第3次パワフル転生野球大戦ACE

青空顎門

文字の大きさ
19 / 435
第1章 雌伏の幼少期編

019 将来の夢

しおりを挟む
「よおし。行くぞっ、秀治郎君!」
「うん!」

 声の力強さとは裏腹に、下手投げでふんわり軟式のボールを投げてくる明彦氏。
 まあ、いくら前世では余り運動してなかったにせよ、これぐらいなら問題ない。
 それこそグローブなしでも簡単に掴むことができるレベルだ。
 むしろ、グローブでうまく捕る方が難しいかもしれない。
 と言うか、明彦氏が加減し過ぎたのか、ちょっとだけ距離が足りない。

「ほっ、と」

 だから俺は1歩前に出て、グローブを差し出すようにしてキャッチした。
 今生での初捕球だな。
 学生時代のソフトボールの授業以来だ。

「お、うまいじゃないか」

 ちょっと驚いたように明彦氏が言う。
 まあ、同年代の子に比べると平均2倍ぐらいのステータスだからな。
 キャッチボールがどういうものか理解していれば何とかなる。
 ちなみに、現在のステータスはこんな感じだ。

☆成長タイプ:マニュアル
☆体格補正値 -60%
☆年齢補正値 -40%
残り経験ポイント2
【Bat Control】▼△
   200(F)
【Swing Power】▼△
   200(F)
【Total Agility】▼△
   200(F)
【Throwing Accurate】▼△
   200(F)
【Grabbing Technique】▼△
   200(F)
【Pitching Speed】▼△
   100     
【Total Vitality】
  1000(SS+)
【Pitching Accurate】▼△
   200(F)
ポジション適性へ⇒
変化球取得画面へ⇒
スキル取得画面へ⇒
その他⇒

 多分、数字だけなら既に前世を超えているんじゃなかろうか。
 ゲームのスキルならともかく、実際の野球のスキルなんて皆無だったしな。
 まあ、ここから体格補正や年齢補正がかかっていく訳だけど。

「ほら、ここに投げ返すんだ。できるかな?」
「うん。……えいっ」

 球速も補正がかかり、更にコントロール重視で投げたので山なりの軌道。
 それでも明彦氏の胸元の辺りには行った。

「ちゃんと届くなんて凄いな!」
「しゅーくん、かっこいい!」

 完全な子供補正だと分かっていても、褒められるとちょっと嬉しい。
 前世じゃ運動で褒められた経験なんてほぼなかったからなあ。

 そんなことを考えながら、何度かキャッチボールを繰り返す。
 力のない球ではあるものの、割と明彦氏の構えたところに行っている。
 ある程度ステータスを上げたおかげだろう。

「……初めてとは思えないな」
「そうかな?」
「ああ。頑張れば、プロ野球選手になれるんじゃないか?」

 いや、さすがに現段階でそれは言い過ぎにも程がある。
 何せ、3部リーグでも基本ステータスが平均800あるからな。
 2部リーグは平均840で1部リーグだと平均880ぐらいだ。

 ちなみに大リーグは平均900程度。
 意外にも基本ステータス上はそこまで差が大きくない。
 ただ、日本人野球選手より体格補正の部分で平均5~10%上回っている。
 これが物凄く大きい。
 ステータスは似た数値でも、補正後は50~100の差が出る。
 最終的な身体スペックが根本的に違うのだ。
 それで同じ土俵だと勘違いしたまま戦おうとするのだから、勝てる訳がない。

 まあ、何にしても。
 この年齢では優れていても、上を見れば先はまだまだ遠い。
 10年以上かけて、みっちりと鍛えていかなければならない。
 そして――。

「うん。僕、将来は日本一のプロ野球選手になるよ!」

 当たり前に。通過点として。
 それぐらいでなければ、この世界のアメリカに勝つことはできないだろう。

「そうか。日本一か。それはいいな!」

 言葉だけ聞けば大言壮語甚だしい。
 それを無闇に否定しない辺り、明彦氏はいい大人だ。
 その明彦氏は、何かを噛み締めるように目を閉じてから口を開いた。

「……俺にもな、夢があるんだ」
「夢?」
「そう。ウチの会社が運営してるクラブチームを、1部リーグのプロ野球球団にすること。そして日本一になること」

 野球に狂った世界だけに、社会人野球チームも無数にある。
 それこそ企業の数程あるらしい。
 チームを設けることは、ある種の義務のようになっているようだ。

 経営的に大きな負担にしか思えないが、確かなメリットもなくはない。
 この世界の日本には前世とは違い、社会人野球チームがそのままプロ野球球団になる道が常に用意されているのだ。
 簡単に言うと、社会人の全国大会の1つである都市対抗野球でベスト4まで進出すると、3部リーグの下位チームに入れ替え戦を挑むことができる。
 そこで勝利してプロ野球球団となった日には、たとえ3部リーグでも多額の補助金が出るし、グッズ販売や興行収入で一攫千金だ。
 何せ、この世界なら運営を雑にやっても100%黒字だからな。
 その代わり、3部リーグだと社会人野球チームに転落する可能性があるけども。

 しかし、多分に漏れず明彦氏の会社にも野球チームがあるのか。
 ……ふむ。
 最終目標を一流のプロ野球選手とかではなくアメリカ打倒とするのなら、その夢を手伝うのも選択肢としてアリかもしれない。
 ある程度ヴィジョンを共有した仲間を作るなら、未完成なチームからスタートした方が手っ取り早いという考え方もある。
 しかも、鈴木家への恩返しにもなる。
 ……うん。本気で考えるか。

「じゃあ、僕が将来おじさんとこのチームに入って強くするよ!」

 宣誓するように強く言い、少し力を込めて球を投げる。
 僅かに逸れたが、ちょっといい音を鳴らしながら明彦氏のグローブに収まった。
 彼はそれに一瞬驚き、それからフッと笑った。

「言ったな。なら、約束しようか」
「うん!」

 明彦氏と指切りをする。
 すると――。

「……あかねもやる」

 いつの間にか蚊帳の外になっていて不満だったのか、あーちゃんがマダーレッドのグローブを両手で持ちながら体を押しつけてきた。

「茜も?」
「ん」

 明彦氏の問いかけに、唇を尖らせながら頷くあーちゃん。
 そのまま小指を差し出してくる彼女に、明彦氏と俺は顔を見合わせて笑った。

「分かった。じゃあ、約束だ」
「ん!」

 明彦氏、俺の順番で小指を絡める。

「指切った!」
「ん!!」

 どうやら、この約束は3人のものになったようだった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

異世界での異生活 ~騎士団長の憂鬱~

なにがし
ファンタジー
成人年齢15歳、結婚適齢期40~60歳、平均寿命200歳の異世界。その世界での小さな国の小さな街の話。 40歳で父の跡を継いで騎士団長に就任した女性、マチルダ・ダ・クロムウェル。若くして団長になった彼女に、部下達はその実力を疑っていた。彼女は団長としての任務をこなそうと、頑張るがなかなか思うようにいかず、憂鬱な日々を送る羽目に。 そんな彼女の憂鬱な日々のお話です。

追放料理人とJKの異世界グルメ無双珍道中〜ネットスーパーは最強です〜

音無響一
ファンタジー
わーい、異世界来ちゃった! スキルスキル〜何かな何かな〜 ネットスーパー……? これチートでしょ!? 当たりだよね!? なになに…… 注文できるのは、食材と調味料だけ? 完成品は? カップ麺は? え、私料理できないんだけど。 ──詰みじゃん。 と思ったら、追放された料理人に拾われました。 素材しか買えない転移JK 追放された料理人 完成品ゼロ 便利アイテムなし あるのは、調味料。 焼くだけなのに泣く。 塩で革命。 ソースで敗北。 そしてなぜかペンギンもいる。 今日も異世界で、 調味料無双しちゃいます!

迷宮に捨てられた俺、魔導ガチャを駆使して世界最強の大賢者へと至る〜

サイダーボウイ
ファンタジー
アスター王国ハワード伯爵家の次男ルイス・ハワードは、10歳の【魔力固定の儀】において魔法適性ゼロを言い渡され、実家を追放されてしまう。 父親の命令により、生還率が恐ろしく低い迷宮へと廃棄されたルイスは、そこで魔獣に襲われて絶体絶命のピンチに陥る。 そんなルイスの危機を救ってくれたのが、400年の時を生きる魔女エメラルドであった。 彼女が操るのは、ルイスがこれまでに目にしたことのない未発見の魔法。 その煌めく魔法の数々を目撃したルイスは、深い感動を覚える。 「今の自分が悔しいなら、生まれ変わるしかないよ」 そう告げるエメラルドのもとで、ルイスは努力によって人生を劇的に変化させていくことになる。 これは、未発見魔法の列挙に挑んだ少年が、仲間たちとの出会いを通じて成長し、やがて世界の命運を動かす最強の大賢者へと至る物語である。

勇者召喚の余り物ですが、メイド型アンドロイド軍団で冒険者始めます

水江タカシ
ファンタジー
28歳独身、一般事務の会社員である俺は、勇者召喚に巻き込まれて異世界へと転移した。 勇者、聖女、剣聖―― 華やかな肩書きを持つ者たちがもてはやされる中、俺に与えられたのは聞いたこともないスキルだった。 【戦術構築サポートAI】 【アンドロイド工廠】 【兵器保管庫】 【兵站生成モジュール】 【拠点構築システム】 【個体強化カスタマイズ】 王は落胆し、貴族は嘲笑い、俺は“役立たず”として王都から追放される。 だが―― この世界には存在しないはずの“機械兵器”を、俺は召喚できた。 最初に召喚したのは、クールな軍人タイプのメイド型戦闘アンドロイド。 識別番号で呼ばれる彼女に、俺は名前を与えた。 「今日からお前はレイナだ」 これは、勇者ではない男が、 メイド型アンドロイド軍団と共に冒険者として成り上がっていく物語。 屋敷を手に入れ、土地を拠点化し、戦力を増強しながら、 趣味全開で異世界を生きていく。 魔王とはいずれ戦うことになるだろう。 だが今は―― まずは冒険者登録からだ。

セーブポイント転生 ~寿命が無い石なので千年修行したらレベル上限突破してしまった~

空色蜻蛉
ファンタジー
枢は目覚めるとクリスタルの中で魂だけの状態になっていた。どうやらダンジョンのセーブポイントに転生してしまったらしい。身動きできない状態に悲嘆に暮れた枢だが、やがて開き直ってレベルアップ作業に明け暮れることにした。百年経ち、二百年経ち……やがて国の礎である「聖なるクリスタル」として崇められるまでになる。 もう元の世界に戻れないと腹をくくって自分の国を見守る枢だが、千年経った時、衝撃のどんでん返しが待ち受けていて……。 【お知らせ】6/22 完結しました!

勝手にダンジョンを創られ魔法のある生活が始まりました

久遠 れんり
ファンタジー
別の世界からの侵略を機に地球にばらまかれた魔素、元々なかった魔素の影響を受け徐々に人間は進化をする。 魔法が使えるようになった人類。 侵略者の想像を超え人類は魔改造されていく。 カクヨム公開中。

木を叩いただけでレベルアップ⁉︎生まれついての豪運さんの豪快無敵な冒険譚!

神崎あら
ファンタジー
運動も勉強も特に秀でていないがめっちゃ運が良い、ただそれだけのオルクスは15歳になり冒険者としてクエストに挑む。 そこで彼は予想だにしない出来事に遭遇する。 これは初期ステータスを運だけに全振りしたオルクスの豪運冒険譚である。  

落ちこぼれの貴族、現地の人達を味方に付けて頑張ります!

ユーリ
ファンタジー
気がつくと、見知らぬ部屋のベッドの上で、状況が理解できず混乱していた僕は、鏡の前に立って、あることを思い出した。 ここはリュカとして生きてきた異世界で、僕は“落ちこぼれ貴族の息子”だった。しかも最悪なことに、さっき行われた絶対失敗出来ない召喚の儀で、僕だけが失敗した。 そのせいで、貴族としての評価は確実に地に落ちる。けれど、両親は超が付くほど過保護だから、家から追い出される心配は……たぶん無い。 問題は一つ。 兄様との関係が、どうしようもなく悪い。 僕は両親に甘やかされ、勉強もサボり放題。その積み重ねのせいで、兄様との距離は遠く、話しかけるだけで気まずい空気に。 このまま兄様が家督を継いだら、屋敷から追い出されるかもしれない! 追い出されないように兄様との関係を改善し、いざ追い出されても生きていけるように勉強して強くなる!……のはずが、勉強をサボっていたせいで、一般常識すら分からないところからのスタートだった。 それでも、兄様との距離を縮めようと努力しているのに、なかなか縮まらない! むしろ避けられてる気さえする!! それでもめげずに、今日も兄様との関係修復、頑張ります! 5/9から小説になろうでも掲載中

処理中です...