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13 Alice Side ③
しおりを挟む「聖女様、そろそろ魔力を集結させて下さい」
うるさいうるさいうるさい。
私は魔力を練りながら心の中で叫んだ。
この場所に連れて来られたのは、ニーナ=プロティオスに転移魔法で連れ戻された翌日。
朝一番に部屋へとやって来たホリックは、最初にこの国の貴族たちに私を紹介した。
『彼女は聖女。必ずこの国を守ってくれる』
ホリックは否定する時間もくれなかった……それもこれも、私がいけないんだけど。
怪訝そうに私を受け入れた貴族たちは、国に結界を張ることを条件に出した。
そしてそれを受け入れるホリック……あり得ない!私の意思を無視して話を進めるなんて!
それから私は、この大神殿で毎日のように魔力を練り続けている。
「聖女様、集中なさって下さい。かれこれ3時間は経ちました」
「わかってる!!!」
「一箇所に魔力を留めておくことも出来ないなんて……ただでさえ練り上げる魔力量が足りないというのに……」
ぶつぶつと小言ばかり言う女にチッと舌打ちをする。
この女はホリックが私に付けさせた魔法使い。偉そうなことを言ってるけど実力はシルフィの半分くらいのくせに……っ!
私の役目は結界の主軸となる魔力を練り、それを結界として国に張り続けること。足りない魔力は他の魔法使いたちが補うとしても、元である私の力が結界の強度に大きく左右する。
交代が出来るこの女たちとは違って、私は3ヶ月ずーっとここにいるのよ?!
しかも与えられるのは僅かな食事だけ。魔力が尽きてしまう寸前までやらされて、ギリギリのところで強制的に魔力を補充される。
逃げ出すにも見張りが居たんじゃそれも出来ない。
私の精神はとっくに限界だ。
「聖女様、集中が切れております」
「無理よっ……も、できないっ!分かってるでしょ?こんなの時間の問題だって!!!」
「……それでもやって頂きます。それこそが、貴女がこの国に留まれる唯一の方法なのです。全ては……たった一つの、婚約破棄が招いたことですから」
婚約破棄という言葉にゾクッと背筋が凍る。
私が、ホリックを奪ったから……?
手を止めようとした瞬間。
ゴゴゴゴゴと低くて唸るような音が講堂内に響く。
「な、何っ?!」
地震?!
建物が古く天井から小石がパラパラと降ってきた。もう本当に最悪……!
それに何だか揺れが大きくなってない?
「ね、ねぇ……早く避難した方が、」
「その心配はない」
突然聞こえた男の声に息を呑む。
振り返るとさっきまで会話をしていた女は地面に倒れ、代わりに別の人影が現れた。
「だ、だれっ?!」
「ククッ、久しぶりだなァ聖女サマ」
はっきりと見えたその顔は、数ヶ月前にホリックが倒したはずの魔王ロキだった。
「な、んで……」
「何で?結界も張ってない警備の緩い国に来ちゃまずいのかァ?」
挑発的な言葉にかぁっと顔が熱くなる。
ダメだった、全部が手遅れだった!やっぱり魔王は生きてて私を殺しに来たんだわっ!
いやよ、いやっ!まだ死にたくないっ!私にはまだまだやりたい事があるの!だから……っ!
「お、お願いします……」
「あ?」
私は魔王の足元に跪く。
そして長いその足に縋り付きながら、ポロポロと涙を溢しながら顔を上げた。
「見逃してぇ……何でも、何でもしますっ!」
「……ほぉ?具体的には」
「囮になれと言われればそうするしっ、愛玩になれと言われれば喜んでなりますからぁ!だから、だから殺すのだけは!」
「ククッこれが聖女か。節穴にもほどがある」
バカにされたって構わない。
生きてさえいればそれだけでいい!そしたら魔王の目を盗んで逃げて、今度こそ遠くへ……!
「こんなのを選びお嬢さんを捨てたか。本当に理解できないな」
「え……?」
「よほど具合が良いか……いや、それでも足りんな」
魔王はぐっと私の顔を持ち上げる。
赤くて綺麗な瞳……紳士的なホリックと違って、強引で乱暴なこの男も……良いかも。
「喜べ。お前とあの男にはチャンスをやる」
「え……?」
「何度だって俺の心臓を刺せばいい。俺が死ぬまで二人でかかってこい。あの男は何度も剣を突き立て、お前は反撃され瀕死のあの男を助け続けろ」
「ま、待って……そ、それってどういう、」
助け続けろって何?意味が分からない……!
魔王はニヤリと笑い、私の顔に傷をつけた。
「俺が倒されるか、お前らが力尽きるのが先か。賭けようじゃないか」
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