第3次パワフル転生野球大戦ACE

青空顎門

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最終章 転生野球大戦編

315 小学生達との交流会

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 すなお先生との数年振りの再会の後、昼休みの間に俺達は体育館へと向かった。
 当然ながら、表敬訪問は彼女に会うだけで終わりではない。
 午後のいわゆる学習活動の時間に、生徒達と交流することも組み込まれていた。
 まず体育館で軽く準備と進行の確認を行ってから一旦控室へ。
 そして時間になって生徒達が集まったところで正面入り口の方に回り込み、司会の先生の呼びかけに従って改めて中に入る。
 子供達の間に作られていた道を5人で歩いていき、壇上に登る。
 その過程で最も注目を集めていたのは俺やあーちゃん……ではなく昇二だった。

「す、すげー、でっけー……」

 俺達の中でも飛び抜けて体格がよく、日本人離れしている彼はとにかく目立つ。
 姿を見せた時点から全員の視線は釘づけだった。
 大人の先生方でさえ目を丸くしているぐらいだから、小学生なら尚更だろう。
 特に低学年の子は、まるで巨人が突然現れたかのように感じているに違いない。

 たとえ選手のファンだったとしてもファン感謝祭の触れ合い企画に参加したりしていなければ、球場で遠目に見るかテレビ越しに見るのが精々だ。
 それではプロスポーツ選手のスケール感を正確に把握するのは難しい。
 隣に何か比較対象でも置かないことにはうまくイメージできないだろう。

 公表されてる身長の数字以上に、スポーツ選手はとにかくガタイが凄いからな。
 テレビで見ると何となく細身に見えていたとしても、実態は筋肉の塊だ。
 更に昇二はベビーフェイスだし、球界屈指の高身長。
 彼と会って驚かないファンを見たことがない。

 そういったヴィジュアル的に目を引く部分もあってか、この交流会で用意されたプログラムの中で1番盛り上がったのもまた昇二関連のものだった。

「ぶら下がりに参加する子は2列になって並んでね」
「「「はーい」」」

 デモンストレーションとして俺と正樹がそこそこのスピードでキャッチボールをしたり、美海ちゃんはあーちゃんを座らせてナックルを投げたりする傍らで。
 1人あぶれる形となった昇二は恵まれた体格から生み出されるそのパワーを示すため、両腕に生徒達をぶら下げるパフォーマンスを行っていた。
 体格は勿論のこと【怪我しない】ことも考慮に入れての人選だ。

「じゃあ、持ち上げるよ。しっかりぶら下がっていてね」
「うん」
「はーい」

 力こぶを作るようなポーズで軽く屈み、それぞれに生徒が掴まったのを確認してから昇二はゆっくりと持ち上げていく。

「わあっ」
「凄い凄い!」

 そのまま決して不安定になることなく、両腕の生徒をスムーズに上げ下げする。
 小学生達は大喜び。
 体感型だったこともあり、そのパフォーマンスは深く刺さったようだ。

「プロ野球選手って、ホント凄い……」
「力こそパワーだね!」

 この交流会の主役は完全に昇二だった。
 実際、その後に設けられた質問コーナーでも彼に質問が集中していた。
 例えば――。

「何を食べたら、そこまで大きくなることができますか?」
「やっぱり栄養バランスよく、好き嫌いなく食べることだね。それと運動。よく食べてよく動いてよく寝る。それが何よりも大事だよ」

「大きくなってよかったことは?」
「低めやアウトコースの球に手が届きやすいことかなあ。野球以外だと高いところに手が届くのと、人混みの中でも見晴らしがいいことだね」

「大きくなって困ったことは?」
「色々日本人の規格に合ってないからか、あちこちぶつかっちゃうのは困るかな」

「ストライクゾーンも広くなるのは困りませんか?」
「それはまあ、手も長くなって届くから問題はないよ。慣れてるからね」

 やはり彼のガタイのよさ。
 見た目にも明らかなその特徴は小学生ぐらいだと尚のこと憧れの対象になりやすいものであるだけに、生徒達の興味は尽きないようだ。
 昇二としてもヒーローインタビューとかでもなく自分にスポットライトが当たることは珍しいことだと思っているようで、ちょっと嬉しそうでもあった。
 一方で今日の俺と正樹は完全に脇役。
 ほとんど質問は来ない。
 あーちゃんや美海ちゃんに一部女子生徒からいくつか質問が飛んだ程度だった。

「あの、私でも、頑張ればプロ野球選手になれますか?」
「なれる……とは安易には言えないかな。肉体的なハンデを覆すには本当に、血の滲むような努力が必要不可欠だから。諦めない覚悟がないとね」

「どうすれば、野球がうまくなれますか?」
「間違った努力をしないこと。勉強もそう。努力には正しさが必要」

 2人の回答は割とシビアだったが、そういう役回りも必要なことだろう。
 女性プロ野球選手という夢は本当に茨道だ。
 それは各国の野球史が証明してしまっている。
【マニュアル操作】というチートがなければ尚のこと。
 前例すらも生まれなかった可能性が高い。

 もっとも、少なくともこの世界には確かに前例がある。
【マニュアル操作】を持つ者が存在している。
 イタリアでは日本の倍以上の数の女性選手が代表に選出されている。
 ここにいる彼女達の中にも、俺が干渉すれば芽が出る子もいるかもしれない。
 とは言え、それは未来の話だ。

「村山マダーレッドサフフラワーズではジュニアユースチームとユースチームを創設しています。我こそはという方は応募して下さいね」

 いずれにしても、俺は質問コーナーで余り受け答えすることなく。
 最後の纏めにそんな営業みたいなことを口にして交流会は終わった。
 そうして放課後。
 改めて、すなお先生に全員で挨拶に行く。

「今日は本当にありがとうございました。先生」
「こちらこそ。貴方達が来てくれて皆凄く嬉しそうでした。意識が変わって、夢の実現のために懸命になってくれる子が増えるかもしれません」
「はい。WBW本選でも、子供達に夢を見せられるように頑張ります」
「……本当に、立派になりましたね」

 俺の言葉に彼女は感慨深げに呟く。

「貴方達の先生になれたこと。一生の誇りです」

 微笑んで続けるすなお先生に、またちょっと気まずい気持ちを抱く。
 俺の立派な発言は、あくまでも「プロ野球選手野村秀治郎」のものだ。

「もし私達にできることがあるのであれば、いつでも頼って下さいね。大したことはできないとは思いますが……」

 だから、そんなすなお先生の言葉に対して一瞬返答が遅れる。
 しかし、ほとんど間髪を容れず。

「いえ、そんなことはありません!」

 正樹がそう否定した。
 相変わらずキャラがおかしなことになってしまっているが……。
 俺はそんな彼の姿を見て、苦笑しながら軽く一息ついて気を取り直した。

「今日ここに来ることができて、一層WBWへの決意が漲りましたから!」

 グッと力を込めてハキハキと話す正樹の姿にはやはり戸惑いが先立つ。
 けど、まあ、うん。
 もしかしたら、すなお先生は彼にとって初恋の人だったりするのかもしれない。
 初恋が幼稚園の先生とか小学校の先生とか、あるあるだしな。

 何にしても、正樹の言っていることは間違っていない。
 少なくとも彼にとって得がたい機会になったのは確かなのだから。
 そして、きっと昇二にとってもまた。

「いずれ、先生の手を借りる時が来ると思います。その時はお願いします」
「ええ。待っていますね」

 勿論、それは社交辞令ではない。
 今後はクラブ活動チームの視察の打診とかもしやすくなるだろうし、そこで逸材を見つけたりすることだってできるかもしれないからな。
 それはともかくとして。
 こうして小学校時代の恩師たる彼女と別れ、かつての学び舎を後にした後。

「昇二、今日は人気者だったな」
「うん。あんなにキラキラした目で見られるの、初めてだった」

 帰りの車に乗り込んでからしばらくしたところで。
 正樹が若干揶揄い気味に言うと、昇二はニコリと笑って嬉しそうに応じた。
 ひたすら素直に受け取った弟の様子に毒気を抜かれたように正樹は肩を竦める。
 昇二はそれに気づかず、何とも誇らしそうに言葉を続ける。
 今日のイベントは彼の中でも相当ポジティブなものとして印象に残ったようだ。

「皆の夢を壊さないような、格好いいプロ野球選手でありたいって強く思ったよ」

 昇二にとっての応援してくれる人々の象徴は子供達。
 それと沖縄で出会った桐生さんというところだろうか。
 彼女のことを持ち出すのは脈絡がなさ過ぎるかもしれないが、まあ、こちらはこちらでイメージの明確化は果たすことができたと見てよさそうだ。

「そうね。安易なことは言えないと思って厳しいこと言っちゃったけど、私が頑張ってる姿を見て女性プロ野球選手を目指そうって思ってくれる子がいたら嬉しいわ」
「ん。辛い練習を乗り越える力になるなら、それも悪くはない」

 美海ちゃんは勿論あーちゃんでさえ、などと言ったら余りに失礼過ぎるが、彼女達にとっても大なり小なり認識を改める一助になったらしい。
 WBW直前だが、有意義な時間の使い方ができたように思う。

 ……なんて、やっぱり俺はどうにも打算が過ぎるな。
 これは間違いなく、転生者という変な視点の高さのせいだ。
 あーちゃんのおかげでお客様感は大分薄れたと思ったんだけどな。
 そうは言っても前世の記憶や転生者という事実が消えた訳じゃない。
 これは一生つき合っていかなければならないものなんだろうと思う。

 ともあれ、表敬訪問は明日も続く。

「次は倉本さんと磐城君、大松君も合流して向上冠高校だな」

 一先ずこちらに集中するとしよう。
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