【完結】番犬と呼ばれた私は、このたび硬派な公爵様に愛されることになりました。

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十中八九、ネクト商会は盗品の横流しに関係しているだろう。明確な証拠がない限り断言はできないが、ここ数年の取引を調べればおのずと答えは出てくるはず。

(もし、イーサンが犯罪で金を稼いでいたとしたら……)

「あ、あの」
「ん?」
「ネクト商会が窃盗をしていたとしたらコルトピア家はどうなるのでしょう」

無関係、と言い切るのは無理があるだろう。
イーサンはよく父上と共同で仕事をしているし、リアンナ姉さんのエスコート役としてパーティーに出席したことだってある。

(賭け決闘だって、合法かと問われると怪しい)

ルド様は少し考えた後、目の前に指を2本突きだした。

「断言は出来ないが、2つのパターンで行く末は大きく変わる。1つはネクト商会が盗品を横流ししていたことを知らず船の発着を許可していた。もう1つは、何もかも知った上で犯罪を見過ごしていた……か」
「!!」
「知らなかった場合、比較的罪は軽い。積載物のチェックを怠ったとしてすぐさま領地を没収され、被害額の一部返済を追求される」
「もう1つは……」
「窃盗幇助の罪で牢屋行きだ」

明確にされたコルトピア家の処遇に思わず息をのんだ。

(そっか……そうだよね、犯罪している船だと分かってて見過ごしてるならそれはもう手助けだ)

それに両親やリアンナ姉さんはイーサンから金品を受け取っている。何かしらの罪に問われるのは避けて通れないだろう。

「家族を助けたいか?」
「えっ……」

ルド様は真剣な眼差しを送る。その目は私の本心を試しているようで、何も言わずただ返事を待っていた。

私を産んでくれた両親、血の繋がった姉。
牢屋に入ってしまえば一生3人には会えない。私の中に残る古い記憶にはみんなとの楽しかった思い出もある。少なくとも8年前のあの事件以前は仲の良い家族だったのだから。

(もしもあの頃に戻れるとしたら戻りたい。でも……)

そうなったら、私はルド様と出会うことはなかった。
他の誰かと結婚して、子供を持って……お互いの存在に気付かずバラバラの人生を送っていたはず。

そんなのは嫌だ。

「私は、あの人たちを助けません」
「リゼ」
「私はあなたの妻として、ヴィアイント公爵夫人として生きることを誓いました。例え家族相手でも、その信念に背くことはしません」

決闘の日、ルド様の手を掴んだ時から全て覚悟していた。
どんな運命だろうと彼についていくと決めたんだ。

ルド様はそんな私を見て申し訳なさそうに微笑んだ後、すぐにいつもの凛々しい姿に戻る。

「近々国王陛下の生誕パーティーが開かれる、そのパーティーにはコルトピア伯爵令嬢も参加するだろう。きっと彼女たちも何らかの接触をしてくるはずだ」
「おそらくイーサンも」

国王陛下の生誕パーティーは国外からも要人たちが参加し、それはそれは盛大に開かれる。毎年私はリアンナ姉さんのエスコート役をさせられていたが、今年はイーサンにその役目が任されるだろう。

その日を逃せば、次また会える日はない。もし私を奪い返そうとしているならチャンスはその1日だけ。

「私が囮になりましょう」
「……ダメだ」
「プライドの高いリアンナ姉さんなら、身分が上の私とは人前で話したくないはずです。きっと人目を避けた場所での話し合いを持ちかけてくる、そのタイミングを狙えば……」
「リゼ」

少し低い声が私の言葉を遮った。

(ルド様……ちょっと怒ってる?)

また私が無茶なことを言い出したと呆れているのかも知れない、それとも上手くこなせるか心配させているのかも。
とにかく何とか認めてもらわないと!


「あの、今度もちゃんとうまくやります!だから、」
「そうじゃない。危ない目に合わせたくないんだ」

立ち上がったルド様は優しく私を抱き締め、そっと額にキスを落とした。

「リゼを愛しているから」
「………え、?」
「……とにかく、まだパーティーまで少し時間がある。それまでに出来るだけ証拠を集めておくから、リゼは何も気にせず準備を進めてくれ」
「……は、はい」

気まずい雰囲気をそのままにして部屋を出る。
扉の前にはフルールさんを始めとした侍女たちが待っていて、戻ってきた私の顔を見るなり心配そうに寄ってきてくれた。

「どうされましたか」
「え、いやその……少しビックリしてて」
「何があったのです?」

(これを言ってもいいものか……)

「あの、少し聞いても良いですか?このままだと変な風に誤解してしまいそうで……正直な意見を聞きたいんですけど」
「何でしょうか」
「その、ルド様って……もしかして、私のこと好きなんですか?」
「「「…………………」」」

覚悟を決めて言ったのに誰一人として返事をしてくれない。みんなあんぐりと口を開け、信じられないものでも見たような顔で私を見る。

「や、やっぱり私の勘違いですよね?あ、愛してると言われたので…、も、もしかしてと思って!」

(は、恥ずかしい勘違いを!しかも自分からバラしちゃうなんて!)

カァっと熱くなる顔を両手で押さえる。
この時、侍女たちがどんな顔でこっちを見ているか気付きもしなかった。恋愛ごとに疎すぎる私たち夫婦に対し、

((((わ、私たちがアシストしなくては……!!))))

と侍女たちが一致団結していたなんて、もちろん私もルド様も気付くはずもなかった。
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