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第2章 人間⇔少女化魔物
110 真性少女契約の条件?
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補導員事務局を出た俺は、一先ずルトアさんとの真性少女契約によって新たに得た真・複合発露を試すため、ホウゲツ学園内にある複合発露用の訓練施設へと向かった。
学園の職員なら申請して空きがあれば当日でも利用可能なそこは、学園長であるトリリス様が自身の複合発露〈迷宮悪儀〉で片手間に作っている空間だそうだ。
なので、外界に影響が出ない程度であれば、いくら壊してしまっても全く問題ない。
「では、第一訓練室へどうぞ」
受付で手続きを済ませ、複数ある入口の内、指示された場所に繋がる扉を目指す。
少し歩いてその前に至り、軽く肩を回して体を解すようにしながら中に入ると、おおよそサッカーのフィールド程度はある殺風景な空間が視界に映った。
こんなものを片手間に作って維持できるのだから、やはりトリリス様の複合発露は破格だ。敵に回したくはないな。……悪戯に使うのもやめて欲しいところだ。
そんなことを考えながら、空間の中央辺りまで進む。すると――。
「う……ん。ふう」
周囲から他人の気配が完全になくなったため、早速フェリトが影から出てきた。
やはり外の方が解放感があるのか、大きく伸びをしてから小さく息を吐いている。
その間にサユキ、テア、リクル。最後にイリュファもまた姿を現した。
「それにしても」
そんな彼女達と俺を振り返り、フェリトが切り出す。
「臆病者なんて自称してたけど、ある意味凄いわね。ルトアは」
どうやら、彼女にとって補導員事務局での一幕はかなり印象的だったらしい。
それに関して俺達と改めて話をしたくなるぐらいには。
さすがにルトアさんの前や屋外、人前では節度を欠くと我慢していたようだが。
「普通、あんなすぐに真性少女契約なんて結べないわよ。契約相手の死が、そのまま自分の死に繋がるんだから。私なんて……まだ全然決心できないもの」
フェリトは己と比較して引け目を感じているようだ。
確かに、決断が早いなとは俺も思ったが……彼女が劣等感を抱く必要はないはずだ。
「フェリトはまだ若いですからね」
と、イリュファがフォローするように告げ、そのまま言葉を続ける。
「基本的に若ければ若い程、少女化魔物は真性少女契約を躊躇う傾向にありますから」
「若ければ若い程……?」
彼女が口にした一般論を受け、訝しむように首を傾げるフェリト。
その視線は、まず自分とそう年齢的に変わらないサユキへと、次にこの中では最も年上であるイリュファへと向けられた。
「まあ、何ごとにも例外はあるものです」
そうした目の動きでフェリトが抱いた疑問の根っこにあるものを察したのか、イリュファは若干困ったような表情を浮かべながら少し弱く告げる。
しかし、すぐに彼女は顔に滲んだ感情を隠し、取り繕うように再び口を開いた。
「一人として、同じ少女化魔物はいないのですから」
「それは……そうね」
どのようにして生まれたか。
どのような場所、関係の中に生まれたか。
どのように過ごしてきたか。
勿論、少女化魔物という一定の型は存在しているが故に、イリュファが口にしたような一般論があるのだろう。
だが、そういった要因が複合的に影響すれば、例外が生じても全く不思議ではない。
「もっとも、救世の転生者としての運命を負うイサク様の周囲には自然と特殊な少女化魔物が集まってしまうので、逆に例外を普通と感じてしまいかねませんが」
「…………ルトアは割と普通の子だと思ってたけど」
「あの子は……人一倍想像力が豊かなのでしょう。だから、戦いに傷つくことを恐れ、いずれ来たる終焉の時に心から望んだ相手と擦れ違ったまま終わることを恐れた」
少女化魔物は不老であるとは言っても、決して不死ではない。
いつ突然、己の命に終わりが来るか分からない。
その終わりをイリュファの言う豊かな想像力で見詰めたから。
ルトアさんは死のリスクが増えることよりも、少しでも死を分かち合うことのできる存在を求めた、というところか。
「…………まあ、ルトアについては何となく理解したわ。サユキがよくも悪くも例外側の存在だってことも、この子を見てれば分かる」
「よくも悪くもって酷くない? フェリトちゃん」
「イサクを求める余り、暴走して手当たり次第凍りつかせた子が何言ってるのよ」
フェリトの言い方に不満を示すサユキだったが、即座に反撃されて視線を逸らした。
そのまま素知らぬ顔をするサユキにフェリトは軽く苦笑する。
しかし、彼女は一つ息を吐いてすぐに表情を引き締め、再びイリュファを見据えた。
「それよりも、いい機会だから聞かせて欲しいことがあるんだけど」
「何でしょうか?」
「前から疑問だったんだけど、どうしてイリュファとリクルはイサクと真性少女契約を結んでないの? 二人はイサクのためなら命を懸けて戦えるんでしょ?」
その問いかけに、かつてフェリトが人間至上主義者達に暴走させられてヨスキ村を襲った時のことを思い出す。
あの時、イリュファとリクルは俺を逃がすため、盾になる覚悟を見せていた。
確かに、それ程の意思があるのなら契約者の死を共有する真性少女契約を結ぶハードルは、普通の少女化魔物よりは低いだろう。だが……。
「それは、その、です……」
フェリトの疑問を前に、強く責められたかのように俯いてしまうリクル。
隣のイリュファも、珍しく微妙に視線を下げている。心に痛みを感じたように。
「あ、べ、別に話したくないのならいいわ。無理強いするつもりは全然ないから。そもそも、私も偉そうに問い質せる立場じゃないし」
そんな二人の反応に、そう慌てて言いながら軽く挙動不審になるフェリト。
「わ、私の理由なんて、それこそ他の人から見たら単に怖気づいてるだけってなじられても仕方がないようなものだしね」
彼女は焦る余り自虐のようなことを言い出すが、そんなことはない。
真性少女契約は一生に一度の契約。
ある意味で、結婚よりも遥かに重大な選択だ。
余程の切っかけがなければ、即断即決は難しいだろう。
「いえ、その、私は…………そう、ですね。私とリクルは従者としてイサク様のために命も投げ出す覚悟ですが、何故か真性少女契約を結ぶことができないのです」
「結ぶことができない? 結ばないんじゃなくて?」
イリュファの答えに驚きを表情に浮かべながら問いを重ねたフェリトは、その言葉が真実か尋ねるようにリクルへと視線を移した。
「……はいです。実際、何度か試しましたですが、真性少女契約は結べなかったです」
それに対し、リクルは小さく頷きながらか細い声で答えたが、言葉を終えると俯いて一層身を縮こまらせてしまった。
「どうして……」
フェリトが呆然としたように問うも、彼女は分からないと告げるように黙って首を横に振るばかりだった。
「もしかしたら、何か、真性少女契約を結ぶための一般に知られていない条件があるのかもしれません。私……達には皆目見当がつきませんが」
代わりに、微妙に言葉につかえながら告げるイリュファ。
その様子を見るに、リクルに関してはどうかは分からないが、恐らく彼女は自分自身のことについては原因に心当たりがあるのだと思う。
そしてそれは、時折俺に罪悪感を抱いているような素振りを見せることと何か関係があるような気がする。
と言うか、その罪悪感こそが無意識に契約を妨げる壁を作っているのかもしれない。
「真性少女契約の条件、か……」
「やっぱり私が駄目スライムだったからでしょうか……です」
「昔はそうだったとしても、イリュファの指導で今は立派な少女化魔物でしょ? きっとリクル自身には全く問題なくて、何か外的な要因のせいに決まってるわ」
落ち込むリクルを元気づけようとフェリトが言う。
俺もリクルに非があるとは微塵も思っていない。
なので、縋るように俺を見てきたリクルへと微笑みを向けて頷く。
すると、彼女はホッとしたように表情を和らげてくれた。
「えっと……それで、結局のところ、ルトアの複合発露ってどんななの?」
もう次の話に切り替えてしまった方がいいと考えてか、露骨に話題を変えるフェリト。
とりあえず俺もそれに乗ることにする。
「早速、試してみようか。真・複合発露〈裂雲雷鳥・不羈〉」
目を閉じて、一回目の発動なので少し格好をつけるために、真性少女契約を結んだ時に何となく頭に浮かんだ名称を口にする。すると――。
「へえ」
身体強化に付随して変化しただろう俺の姿を見て、フェリトが感嘆の声を上げた。
そんな反応をされると、どんな風になったのか気になる。
「サユキ」
「うん」
促すように名前を呼ぶと、彼女は氷を生成すると共に適度に調整して鏡面を作った。
そこに映し出されたのは、背中に電光を纏って輝く一対の翼を持ち、随所に鳥の特徴が表れた己の姿だった。顔は若干猛禽類っぽくなっている。
これだけ見ると、まるで勇敢な戦士のようだ。
「どれどれ」
とりあえず、この広い空間を十二分に使って動き回ってみて感覚を確かめる。
「うん。基本はルトアさんが言った通り、高速移動に特化した身体強化みたいだ。特に元がサンダーバードだからか、かなり空中での動きの制御がし易くなってる」
稲妻を空中に描くが如く、鋭角な方向転換を行うことすら容易い。
少なくとも機動力は相当向上したと考えてよさそうだ。
防御力は余り上がっていないそうなので、回避に活かすのが基本というところか。
恐らく、それを以ってルトアさんは臆病者に相応しい力だと告げたのだろうが……。
確かに逃げにも使える能力ではあるものの、決してそれだけではないと確信する。
「後は、俺が使える複合発露と組み合わせてどこまでできるか」
いかなる複合発露もその真価を発揮するには、柔軟な発想力を基に試行錯誤をして己に最も適した形へと鍛え上げなければならない。
……今日は、このまま日が暮れるまでこの複合発露の応用訓練だな。
学園の職員なら申請して空きがあれば当日でも利用可能なそこは、学園長であるトリリス様が自身の複合発露〈迷宮悪儀〉で片手間に作っている空間だそうだ。
なので、外界に影響が出ない程度であれば、いくら壊してしまっても全く問題ない。
「では、第一訓練室へどうぞ」
受付で手続きを済ませ、複数ある入口の内、指示された場所に繋がる扉を目指す。
少し歩いてその前に至り、軽く肩を回して体を解すようにしながら中に入ると、おおよそサッカーのフィールド程度はある殺風景な空間が視界に映った。
こんなものを片手間に作って維持できるのだから、やはりトリリス様の複合発露は破格だ。敵に回したくはないな。……悪戯に使うのもやめて欲しいところだ。
そんなことを考えながら、空間の中央辺りまで進む。すると――。
「う……ん。ふう」
周囲から他人の気配が完全になくなったため、早速フェリトが影から出てきた。
やはり外の方が解放感があるのか、大きく伸びをしてから小さく息を吐いている。
その間にサユキ、テア、リクル。最後にイリュファもまた姿を現した。
「それにしても」
そんな彼女達と俺を振り返り、フェリトが切り出す。
「臆病者なんて自称してたけど、ある意味凄いわね。ルトアは」
どうやら、彼女にとって補導員事務局での一幕はかなり印象的だったらしい。
それに関して俺達と改めて話をしたくなるぐらいには。
さすがにルトアさんの前や屋外、人前では節度を欠くと我慢していたようだが。
「普通、あんなすぐに真性少女契約なんて結べないわよ。契約相手の死が、そのまま自分の死に繋がるんだから。私なんて……まだ全然決心できないもの」
フェリトは己と比較して引け目を感じているようだ。
確かに、決断が早いなとは俺も思ったが……彼女が劣等感を抱く必要はないはずだ。
「フェリトはまだ若いですからね」
と、イリュファがフォローするように告げ、そのまま言葉を続ける。
「基本的に若ければ若い程、少女化魔物は真性少女契約を躊躇う傾向にありますから」
「若ければ若い程……?」
彼女が口にした一般論を受け、訝しむように首を傾げるフェリト。
その視線は、まず自分とそう年齢的に変わらないサユキへと、次にこの中では最も年上であるイリュファへと向けられた。
「まあ、何ごとにも例外はあるものです」
そうした目の動きでフェリトが抱いた疑問の根っこにあるものを察したのか、イリュファは若干困ったような表情を浮かべながら少し弱く告げる。
しかし、すぐに彼女は顔に滲んだ感情を隠し、取り繕うように再び口を開いた。
「一人として、同じ少女化魔物はいないのですから」
「それは……そうね」
どのようにして生まれたか。
どのような場所、関係の中に生まれたか。
どのように過ごしてきたか。
勿論、少女化魔物という一定の型は存在しているが故に、イリュファが口にしたような一般論があるのだろう。
だが、そういった要因が複合的に影響すれば、例外が生じても全く不思議ではない。
「もっとも、救世の転生者としての運命を負うイサク様の周囲には自然と特殊な少女化魔物が集まってしまうので、逆に例外を普通と感じてしまいかねませんが」
「…………ルトアは割と普通の子だと思ってたけど」
「あの子は……人一倍想像力が豊かなのでしょう。だから、戦いに傷つくことを恐れ、いずれ来たる終焉の時に心から望んだ相手と擦れ違ったまま終わることを恐れた」
少女化魔物は不老であるとは言っても、決して不死ではない。
いつ突然、己の命に終わりが来るか分からない。
その終わりをイリュファの言う豊かな想像力で見詰めたから。
ルトアさんは死のリスクが増えることよりも、少しでも死を分かち合うことのできる存在を求めた、というところか。
「…………まあ、ルトアについては何となく理解したわ。サユキがよくも悪くも例外側の存在だってことも、この子を見てれば分かる」
「よくも悪くもって酷くない? フェリトちゃん」
「イサクを求める余り、暴走して手当たり次第凍りつかせた子が何言ってるのよ」
フェリトの言い方に不満を示すサユキだったが、即座に反撃されて視線を逸らした。
そのまま素知らぬ顔をするサユキにフェリトは軽く苦笑する。
しかし、彼女は一つ息を吐いてすぐに表情を引き締め、再びイリュファを見据えた。
「それよりも、いい機会だから聞かせて欲しいことがあるんだけど」
「何でしょうか?」
「前から疑問だったんだけど、どうしてイリュファとリクルはイサクと真性少女契約を結んでないの? 二人はイサクのためなら命を懸けて戦えるんでしょ?」
その問いかけに、かつてフェリトが人間至上主義者達に暴走させられてヨスキ村を襲った時のことを思い出す。
あの時、イリュファとリクルは俺を逃がすため、盾になる覚悟を見せていた。
確かに、それ程の意思があるのなら契約者の死を共有する真性少女契約を結ぶハードルは、普通の少女化魔物よりは低いだろう。だが……。
「それは、その、です……」
フェリトの疑問を前に、強く責められたかのように俯いてしまうリクル。
隣のイリュファも、珍しく微妙に視線を下げている。心に痛みを感じたように。
「あ、べ、別に話したくないのならいいわ。無理強いするつもりは全然ないから。そもそも、私も偉そうに問い質せる立場じゃないし」
そんな二人の反応に、そう慌てて言いながら軽く挙動不審になるフェリト。
「わ、私の理由なんて、それこそ他の人から見たら単に怖気づいてるだけってなじられても仕方がないようなものだしね」
彼女は焦る余り自虐のようなことを言い出すが、そんなことはない。
真性少女契約は一生に一度の契約。
ある意味で、結婚よりも遥かに重大な選択だ。
余程の切っかけがなければ、即断即決は難しいだろう。
「いえ、その、私は…………そう、ですね。私とリクルは従者としてイサク様のために命も投げ出す覚悟ですが、何故か真性少女契約を結ぶことができないのです」
「結ぶことができない? 結ばないんじゃなくて?」
イリュファの答えに驚きを表情に浮かべながら問いを重ねたフェリトは、その言葉が真実か尋ねるようにリクルへと視線を移した。
「……はいです。実際、何度か試しましたですが、真性少女契約は結べなかったです」
それに対し、リクルは小さく頷きながらか細い声で答えたが、言葉を終えると俯いて一層身を縮こまらせてしまった。
「どうして……」
フェリトが呆然としたように問うも、彼女は分からないと告げるように黙って首を横に振るばかりだった。
「もしかしたら、何か、真性少女契約を結ぶための一般に知られていない条件があるのかもしれません。私……達には皆目見当がつきませんが」
代わりに、微妙に言葉につかえながら告げるイリュファ。
その様子を見るに、リクルに関してはどうかは分からないが、恐らく彼女は自分自身のことについては原因に心当たりがあるのだと思う。
そしてそれは、時折俺に罪悪感を抱いているような素振りを見せることと何か関係があるような気がする。
と言うか、その罪悪感こそが無意識に契約を妨げる壁を作っているのかもしれない。
「真性少女契約の条件、か……」
「やっぱり私が駄目スライムだったからでしょうか……です」
「昔はそうだったとしても、イリュファの指導で今は立派な少女化魔物でしょ? きっとリクル自身には全く問題なくて、何か外的な要因のせいに決まってるわ」
落ち込むリクルを元気づけようとフェリトが言う。
俺もリクルに非があるとは微塵も思っていない。
なので、縋るように俺を見てきたリクルへと微笑みを向けて頷く。
すると、彼女はホッとしたように表情を和らげてくれた。
「えっと……それで、結局のところ、ルトアの複合発露ってどんななの?」
もう次の話に切り替えてしまった方がいいと考えてか、露骨に話題を変えるフェリト。
とりあえず俺もそれに乗ることにする。
「早速、試してみようか。真・複合発露〈裂雲雷鳥・不羈〉」
目を閉じて、一回目の発動なので少し格好をつけるために、真性少女契約を結んだ時に何となく頭に浮かんだ名称を口にする。すると――。
「へえ」
身体強化に付随して変化しただろう俺の姿を見て、フェリトが感嘆の声を上げた。
そんな反応をされると、どんな風になったのか気になる。
「サユキ」
「うん」
促すように名前を呼ぶと、彼女は氷を生成すると共に適度に調整して鏡面を作った。
そこに映し出されたのは、背中に電光を纏って輝く一対の翼を持ち、随所に鳥の特徴が表れた己の姿だった。顔は若干猛禽類っぽくなっている。
これだけ見ると、まるで勇敢な戦士のようだ。
「どれどれ」
とりあえず、この広い空間を十二分に使って動き回ってみて感覚を確かめる。
「うん。基本はルトアさんが言った通り、高速移動に特化した身体強化みたいだ。特に元がサンダーバードだからか、かなり空中での動きの制御がし易くなってる」
稲妻を空中に描くが如く、鋭角な方向転換を行うことすら容易い。
少なくとも機動力は相当向上したと考えてよさそうだ。
防御力は余り上がっていないそうなので、回避に活かすのが基本というところか。
恐らく、それを以ってルトアさんは臆病者に相応しい力だと告げたのだろうが……。
確かに逃げにも使える能力ではあるものの、決してそれだけではないと確信する。
「後は、俺が使える複合発露と組み合わせてどこまでできるか」
いかなる複合発露もその真価を発揮するには、柔軟な発想力を基に試行錯誤をして己に最も適した形へと鍛え上げなければならない。
……今日は、このまま日が暮れるまでこの複合発露の応用訓練だな。
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