殿長ほどのお方に頭を下げられるのは……」
とりあえず主はノアで、オレはその配下だよと念を押す。
なんというか、こういう場でノアを差し置くことはまずいのではないかという考えからだ。
身分関係上は、ノアが上だからな。
ここには他の人いるわけだし。
「何をおっしゃいますか!」
サイルマーヤと神殿長は声を揃えて反論する。
そして別の神官がバタバタと一枚の大きな板を持ってきて、側の壁に立て掛けた。
「ご覧ください」
神殿長がトコトコと壁にかかった板の側まで進み、オレ達に向かって声をあげる。
「棒グラフなんてのがあるのか」
サムソンが興味深そうに呟く。
確かに板には棒グラフが書かれていた。
「これは?」
「ゴホン」
小さく咳払いをして、神殿長が説明を始める。
「これはヨラン王国における、信徒の伸びを示したものです。少し独特な表記なので、説明が難しいですが、こちらの低い背の方、これが前回の調査でまとめた信徒の数です」
「では、今は、その横にある背の高い方ですか?」
「左様でございます。さすがリーダ様! 見てください。倍なのです! この伸びは、かのルタメェン神殿を大きく上回っていると推測されます」
「おぉ!」
「そこまで……トヨ」
「賢者とささやかれるリーダ様の助言が、これほどまでの結果を出していたとは」
サイルマーヤが感嘆の声を上げ、エテーリウと、ユテレシアが驚愕している。
というか、ユテレシア……何? その賢者って?
神官達のリアクションを見て、満足げに神殿長は頷き、言葉を続ける。
「この通りです。湧き水に意味を示し、おもむきのある深い眉ある犬の絵により、タイワァス神殿の進む道を示していただいた。リーダ様の行動、そして導く力が、これほどまでにタイワァス信徒を増やしたのです。これぞ、神の使い! リーダ様には本当に感謝してもしきれません、そこでリーダ様には、この聖域でもゆるりと過ごして頂き、さらなるお知恵を借りたいと思います」
「知恵ですか?」
何をやらせようというのだろうか。
さっきからこの人たちの前向きなノリについていけない。
というか、オレはタイワァス神殿を盛り上げたいとは思っていない。
それ以前に、オレの言動を良いように解釈しているだけにしか思えない。
「えぇ。ここはタイワァス神の聖地です。本当は、もっともっと人が来ていいはずなのです。ですが、暑い夏の日であっても、まだなお、この聖地が埋まることはありません。寒い今のような時期となれば言わずもがなでございます」
「はぁ」
この聖地を盛り上げる知恵を出せということか。
勝手にしてくれていた感じだ。
眉の絵のある犬というのは、ハロルドの手配絵のことだろうし、水というのはタイワァス神殿での一件のことだろう。
別にタイワァス神殿を盛り上げようとしてやったことではない。
「きっとリーダ様なら、もう既にお気づきかもしれません。この地を潤す秘策を編み出していただき、この聖地を盛り上げようとお手伝いをしていただきたいのです」
「はぁ」
先ほどから生返事が止まらない。
何か思いついたことがあれば提案する程度かな。
なんだか積極的に考える気にはなれない。
クイクイと小さく袖を引っ張られたので、なんだろうかとノアを見ると、ノアはキラキラとした目で「がんばろうね」と小声で囁いていた。
ノアはやる気らしい。
何にでもノアは前向きだなぁ。
「すぐに何か教えてくださいというわけではありません。ゆるりと過ごしていただく中で何か思いついたことがあれば教えていただきたいのです」
「それは構いませんが」
「さすがリーダ様やはり我々の同志」
サイルマーヤが呟くように言って頷く。
同志?
いつの間にか、仲間扱いにされていた。
これはまずいのではないかと不安になる。
「さて、皆さんをもてなす館の準備は出来ております。この本神殿のそばにある客人用の館を設けさせていただきました。そちらで気が済むまでごゆるりとお過ごしください」
「ありがとうございます」
最も、終始タイワァス神殿側は友好的だ。
この場で、無駄なことを言って関係を悪化させる必要もない。
好意には甘える。
「館には、タイワァス神より加護を受けた、聖なる水が沸き起こる神像もありますし、高台へと進む階段もございます。きっと、この聖地が好きになっていただけるものだと考えております」
こうして神殿長との面会が終わり、オレ達が立ち去ろうとしていた時「うっかりしていました」と神殿長が声を上げた。
そして、ノアに小さな筒を手渡す。
手紙が入っている筒だ。
「これは?」
「皆さんが訪れる前、イブーリサウト皇子からのノアサリーナ様に宛てたお手紙でございます」
「リーダ」
ノアが手紙を受け取り、オレに手紙を渡す。
「こちらで読まれますか? それとも館にいってから?」
神殿長が、ちらりと部屋に置いてあるテーブルを見て言う。
中を少しだけ確認するくらいはここでもいいかな。
館に行ってからだと、忘れちゃうかもしれないし。
手紙に目を通すと、簡潔な内容だった。
皇子イブーリサウトの名において命じる。
お前達には二つの選択肢がある。
私に従い、お前達の配下共々、我が一軍へ組み入れるか。
もしくは死か。
私がお前達に出会うまでに決めろ。
シンプルな手紙の内容。それはオレ達に、配下になるか、それとも死ぬかを選ばせてくれる内容の、とってもありがた迷惑な手紙だった。
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