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「オイっ!何で俺達は入れないんだ?!」
沢山のゲストの前で騒ぎ出す青年。
あれは確か……ムバール子爵のご子息、この様な場所に来るには少し若すぎると思っていたけど。
「申し訳ございません。こちらはムバール子爵にお出しした招待状でして、いくらご子息様が代理にいらっしゃったとしても事前にご連絡を頂いていないと中には……」
「そんなもの事後報告で良いだろ!父上は急に体調を崩してしまったんだ、連絡出来なくて当然だ!」
あまりの騒々しさに周りの貴族達も流石に無視できなくなってきた。可哀想ね、あんなお馬鹿の相手までしなきゃならないなんて。
ジュライア様を見ればそんなやり取りは興味ないらしく、ただ隣にいるヘレン嬢へと視線は集中していた。
恐らくあのバカ息子もヘレン嬢のパトロンの一人だろう。
こんな場に婚約者でもない女性を連れてくるなんてどうかしているわね。
「話が違うわロード様!」
「ヘレン!お前は黙っていろよ!」
「貴族のパーティーに参加させてやるって言ったから付いて来たのに、これじゃ話が違うもん!」
キーキーと甲高い女の声が響き渡る。
何とも下品な二人に周りの令嬢や貴婦人達はクスクス隠れる様に笑っていた。
「助けて差し上げたらどうですか?」
「えっ」
「彼女、旦那様の愛するお人でしょう?」
そう言えば一瞬驚いた顔をするジュライア様。
とっくに相手の招待なんか突き止めてるに決まってるじゃない。
ジュライア様は脂汗をたらりと流しながら下を向く。
「……何の事だか分からないな」
あらあら、運命の相手だと言うのに見捨てる気なのね。
まぁあれだけ注目を浴びてしまった彼女に駆け寄れば間違いなく二人の噂は広がる。
でも早くしないと彼女、惨め過ぎて可哀想だわ。
その場を立ち去ろうとするジュライア様。
するとそれに気付いたのか暴れていたヘレン嬢の微かな声が聞こえた。
「ジュライア、さま?」
「っ!」
「そうよ……ジュライア様でしょ?!ねぇ!」
見つかってしまった。
ジュライア様の顔はどんどんと青くなり仕方なくゆっくりと振り返った。
これはまた面倒な事になったわね。
ジュライア様を見ればパァと明るくなるヘレン嬢の顔。
その勢いのままこちらに飛び込んできそうだったけど、すぐさま側にいた衛兵さんに囚われる。
「ちょっとぉ!あの人知り合いなんです!」
周りの視線が一気にこちらに向く。
なるほど、プレジット伯爵が夢中になってると噂の娼婦はコイツか。とみんな一様に納得したみたい。
ハァと大きくため息をつき、私はジュライア様の腕を引っ張りながら彼女達に近付く。
「なっ、誰……」
「初めましてお嬢さん。主人がいつもお世話になっているようで」
ヘレン嬢は私とジュライア様を交互に見比べる。
そしてようやく関係性に気付き、そして何やら勝ち誇ったような顔で私をジロジロと見定める。
「あらぁー奥様でいらっしゃいましたか!初めましてぇ」
「まさかこの様な場でお会いするとは思いませんでした。一度ご挨拶をとは思っていましたから」
「ふふっ、私も奥様にお会いしたかったぁ」
完全に見下す態度を取る彼女に負けじと平静を装う。
なかなかプライドが高いお嬢さんみたいね。
「それで、今日はこちらへ何のご用ですか?」
「用って……ロード様が貴族のパーティーに連れてってやるって言ったから」
「まぁ、そんな社交辞令を鵜呑みになさってわざわざこちらまでいらしたんですか?」
つい鼻で笑ってしまう。
そんな態度にカチンと来たのか、ヘレン嬢の余裕に満ちた表情が見る見るうちに変化していく。
「はぁ?何それ」
「本日はハボンド侯爵様主催のパーティーですから、貴族でない方の参加は基本NGですのよ?」
「ヘレンは私のパートナーだ!それ以上貶めるな!」
「ここは歴とした社交場です。しかも婚約者でもない女性を同伴するなんて……ムバール卿は一体何をお考えなのですか」
横から口を挟むムバール子爵子息にピシャリと言ってやれば彼はシュンと黙り込んでしまった。
対するヘレン嬢は彼のそんな態度に苛つきながら私への威嚇を続ける。
「クロエ、もう良いだろ」
すかさずジュライア様が助け舟を出そうとする。
形勢逆転を狙うかのようにヘレン嬢の顔が明るいものになっていった。
というかこの人よくこの場で助けに入ろうと思えたわね。
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