第3次パワフル転生野球大戦ACE

青空顎門

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第1章 雌伏の幼少期編

017 異世界日本野球の現在地②

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 前世の野球には確かな歴史の積み重ねがある。
 特に元祖親分とか、勝負師とか、魔術師とか、月見草とか。
 あの前後のレジェンド達が築いた土台こそが、前世において日本の野球が世界一を掴み取るに至った最大の要因だと俺は思う。
 しかし、彼らのような存在はこの世界にはいない。
 いや、まあ、歴史を振り返れば、もしかしたら同じかそれ以上の才能を持つ人もいたのかもしれないけど……。

 ここは、野球で国家のパワーバランスが決まる異常がまかり通っている異世界。
 そうなると、野球の技術は軍事機密と同等。
 最先端の野球をそのまま素直に教えてくれる者、伝えてくれる者などいない。
 前世のレジェンド達が野球の発展に寄与したのは、アメリカの技術や理論を学ぶ機会があってこそ。
 これでは日本の野球の発展は、前世とは比べるべくもない。

 勿論、トレーニング理論や技術研究は前世より盛んではある。
 フィジカル面やリハビリテーションなどは、この世界の方が優れてる感もある。
 ただ、野球中継を見ていても戦術面は前世よりも劣ってるような気がする。
 何と言うか、アメリカの野球を上辺だけを見て真似してる印象。
 とにもかくにも大味なのだ。

「あー、ゲッツーかあ……」
「惜しかったですね」

 中継では、宮城オーラムアステリオスの選手が6-4-3のダブルプレーに倒れていた。
 一応、一塁ランナーも走ってたし、最低限ダブルプレーを回避しようという意思はあるようには見えた。
 ……のだが、速い打球がショートの正面を突いて結局アウト2つ。
 打者が低めの球を、何も考えずに無理矢理引っ張ったようにしか見えなかった。
 やっぱりどこか足りてない。
 そんなのばかりだ。
 野球ゲームとテレビ中継、それと昔の選手が出した本ぐらいしか知識がない俺でも分かるレベルだ。

 何故こんなことになっているのかと言えば、恐らく、いや、間違いなく大リーグ贔屓の野球狂神のせいだろう。
 その影響もあってか、アメリカ以外の国はアメリカの模倣をしようとする。
 けれども、軍事機密だからかアメリカの野球中継は諸々巧妙に映さないようにされている。
 裏に隠された先進的な野球を、フィジカルが躍動するエンターテイメントで覆い隠しているのだ。
 ある種の情報戦のようなものかもしれない。

「うおっ!? 凄いジャンピングキャッチだ」
「よく追いつきましたね。ファインプレーです」

 ……うーん。
 リプレイを見る限り、それは元の守備位置が悪いせいでギリギリになってしまったプレイだな。
 ファインプレーのように見えるだけでファインプレーじゃない。
 って、心の声を切り取ると何かもう天邪鬼みたいだな、俺。

「緊張感のあるいい試合ですね」
「ああ。ハラハラする展開だ」

 1対0の最少得点差。
 そうとだけ書くとまるで息詰まる投手戦のようだ。
 しかし、実態は拙攻続きの結果としての1-0というスコア。
 残塁が多過ぎる。
 俺的にはストレスフルな試合だ。
 けど、両親はそれを面白いと感じているらしい。
 寛容と言うべきか、甘いと言うべきか。

 まあ、これも野球狂神の弊害だろう。

 この世界で野球がNo.1スポーツなのは、奴の調整によるところが大部分。
 ミスターや世界のホームラン王といった国民的スターは、人気を得るためには特に必要としない。
 興行としての工夫も努力も不要だ。
 これでは余所の球団にない色を出そうという意識は尚更生まれにくくなる。
 少なくとも国内は大体同じ方向を向いているのが現状。
 打倒アメリカへの道筋も一本道。
 研究も含めて、真正面からの正攻法で打ち勝つことを目指してしまっている。
 それもまた、アメリカが突出している状況に拍車をかけているのだろう。

「よし、勝った! 今年は本当に調子がよさそうだぞ!」
「…………最後まで維持できればいいのですが」

 結局、中継の試合は最後までスコアが動かず宮城オーラムアステリオスの勝利。
 最終回の兵庫ブルーヴォルテックスは工夫なく、淡泊に三者凡退に終わった。
 今回だけではなく、割と見られる光景だ。
 これが国内最高峰のリーグなのだから、アメリカに勝とうなど夢のまた夢だ。

 ともすれば、誰かが。
 と言うよりも俺が、世の中の風潮まで変えなくてはいけないのかもしれない。
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