召還社畜と魔法の豪邸

紫 十的

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第二十八章 素敵な美談の裏側で

ごるふ

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 飛行島から少し離れたなだらかな丘の上。
 夏の日差しが強い中、オレは木製の棒をギュッと握りしめる。

「チャー、シュー、メン」

 軽快な掛け声とともに棒を振り抜く。

『バシュ』

 渇いた打撃音が鳴った。
 棒は、地面に置いた小さなボールに当たり、遠くへと飛んでいく。

「わわっ。旗の近くに落ちたよ」

 両手を大きく挙げたノアが感嘆の声を上げる。
 飛んでいたボールが、目的地である旗の近くに落ちたのだ。

「1打目で、旗の近くだ。ちぇっ。今度はリーダが一番かも」

 そしてクローヴィスはそんな状況に愚痴っぽく呟いた。
 再び始まったゴロゴロライフ。
 気楽な生活の一助として、近くにある原っぱを利用することにした。原っぱの雑草を短く刈り取って、適当な所に穴を掘り、カップを埋めた。
 それから、旗を立てる。
 いわゆる、ゴルフだ。
 とはいっても、何もかも適当なものだ。
 オレが使うのは木を削って作ったドライバー1本。
 ゴルフボールは、モペアに頼んで木の玉を何個か作ってもらった。
 これだけでもゴルフの形になってなかなか楽しい。
 今日は、クローヴィスとノアの3人でゴルフをして遊ぶ。
 ちなみに、ノアとクローヴィスの使っているゴルフクラブは、ピッキーが作ったものだ。
 ドライバーの他にもパターやアイアンも作ってある。プレインのアドバイスもあって、オレが適当に作ったドライバーよりも出来がいい。
 そして、ゴルフクラブを運ぶのはチッキー。
 分厚い布で作ったゴルフバッグに、小さめのゴルフクラブを詰め込んで、ついて回る。

「じゃあ次はノアかな」
「うん。みてて」

 パチンという音とともに、打ったボールは旗の近くにポトンと落ちた。
 それから、コロコロと転がったボールは、穴の中に吸い込まれるように入った。

「入った! 2打で入った!」
「ボクだって!」

 クローヴィスが駆け足で、自分のボールが落ちたところまで走って行った。それからオレ達が来るのを待つこともなく、カチンと音を立ててボールを打った。
 ところが、クローヴィスの打ったボールは旗を大きく飛び越えしまった。

「うーん。うまくいかなかった。もうリーダが先に打っていいよ」

 ゴルフクラブを、ブンブン振り回し戻ってきたクローヴィスは残念そうだ。

「ドンマイでち」
「じゃあ、お言葉に甘えて……と」

 オレは余裕の表情で、ボールを軽く叩く。
 ところが、カップまでボール1つの距離も無かったのに、入らなかった。

「げっ」
「リーダはやっぱり下手くそだ」

 それを見たクローヴィスが勝ち誇ったように笑う。
 この野郎、すぐ調子に乗りやがって。

「何を言ってやがる。たまたまだし、それにゴルフクラブの差もあるからな」

 オレのは適当に作ったゴルフクラブなのだ。
 結局、オレは次のパターも外し、4打目でようやく入れることができた。
 一方の、クローヴィスは奇跡のリカバリーを果たし、これまた4打でカップに入れたので、結局は同順。

「次はどこをスタート地点にしようかな」

 クローヴィスがキョロキョロと辺りを見回す。
 全員がカップに入れ終わったので、次のスタート地点をどこにしようか決める。
 ゴルフといってもコースがたくさんあるわけではない。グリーンは1つだけ。
 スタート地点をいろいろと変えて、コースの違いに見立てているのだ。
 そして、スタート地点はいつも適当。

「えーとね……あ、ミズキお姉ちゃんだ」

 キョロキョロと辺りを見回していたノアが声をあげる。
 茶釜に乗ったミズキが向かってくる姿が見えた。

「じゃあ、ミズキを迎えにいこうか。それから、ミズキと会ったところからスタートだ」
「うん。分かった」

 言うが早いか、ノアとクローヴィスがミズキの方へ駆けて行く。
 オレも、早足で二人を追いかける。本当に2人とも元気だな。

「リーダ、ビリっけつなんだって?」

 近づくオレに気付いたミズキが大きな声で言った。
 茶釜で遠乗りしていたミズキは、ついでに狩りをしていたようだ。手には2羽の鳥をかかえている。

「ドライバーだけだと、パターが大変なんだよ。それに、結構、ボールを飛ばすのも難しいからな。日差しが強いし、手が滑るんだよ」
「またまた、ムキになっちゃって」

 ヘラヘラとミズキが笑う。馬鹿にしやがって。

「あのね、ここからスタートするの」
「へぇ。ちょっと私もやってみようかな」

 そう言ったミズキは、蔵につけた籠へ2羽の鳥を投げ込むと、茶釜から飛び降りた。

「ゴルフクラブでち」
「ありがと。うーん。ちょっと短いね」
「それは、ノアのために作ったものだからな」
「まっ、いっか」

 ミズキは2回ほどブンブンと素振りをした後、パァンと小気味良い音を立ててボールを打ち放った。

「旗に当たった!」

 直後、クローヴィスが大声を上げる。

「すごい、ミズキお姉ちゃん。すごい」
「かっこいいでち」
「偶然だよ偶然」

 中腰になったミズキが、チッキーにドライバーを渡しつつ笑って言った。
 偶然にしてもすごいな。旗に当てるなんて。
 素振りの時には、すごく打ちにくそうだったのに。今回は、オレが最下位にならないと信じていたのに、裏切られた。
 オレがちょっとだけ焦りを感じていた時のことだった。

『ビュウゥゥ……』

 強く冷たい風が吹き抜けた。
 急な突風に、ノアが地面に置いたボールがころころと転がっていく。

「楽しそうね」

 そしてオレ達の背後から、楽しげな声がした。

「ミランダ!」

 パッと振り向いたノアが警戒の声を上げる。

「ミランダだって」

 続けてクローヴィスが、ミランダに向き直る。

「久しぶりね、ノアサリーナ。元気にしていたかい?」

 睨むノアに対し、ミランダが穏やかに声をかける。

「何しに来たんだ。あっち行け」
「あらあら怖い怖い。でもね、ノアサリーナ。今日は、リーダに呼ばれてきたのよ」
「リーダに?」
「そう。用事があるってね」
「呼んだの?」

 ノアが、オレを不安そうに見る。
 呼んだっていえば、そうかな……。どちらでもいいか。

「家賃を請求するためにね」
「そうだ。家賃! ミランダ! 家賃を払え!」

 オレの言葉に、大きく頷いたノアがミランダを見上げて指を突きつける。
 相変わらず、ノアはミランダに敵意むき出しだ。家賃請求という武器を手に入れてノアは思いっきり強気につめよっていた。
 対するミランダは、手で口を押さえて、後ずさる。
 笑いをこらえるのに必死という感じだ。
 だが、それはオレの視点から見たミランダの様子で、彼女を見上げていたノアには違って見えていたらしい。

「ミランダは沢山……たっくさん家賃を払わなきゃいけないんだ!」

 ここぞとばかりに、ノアは一歩踏み出し言葉を繋げた。

「ノアサリーナ……お前、家賃って一体何のこと?」
「ギリアのお屋敷の家賃! 勝手に住んじゃダメなの」
「あぁ……。ギリアの……そういうことか。でも、ノアサリーナ。私が留守番しておかなきゃ泥棒が入るかもしれないのだけれど。むしろ、見張り賃をノアサリーナが払うべきじゃない?」
「見張り……賃?」

 思いもかけない反撃だったようで、ノアが目をパチクリさせた後、オレをそろりと見た。
 弱気になるな、ノア。
 大丈夫。そんな言い逃れは通用しない。

「いや、ミランダ。ギリアの屋敷には、ガーゴイルがいただろ。ミランダが凍らせなければ、大丈夫だったはずだ」
「そうだ。リーダの言う通りだ!」

 オレの援護を受けて、ノアは再び強気になった。
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