召還社畜と魔法の豪邸

紫 十的

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最終章 リーダと偽りの神

追跡の果てに

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 追跡を再開する。
 ス・スには距離を離されていた。第7魔王との戦いの間に奴は鎖を振りほどいたらしい。

「問題無い。我が輩の方が遥かに早い」

 焦るオレを安心させるようにスライフが言った。
 その言葉通り、グングンと距離は詰まっていく。
 加えて、こちらに有利な現象も起こる。

『ドォン、ドォ……ン』

 控えめな爆発音がして、飛び進むス・スの足元周りに小さな土煙が上がる。
 ス・スの周りに再びかぎ爪付きの鎖が出現し、拘束し始めたのだ。

「ようやく把握できた。あの鎖は我が輩達の接近によって発生し、距離が近くなれば強化される」

 確かにスライフが言うように、近づくにつれて地面から飛び出る鎖の数は増えていく。
 最初こそ鎖を破壊しつつス・スはそれなりの速度を出していた。だが、近づくにつれて鎖の破壊本数より発生本数が上回り、ス・スは鈍足になっていく。
 そんな事を願ったかなと不思議に思うが、結果オーライだ。

「それなら、近づけばオレ達の勝ちだな」

 にんまり笑い弾んだ声がでた。気が楽になっていく。
 こちらには願いの力で強化したタイマーネタがある。
 動けないス・スを、タイマーネタでボコれるという事だ。鎖の拘束により避けられないなら丁度良い。良すぎるくらいだ。
 後少しだ。
 ところが流石にス・スも対策してきた。

『ボゴン、ゴボゴボ……』

 頭上で何かが泡立つ音がして、あたりが薄暗くなった。
 上を見上げて、一瞬自分がおかしくなったのかと思った。

「火山が……溶岩まき散らしながら落ちてくるように見えるんだけど」

 視界に、グルングルンと回転しながら落ちてくる三角錐の形をしたものがあった。
 赤黒い……溶岩をまき散らす小山に見えた。

「本物だ。避けることは可能だ」
「いや、火山……」
「ス・スが火山を召喚し、投げてきたのだろう。耐熱の結界を張り対応する。問題ない」

 よくあることだと言わんばかりに淡々とスライフは答えるが、嘘だろと思った。

「あっつぃ」

 しかし溶岩は本物だった。火山が頭上でバラバラになり、細かい溶岩の粒をまき散らす。
 加えて第1魔王が雑魚敵感覚で襲いかかってくる。極彩色の不気味な翼が溶岩で焼けるのも、その体が真っ赤な岩石にぶち当たる事も、意に介する事なく襲ってくる。
 溶岩の雨と魔王。火山のなれの果てが降りかかる中、飛びながら戦う。
 何度かスライフの背から離れて、飛ぶ回って避ける羽目になった。
 飛べるようにしていて良かった。
 溶岩に焼けただれた岩石は、地面に落ちて大きな音をたてた。
 それから少し遅れたジュウという音と共に木々を燃やす。
 煙が一瞬でオレ達の視界を邪魔した。

「ゴホッ、ゴホゴホ」

 煙で目がしみて、咳き込むので、影からガスマスクの魔導具を取り出して被る。
 モルススの兵器がばらまく毒から防御するため作った物が意外な所で役にたった。

「一旦……いや、対応済みか。流石だな」

 オレの対応にスライフも褒めてくれる。

「毒……というか病原菌の対策に作ったものが意外なところで役にたったよ」
「これから我が輩達が突入する毒霧対策では無いのか?」
「毒?」
「ス・スがこちらに飛ばしてきた。間も無く生きている毒の霧に遭遇する。準備していなければ、幻覚や痙攣、そして全身から血を噴き出す」

 さらっとヤバい話をスライフがした。
 危ない。そんな目にあった日にはエリクサーがいくらあっても足りない。
 程なくして、視界が灰色から緑色になった。毒の霧に突っ込んだのだろう。

「オレ達が近づくことを嫌がっているようだな」
「ス・スも我が輩達と鎖の相関関係に気がついているようだ」

 気付かれたところでやる事は変わらない。
 すぐに毒の霧をオレ達は抜けることができた。
 火山を避けるために蛇行したからだろう、ス・スにはまだ接近できていない。
 奴は鎖を引きちぎりながら進んでいた。
 そして、再び辺りが暗くなる。
 また頭上……。
 見上げると今度は氷の塊だった。馬鹿でかい氷の塊。
 それがダース単位で振ってくる。1つ1つが巨大。先ほどの火山ほどではないが下手すると押しつぶされそうだ。

「火山の次は、氷山か」

 ス・スの奴、やりたい放題だな。

「ぬ。何かが、入っている。油断するな」

『ドドドドド』

 連続した地響きをたて、氷山が地面に落ちる。
 後をチラリとみると、丁度良いことに先ほどの火山落下で発生した山火事が消えていた。

「火山よりマシだな」

 オレが安堵したのも束の間、地面に落下し砕けた氷山から何かが飛び出した。
 巨人だ。
 先行するス・スより一回り小さい巨人。だが、それでも馬鹿でかい巨人が何体もオレ達の進行を塞ぐ。

「古巨人族か……すでに死んでいるが、アンデッド化しているようだ」
「なにそれ」
「神々が争っていた時代。最初に投入された戦士達といわれる存在だ。その肉は竜族と同じほど優れ、骨はアダマンタイトと同程度の丈夫さを誇るという。それが古巨人族だ」

 また厄介な物を。あいつ、本当に往生際が悪いな。
 だけど、強いと言ってもアンデッド。
 不幸中の幸い。オレにとって相性の良い敵だ。
 すぐに影の中から魔改造した聖水がたっぷり入った樽を取り出す。
 継ぎ足し継ぎ足し使っている年季の入った聖水だ。

「スライフ……こいつを」

 こいつを飛ばして、アンデッドにぶつけてくれと言いかけたとき、樽が弾けた。
 だけど中身はこぼれない。
 黒っぽい紫と黄色に渦巻いて、まだらに光る液体が、水玉となってフヨフヨ浮いていた。

「ゲェコ」

 カエルの鳴き声がして、魔改造した聖水が真水のように透明になる。
 水玉の中に、ウンディーネがいた。

「ゲェコ」

 小さくウンディーネが無く。
 すると水玉の一部が高速で発射されて、巨人のアンデッドを打ち抜いた。

『バゴォン』

 爆裂音をたて、アンデッドは一瞬で塵になった。
 ウンディーネも協力してくれるらしい。

「まかせる。徹底的にやってくれ」

 オレは手を軽く振り、ウンディーネに任せることにする。
 ウンディーネは次々と水の弾丸を作りまき散らした。

『ダダッ、ダダダダダダ』

 まるで機関銃の発射音にも似た音を立てて、まき散らされた水の弾丸はあっという間に巨人のアンデッドを殲滅した。
 アンデッドが居なくなって、開けた空を進む。
 ジャラジャラとけたたましい音をたてス・スを拘束する鎖は、数を増して、ついにス・スの動きを完全に止めた。
 ス・スがゆっくりこちらを見た。しゃれこうべの目に、赤く灯る光がオレを捕らえる。
 だけど、それ以上は何も無い。
 オレは……オレ達はようやくス・スに追いついた。
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