ロリコン村の転生英雄~少女化した魔物達の最強ハーレムで世界救済~

青空顎門

文字の大きさ
277 / 396
第5章 治癒の少女化魔物と破滅欲求の根源

248 聖女選別の開始

しおりを挟む
 スールという名だったらしいユニコーンの少女化魔物ロリータとアーヴァンクの少女化魔物パロンを保護し、特別収容施設ハスノハに預けてから数日後。
 ホウゲツ学園の敷地の外れに、一夜にして新たな施設が出現していた。
 後から聞いた用途と中に入る人数を考えると、かなり大きめな箱型の建造物だ。
 勿論、人力の一夜城などではない。
 学園長トリリス様の複合発露エクスコンプレックス迷宮悪戯メイズプランク〉の産物だ。
 このホウゲツ学園を知る人間ならば、その辺のことは重々承知しているため、ただ単に見知らぬ建物ができただけではそうそう驚くことはない。
 ホウシュン祭では一度空き地になってから、即座に復活したりしていたし。
 しかし、それに合わせて発表された事実により、その当日は学園全体、いや、学園都市全体がてんやわんやの大騒ぎだった。
 こればかりは、ことがことだけに仕方のないことだろう。

「……聖女専用の教育施設、か」

 今日はその更に二日後。
 俺は野次馬もいなくなって大分静かになったその建物の入り口近くで、腕を組みながら一通り全体を眺め、そうポツリと口にした。
 
「イサク。ここの警備をしているのが俺だからいいようなものの、ここいらをうろうろしていると不審人物として捕まえられかねないぞ」

 その呟きに応じ、門の脇に立っていた男性が少し呆れ気味に口を開く。
 まだ俺は学園の生徒と見紛う第二次性徴前の子供の姿なので、こうして周囲をうろついているだけなら、そこまで酷いことにはならないと思うが――。

「勿論、ガイオさんがいるのを見つけたから近くまで見物しに来たんですよ」

 門番が顔見知りの彼でなかったら、俺もここまで近づいてはいない。
 以前、ライムさんが引き起こした大事件の際に知り合ったガイオさん。
 彼はウェアタイガーの少女化魔物であるタイルさんと真性少女契約ロリータコントラクトを結んでおり、第六位階の身体強化、アーク複合発露エクスコンプレックス虎威発現タイガライズ覚醒コアーション〉を使用することができる。
 そこを見込まれて、この施設の警備を直接依頼されたそうだ。
 他にも。今はシフト外のようだが、シニッドさんもこの仕事を受けているとか。
 もしかすると、父さん達にも話が行っているかもしれない。

「ともかく、ここから先は男子禁制だ。許可なく入ったら重罪になるからな」
「分かってますって」

 真顔で忠告するガイオさんに、苦笑しながら応じる。
 しかし、それは脅しでも何でもなく、本当にそういった法律があるらしい。
 聞くところによると数百年前に施行されており、聖女候補とユニコーンの少女化魔物を教育する時にのみ効果を発揮する特別法なのだそうだ。
 それでも尚、中に侵入しようとする者がいた場合に備え、主に第六位階の身体強化を持つ少女征服者と少女化魔物を警備に当てている訳だ。
 一応、攻撃系など他のの真・複合発露を持つ者も警備に参加しているが、認識阻害を用いた侵入を最も警戒しているため、身体強化を優先しているらしい。
 勿論、トリリス様も自身の複合発露を利用して目を光らせているはずだが、警備というものは過剰なぐらいが丁度いい。
 いずれにしても、いつもの授業参観の調子で中に入り込もうとすると、俺も普通に「ちょっとよろしいですか?」と肩を叩かれることになるだろう。

 まあ、それは余談として。
 これは一種の国家事業であるため、その警備員として選ばれるに至ったガイオさん達は国から一定以上の信用を得ていると考えていい。

「タイルさんは中ですか?」
「ああ」

 聖女候補とユニコーンの少女化魔物の教育を行うこの施設。
 それを取り囲む外壁は二重になっており、外側を男の真性少女征服者が、内側をその真性少女契約相手である少女化魔物が守る形になっていると聞いている。
 女好きで男嫌いなユニコーンの少女化魔物に最大限配慮した形だ。
 ……しかし、本当に。面倒臭い少女化魔物もいるものだ。
 まあ、根本的にはそう定義した観測者たる人間のせいだけれども。

「けど、ここで聖女が誕生するんだな……」

 後ろを振り返り、専用教育施設を見上げながらガイオさんがしみじみと呟く。
 若干誇らしげに見えるのは、たとえ警備という形であれ、正にその一大案件に関わることができたからと見て間違いない。
 気持ちは分からなくもない。

 実際、聖女候補の誰かがユニコーンの少女化魔物スールと真性少女契約を結ぶことができれば、現状治療不可能な状態異常なども癒やせるようになる訳で……。
 その価値というものは計り知れない。
 激化することが決定づけられている人形化魔物ピグマリオンの脅威への一つの備えとして、それに関わる多くの人々の心理的な負担も若干ながら軽減されることだろう。
 勿論、救世の転生者たる俺もまたその一人だ。
 人間至上主義組織スプレマシーの長、テネシスの件を抜きにしても。

「そう言えば、お前の弟の友達もここに入ったんだって?」
「ええ、そう言ってましたけど、どこでそれを?」

 ふと思い出したように尋ねてきたガイオさんに肯定しつつ、問いを返す。
 弟の友達、即ちラクラちゃんは昨日、慌ただしく準備をして施設内にある特別寮に移ったそうだが、ガイオさんとは接点がないはずだ。首を傾げる。

「噂だよ。ヨスキ村からの新入生三人と一緒に飛び級した、特別優秀な女の子がいるって。もしかすると聖女になるのは彼女じゃないかって注目されている」

 それは……まあ、セト達と一緒にいれば、よくも悪くも話題になるか。
 加えて、いくら女生徒が珍しいと言っても全員が全員、聖女候補としてこの施設に入ることができた訳じゃないようだしな。
 特に、今年入学した中ではラクラちゃん一人のようだし、セト達との相乗効果で名が知れ渡ってしまったらしい。
 ほんの少し心配になる。

「とは言っても、あくまでも俺達みたいな警備員の間での噂だ。聖女候補の筆頭みたいな話は中にまで伝わっていないはずだから余り心配するな」

 俺の表情を読んだように、ガイオさんがフォローを入れる。
 しかし、噂というものはどこからともなく伝わっていくものだ。
 他の聖女候補の反感を買いかねない。とは言え――。

「そもそも、他人を蹴落とそうなんて奴は聖女になんてなれやしないさ。聖女は能力もさることながら、その心も役職に相応しくないといけないんだからな」

 ガイオさんの言う通りだし、余りに目に余る状況になればトリリス様が放ってはおかないだろう。複合発露で状況を把握できるはずだし。
 それに、適度な嫉妬は努力の切っかけにもなり得る。
 また、ラクラちゃんにとっても、多少の障害は成長の種となることだろう。
 平坦な道を歩めればいいというものでもない。

 セト達という仲間(と一応、俺という先達)を得て大きく成長したラクラちゃんは、そこから離れた場所で更なる成長を得ようとしているのだ。
 それぞれの場所で自分の意思で道を歩み始めている弟達もそうだが、過度な干渉は成長の妨げにしかならない。花に水をやり過ぎると枯れてしまうのと同様に。
 そうでなくとも、無理に聖女候補達に関わろうとすれば犯罪者だ。
 いずれにしても、ここから先は俺が手を出していい話ではない。

「ともかく、こんなところで油を売っていないで、自分の仕事をした方がいいぞ」
「……ですね。じゃあ、ガイオさん。また今度、飯にでも行きましょう」
「ああ」

 そうして一度だけ専用教育施設を見上げながら心の中で、精一杯頑張れ、とラクラちゃんにエールを送ってから、俺は補導員事務局へと歩き出したのだった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

独身貴族の異世界転生~ゲームの能力を引き継いで俺TUEEEチート生活

髙龍
ファンタジー
MMORPGで念願のアイテムを入手した次の瞬間大量の水に押し流され無念の中生涯を終えてしまう。 しかし神は彼を見捨てていなかった。 そんなにゲームが好きならと手にしたステータスとアイテムを持ったままゲームに似た世界に転生させてやろうと。 これは俺TUEEEしながら異世界に新しい風を巻き起こす一人の男の物語。

ブラック国家を制裁する方法は、性癖全開のハーレムを作ることでした。

タカハシヨウ
ファンタジー
ヴァン・スナキアはたった一人で世界を圧倒できる強さを誇り、母国ウィルクトリアを守る使命を背負っていた。 しかし国民たちはヴァンの威を借りて他国から財産を搾取し、その金でろくに働かずに暮らしている害悪ばかり。さらにはその歪んだ体制を維持するためにヴァンの魔力を受け継ぐ後継を求め、ヴァンに一夫多妻制まで用意する始末。 ヴァンは国を叩き直すため、あえてヴァンとは子どもを作れない異種族とばかり八人と結婚した。もし後継が生まれなければウィルクトリアは世界中から報復を受けて滅亡するだろう。生き残りたければ心を入れ替えてまともな国になるしかない。 激しく抵抗する国民を圧倒的な力でギャフンと言わせながら、ヴァンは愛する妻たちと甘々イチャイチャ暮らしていく。

【完結】487222760年間女神様に仕えてきた俺は、そろそろ普通の異世界転生をしてもいいと思う

こすもすさんど(元:ムメイザクラ)
ファンタジー
 異世界転生の女神様に四億年近くも仕えてきた、名も無きオリ主。  億千の異世界転生を繰り返してきた彼は、女神様に"休暇"と称して『普通の異世界転生がしたい』とお願いする。  彼の願いを聞き入れた女神様は、彼を無難な異世界へと送り出す。  四億年の経験知識と共に異世界へ降り立ったオリ主――『アヤト』は、自由気ままな転生者生活を満喫しようとするのだが、そんなぶっ壊れチートを持ったなろう系オリ主が平穏無事な"普通の異世界転生"など出来るはずもなく……?  道行く美少女ヒロイン達をスパルタ特訓で徹底的に鍛え上げ、邪魔する奴はただのパンチで滅殺抹殺一撃必殺、それも全ては"普通の異世界転生"をするために!  気が付けばヒロインが増え、気が付けば厄介事に巻き込まれる、テメーの頭はハッピーセットな、なろう系最強チーレム無双オリ主の明日はどっちだ!?    ※小説家になろう、エブリスタ、ノベルアップ+にも掲載しております。

痩せる為に不人気のゴブリン狩りを始めたら人生が変わりすぎた件~痩せたらお金もハーレムも色々手に入りました~

ぐうのすけ
ファンタジー
主人公(太田太志)は高校デビューと同時に体重130キロに到達した。 食事制限とハザマ(ダンジョン)ダイエットを勧めれるが、太志は食事制限を後回しにし、ハザマダイエットを開始する。 最初は甘えていた大志だったが、人とのかかわりによって徐々に考えや行動を変えていく。 それによりスキルや人間関係が変化していき、ヒロインとの関係も変わっていくのだった。 ※最初は成長メインで描かれますが、徐々にヒロインの展開が多めになっていく……予定です。 カクヨムで先行投稿中!

【完結】転生したら最強の魔法使いでした~元ブラック企業OLの異世界無双~

きゅちゃん
ファンタジー
過労死寸前のブラック企業OL・田中美咲(28歳)が、残業中に倒れて異世界に転生。転生先では「セリア・アルクライト」という名前で、なんと世界最強クラスの魔法使いとして生まれ変わる。 前世で我慢し続けた鬱憤を晴らすかのように、理不尽な権力者たちを魔法でバッサバッサと成敗し、困っている人々を助けていく。持ち前の社会人経験と常識、そして圧倒的な魔法力で、この世界の様々な問題を解決していく痛快ストーリー。

異世界転移からふざけた事情により転生へ。日本の常識は意外と非常識。

久遠 れんり
ファンタジー
普段の、何気ない日常。 事故は、予想外に起こる。 そして、異世界転移? 転生も。 気がつけば、見たことのない森。 「おーい」 と呼べば、「グギャ」とゴブリンが答える。 その時どう行動するのか。 また、その先は……。 初期は、サバイバル。 その後人里発見と、自身の立ち位置。生活基盤を確保。 有名になって、王都へ。 日本人の常識で突き進む。 そんな感じで、進みます。 ただ主人公は、ちょっと凝り性で、行きすぎる感じの日本人。そんな傾向が少しある。 異世界側では、少し非常識かもしれない。 面白がってつけた能力、超振動が意外と無敵だったりする。

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

処理中です...