パワードスーツに取り込まれたんだが・・・責任者出てこい!

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パワードスーツに取り込まれたんだが…責任者出てこい!

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 気が付くと真っ暗な世界、手足が動かない、目は開いているように思うが何も見えない。



 焦るな、冒険者とって未知の状況で一番しなければならないのは平常心を保つことだと散々先輩に教え込まれたろう、たとえ冒険者になって25年、万年Dランクの冴えないおっさんだが平常心を保つことくらいはできる・・・はず・・・たぶん。



 まず名前、俺はカイル、迷宮の町リーズに住む40歳、最近腰痛が出てきて困っていたがまだ現役を続けている。

 あと・・・俺は何でこんな状態になってる?



 たしか小遣いが心許なくなってPTの奴らに内緒でダンジョンに潜ったんだ。

 浅い階層で運よく宝箱を見つけ、罠は無いと確信し中を見ると真っ黒い鎧と杖っぽい何か分からんものを見た気はする。

 そのあとの記憶がないな。

 考えられる原因は時間差で発動される転移の罠だ、壁の間や岩の隙間に飛ばされたとしたらこの状況が説明できる。

 もう一つの可能性は箱を開けた時に見た鎧、あれが呪われているまたはリビングアーマーで取り込まれたと言うパターンかな?



 小遣い欲しさに命を失う、実に締まらないが・・・冒険者らしい最後になったと思った時、近くで声がした。



「見ろよ、鎧だ!綺麗なもんだ」

「宝箱もあるぞ、何だこりゃ?杖か?重くて持ち上がらねぇぞ」

「よせよ、こんなもん着てるくらいだ、騎士だよ、関わり合いにならない方が良い」

「逆に考えるんだよ、形見の品を渡せばお礼が貰えるぜ」



 えらい言われようだが外見は立派な鎧のようだ、岩の隙間でなくてよかった。



「おおい中身は生きているが動けないんだ助けてくれ」



 聞こえていない?

 彼らはどうするかまだ話し合ってるようだ、なんで向こうの声は聞こえるんだろう?


「形見ねぇ・・・身分が分かるものがあればいいんだけど・・・」

「この鎧留め具が無いな、どうやって外すんだこれ?」

「関節も何か分からないけど隙間が全くなくて指も入れられないぞ」

「起こしてそのまま持って帰るか、お前足の方持てよ」



 3人いるようだがどうやら相当重いようで持ち上がらないそうだ。



「もしかしてゴーレムなんじゃないかこれ?」

「でも動かないじゃねーか」

「誰かが倒してけど重くて持っていけなかったとか」

「こんなとこにゴーレムが出るわけないだろう、出たらすぐに逃げるぞ俺は」

「第一倒して印もつけずにおいておく馬鹿は居ないよ、印が無い以上拾ったもの勝ちさ」



 何度も呼び掛けているが聞こえないらしい、声は出ており自分では聞こえるだが向こうは聞こえていない。

 こちらは指一本動かせない状態なのでどうしようもない、このままミイラになるしかないのか・・・



「ははは、ゴーレムなら魔石与えたら動き出したりしてな」

「冗談でもやめろよ、ゴーレムが動き出したら俺たち死ぬぞ」

「どうやって与えたらいいか分かんないけどほーらゴーレムちゃん餌だぞー」

「やめろって言ってるだろ!冗談が過ぎるぞ」パシッ

「「「あ」」」



 鎧の上に何か落ちた音がする、その時スッと何かが吸い込まれてきた感触があった。



「うわ、吸い込みたがった、まずい逃げるぞ」

「置いていくなよ!」

「だからやめろって言ったんだ」



 冒険者たちは居なくなり静寂がもどる、かと思ったら何か音がする。



 何の音だろうキュイキュイとかカリカリ、変な音だ何かが動いてるのだろうか?

『システム起動完了、マスターアクトとは違う生体が装着しています、スキャン開始します』

『スキャン完了DNAパターンがマスターアクトが最後に降下した惑星D234の原生生物と似通ってます』

『メインシステムに通信開始・・・ERROR、再通信開始・・・ERROR』

『状況の確認のため原生生物を仮のマスター登録をしマスターアクトの捜索に入る』



 何語か分からんが色々聞こえる。



『メモリ内に外部での会話らしき記録を発見、解析します』

「あ、あー、聞こえますか?」

「え?あ、はい聞こえます」

「私は強化外骨格パワードスーツあなたたちが言うところの鎧ね、まず聞いてみるけどこの鎧をどうして着てるの?」

 かくかくしかじかと説明を済ますと鎧は黙り込んだ、いやこちらの言葉を話さなくなった。

 しばし立った後、鎧は静かにこう言った。

「この鎧の元の持ち主を探してるの。協力するなら力を貸すこともできるけど、どうする?」

 今のままでは動けないのでほとんど脅迫に近いなと思いつつ了解する。



「それじゃ生体サポートとパワーアシストはするけどエネルギーの都合でそんな長時間は動けないからサクサク探してちょうだい」



 不意に目の前が明るくなりダンジョン内の天井が見える。



 ゆっくりと起き上がる、手足も動く、愛用の剣も見つけた、革鎧と服と思われる残骸が散乱していると言う事は・・・ああ、あれは今日はいてたパンツの色と言う事は今は中身すっぽんぽんか・・・



 剣を手に取り振ってみる、おお腰が痛くないそれどころか若返ったような感じの力強さだ。

「遊んでないでアクトを探して、エネルギーが少ないって言ったでしょ」

「すまんがエネルギーとやらが分からない、魔力なら少し渡せるが」

 あまり得意ではないが生活魔法位は使える、右手に魔力を集めてみる。

「微弱だけどエネルギーに加えられるわね、12000時間くらい続けられれば満タンになるかも」

「干からびるわ!」



 と言っていると視界の端で何かが動く、モンスターだ。

 剣を構えて相手を見る、ゴブリンだ最弱とも言われるモンスターだが数が揃うと侮れない。

 幸い斥候なのか他に姿が見えず、切り伏せる。



 剥ぎ取り用ダガーを腰から抜こうとするが有るはずもない。服の残骸の下にあったので討伐部位の右耳と魔石を取り出す。

「あ、これならいけそう」

 そう言ったと思ったら摘まんでいた魔石が消える。

 魔力でも行けるなら魔石でも代用可能か・・・換金率高いのに・・・

「少しは余裕ができたわ、さあアクトを探すのよ」

 呆れながら宝箱を覗いてみるが人は入っていない、魔道の杖かな?金属製の物が入っていた。

「愛用のライフルまで置いていくなんて・・・」

 そういうと鎧は勝手に動き、杖を消してしまった。

 売ったら高そうだったのにと思いつつも現状この鎧に助けてもらわないと動くこともできない。

 幸い収納類は無事だったので背負いポケットに入れていたものをポシェットに入れていく。



 途中3匹のゴブリンと遭遇したが危なげなく倒すことができた。

 魔石は取られたが・・・



 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



 ダンジョンから見たことのない鎧姿の者が出てきてちょっとした騒ぎになったが冒険者ギルドのカードを見せるとすぐにわかって貰えた。

 冒険者ギルドに寄りゴブリンの耳を納品、中で鎧がアクトアクトとうるさいので調べてもらうと何とギルドの創始者のひとりにアクトと呼ばれる人の名前が有った。

 会いに行こうと言う鎧には悪いが・・・このアクトさん300年ほど前に120歳で大往生したと言う事だ。



 泣きわめく鎧の中でげっそりしながら宿に戻る。ギルドカードを出し鍵を渡してもらい部屋に戻る。



「ショックを受けているのはわかるが鎧脱げないか?腹が減ってしまってたまらん」

「メインシップに戻らないと解除コードもらえないよ?」

「それは脱げないと言う事か?」

「うん、何で脱ぐ必要があるの?」

「飯はどうする?」

「トリガーにパウチをセットしたら栄養補給されるじゃない」

「意味が分からんわ!せめて口の部分だけでも開けられないか?」

「外気はフィルター通して循環されてるから開ける意味は無いよ?」

 話が通じねぇ・・・
 
「こっちは腹が減ってるんだよ!」

「ちょっとまってね、色々な味が有るから試してみて」

 そういうと目の前に瓶みたいなのがいくつか出てきた、何か書いてあるか読めない。

「今持ってるのがチャーハン味だよ」

 チャーハンはよくわからんが味と言う事は食い物、または飲み物だろう・・・

「ここにこうしてセットして」

 口のところに管が出てきた、咥えると穀物、肉、少し焦げたような香りのする・・・オートミールっぽい物が口内に入ってくる。

 げっそりしながらも飲み込む、味は悪くない、が飲み込むだけなので酷く物足りない。

「これ一本で一食分のエネルギーだね」

 正直足りない・・・エールが飲みたい、焼いた肉が食いたい・・・

「んじゃエネルギー節約のためにアシストカットするね」

 そう言うとまた視界が闇に包まれ動かせなくなってしまった・・・

業者さん娼館いけないじゃん」

 俺は一人ごちた。



 悶々とした気持ちを発散するため、業者さん娼館に行くための小遣いを稼ぎに行ったのはずが脱げない鎧に乗っ取られ発散どころか・・・メシも食えないなんて・・・

 ・・・まずい、おしっこしたい。

「鎧!鎧!よーろーいー」

 叫んでも反応はない・・・40になって小便垂れとは、死にたくなる。

 我慢の限界だ、出てしまう・・・ああああああ



 あれ?濡れた嫌な感じがしない確かに出したはずだが・・・



 まぁ小便の後始末しなくていいのは良いことだ、40にもなって地図を描いた布団を干さなくて済む。

 そのまま眠りに落ちる。



 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



 目が覚めると言いたいが暗闇のままだ。



「意識が覚醒したんだね、おはよう~昨日はごめんね泣きわめいちゃって、思考ルーチンのバグかなぁ、とりあえず朝ごはん出すね」

 視界が広がり目の前に三本の瓶が現れる。

「これがトースト、これがスクランブルエッグ、これがコーヒーだよ」

 言われた通りの順に使用していく、最初のはパンだな、バターの香りがしているが食感はオートミールだ。

 次はスクランブル何だったかな?卵か味は美味いだが食感は・・・

 最後のはコーヒーだったかな、これは飲み物か?焦げた匂いで、苦!不味!にが!まず!   なんだこれは毒か?



「意識を覚醒させるカフェインは多めに入ってるけど毒じゃないよ」

「薬みたいなもんか・・・だが今度からこれは要らない・・・」

「あと排泄について聞きたいんだが」

「ストレージに入れてあって溜ったらバージする感じね」

「大も小も大丈夫なのか、あとはこれを脱ぐ方法だな、何かないと脱げないとか言ってたな」

「解除コードねメインシステムに通信できないから降下ユニットを探し出して通信、それでもだめならメインシップに何とかたどり着かなきゃいけないわね」

「その降下ユニットとやらはどこにある?近いのか?」

「ビーコンに反応はあるから生きてるね地図ある?」

 ここ、と指さしたのはこの国の首都である王都だった、いやな予感がビンビンします。

 何故なら王城には誰も入れない「入口の無い塔」が立っており、その高さは王都で一番つまりめっちゃ目立つのです・・・



「ここ行くまでエネルギーとやらは持つ?」

「ムリ、全力で移動すればエネルギーが足りない、アシストカットとかいっぱいしてもギリギリ位」

「じゃあ質問を変えよう、昨日の魔石何個くらいあればエネルギーは上限になる?」

「4000~6000個くらいかな?内容量にもよるだろうけど」



 一日10個取れたとして400~600日しかもその間のエネルギーも必要となればもっといい魔石が出るところに行かなければならない、しかし良い魔石を出す=強いのだ、愛用の剣で通用するかどうか保証が無い。



「そうだ、あの箱の中にあった杖、あれ売ればもっといい剣が買える」

「アクトの形見売ろうなんてとんでもない!」

「稼働時間を増やすためには魔石を取らなければならない。だが杖を売っていい剣を買えばより大きい魔石が取れる。形見よりこれからの事を考えてくれ」

「だけどアクトのものよ、勝手に売っていいわけないじゃない」

「だが言わせてもらおう、すでにアクトさんは300年も前にお亡くなりになり、この鎧と杖は宝箱の中に入っていて俺が見つけた、ここまではいいか?
 つまり、いま鎧も杖も俺の物でアクトさんとやらの物じゃない、ダンジョンで見つけた物は見つけた人に所有権がある、そう決められている」

「開拓民は開拓地の法に縛られることはない、銀河連邦開拓惑星法9条の5項に書かれてあるわ」

「それは人であって物に対する法じゃないよな?つまり鎧も杖も俺の物だ」

「屁理屈よ!」

「屁理屈はそっちだろう、第一開拓民とやらのアクトさんは300年も前に亡くなっている、そのなんたら法に遺失物の事は書いてあるのか?こっちの法では無くしたものは基本自己責任、見つかったら謝礼を払えば帰ってくることもあるが基本は自分で探すしかない。しかもダンジョンで見つかったものはたとえ国であっても取り上げることは出来ないと冒険者ギルドの基本法に記されているんだぞ」

「だって」

「だってもどってもない、そもそも鎧であるお前に物の所有権や売る売らないの決定権があると思ってるのか?」

「・・・」



 ブツン



 あ、こいつ言い返せなくなってアシスト切りやがった、最悪だな・・・


 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



 何時間経っただろう?普通の人間なら発狂するぞ・・・寝てたし関係ないが、しかし腹減った。



「おい駄鎧聞いてるか、俺はこの鎧を発見し着ている者としてお前と言う存在の所有権を主張する!反論できないなら主導権を俺に寄越せ!」

『仮マスターより所有権の主張が有りました、メインAIゴールド・・・ERROR、リトライ・・・ERROR、リトライ・・・ERROR。
 深刻なERRORが発生したと判断、サブAIシルバーにサポート権を移譲、サポートAIを繰り下げ予備AIブロンズ起動、メインAIをシルバーに、サブAIをブロンズへとシフトします』



 急に目の前が明るくなり自由に動けるようになった。



「失礼いたしました、何なりと御命令ください・・・マスター

「昨日とえらい対応が違うな」

「昨日までメインAIをしていたゴールドが沈黙したためサブAIである私シルバーがメインAIとなりました」

「つまり昨日の奴とは別人?って事か、ふむ・・・昨日手に入れた杖は出せるか?」

「ストレージ内に杖はございません、昨日ストレージに入れたものは対生物用ライフルのみとなっております」

「そういえば昨日の奴もそんな名前で言ってたな、シルバーだったか?そのライフルとやらは俺にも使えるのか?」

「一部機能は封印されますが新しい主マスターのコードを発行することは可能です」

「何が使えて何が使えなくなるんだ?」

「射撃に関しては殲滅バスターモードと封印プリズンモードが使用不可となります、あとメインシップからの砲撃に使うビーコンは射出できなくなっております。続きまして使えるモード、狙撃、三点バースト、連射ができます。使用できるエネルギー残量が少ないため早めの補給をお願いします」

「射撃・・・弓みたいなものか?しかしこっちもエネルギーか・・・昨日この鎧に吸収したエネルギーで両方使えるのか?」

「はい、エネルギーの共有は可能ですが強化外骨格パワードスーツのエネルギー残量も日常生活で三日程度、調査や採掘、狩りなどを行えるのは20時間がいいところでしょう」

「20時間、狩りとしては十分な時間だ、魔石で動ける時間も増えると思えば多いくらいだ」

「了解しました。」

「あと腹減った、頭の部分取れないか?」

「ヘルメットを取ってしまうとAIと離れてしまいストレージ、生体サポート、パワーアシストが使用できなくなります、推奨できません」

「せめて口の部分だけでも開かないのか?」

「外気の成分検査が完了していないため推奨できません」

「いやいや、オレここの空気吸って40年生きてるから!平気だから開けてお願い」

「了解しました」



 パシューと言う音を立て口元に風を感じる。

 早速一階に降りて肉と酒を注文する。

 じゅうじゅうと音を立てる肉、それにエール!

「衛生的な食事とは言えません、マスターパウチを使用してください」

「だが断る!」

 肉、噛むと脂がじゅわっと出て旨味が口の中に広がる固いが噛み応えのある肉。そしてエール、ちょっと酸っぱくなっちまってるが安いからこんなもんだ!酔えればいいのだ。

マスターその飲料は消費期限を過ぎている可能性が高いです。」

 強制的に口元が閉められる、

「大丈夫だってこの生活20年してるが腹は壊したことはない!頼むから食事させてくれ」

 丸一日ぶりの食事をとり満足して寝ようとするが寝れない、昼間あれだけ寝てしまったんだしょうが有るまい、無理に目をつぶり寝ることとする。



 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



 翌朝、シルバーに頼み嵩張るものなどをストレージに仕舞ってもらう、持っていく物の中に干し肉があってシルバーが衛生的じゃないと言われたが昨日の食事と同じだ冒険者をやってて腹を壊したことが無いのが俺の数少ない自慢だ。

 しかしストレージってあれだな超級クラスの冒険者が持ってるアイテムボックスってやつによく似ている。

 荷物の整理も終わり鎧の上に予備の腰ベルトを付け剣を下げる。

「すまんが口の部分はダンジョンに入るまで開けておいてくれ、話をするのに必要だからな」

 パシュっと音がし生えてきた髭に風が当たる、そういえば体拭いてないが痒くならないしべとつく感じが無いなこれも鎧のおかげだろうか?

 宿で挨拶を済ませ鍵を預ける、狩りに出る日は朝は抜くその方が感覚が鋭くなるからだ、腹の虫が鳴くと言う若いやつもいるがそんなもんは慣れである。

 そのままダンジョンに入ると口元が閉まった。



 ダンジョン、1人ならなら1、2階をウロウロするのが関の山だろうが今俺は超級クラスでも持ってないような鎧を着ている、3階以降でも行けるはず。



 慎重にダンジョンを進み、途中ゴブリンの群れと会ったが矢も魔法も剣もこの鎧には効かなかった、よし行ける。この階を降りるとオークが出てくる、デカくはないが太っちょで力が強いため1人では厳しいのだ、普段ならと付くが、降りて早々オークと戦う。

 棍棒を振り上げ突進してくるオーク、相手の左側へ移動し棍棒を振りにくくする、左腕の後ろ側から肋骨に骨が当たるのを避けるため水平にして心臓に刺しこむ、ずるりとオークは倒れこんだ。

 いつもなら盾で受けてもらいその隙に後ろに回り込むんだが・・・20年以上の技術に若さの力が加わるとこうなるのか、天稟持ちなんて言われてる奴はこういう感覚なのかもしれないな。

「ゴブリンとオークの魔石を摂取したことにより約80時間まで活動時間が増えました。ライフルの試射などを推奨します」

 そういうと手元にあの杖のような物が現れる。

「構えはこう、先端より殺傷能力の高いエネルギー弾が出ますので覗かないようにしてください」

 うへぇ・・・覗くとこだったぜ・・・

「ターゲットサイトオープン、索敵モード開始します・・・前方50、オークが複数います、ロックしました、発射しますか?」

「えっと・・・発射」

 その後閃光のような光が走り、オークたちの倒れる音がする。

 近寄ってみるとオークの頭がすべて無くなっていた。討伐証明鼻なのに・・・泣きたい

 魔石は心臓近くにあるので胸を射抜くわけにもいかない、今後は腹を狙うようにとシルバーに伝える・・・

 その後調子よく5頭ほどオークを狩り活動時間は150時間になっていた。

 オーク鼻だけでも宿代で二週間分、業者さん娼館で言えば三日は泊まれるくらいだ。

 あと一週間は休みにしてるから何日間か潜ってから仲間に事情話そう・・・



 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



 探索はどんどん進み、10階のボスまで倒せてしまった。

 おかげで活動時間は2000時間を超え、王都に行っても余裕で活動できる。



 そこで仲間を呼んで少しの間PTを離れることを伝えると

「自分だけいい鎧を手に入れたからって勝手な野郎だ」

「事情があるのは分かった、別途アタッカー枠は募集させてもらう」

「寂しくなるけどしょうがないですね」



 誰も引き留めてくれなかった、泣きたい。



 その日のうちに王都に向かう事となった。



『ホバー移動システム起動、コンデションオールグリーン』

「動くと返って危険ですのでパワーアシストの方はこちらでコントロールしますね」

 そういうと足が、体が浮き猛スピードで走り、いや飛び始めた。

 ちびったが鎧のおかげで誰にも気が付かれなかっただろう・・・



 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



 止まるのも再度飛び出すのにもエネルギーが余分にかかるため、飛びっぱなしの方がエネルギーの損失が少ないと言われたので、延々王都に向かって進んでいるがぶっちゃけ暇だ。



 娯楽用記録媒体と呼ばれる物も見せてもらった、真っ暗な中を箱のような物が船と呼ばれ、騎士と呼ばれる物が光る剣を振るい、ゴーレム等も出てきたが円盤状の船に乗る男が亡国の姫と結ばれる、宇宙と言われる空の上の話のようだ。騎士や傭兵が姫と結ばれると言うのは今も昔も住む場所が違っても好まれる物だなと感心したものだ。ちなみにこの鎧敵役に出てきた黒鎧の卿と呼ばれたたから貴族かな?が着てたのと似てるな~なんて感じつつ休憩や睡眠をはさみ、80話ほど見終わったあたりで王都が見えてきた。



 かなり遠くに城壁に守られた王都が有り「入口の無い塔」はその遠くから見ても城壁より高く、建国以前からあったと言われているのに陽光を反射し輝いていた。



 王都に入るのは問題ない、だが「入口の無い塔」のある王城に入ることは不可能だろう。

「シルバー、どうやって「入口の無い塔」まで行くつもりだ?」

「多少の助走が有れば問題ありません」

「目立たぬよう入る方法はあるか?」

「降下ユニットに通信することが出来ればサブAIである私にも強化外骨格パワードスーツの権限が増えます。

 そうすれば現在使用できない不可視化インビジブルが使用でき、潜入や脱出の助けとなります」



 門が見えてきた所で鎧が止まり、自分が動かせるようになった。

 しかし鎧よ・・・軍が出てくる前に止まれよ・・・



 ギルドカードを見せ、腰の剣も渡しやっと包囲が解かれた。

「シルバー、戦闘になるまで口の部分は開けておいてくれ」

「了解しましたマスター



 もう夕方だが食事を済ませ深夜に城に近づくのが一番いいだろう、そう思い繁盛してそうな酒場に入った。



「いらっしゃい、食事かい?お酒かい?生憎カウンターしか開いてないけど構わないよね?」

 忙しく給仕をしている女性は一息で言い切った。

「食事を頼む、この後用事が有るので酒はやめておく、お勧めは何だい?」

「今日はビッグボアが入ったからステーキか煮込みがお勧めだね」

「じゃあ煮込みを頼む」

「パンはどうする?黒なら食べ放題、白なら2枚だけだよ」

 なんと、流石王都白パンがあるのか、白パンは小麦を引いて中の白い部分だけ使用するので高いのだ。おまけに作り方も違うらしく長持ちしないため、田舎ではほとんど口にできることはない。

「白いパンの方がうれしいな」

「あいよちょっと待っとくれ」



 すぐにトレイに乗せられた食事が来た、お金を払い食べ始める、美味いの一言では言い表せないが語録の貧相なおっさんに都の食事を感想文など書けるはずがない。ただこの後お代わりをしたとだけ言っておく。



 いい感じに暗くなり、お上りさん(実際その通りなんだが)のようにきょろきょろとしながら城に近づいていく。

 衛兵に見つかることもあったが田舎者を理由に怪しまれずに済んでいた。

 だがさすが王城周辺は話は別だ、衛兵も多く見つかることも増えてきた、その時

「主マスター、降下ユニットとの通信に成功しました、しばらくこの場所から動かないようお願いします、動いた場合通信が途切れる可能性があります」

「分かった、だが衛兵が来たときは諦めてつながる場所を再度探すぞ」

 通信はさほど時間もかからず終わったようだった。

「情報の更新と使用できる装備の権限を習得しますのでできれば人目のつかない場所へ移動してください」

 そう言われ城から離れ人気のない方に向かっていると

不可視化インビジブルを使用します」

 そう言うと周りの色が薄くなった感じがした。

 その後王城に向かうが衛兵にも気が付かれる事も無く王城の門まで来れたが・・・

「閉まってるな」

「閉まってますね」

 完璧に下調べの不足である。



「助走し飛び越えることを推奨します」

「わかった、でどうやるんだ?」

「身体的な動きのサポートはブロンズに任せ、主マスターは力を抜いていてください」



 そう言うと壁沿いを猛スピードで走り始め跳躍、壁を飛び越え城内に着地する・・・したんだと思う、怖くて途中から目をつぶってたんでよくわからん。



 まだ不可視化インビジブルは効いているようで「入口の無い塔」まであっさりこれた。

「中に入ります」

 そういうと塔に手を当てたかと思うと、そのまま手か塔に沈んでいく。

「く・・・食われる」

「そんなことはありません」

 塔の中に入れたのは良いが現状が把握できない。真上に煙突のように伸びる空間、移動は壁についている動く取っ手をつかんで上がっている。しかし300年以上放置してあってなんでここはエネルギーとやらが枯渇していないんだ?

 天井が開き、鎧が上手く体を動かし天井部分に入り込む。

「ここか降下ユニットの操縦席です、こちらの椅子にお座りください」

 椅子も横向きになっているが動かせないようなので寝転ぶように座ってみると腰のあたりでパシュッと言う音がしたと思うと腰が離れなくなった。

 平常心平常心・・・

「降下ユニット『天使の羽エンジェルフェザー』より、メインシップ『悪党の巣グリーンウッド』へ通信、目的は強化外骨格パワードスーツの解除コードの習得」



 プシューと音がしたと思うと顔、首、胴体、手、足、そして最後に腰が解放される。



 真っ裸だが解放されたのはうれしい!俺は自由だあああああああああ



 その時頭上より声がかかった。

「現地の人ですね私は『天使の羽エンジェルフェザー』のメインユニットである松と言います。まずは開放おめでとう、それであなたは今からどうしますか?いや聞き方がちがいますね。

 あ な た は ど う し た い で す か ?」



 そう聞かれて俺はぐるぐると頭の中で考える。

 あの鎧やライフルと言う武器は非常に強力で魅力的だ、しかも奪われても相手には使えないときている、口が開けば食事も可能だったし自由に取り外せるなら何の不満もない、それどころか超級クラスになるのも夢じゃないんじゃないだろうか?

 この塔も家にするなら宿代も掛からないだろう、それならメインシップがもっとデカいとするなら城持ちのような生活もできるんじゃないだろうか?

 浮かれていてどうしたいの意味を忘れそうになっていたが願いを言えば叶えるなどとは言われていない、平常心・・・おとぎ話では欲張ったものは碌な目には合わない、と言う事をふと思い出した。

 そうだ、俺は仮の主として鎧を外す為にここに来たんだ、ここを支配しに来たんじゃない。よくよく考えたら落とし物の鎧を届けたからと言って城をよこせなんて話が通用するはずもない。

 乾いた笑いしか出てこないが聞くだけなら損はない。

「俺は落とし物を届けたとして謝礼をいただきたい。貰えるとしたらどこまで貰える?」

「あなたはとても頭の良いようですね、お答えしましょう、仮のマスターを正式なマスターとすることが可能です」

「それはメインシップとやらも含めてか?」

「むろん前マスターの遺書の範囲となりますが前マスターアクトの遺言を聞かれますか?」

「聞かせて貰おう」

 そう言うと天井部分に老人が映し出された、あれがアクトなのだろう。



「お前さんが強化外骨格パワードスーツを回収してくれたのか?俺はアクト、元は星々からいろんなものを掻っ攫って売りさばく開拓者だった。だがこの星でとある事情で強化外骨格パワードスーツが盗まれた。取り返すため冒険者ギルドを立ち上げ、情報を集めたがさっぱりだった。もう俺は老いてひ孫までいる状態だ、そこで強化外骨格パワードスーツを届けてくれたものに『悪党の巣グリーンウッド』『天使の羽エンジェルフェザー』『強化外骨格パワードスーツ』の権利を譲る。この星で最強を気取ることもできるし宇宙に飛び出して開拓者をすることも可能だ。まぁ悪党ならゴールドが黙っちゃいないだろうし、松がこれを見せる事も無いだろう。つまりお前さんはテストに合格しすべてを手にすることができる。俺の失敗をもとに強化外骨格パワードスーツをストレージに入れる機能も付けた新型のストレージは籠手型から腕輪型まで縮小できた。あとで松から受け取ってくれ。あと最後に業者さん娼館で鎧出しっぱなしにするなよ。じゃあな」



「最後の最後で台無しな爺さんだったな」

「ではマスターに成っていただけるならこの腕輪型ストレージを装着してください」

 受け取り腕にはめるとまた違う声が聞こえてきた。



「やっほ~『悪党の巣グリーンウッド』のアイドル!シルクちゃんだよ。よろしくねマスター

「再度ご挨拶を、『天使の羽エンジェルフェザー』の松です。よろしくお願いいたしますマスター

「ちょっと!こいつがマスター?ありえないんだ「「だまりなさい」」・・・」

 シルク、松がゴールドを黙らせた・・・この二人怖いのかな?逆らわない様にしよう。



マスター~何から始める?やっぱ世界征服しちゃったりするの?」

 シルク・・・さらっと怖い事言うのはやめてくれ。



「そうだな・・・まずは何ができるか勉強からだな」



 そう、何ができるか分からない、その場当たりでは失敗することの方が多いのは冒険者でもなんでも同じだ、下調べ、下準備、それからだ。



「じゃあ艦長席に戻って貰って移動だね」

 シルク、移動って?どこへ?いやどうやって?

「システムオールグリーン、準備はOK、いつでも行けますよ」

 松、何の準備をしてるんだ?

「早く座んなさいよ、動く前に装着するわよ」

 え、また鎧着るんですか?なんか触手出てきて引っ張られる!なにをするだああああああ



「「「じゃあ出発」」」



 振動と共に周りの風景が天井、今は正面に映し出される雲を突き抜け映像で見た真っ暗な世界に飛び出す、ちびった・・・鎧着ててよかった・・・



 何もない空間にぽっかりと光を放つ穴が現れるその中に吸い込まれるように入り塔は止まった。



 パシュッと言う音と共に体が浮く、ちょ!まて!何なんだこの状態は!平常心・・・でいられるかああああああああああああああああああ









 宇宙の片隅、惑星D234の衛星軌道上でその叫びを聞くものはなかった。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



 1年後・・・白銀の全身鎧を着たカイルと呼ばれる冒険者が現れ、超級クラスとなるのに時間はかからなかった。
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悪役令嬢が処刑されたあとの世界で、人々の間に静かな困惑が広がる。 魔術師は事態を把握するため使用人に聞き取りを始める。 案外、普段踏まれている側の人々の方が真実を理解しているものである。

魔王を倒した勇者を迫害した人間様方の末路はなかなか悲惨なようです。

カモミール
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勇者ロキは長い冒険の末魔王を討伐する。 だが、人間の王エスカダルはそんな英雄であるロキをなぜか認めず、 ロキに身の覚えのない罪をなすりつけて投獄してしまう。 国民たちもその罪を信じ勇者を迫害した。 そして、処刑場される間際、勇者は驚きの発言をするのだった。

義妹の嫌がらせで、子持ち男性と結婚する羽目になりました。義理の娘に嫌われることも覚悟していましたが、本当の家族を手に入れることができました。

石河 翠
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義母と義妹の嫌がらせにより、子持ち男性の元に嫁ぐことになった主人公。夫になる男性は、前妻が残した一人娘を可愛がっており、新しい子どもはいらないのだという。 実家を出ても、自分は家族を持つことなどできない。そう思っていた主人公だが、娘思いの男性と素直になれないわがままな義理の娘に好感を持ち、少しずつ距離を縮めていく。 そんなある日、死んだはずの前妻が屋敷に現れ、主人公を追い出そうとしてきた。前妻いわく、血の繋がった母親の方が、継母よりも価値があるのだという。主人公が言葉に詰まったその時……。 血の繋がらない母と娘が家族になるまでのお話。 この作品は、小説家になろうおよびエブリスタにも投稿しております。 扉絵は、管澤捻さまに描いていただきました。

冤罪で辺境に幽閉された第4王子

satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。 「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。 辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。

タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。

渡里あずま
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出来損ないの聖女・アガタ。 しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。 「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」 ※※※ 虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。 ※重複投稿作品※ 表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。

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