9 / 20
9
しおりを挟む「………え、?」
一瞬だけ思考回路が止まる。
「い、い、今、なんと」
「ですから、私モニカ=ティネッタの男児ランは後見人としてサリファ王妃殿下をご指名致します」
「右に同じく」
「左に同じですぅ」
ニコッと微笑む3人は、いつも私を迎え出る時と同じ美しい表情だ。
「な……な、なぜ……そんな、」
「では、多数決により私が本日より御子様の後見人となりました。ですので来たる成人の日まで、私が国王代行として引き続き国を動かしましょう」
「ま、ま、ま、待てっ!!」
気付けばテーブルを思い切り叩いていた。
サリファが後見人?何故だ?離縁された王妃は国を追い出されて……あ、あれ?この場合はどうなるんだ?
「どうかなさいました?陛下」
サリファはいつもと同じ、見透かしたような目で真っ直ぐ私を見つめている。
「ふ、ふざけるなぁ!!」
視線から逃げるように3人に近寄ろうとすれば、側に控えていた兵士たちが私と彼女たちの間に割り込んできた。
「な、何故だモニカ?!アズミ!セリーヌ!何故私を……わ、私は、私の子だぞ?!わたしのっ!」
「ええ、そうですわ」
モニカは優しい手付きで子を撫でる。
「正真正銘ランは陛下と私の子ですわ。もちろん藍の姫の御子も黄の姫の御子も父上は陛下で御座います」
「ならば何故っ!な、なぜ……こ、後見人は、わ、私ではないのだっ?!」
他国よりやって来たアズミやセリーヌならまだしも、この国の官僚の子であるモニカがこの習わしを知らない筈がない。
「何故と言われましても……ねぇ?」
「そうですね、こればかりは何とも」
「うーん……どう説明致しましょうかぁ」
3人は不思議そうに言う。
そんな飄々とした態度に私の怒りは沸々と込み上がる。
「お前らぁ!恩を、恩を仇で返すとはっ!」
「見苦しいですよ、陛下」
凛とした声が部屋に響く。
「サリファ……おまえ、」
「全ての答えは出揃いました。陛下……いえ、ギルバート様。貴方は離宮にて大人しく余生を過ごして頂きます。前国王という立派な肩書きと共に」
「ふざけるなっ!何故私がそんな事をっ?!」
要は軟禁されるということだろ?!王である私が……何故、そんなゴミみたいな扱いを受けなくてはならんのだ!
「何故だっ?!」
「……はぁ、まるで子供のようですね」
「なん、だとっ?!」
「口を開けば、何故?何故?人に聞かず自分の頭でお考えになって下さいませ。貴方はそこにいる赤ん坊とは違い、王であり、父親なんですから。……ああ失礼、もう王ではありませんでしたね」
ニヤッと意地の悪い笑みを浮かべるサリファにカッとなる。
「お、お前、図ったな?!」
「はぁ……見当違いも甚だしいですね」
「この性悪め!3人を脅して後見人の座を獲得したな?!そんなに私が憎いか卑しい奴め!」
「いや、あの」
「貴様のような女は不敬罪で牢屋にぶち込んでやるっ!おい衛兵っ!この女をひっ捕らえよ!」
「いやいや、話聞きましょうか」
「なっ!な、何故誰も捕らえぬ?!」
周りの衛兵たちだけではない。家臣たちも、官僚たちも皆んな不思議そうな顔で私を眺めていた。
……いや、不思議そうだなんてもんじゃない。その目はまるで捨てられた子犬を見るような憐れみに満ちていた。
「や、やめろ……そんな目で、私を見るなぁぁあ!」
「ギルバート様」
「近寄るな、この悪魔めぇぇえ!」
テーブルの上にあるナイフを手に取る。そしてそれを力いっぱい投げた。
「「「「王妃殿下っ!!!」」」」
家臣や官僚、使えない衛兵たちが叫ぶがもう遅い。鈍く光るナイフは真っ直ぐサリファの顔めがけて飛んでいく。
全部全部全部お前が悪いんだサリファ。
お前がこの国に来たせいで、お前が私よりも優秀なせいで、お前が私から花園を奪ったせいで。その澄ました顔が傷付くのだ、この私の手で!
「は、はははははっ!地獄に堕ちろサリファぁあ!」
お前のその澄ました顔が、醜く歪んで、そして、血に染まってしまえば良い!馬鹿が、馬鹿がぁぁああ!
「やめときなさい、3人とも」
サリファの声が聞こえた。
その瞬間、私の体はとてつもない勢いで床に叩きつけられた。
「かはぁっ!!!」
全身に伝わる激痛。そして目の前が真っ赤になる。
顔を動かそうとしてみるが持ち上がらない。まるで大きな物で上から押さえつけられているような重圧感、だが当然私の上には誰も乗っていない。
「はぁ……ぁ、っ」
「動かない方が宜しいですよ」
頭上から心地の良い声が聞こえた。
顔は動かせない、視線だけを無理矢理上へ動かす。
「ぁ……、なっんで……」
そこには、凍りつくような冷たい目で私を見下ろしたモニカとアズミ、そしてセリーヌが立っていた。
203
あなたにおすすめの小説
なぜ、私に関係あるのかしら?
シエル
ファンタジー
「初めまして、アシュフォード公爵家一女、セシリア・アシュフォードと申します」
彼女は、つい先日までこの国の王太子殿下の婚約者だった。
そして今日、このトレヴァント辺境伯家へと嫁いできた。
「…レオンハルト・トレヴァントだ」
非道にも自らの実妹を長年にわたり虐げ、婚約者以外の男との不適切な関係を理由に、王太子妃に不適格とされ、貴族学院の卒業式で婚約破棄を宣告された。
そして、新たな婚約者として、その妹が王太子本人から指名されたのだった。
「私は君と夫婦になるつもりはないし、辺境伯夫人として扱うこともない」
この判断によって、どうなるかなども考えずに…
※ 中世ヨーロッパ風の世界観です。
※ ご都合主義ですので、ご了承下さい、
※ 画像はAIにて作成しております
結婚十年目の夫から「結婚契約更新書」なるものが届いた。彼は「送り間違えた」というけれど、それはそれで問題なのでは?
ぽんた
恋愛
レミ・マカリスター侯爵夫人は、夫と政略結婚をして十年目。侯爵夫人として、義父母の介護や領地経営その他もろもろを完ぺきにこなしている。そんなある日、王都に住む夫から「結婚契約更新書」なるものが届いた。義弟を通じ、夫を追求するも夫は「送り間違えた。ほんとうは金を送れというメモを送りたかった」という。レミは、心から思った。「それはそれで問題なのでは?」、と。そして、彼女の夫にたいするざまぁがはじまる。
※ハッピーエンド確約。ざまぁあり。ご都合主義のゆるゆる設定はご容赦願います。
【完結24万pt感謝】子息の廃嫡? そんなことは家でやれ! 国には関係ないぞ!
宇水涼麻
ファンタジー
貴族達が会する場で、四人の青年が高らかに婚約解消を宣った。
そこに国王陛下が登場し、有無を言わさずそれを認めた。
慌てて否定した青年たちの親に、国王陛下は騒ぎを起こした責任として罰金を課した。その金額があまりに高額で、親たちは青年たちの廃嫡することで免れようとする。
貴族家として、これまで後継者として育ててきた者を廃嫡するのは大変な決断である。
しかし、国王陛下はそれを意味なしと袖にした。それは今回の集会に理由がある。
〰️ 〰️ 〰️
中世ヨーロッパ風の婚約破棄物語です。
完結しました。いつもありがとうございます!
透明な貴方
ねこまんまときみどりのことり
ファンタジー
政略結婚の両親は、私が生まれてから離縁した。
私の名は、マーシャ・フャルム・ククルス。
ククルス公爵家の一人娘。
父ククルス公爵は仕事人間で、殆ど家には帰って来ない。母は既に年下の伯爵と再婚し、伯爵夫人として暮らしているらしい。
複雑な環境で育つマーシャの家庭には、秘密があった。
(カクヨムさん、小説家になろうさんにも載せています)
【完結】婚約を解消して進路変更を希望いたします
宇水涼麻
ファンタジー
三ヶ月後に卒業を迎える学園の食堂では卒業後の進路についての話題がそここで繰り広げられている。
しかし、一つのテーブルそんなものは関係ないとばかりに四人の生徒が戯れていた。
そこへ美しく気品ある三人の女子生徒が近付いた。
彼女たちの卒業後の進路はどうなるのだろうか?
中世ヨーロッパ風のお話です。
HOTにランクインしました。ありがとうございます!
ファンタジーの週間人気部門で1位になりました。みなさまのおかげです!
ありがとうございます!
【完結】王子と結婚するには本人も家族も覚悟が必要です
宇水涼麻
ファンタジー
王城の素晴らしい庭園でお茶をする五人。
若い二人と壮年のおデブ紳士と気品あふれる夫妻は、若い二人の未来について話している。
若い二人のうち一人は王子、一人は男爵令嬢である。
王子に見初められた男爵令嬢はこれから王子妃になるべく勉強していくことになる。
そして、男爵一家は王子妃の家族として振る舞えるようにならなくてはならない。
これまでそのような行動をしてこなかった男爵家の人たちでもできるものなのだろうか。
国王陛下夫妻と王宮総務局が総力を挙げて協力していく。
男爵令嬢の教育はいかに!
中世ヨーロッパ風のお話です。
〈完結〉貴女を母親に持ったことは私の最大の不幸でした。
江戸川ばた散歩
ファンタジー
「私」ミュゼットは初潮が来た時に母から「唯一のこの家の女は自分」という理由で使用人の地位に落とされる。
そこで異母姉(と思っていた)アリサや他の使用人達から仕事を学びつつ、母への復讐を心に秘めることとなる。
二年後にアリサの乳母マルティーヌのもとに逃がされた彼女は、父の正体を知りたいアリサに応える形であちこち飛び回り、情報を渡していく。
やがて本当の父親もわかり、暖かい家庭を手に入れることもできる見込みも立つ。
そんな彼女にとっての母の最期は。
「この女を家に入れたことが父にとっての致命傷でした。」のミュゼットのスピンオフ。
番外編にするとまた本編より長くなったりややこしくなりそうなんでもう分けることに。
王太子妃に興味はないのに
藤田菜
ファンタジー
眉目秀麗で芸術的才能もある第一王子に比べ、内気で冴えない第二王子に嫁いだアイリス。周囲にはその立場を憐れまれ、第一王子妃には冷たく当たられる。しかし誰に何と言われようとも、アイリスには関係ない。アイリスのすべきことはただ一つ、第二王子を支えることだけ。
その結果誰もが羨む王太子妃という立場になろうとも、彼女は何も変わらない。王太子妃に興味はないのだ。アイリスが興味があるものは、ただ一つだけ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる