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17 ※ジュライア視点
※一部性描写がありますのでご注意下さい。
契約妻とは、我ながら名案だと当時の僕は思っていた。
金に困った令嬢に借金の肩代わりをするから期間限定の妻を演じてもらう。なんてお互いWin-Winなんだろうと本気で思っていた。
そして大人しく関係を続け、子供が出来ない等と適当な理由を付けて離縁する。ヘレンとの間にすぐ子供が出来てしまえば流石の父上も文句はないだろう、そう本気で信じていた。
『もしそうだとしてもヘレン嬢を愛していらっしゃる旦那様には関係のない事ですわ』
せっかく僕から誘ってやったのに、僕から歩み寄ってやったのに彼女は顔色一つ変える事なくそう告げた。
最近の僕はおかしい。
あんなに愛していたはずのヘレンの元へと出向かなくなったのは、金がないという理由だけではない。
明らかに僕の興味はクロエへと移った。
可愛げのない完璧な妻はいつも正論で僕に嫌味を言ってくる。だが、そんな彼女に認められたいという自分がいた。
領民にも使用人たちにも、他の貴族達からも称賛されるクロエ=プレジットの視界に僕も映りたかったんだ。
クロエの元を離れ自室に戻る途中、血相を変えて廊下を走る侍女とすれ違う。あれは……確かクロエの専属侍女だ。
向かっているのはクロエの部屋だし、心なしか屋敷全体が落ち着きなく騒ついている。
ふと目の前に若い侍女があたふたしていた。
「何の騒ぎだ」
「だっ旦那様っ!これはその……」
視線を泳がせモゴモゴと喋る女にイラッとする。
僕に知られたくない事でもあるのか!
「はっきり言え」
「はっはい!今、旦那様のお客人が来ておりまして……その、金髪の若い女性が旦那様に会わせろと」
観念して話し始める彼女に周りの侍女達は何とも言えない顔をする。金髪の女性、その言葉だけで僕は瞬時にそれがヘレンだと気付いた。
何故ここに……それよりも使用人達のこの顔から察するに、みんなこの事を黙っていようとしてたのか。
プレジット家の当主は僕なのに……
お前達の主人はこの僕だと言うのに!
「あっ、ジュライア様!」
使用人達の制止を振り切り玄関先まで行くと、衛兵に取り押さえられたヘレンが僕を見つけ目を輝かせた。
僕の登場に衛兵達はすぐさまヘレンから手を離し深く頭を下げる。
「誰の客人に無礼を働くつもりだ!」
「もっ、申し訳御座いません!アポイントもなくただ旦那様に会わせろと騒ぐものですから……」
「そんな事はどうでもいい!この家の主人は僕だ!言い訳なんか聞きたくない!」
怒鳴り込めば衛兵達はすぐさま奥へと引っ込む。
どいつもこいつも僕を馬鹿にしやがって……っ!
「ジュライアさまぁ!」
衛兵に捕まっていたヘレンはすぐさま僕の胸に飛び込んでくる。見上げる大きな瞳には大粒の涙がポロポロと溢れていた。
「怖い思いをさせたね」
「いえっ、あたしが勝手に来たからぁ!」
「……会いに来てくれて嬉しいよ」
自分よりも華奢な身体をギュッと抱き締める。
ああ、久しぶりの感触。
毎日のように抱いていた彼女の身体はあの頃と同じく甘い香りがしてとてつもなく柔らかかった。
「あたしジュライア様に会いたくてっ!だから」
「いいよ、それ以上は」
彼女には相当な金を貢ぎ込んだ。
なかなか振り向いて貰えずひらりとかわされ続けていた。それがどうだ、今じゃ彼女の方から僕を求めに来たじゃないか。
彼女の身体をそっと抱き上げそのまま自室へと向かう。
途中何人もの使用人たちに声を掛けられたがそんなものは関係ない、今僕が求めるのは「僕だけを見てくれるヘレン」の存在だけだ。
「んんっ、ジュライア、さまっ!」
ベッドの上に彼女を放り投げ本能のままに身体を貪る。
甘い声と軋むベッドの音、荒い僕の呼吸だけが部屋中に響き渡った。余計な事は何も考えたくなくてただ目の前にあるヘレンの身体に全てを集中させる。
身悶えながら僕を煽るように彼女の腕が首に回る。
縋るように、甘えるような仕草に支配欲が益々沸いた。
「おねがっ、そのまま……っ!」
可愛い懇願と同時に最奥へと欲を吐き出す。
その時の記憶はほとんどない。
気付けば僕は疲れ果てるヘレンの身体を抱き締めながら眠っていた。
夢の中でクロエが小さく笑っていた。
いつものように僕を嘲笑うかのように美しい顔で。
ああ、本当に……どこまでも嫌な女だなお前は。
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