召還社畜と魔法の豪邸

紫 十的

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第二十五章 待ちわびる人達

きまえがいい

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 シナリオコンテスト。賞品は王様からの莫大な褒美。
 金貨1万枚に加えて望む品物が褒美として貰えるという。

「褒美だったのですか。早く戻らねば首を跳ねると聞いて、びっくりしました」
「首を……あぁ、キユウニで其方達は伝言を受けたのか」

 オレの心からの苦情に、領主ラングゲレイグは大した事のないように言う。
 こっちはビクビクしていたってのに。
 そしてやれやれといった調子で、ラングゲレイグは言葉を続ける。

「王より、ノアサリーナ、そしてリーダよ。其方達が直接褒美を受け取るのだ。王の前にて、其方がしくじれば私の首が飛ぶ。であれば、私の首が飛ぶ前に、其方の首を落とそうという心意気からきた言葉だ」

 いらないよ、そんな心意気。
 ん、直接?
 送ってくれるんじゃないのか?
 商業ギルドあたりで、受け取れるものとばかり思っていた。

「王は、新年の祝賀にて、直接に褒美を渡すと言われています。そうなると、これから、すぐに王都へと出発していただく必要がございます」

 そして、側に控えていたフェッカトールがラングゲレイグに続けて発言した。
 すぐ?
 収穫祭が終わったばかりだ。収穫祭が、元の世界で10月の行事だから、新年までは少なくても2ヶ月はある。
 そういえば、ヨラン王国では新年の祝賀をいつ頃やるのかな。
 それから王都までの距離だ。
 キユウニの北だっけかな。
 帝国だと今年は中止だったが、例年は春辺りと行っていたけどな。

「新年の祝賀は、年明けすぐだ。来年はその日付で執り行うと決まった。そして、王の前に出るにあたって、訓練は必要だ。故に、王都まで祝賀の10日前には居なくてはならない」
「普通の旅人が急いで3ヶ月から5ヶ月かかる道のりです。旅慣れた皆さんでも、2ヶ月はかかります」

 出たよ。儀式に参加する前に練習。リハーサル。
 いままでも、多少はいろいろあったが上手くいっている。
 今回も大丈夫だろう。
 王都まで早くて2ヶ月か。それくらいなら飛行島で1ヶ月もかからない。楽勝だ。

「うん? 油断するなよ。新年の祝賀における謁見、そして王からの褒美。王の御前にて、些細な失敗も許されない。ヘタに失敗すれば私の首が飛ぶ」
「えぇ」
「重ねていうが、其方の失敗によっては、私の首が飛ぶ。そうとなれば、準備はしても、しすぎることはない」
「準備……ですか」
「あぁ。準備だ。其方達も、旅から帰ってきたばかりだ。3日待つ。それまでに旅の仕度を終え、ここに来るように」

 3日?
 いや、帰ってきて、せっかくゆっくり出来ると思ったのに。

「私たちだけで、王都に行くことはできます」

 むしろ、オレ達だけの方がいい。
 飛行島でひとっ飛びだ。
 場所だけ教えて貰えれば大丈夫なのだ。

「ダメだ。今回ばかりは、私が其方達を連れて行く」

 だが、オレの言葉にラングゲレイグは首を振る。

「そうですね。速やかに、計画的に、王都へ行って頂く為にも、ここはラングゲレイグ様のお力を借りるしかないかと思います」

 フェッカトールも決定事項のように譲らない。
 何故だろう?

「心配なさらなくても、私達は間に合うように移動いたします。計画的に」

 心配しなくてもいいよと、声を発した途端、ラングゲレイグは席を立ちオレの後に回り込んだ。
 それから、オレの肩にポンと手を置く。

「け・い・か・く……だと? 計画的にだと? 其方達の旅に、計画的という言葉があったとは……知らなかったぞ」

 そして、オレの背後で、失礼なことを言い出した。
 いやいや、今までだって、不可抗力以外は……まぁ、多少は寄り道したけれど……。
 心配性だな。

「いや……」

 オレが反論しようとした時、ランゲレイクがオレの肩に置いた手に力が入る。
 ギリギリギリと音がした気がした。
 痛い。痛い。痛い。

「そう心配するな。私が全身全霊をもって、其方達を王都に送ってやろう」

 とても爽やかな笑顔でオレの顔をのぞき込みつつラングゲレイグが言う。
 爽やかだが真剣味が伝わる。これは逆らえない。
 それから先は、フェッカトールから細かい話を聞いて、屋敷に戻ることになった。

「とまぁ、こんな理由で飛行島での旅は、お預けかな」

 早速、同僚達に説明した。

「でも、大事なくて良かったっスね」
「褒美とはな。それに、リーダ、お前が書いたシナリオが最優秀賞とは」
「あと、旅の支度と褒美の希望……ですよね」
「あのね、1人、1つ、褒美の希望を教えて欲しいってフェッカトール様は言っていたよ。でもね、ハロルドの分は無かったの」

 そうなのだ。
 フェッカトールが言うには、今回はノアと同僚、それに獣人達3人が希望する物が褒美として出されるという。ハロルドがメンバーに入っていなかったのは残念だ。
 僕の功績は、主の功績。今回は主であるノアに、金貨1万枚にノアが希望する品。そして、主であるノアが僕に渡すための品々が褒美として出されるそうだ。
 ノアはともかく、身分的には奴隷であるオレ達の分まで褒美を出すとは、嬉しい話だ。

「希望を聞いてくれるんだね。私は何にしよっかな」
「儀式的には、王様から望みの品はあるかと聞かれて、答える形をとるらしいけどね」

 事前に聞いておくことで、準備もしやすいうえに、無茶な褒美を抑制できるとフェッカトールは言っていた。

「チッキー達も、希望を教えてね」
「あたち達もでちか?」
「そうそう。全員分」

 本当に、全員が希望する褒美をくれるなんて、さすが王様、気前がいいものだ。
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