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第2章 雄飛の青少年期編
188 皆の完成形について①
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『――旭大山形高校の門倉光英選手について』
『村山マダーレッドサフフラワーズ6位指名、旭大山形高校の門倉光英選手。ポジションはライト。全国大会出場経験はありません』
俺の言葉を引き継ぎ、滑らかに彼の概略を口にする仁科さん。
そんな彼女に画面の中の俺がゆったりと頷く。
旭大山形高校は高校のみの大会では全国常連の強豪校だ。
過去、夏の大会でも甲子園に足を踏み入れたことがある。
しかし、門倉選手が3年生となってレギュラーの座を掴み取った時、山形県には大松君と美海ちゃんを2本柱としている山形県立向上冠高校野球部があった。
結果として全国デビューすることなく、彼は高校野球を終えてしまった。
ただし、打順は8番と下位で、地方大会でも突出した成績を残してはいない。
山形の雄とも言える強豪校であるだけに、たとえ予選で敗退していたとしてもスカウトが全く視察に来ていないということはなかっただろうが……。
その目に留まることはなく、少なくとも1部リーグの球団がドラフト指名候補として門倉選手をリストアップすることはなかった。
育成で指名される可能性もなかったはずだ。
2部以下だとどうか分からないが、調査書を送った段階で大学進学を考えていたようだから接触もなかったに違いない。
『この指名も結構色々言われてたねー』
『まあ、彼については完全に将来性を期待しての指名になりますので、現時点の実力に関しては採点に異を唱えるものではありません』
『それでも、いずれは化けると?』
『はい。そう確信しています』
仁科さんの問いかけに即座に肯定の意を示し、断言する。
現時点の彼の実力を点数にするなら50点程度。
しかも、マイナススキルの減点なしでこれ。
本当にギリギリレギュラーになることができたというところだろう。
しかし――。
『5年以内に80点を超える選手になると思っています』
『他球団の主要打者やエースピッチャーを超えるレベルってことー?』
『そうなります』
カメラ目線で自信満々に告げる
とは言え、それはあくまでも【経験ポイント】取得量増加系スキルを持つ者に囲まれた上で弛まぬ努力を続ければ、という話だ。
聞いた限りだと性格的に自己主張が少ないタイプなので、そこはうまく乗せてやることができれば問題ないと考えている。
環境的に基礎ステータスの低さは十分覆せるはずだ。
……まあ、本音を言えば。
【成長タイプ:マニュアル】の子を取ることが最も合理的ではある。
しかし、さすがにドラフトで指名できる範囲にそんな選手はいない。
高校までそれなりに実績を上げてこないとプロ志望届を出すこともないからだ。
そんな中で彼を指名した理由は、当然と言うべきか【生得スキル】にある。
【失敗は成功の母】なる【生得スキル】だ。
効果は凡打、盗塁失敗、エラーなどの後に該当する能力が上がるというもの。
打撃、走塁、守備で別カウントになっており、成功するまで効果が続くらしい。
3割打てば成功と言われるバッティングにおいて、特に有用なスキルだと思う。
まあ、基礎ステータスが低いと何度も何度も失敗を積み重ねていかないといけないだろうが、きっちり鍛え上げれば都合のいいバフになるはずだ。
1打席目で打てなくても2打席目。
2打席目も駄目でも3打席目と期待が増す。
中々面白い選手になるだろう。
『いずれは主に打撃面で頭角を現してくれると思っていますが、一先ずは長い目で見て下さい。数年後を乞うご期待です』
・まあ、6位指名だからな
・高校生の素材型は大抵そんなもんよ
・元の実績がなさ過ぎて期待できそうにないのが問題だけどな
・だからこそ、もしこの選手が大成したら眼力の証明にもなる
・途中で戦力外とかしたら、煽り散らかしたるわ
是非とも最後まで見守ってくれ。
さて、次だ。
『5位指名。酒田美浪高校の佐々井主樹選手。ポジションはピッチャー。こちらも県内の強豪校ですが、全国大会出場経験はありません』
・また実績なしか
・山形県の高卒選手は、1年目しかチャンスがなかった世代だしな
・大松選手と同じ県で同年代とかもうね
・なら、1年でレギュラーを取ってればよかったんや
・ここ最近は旭大山形が優勢だから、酒田美浪だとそれでも厳しかっただろうな
『彼についても門倉選手と同様に将来性を期待しての指名です。こちらもいずれは80点以上のピッチャーになってくれると考えています』
『どういう役割を期待してるのー?』
『はい。彼にはクローザーとしてチームを支えて欲しいと思っています』
佐々井選手も当然のように【生得スキル】を鑑みての指名だ。
その彼が持つ【生得スキル】は【野球は9回から】というもの。
名前で察することができるかもしれないが、9回以降能力が大幅に向上する。
この効果に加え、ポジションがピッチャーであることを考えると……。
やはり9回に登板する抑えが最も適しているだろう。
……しかし、何と言うか。
【生得スキル】コレクターみたいになりつつあるな。
まあ、誰が見ても優秀な選手は普通に余所が取ってプロになれるはずだから、ウチはこういった取り零されそうなところを狙うべきだろうと思うけれども。
ただ、実際にこの2人が村山マダーレッドサフフラワーズでレギュラーになることができるのか、なれたとしてもそれが長く続くのかは分からない。
【成長タイプ:マニュアル】の選手をうまく入団させる仕組みを作ることができれば、彼らは控えに甘んじてしまう可能性が高いからだ。
とは言え、その場合はトレードなどで他球団に行って頑張って貰えばいい。
そうなる公算が高くとも、当然ながら手を抜かずに鍛え上げるつもりでいる。
なので、ここで指名されずに進学するよりもいい野球人生を歩めるはずだ。
と言ったところで、主に問題視されている順位に進む。
『続いて4位指名。向上冠高校の瀬川昇二選手。ポジションはキャッチャーで、今年の夏の甲子園で優勝しています』
・大松選手とバッテリーを組んでたからな
・甲子園での成績は、控え目だったけど
・それでも瀬川昇二選手を指名するのは他の選手よりは理解できる
・4位はウェーバー制だから指名できたけど、5位だとどっかに取られてたかも
・まあ、キャッチャーが飽和してる状態で指名するのはハテナだけどな
ドラフト会議で土木が言ってた通り
『昇二は自分の幼馴染の1人で、神童と呼ばれた瀬川正樹の双子の弟ですね。もっとも、双子にしては性格も体つきも全く似ていませんが』
・二卵性かな?
・いや、ガタイよ過ぎ
・待って、幼馴染なの!?
・知らん人もいるのか
・他球団ファンとかなら全く不思議じゃないだろ
・野村秀治郎、野村茜、浜中美海、瀬川正樹、瀬川昇二は同じ小学校出身らしい
昇二は【超晩成】の影響で高校の3年間で急激に体格がよくなった。
今や大柄のマッチョボディにベビーフェイスが乗っかっている感じだ。
薄着になるとアンバランスで未だに違和感があるが、その内慣れるだろう。
ちなみに。
【超早熟】のせいで小学校以来ほとんど成長がなかった正樹の方も【雲外蒼天】を取得して以降、大分体格がよくなった。
ただ、昇二と比べると一回り以上小さい。
兄弟らしく顔は似ているものの、正樹は昇二よりもデフォルトの表情がちょっときつめなこともあってかベビーフェイス感は乏しい。
その辺りは性格の違いのせいだな。
それはともかくとして。
『正直、昇二を4位で取れたのは非常に幸運でした。と言うのも、彼の潜在能力はバンビーノ選手に匹敵するからです。成長すれば99~100点を見込めます』
・ファッ!?
・マジで?
・暗に自分よりも瀬川昇二選手の方が上だって言ってる?
単純なステータスで言えば、そうなる。
【超晩成】にまだ取得していない【全力プレイ】と【身を捨ててこそ浮かぶ瀬もあれ】が加えれば、【体格補正】がマイナスではなくプラス補正になるだろう。
【怪我しない】を持つが故に、それを躊躇う理由もない。
しかも【成長タイプ:マニュアル】だ。
最終ステータスとしてはレジェンドに匹敵するレベルも十分望めるだろう。
勿論、試合はステータス値で決まる訳ではないが……。
その部分で不利が生じることなく戦うことができるのは非常に有益だ。
『指名挨拶で尾高監督が言っていた通り、数年後には彼が球団の正捕手となる予定です。自分の球も受けて貰います』
『野村茜選手はどうされるんですか?』
『その頃には恐らく、茜は引退していると思いますので』
画面の中の俺の隣であーちゃんが肯定するようにコクリと頷く。
・え、そうなのか?
・事情は分からんが、そういうことならキャッチャーを取るのはアリか……
・まあ、瀬川昇二指名の謎な部分は多少解消された感があるな
・バンビーノ並に期待をかけてるってことは驚きだけど
・その辺りの答え合わせは、いずれにしても数年後か
いや、活躍という点では多分そこまで待たせることはないはずだ。
来年には一定の結果を示すことができるだろう。
『3位指名は東京プレスギガンテスユースの瀬川正樹選手です。ポジションはピッチャー。夏の甲子園準優勝投手ですが、ご存知の通り怪我をしてリハビリ中です』
『正樹に関して実力を疑う人はいないでしょう。怪我さえ治れば何の問題もありません。ただ、2度やってるので復帰は厳しいと考える方が多いようですが』
『でも、実際のところ大丈夫なのー?』
『リハビリ体制は地元病院の協力を得て整えていますし、復帰プランも考えています。現時点では来シーズンはリハビリに専念して貰う予定です』
・今回は2度目の手術の上に2ヶ所やっちまってるからな
・焦って復帰を目指すより、年単位でじっくりリハビリした方がいい
・東京プレスギガンテスは育成指名を公言してたけど、あっちだと焦りそうだし
弟や幼馴染がいる環境でやった方が落ち着いて療養できそうではある
・来シーズン初めて1部に挑戦する球団としてはどうなのって感はあるけど……
・ドラフト指名の枠を1つ潰して取ってるのに来年は期待できない訳だしな
・まあ、瀬川正樹選手にとってはよかったのかも
『2度目の手術ということですが、経過はどうなんでしょうか』
『今のところ問題はないようですが、復帰可能かまではまだ判断できないというところです。ただ、右腕の状態如何に関わらず、再来年にローテーションピッチャーの1人として活躍して貰う代替案があります』
『代替案ー?』
『右腕の状態如何に関わらず、ですか?』
『はい。まあ、練習を始めてしまえばすぐに分かってしまうことなので、この場を借りて発表してしまいますが……』
画面の中の俺がわざとらしく溜めてから再び口を開く。
『正樹には、1年で左投げを形にして貰います』
・サ、サウスポー!?
・いや、そら、今までの怪我は右手に集中してるから左手は無事だろうけどさ
・プロに通用するレベルに持ってけるのか?
『正樹は器用な選手ですから。サウスポー転向は確実に可能だと思います。右の方も回復して自分のように両投げになれるかは、さすがに不明瞭ですが』
・両投げ投手2人とか、前代未聞過ぎるわ
・けど、左投げは考えてなかったな
・言うは易く行うは難しそのものだからな
・いや、楽観視し過ぎだろ
そう見えるかもしれないが、そこまで難しいとは考えていない。
【衰え知らず】と【成長タイプ:マニュアル】による補正。
この2つがあれば、万全の状態に持っていくことは十分可能なはずだ。
そして――。
『万全の状態になれば、正樹は97点ぐらいになると思っています』
・瀬川兄弟を高く評価し過ぎじゃね?
・これこそ身贔屓じゃねーの?
・いや、それで育成失敗したら死ぬ程叩かれるぞ? リスク高過ぎだろ
・目立ちたいだけとか
【雲外蒼天】により【体格補正】のマイナスが完全になくなった。
少なくとも現時点の俺よりも最終ステータスでは今の正樹の方が上だ。
問題はそれを発揮できるかどうかだけ。
左投げなら手術を受けた右よりも可能性はある。
実のところ磐城君も大松君も右で左ピッチャーの枚数が足りないという不安要素があったのだが、これはその解消にもなっている。
一挙両得以上の解決案だと自負している。
だから――。
『神童と呼ばれた男の完全復活を、どうぞご期待下さい』
画面の中の俺は得意気に、またぞろ格好をつけてそう告げたのだった。
『村山マダーレッドサフフラワーズ6位指名、旭大山形高校の門倉光英選手。ポジションはライト。全国大会出場経験はありません』
俺の言葉を引き継ぎ、滑らかに彼の概略を口にする仁科さん。
そんな彼女に画面の中の俺がゆったりと頷く。
旭大山形高校は高校のみの大会では全国常連の強豪校だ。
過去、夏の大会でも甲子園に足を踏み入れたことがある。
しかし、門倉選手が3年生となってレギュラーの座を掴み取った時、山形県には大松君と美海ちゃんを2本柱としている山形県立向上冠高校野球部があった。
結果として全国デビューすることなく、彼は高校野球を終えてしまった。
ただし、打順は8番と下位で、地方大会でも突出した成績を残してはいない。
山形の雄とも言える強豪校であるだけに、たとえ予選で敗退していたとしてもスカウトが全く視察に来ていないということはなかっただろうが……。
その目に留まることはなく、少なくとも1部リーグの球団がドラフト指名候補として門倉選手をリストアップすることはなかった。
育成で指名される可能性もなかったはずだ。
2部以下だとどうか分からないが、調査書を送った段階で大学進学を考えていたようだから接触もなかったに違いない。
『この指名も結構色々言われてたねー』
『まあ、彼については完全に将来性を期待しての指名になりますので、現時点の実力に関しては採点に異を唱えるものではありません』
『それでも、いずれは化けると?』
『はい。そう確信しています』
仁科さんの問いかけに即座に肯定の意を示し、断言する。
現時点の彼の実力を点数にするなら50点程度。
しかも、マイナススキルの減点なしでこれ。
本当にギリギリレギュラーになることができたというところだろう。
しかし――。
『5年以内に80点を超える選手になると思っています』
『他球団の主要打者やエースピッチャーを超えるレベルってことー?』
『そうなります』
カメラ目線で自信満々に告げる
とは言え、それはあくまでも【経験ポイント】取得量増加系スキルを持つ者に囲まれた上で弛まぬ努力を続ければ、という話だ。
聞いた限りだと性格的に自己主張が少ないタイプなので、そこはうまく乗せてやることができれば問題ないと考えている。
環境的に基礎ステータスの低さは十分覆せるはずだ。
……まあ、本音を言えば。
【成長タイプ:マニュアル】の子を取ることが最も合理的ではある。
しかし、さすがにドラフトで指名できる範囲にそんな選手はいない。
高校までそれなりに実績を上げてこないとプロ志望届を出すこともないからだ。
そんな中で彼を指名した理由は、当然と言うべきか【生得スキル】にある。
【失敗は成功の母】なる【生得スキル】だ。
効果は凡打、盗塁失敗、エラーなどの後に該当する能力が上がるというもの。
打撃、走塁、守備で別カウントになっており、成功するまで効果が続くらしい。
3割打てば成功と言われるバッティングにおいて、特に有用なスキルだと思う。
まあ、基礎ステータスが低いと何度も何度も失敗を積み重ねていかないといけないだろうが、きっちり鍛え上げれば都合のいいバフになるはずだ。
1打席目で打てなくても2打席目。
2打席目も駄目でも3打席目と期待が増す。
中々面白い選手になるだろう。
『いずれは主に打撃面で頭角を現してくれると思っていますが、一先ずは長い目で見て下さい。数年後を乞うご期待です』
・まあ、6位指名だからな
・高校生の素材型は大抵そんなもんよ
・元の実績がなさ過ぎて期待できそうにないのが問題だけどな
・だからこそ、もしこの選手が大成したら眼力の証明にもなる
・途中で戦力外とかしたら、煽り散らかしたるわ
是非とも最後まで見守ってくれ。
さて、次だ。
『5位指名。酒田美浪高校の佐々井主樹選手。ポジションはピッチャー。こちらも県内の強豪校ですが、全国大会出場経験はありません』
・また実績なしか
・山形県の高卒選手は、1年目しかチャンスがなかった世代だしな
・大松選手と同じ県で同年代とかもうね
・なら、1年でレギュラーを取ってればよかったんや
・ここ最近は旭大山形が優勢だから、酒田美浪だとそれでも厳しかっただろうな
『彼についても門倉選手と同様に将来性を期待しての指名です。こちらもいずれは80点以上のピッチャーになってくれると考えています』
『どういう役割を期待してるのー?』
『はい。彼にはクローザーとしてチームを支えて欲しいと思っています』
佐々井選手も当然のように【生得スキル】を鑑みての指名だ。
その彼が持つ【生得スキル】は【野球は9回から】というもの。
名前で察することができるかもしれないが、9回以降能力が大幅に向上する。
この効果に加え、ポジションがピッチャーであることを考えると……。
やはり9回に登板する抑えが最も適しているだろう。
……しかし、何と言うか。
【生得スキル】コレクターみたいになりつつあるな。
まあ、誰が見ても優秀な選手は普通に余所が取ってプロになれるはずだから、ウチはこういった取り零されそうなところを狙うべきだろうと思うけれども。
ただ、実際にこの2人が村山マダーレッドサフフラワーズでレギュラーになることができるのか、なれたとしてもそれが長く続くのかは分からない。
【成長タイプ:マニュアル】の選手をうまく入団させる仕組みを作ることができれば、彼らは控えに甘んじてしまう可能性が高いからだ。
とは言え、その場合はトレードなどで他球団に行って頑張って貰えばいい。
そうなる公算が高くとも、当然ながら手を抜かずに鍛え上げるつもりでいる。
なので、ここで指名されずに進学するよりもいい野球人生を歩めるはずだ。
と言ったところで、主に問題視されている順位に進む。
『続いて4位指名。向上冠高校の瀬川昇二選手。ポジションはキャッチャーで、今年の夏の甲子園で優勝しています』
・大松選手とバッテリーを組んでたからな
・甲子園での成績は、控え目だったけど
・それでも瀬川昇二選手を指名するのは他の選手よりは理解できる
・4位はウェーバー制だから指名できたけど、5位だとどっかに取られてたかも
・まあ、キャッチャーが飽和してる状態で指名するのはハテナだけどな
ドラフト会議で土木が言ってた通り
『昇二は自分の幼馴染の1人で、神童と呼ばれた瀬川正樹の双子の弟ですね。もっとも、双子にしては性格も体つきも全く似ていませんが』
・二卵性かな?
・いや、ガタイよ過ぎ
・待って、幼馴染なの!?
・知らん人もいるのか
・他球団ファンとかなら全く不思議じゃないだろ
・野村秀治郎、野村茜、浜中美海、瀬川正樹、瀬川昇二は同じ小学校出身らしい
昇二は【超晩成】の影響で高校の3年間で急激に体格がよくなった。
今や大柄のマッチョボディにベビーフェイスが乗っかっている感じだ。
薄着になるとアンバランスで未だに違和感があるが、その内慣れるだろう。
ちなみに。
【超早熟】のせいで小学校以来ほとんど成長がなかった正樹の方も【雲外蒼天】を取得して以降、大分体格がよくなった。
ただ、昇二と比べると一回り以上小さい。
兄弟らしく顔は似ているものの、正樹は昇二よりもデフォルトの表情がちょっときつめなこともあってかベビーフェイス感は乏しい。
その辺りは性格の違いのせいだな。
それはともかくとして。
『正直、昇二を4位で取れたのは非常に幸運でした。と言うのも、彼の潜在能力はバンビーノ選手に匹敵するからです。成長すれば99~100点を見込めます』
・ファッ!?
・マジで?
・暗に自分よりも瀬川昇二選手の方が上だって言ってる?
単純なステータスで言えば、そうなる。
【超晩成】にまだ取得していない【全力プレイ】と【身を捨ててこそ浮かぶ瀬もあれ】が加えれば、【体格補正】がマイナスではなくプラス補正になるだろう。
【怪我しない】を持つが故に、それを躊躇う理由もない。
しかも【成長タイプ:マニュアル】だ。
最終ステータスとしてはレジェンドに匹敵するレベルも十分望めるだろう。
勿論、試合はステータス値で決まる訳ではないが……。
その部分で不利が生じることなく戦うことができるのは非常に有益だ。
『指名挨拶で尾高監督が言っていた通り、数年後には彼が球団の正捕手となる予定です。自分の球も受けて貰います』
『野村茜選手はどうされるんですか?』
『その頃には恐らく、茜は引退していると思いますので』
画面の中の俺の隣であーちゃんが肯定するようにコクリと頷く。
・え、そうなのか?
・事情は分からんが、そういうことならキャッチャーを取るのはアリか……
・まあ、瀬川昇二指名の謎な部分は多少解消された感があるな
・バンビーノ並に期待をかけてるってことは驚きだけど
・その辺りの答え合わせは、いずれにしても数年後か
いや、活躍という点では多分そこまで待たせることはないはずだ。
来年には一定の結果を示すことができるだろう。
『3位指名は東京プレスギガンテスユースの瀬川正樹選手です。ポジションはピッチャー。夏の甲子園準優勝投手ですが、ご存知の通り怪我をしてリハビリ中です』
『正樹に関して実力を疑う人はいないでしょう。怪我さえ治れば何の問題もありません。ただ、2度やってるので復帰は厳しいと考える方が多いようですが』
『でも、実際のところ大丈夫なのー?』
『リハビリ体制は地元病院の協力を得て整えていますし、復帰プランも考えています。現時点では来シーズンはリハビリに専念して貰う予定です』
・今回は2度目の手術の上に2ヶ所やっちまってるからな
・焦って復帰を目指すより、年単位でじっくりリハビリした方がいい
・東京プレスギガンテスは育成指名を公言してたけど、あっちだと焦りそうだし
弟や幼馴染がいる環境でやった方が落ち着いて療養できそうではある
・来シーズン初めて1部に挑戦する球団としてはどうなのって感はあるけど……
・ドラフト指名の枠を1つ潰して取ってるのに来年は期待できない訳だしな
・まあ、瀬川正樹選手にとってはよかったのかも
『2度目の手術ということですが、経過はどうなんでしょうか』
『今のところ問題はないようですが、復帰可能かまではまだ判断できないというところです。ただ、右腕の状態如何に関わらず、再来年にローテーションピッチャーの1人として活躍して貰う代替案があります』
『代替案ー?』
『右腕の状態如何に関わらず、ですか?』
『はい。まあ、練習を始めてしまえばすぐに分かってしまうことなので、この場を借りて発表してしまいますが……』
画面の中の俺がわざとらしく溜めてから再び口を開く。
『正樹には、1年で左投げを形にして貰います』
・サ、サウスポー!?
・いや、そら、今までの怪我は右手に集中してるから左手は無事だろうけどさ
・プロに通用するレベルに持ってけるのか?
『正樹は器用な選手ですから。サウスポー転向は確実に可能だと思います。右の方も回復して自分のように両投げになれるかは、さすがに不明瞭ですが』
・両投げ投手2人とか、前代未聞過ぎるわ
・けど、左投げは考えてなかったな
・言うは易く行うは難しそのものだからな
・いや、楽観視し過ぎだろ
そう見えるかもしれないが、そこまで難しいとは考えていない。
【衰え知らず】と【成長タイプ:マニュアル】による補正。
この2つがあれば、万全の状態に持っていくことは十分可能なはずだ。
そして――。
『万全の状態になれば、正樹は97点ぐらいになると思っています』
・瀬川兄弟を高く評価し過ぎじゃね?
・これこそ身贔屓じゃねーの?
・いや、それで育成失敗したら死ぬ程叩かれるぞ? リスク高過ぎだろ
・目立ちたいだけとか
【雲外蒼天】により【体格補正】のマイナスが完全になくなった。
少なくとも現時点の俺よりも最終ステータスでは今の正樹の方が上だ。
問題はそれを発揮できるかどうかだけ。
左投げなら手術を受けた右よりも可能性はある。
実のところ磐城君も大松君も右で左ピッチャーの枚数が足りないという不安要素があったのだが、これはその解消にもなっている。
一挙両得以上の解決案だと自負している。
だから――。
『神童と呼ばれた男の完全復活を、どうぞご期待下さい』
画面の中の俺は得意気に、またぞろ格好をつけてそう告げたのだった。
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