召還社畜と魔法の豪邸

紫 十的

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後日談 その2 出世の果てに

ヨラン王の贈り物

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 戦闘訓練の見学を終えてから、数日。
 オレは飛行島に設けられた城のような館でゴロゴロしていた。
 ちなみに飛行島は、ピッキー達の村からさほど離れていない場所の上空を浮いている。
 理由はいくつかあって、一つはピッキー達のため。せっかくの機会なので、十日くらいはゆっくりして欲しいと思ったのだ。
 そして、もう一つは王様からの手紙。この地の領主リオカナウドの元に、ヨラン王から命令があったそうだ。要件は、オレの足止め。なにやら、オレに渡すものがあるらしい。
 ちなみにオレのところにも、トーク鳥が飛んできていた。
 しかも3匹。手紙を送るトーク鳥に、そのトーク鳥を護衛するためのトーク鳥が2匹。それで計3匹だ。
 オレあての手紙は、ノアの制服を送るというもの。スプリキト魔法大学にノアは行くことになっているが、その制服が出来上がったので送ってくれるらしい。受け取った後は、適当な領主に針子を手配させて、微調整をするようにとの内容だった。
 そういうわけで、別に急ぐ理由もないし、のんびり過ごすことにした。

「ポテチを塩味で、あとは……ソーダを」

 自室で寝っ転がったオレは、そう言って神から貰ったハンドベルを鳴らす。
 ガランガランという音色がして、テーブルに揚げたてのポテトチップと、ジュースの注がれたジョッキが出現する。

「まぁまぁ……今日のポテチは90点か」

 漫画本を片手にポテチを口にしたオレは、神々の仕事に満足する。
 ここ数日の日課だ。ポテチを食べつつ漫画を読む。ポテチ程度なら、神々に拒否られたり取り引きを持ちかけられてもノーダメージだ。ゴチャゴチャ言われるなら、ポテチを諦めたらいい。余裕があるときこそ神の力。これぞ力の有効活用。我ながらナイスアイデア。
 こうして過ごす何事もないのんびりした日は最高だ。

『パタパタ』

 だらだらと過ごしていると、足音が聞こえた。
 軽い感じの足音だ。多分、ノアだろう。

『コンコン』

 足音は大きくなって、扉がノックされた。
 扉を開けると、スプリキト魔法大学の制服に身を包んだノアが立っていた。
 ついでに、明るい青色の襟巻きをしたカーバンクルも横に立っている。きっと制服に合わせて作ったのだろう。その青い襟巻きは、黒いオコジョといった外見のカーバンクルに似合っていた。

「おっ、届いだんだね」
「うん。ブルッカさんが持ってきてくれたの」

 ノアがくるりとひとまわりして見せてくれた。カーバンクルも、やや遅れて同じようにひとまわりする。

「似合う似合う」

 パチパチと手を叩くと、ノアはとても誇らしげに笑った。
 そういえば、ノアはスプリキト魔法大学に行く予定だったな。
 なんか思いつきで連れ回して悪いことをした。荷物も届いたようだし、ここの領主に挨拶をしたあとは、スプリキト魔法大学へと行ったほうがいいかもしれない。

「あのね、リーダ。フラケーテアさんがね、みんなと一緒にお出かけしながら、学校にも行ける素敵なことを思いついたんだって」

 オレの考えを読んだように、ノアが両手をあげていった。

「それはいいね」
「でね、今、ママ達とブルッカさんが打ち合わせしてるの」

 歩き出したノアにうなずいて、一緒に広間へと行くことにした。
 自由にあちこちに行きながら、スプリキト魔法大学に行けるのであれば、それが一番いい。もっとも、ノアはさらに忙しくなりそうだな。

「あっ、リーダ!」

 そうしてノアと一緒に広間へとすすんでいると、途中の部屋の扉からカガミが顔をのぞかせオレを呼んだ。

「どうかしたのか?」
「ちょっと、みてもらいたいものがあるんです。王様から預かったんですけど……」

 王様……ヨラン王から? なんだか嫌な予感がする。

「急ぎ?」
「えぇ、まぁ、忘れないうちにみてもらいたいと思います」

 そうこうしていると、広間から「ノア」とレイネアンナの声がした。

「先に行くね」

 その声に反応してノアがパッと駆けていく。
 ノアの言っていた素敵なことというのが気になるが、しょうがない。

「で、一体なんなんだ?」

 先にカガミの要件を片付けることにした。
 彼女が顔をのぞかせていた部屋へと入ってみると、同僚達にロンロとイオタイトがいた。
 そして奴らは、大量の肖像画をみていた。部屋のテーブルに山と積まれた大量の肖像画を。

「ノアの許嫁の件は終わっただろう」

 まったく、こいつらときたら性懲りもなく、また妙な肖像画に惑わされてやがる。

「違うんです」

 抗議の声をあげたオレに、カガミがそう言って説明を始めた。
 今朝のことだ。ブルッカがヨラン王の命令でいろいろな品物をもってやってきた。
 ちなみに彼女も黒騎士だ。表向きは図書ギルド職員の彼女だが、その真の姿は黒騎士で、黒豹を模した魔導生物をはじめとした多種多様な魔道具を扱う。
 その彼女が、ノアの制服などと一緒に持ってきたのが大量の肖像画。これらは全部、オレの結婚相手の候補……らしい。

「ちょっと、それは……」
「リーダが舞踏会から逃げたから、しょうがなかったらしいよ」

 オレの困惑を、ミズキが一蹴する。

「ブルッカさんが言うには、貴族の人たちに詰め寄られた王様が、肖像画をリーダに見てもらって、そのうち訪ねるからって約束したらしいっス」
「そんな勝手な……それにその言い方だと、まるでオレが悪いみたいじゃないか」
「いや、リーダ、だいたいお前が悪いだろ」
「リーダの代わりに審査する私達も大変なのよぉ」

 サムソンが半笑いでオレを避難し、ロンロが適当なコメントであとに続く。
 なんてやつらだ。他人事だと思いやがって。
 部屋の奴らの身勝手さを前に、オレは口をへの字に曲げた。
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