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第三十章 過去は今に絡まって
ぜんぜんだめ
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「リーダ」
ノアの声だ。
振り向くと、モグラ型ゴーレムの口から、ぞろぞろと皆が出てくるところだった。
先頭にいるノアは、大きな狼になったハロルドの背に乗っていた。
少し辛そうな様子だったが、オレを見て二コリと笑った。
「助かりました。ゲオルニクス様」
それから、カガミがこちらに近づきゲオルニクスに礼をいう。
後ろにいるピッキー達3人は元気になったようだ。
「気にすることは無いだ。あと、別におらは偉くねえ」
そんなカガミの言葉に、頭をぼりぼりと掻いて彼は応じる。
「ありがとうございました。ゲオルニクス様」
さらに、お礼を言うピッキーの頭に、彼はポンと手を乗せた。
「ゲオルニクスでいいだよ」
そして、そう言って笑った。
「飛行島は……ダメみたいだ」
それから、着陸した飛行島に近づいたサムソンから報告をきく。
見ると、家どころか島の本体もボロボロだ。
「茶釜は無事。海亀も、ロバも大丈夫っぽい」
ミズキが茶釜の子供を持ち上げつつ報告する。
そっか。
まぁ、家や飛行島は、修理ができるんだ。
生きているヤツらが無事ならいいか。
「そうだ。おら、綺麗に、さっぱりしただよ」
飛行島の側で状況を確認していると、ゲオルニクスが両手をバッと広げて言った。
自分の見せびらかすように。
「さっぱりした?」
「そうだ。綺麗になったって言われただ」
言われたって……誰にだろ?
ノームかな。
それに、綺麗になったって、何のことだ?
あぁ、思い出した。
そういえば、前に会ったときに、風呂に入れって言ったのだっけ。
パッと見、そこまで綺麗になったとは思えない。
でも、まぁ、いっか。
命の恩人だしな。
「そうだな」
笑顔で、ゲオルニクスの肩をポンと叩く。
多少は汚れていてもいい。ピッキー達、それにオレ達にとって恩人なのだ。
考えてみると、前のオレは少々心が狭かった。
「先輩、どうします?」
「そうだな。飛行島は……時間がかかりそうなんだろ? だったら、海亀で帰ろう。小屋は、修理しつつかな」
プレインの問いかけに、思い付きで答える。
早くは帰りたいが、しょうがないだろう。
「んなら、途中まで、おらが送っていくだよ」
「送っていくって?」
「スカポディーロを使えば、街道をいくより早い」
そんなとき、ゲオルニクスがオレに提案した。
軽く指さした先にはモグラ型ゴーレムがあった。
「海亀とか、茶釜がいるが、ぎゅうぎゅう詰めにならないか?」
外見は海亀より少しくらい大きい程度だ。
「中は広いだよ。おめぇら全員が走り回ることだってできるだ」
それはすごい。
だったら、お言葉に甘えるかな。飛行島は……影に収納できるか少し不安だ。
がんばろう。
それは、オレが気合いを入れようとした時だった。
右手だけが、真っ黒だった。
あれ?
なんでだろう。
……まさか。
「とりあえず、スカポディーロを案内するだ」
ふと、大声を出したゲオルニクスを見る。
彼はゆっくりとモグラ型ゴーレムへと歩いていく途中だった。
「野郎」
あのままにしておけない。
オレの決意を後押しするように、川のせせらぎも聞こえてきた。
「ゲオルニクス」
「どうしただ?」
「ちょっと、大事な要件を思い出したんだ。ついてきてくれないか?」
ということで、決行する。
ゲオルニクスを誘って、土手を上る。
その先には、予想通り、綺麗な小川があった。
「川?」
「あぁ、そうなんだ。で……あれ」
「あれ?」
川の傍でのぞき込むように立ち、ゲオルニクスに声をかけた。
つられて川をのぞき込んだ彼の背に周り、突き飛ばす。
ゴロゴロと転がって彼は小川に落ちた。
『ドボォン』
計画通りだ。川に、ゲオルニクスを突き飛ばすことができた。
「何するだ!」
ゲオルニクスは、驚きの声をあげるが、気にしない。
「ピッキー、トッキー。それからプレインにサムソン。手伝え」
「手伝えって、どうしたのリー……ゲッ」
オレ達を追いかけていたミズキが悲鳴に似た声をあげる。
気持ちはわかる。
綺麗な小川の流れが、ゲオルニクスを境に、茶色になっていた。
あぶなかった。
放置していたら、あの状況でノアの頭でも撫でかねなかった。
「何を」
「やかましい。何が綺麗にさっぱりだ。全然ダメじゃねーか」
狼狽するゲオルニクスに言い返し、影から取り出したモップを突き立てる。
そこから先は、ピッキー達の手をかり、奴の体を洗いまくった。
モップは床掃除用に作ったものだが、未使用なので問題ないだろう。
掃除は魔法と、ブラウニーという名前のコンパクトヒゲ親父共で十分なのだ。
「ノーム! おらを助けるだ!」
「酷いだ。このままじゃ、溶けるだ」
ゲオルニクスは終始、こんな事を言っていたが、無視した。
途中からは、ノーム達も味方になった。
土で作った手を使い、ゲオルニクスの体を水中でぶん回してくれた。
思えば、ノームが一番過激だった気がする。
「酷いだ。まだ体中がヒリヒリするだよ」
ノームが持ってきた替えの服を着て、ゲオルニクスが愚痴る。
「そのくらいでちょうどいいんだ」
「やっぱり、おらは風呂が嫌いだでよ」
「あれは、風呂じゃないっスけどね」
気が付いてみると、思ったより時間がかかっていた。
少なくとも、超巨大ガーゴイルとの闘いよりも時間がかかっている。
後悔は無い。
それより達成感があった。
綺麗になったゲオルニクスを見て、いい仕事ができたと思った。もっともゲオルニクス本人は、下がり眉でしょぼくれていたけれど。
ノアの声だ。
振り向くと、モグラ型ゴーレムの口から、ぞろぞろと皆が出てくるところだった。
先頭にいるノアは、大きな狼になったハロルドの背に乗っていた。
少し辛そうな様子だったが、オレを見て二コリと笑った。
「助かりました。ゲオルニクス様」
それから、カガミがこちらに近づきゲオルニクスに礼をいう。
後ろにいるピッキー達3人は元気になったようだ。
「気にすることは無いだ。あと、別におらは偉くねえ」
そんなカガミの言葉に、頭をぼりぼりと掻いて彼は応じる。
「ありがとうございました。ゲオルニクス様」
さらに、お礼を言うピッキーの頭に、彼はポンと手を乗せた。
「ゲオルニクスでいいだよ」
そして、そう言って笑った。
「飛行島は……ダメみたいだ」
それから、着陸した飛行島に近づいたサムソンから報告をきく。
見ると、家どころか島の本体もボロボロだ。
「茶釜は無事。海亀も、ロバも大丈夫っぽい」
ミズキが茶釜の子供を持ち上げつつ報告する。
そっか。
まぁ、家や飛行島は、修理ができるんだ。
生きているヤツらが無事ならいいか。
「そうだ。おら、綺麗に、さっぱりしただよ」
飛行島の側で状況を確認していると、ゲオルニクスが両手をバッと広げて言った。
自分の見せびらかすように。
「さっぱりした?」
「そうだ。綺麗になったって言われただ」
言われたって……誰にだろ?
ノームかな。
それに、綺麗になったって、何のことだ?
あぁ、思い出した。
そういえば、前に会ったときに、風呂に入れって言ったのだっけ。
パッと見、そこまで綺麗になったとは思えない。
でも、まぁ、いっか。
命の恩人だしな。
「そうだな」
笑顔で、ゲオルニクスの肩をポンと叩く。
多少は汚れていてもいい。ピッキー達、それにオレ達にとって恩人なのだ。
考えてみると、前のオレは少々心が狭かった。
「先輩、どうします?」
「そうだな。飛行島は……時間がかかりそうなんだろ? だったら、海亀で帰ろう。小屋は、修理しつつかな」
プレインの問いかけに、思い付きで答える。
早くは帰りたいが、しょうがないだろう。
「んなら、途中まで、おらが送っていくだよ」
「送っていくって?」
「スカポディーロを使えば、街道をいくより早い」
そんなとき、ゲオルニクスがオレに提案した。
軽く指さした先にはモグラ型ゴーレムがあった。
「海亀とか、茶釜がいるが、ぎゅうぎゅう詰めにならないか?」
外見は海亀より少しくらい大きい程度だ。
「中は広いだよ。おめぇら全員が走り回ることだってできるだ」
それはすごい。
だったら、お言葉に甘えるかな。飛行島は……影に収納できるか少し不安だ。
がんばろう。
それは、オレが気合いを入れようとした時だった。
右手だけが、真っ黒だった。
あれ?
なんでだろう。
……まさか。
「とりあえず、スカポディーロを案内するだ」
ふと、大声を出したゲオルニクスを見る。
彼はゆっくりとモグラ型ゴーレムへと歩いていく途中だった。
「野郎」
あのままにしておけない。
オレの決意を後押しするように、川のせせらぎも聞こえてきた。
「ゲオルニクス」
「どうしただ?」
「ちょっと、大事な要件を思い出したんだ。ついてきてくれないか?」
ということで、決行する。
ゲオルニクスを誘って、土手を上る。
その先には、予想通り、綺麗な小川があった。
「川?」
「あぁ、そうなんだ。で……あれ」
「あれ?」
川の傍でのぞき込むように立ち、ゲオルニクスに声をかけた。
つられて川をのぞき込んだ彼の背に周り、突き飛ばす。
ゴロゴロと転がって彼は小川に落ちた。
『ドボォン』
計画通りだ。川に、ゲオルニクスを突き飛ばすことができた。
「何するだ!」
ゲオルニクスは、驚きの声をあげるが、気にしない。
「ピッキー、トッキー。それからプレインにサムソン。手伝え」
「手伝えって、どうしたのリー……ゲッ」
オレ達を追いかけていたミズキが悲鳴に似た声をあげる。
気持ちはわかる。
綺麗な小川の流れが、ゲオルニクスを境に、茶色になっていた。
あぶなかった。
放置していたら、あの状況でノアの頭でも撫でかねなかった。
「何を」
「やかましい。何が綺麗にさっぱりだ。全然ダメじゃねーか」
狼狽するゲオルニクスに言い返し、影から取り出したモップを突き立てる。
そこから先は、ピッキー達の手をかり、奴の体を洗いまくった。
モップは床掃除用に作ったものだが、未使用なので問題ないだろう。
掃除は魔法と、ブラウニーという名前のコンパクトヒゲ親父共で十分なのだ。
「ノーム! おらを助けるだ!」
「酷いだ。このままじゃ、溶けるだ」
ゲオルニクスは終始、こんな事を言っていたが、無視した。
途中からは、ノーム達も味方になった。
土で作った手を使い、ゲオルニクスの体を水中でぶん回してくれた。
思えば、ノームが一番過激だった気がする。
「酷いだ。まだ体中がヒリヒリするだよ」
ノームが持ってきた替えの服を着て、ゲオルニクスが愚痴る。
「そのくらいでちょうどいいんだ」
「やっぱり、おらは風呂が嫌いだでよ」
「あれは、風呂じゃないっスけどね」
気が付いてみると、思ったより時間がかかっていた。
少なくとも、超巨大ガーゴイルとの闘いよりも時間がかかっている。
後悔は無い。
それより達成感があった。
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