第3次パワフル転生野球大戦ACE

青空顎門

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第3章 日本プロ野球1部リーグ編

216 再生工場始動?

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 5月上旬。正式に2人のレンタル・トレードが成立した。
 高梁さんのレンタル移籍先は北海道フレッシュウォリアーズ。
 長尾さんのレンタル移籍先は千葉オケアノスガルズとなった。
 どちらも公営1部パーマネントリーグの球団だ。

 このリーグは現在、磐城君擁する兵庫ブルーヴォルテックスが首位。
 2位は宮城オーラムアステリオス。
 今のところ投打がうまいこと噛み合っており、首位兵庫ブルーヴォルテックスに何とか食らいついていっている。
 昨シーズン終盤に大ブレイクを果たした山崎選手が、その急成長は一過性のものではないと証明するような活躍を見せてくれているのも非常に大きいだろう。
 マスコミもいい感じに煽って、磐城君のライバル的立ち位置になりつつある。
 互いに意識して切磋琢磨していって欲しいところだ。

 ただ、この2球団以外はパッとしていない。
 2位と3位のゲーム差は広がり続け、5位と6位はそれを更に上回っている。
 端的に言ってしまえば、2強3弱1論外。
 それが公営パーマネントリーグの現状だった。

 ちなみに、論外の球団は埼玉セルヴァグレーツだ。
 シーズン歴代最多敗戦記録ペースを上回る勢いで負け続けている。
 予想通り、海峰永徳選手の【不幸の置物】が悪さをしてしまっていた。
 彼以外の埼玉セルヴァグレーツの選手は、気の毒としか言いようがない。

 何はともあれ。
 全体を見渡せば色々目を引く部分があり、今季も話題には事欠いていない。
 エンターテインメントとしては「まあ、これはこれで」という感じだ。
 しかし、名目上は同格の球団が競い合うはずの日本プロ野球界のリーグ戦として考えると、均衡が崩れまくっているこの状況は非常にマズい。
 ……まあ、ウチのリーグも余所様のことをとやかく言える立場じゃないけども。

「どこもかしこも、しっちゃかめっちゃか」
「いや、一応私営ウエストリーグは普通だぞ」
「忘れてた。地味過ぎて」
「茜はまた……真顔で酷いことを言うわね」

 あっけらかんと言い訳したあーちゃんに、美海ちゃんが呆れたように嘆息する。
 とは言え、私営ウエストリーグが相対的に見て目立っていないのは事実だ。
 公営パーマネントリーグについては前述した通り。
 公営セレスティアルリーグは、大松君の二刀流がチーム事情にこれ以上なくマッチしたらしく東京プレスギガンテスが一強の様相。
 早くも独走態勢を敷いている。
 私営イーストリーグは言わずもがな。
 俺達が大暴れしているせいで、順位に関しては村山マダーレッドサフフラワーズを蚊帳の外に置いて2位から6位のみで論じられている。
 平和(?)なのは私営ウエストリーグだけだ。
 こちらは今のところ団子状態で、健全にペナントレースを消化していっている。

 そこに村山マダーレッドサフフラワーズ出身の選手をひとつまみ……というのも選択肢の1つとしては一応なくなかった。
 だが、今回は見送ることにした。
 理由はいくつかあるが――。

「高梁さんと長尾さんを公営パリーグに送ったのって、磐城君のため?」

 昇二が問いかけてきた内容もまた、その内の1つだ。
 磐城君のピッチャーとしての成長を促すためには、山崎選手以外にも彼に緊張感を抱かせるようなバッターと対戦する機会が必要。
 本気の俺を相手に時折打撃練習をしていた高梁さんと長尾さんであれば、十分その役目を果たすことができるはず。
 そういった考えも間違いなくあった。

「……大松君の方はいいの?」
「あー、いや、アッチはDH制がないからな」

 勿論、大松君にも好敵手となる選手を送り込みたいのは山々ではある。
 しかし、公営セレスティアルリーグは唯一DH制を採用していないリーグだ。
 なので、こちらも次回以降とすることにした。
 村山マダーレッドサフフラワーズで育成した選手を他球団に送り込む。
 正にその最初の試み。
 であるだけに、レギュラー奪取の確率を少しでも上げておきたかったのだ。
 2人は他球団ならDH専でも十分やっていけるだけの打力があるからな。
 万万が一守備で後塵を拝してしまったとしても、スターティングオーダーに名を連ねることができるはずだ。

「まあ、何にしても。何のためってことなら、高梁さんと長尾さんの今後のキャリアのためってのが1番の理由だよ」

 真面目な顔で告げた俺の返答に、昇二は何故か訝しげな目を向けてくる。
 全く信用されてなくて苦笑してしまう。

「いや、本当に」

 色々と付随した意図はあるものの、それ自体は間違いない。
 更に相手球団にもメリットがある。

 現状、北海道フレッシュウォリアーズと千葉オケアノスガルズは4位と5位。
 順位もパッとしないが、何よりも打順が湿ったままなのが大きな問題だ。
 両チーム共、そんな状態で開幕から1ヶ月以上経ってしまっている。
 打撃面でカンフル剤を求めているのは火を見るよりも明らかだ。
 そんなチーム事情に加え、2人がレギュラーの座を争うことになるポジションが他球団に比べて薄い点も鑑みてこの2球団に話を持ちかけた。
 結果、二つ返事で話が決まっている。
 規定打席には全く届いていないとは言え、打率が4割を超えていてホームランも打っている2人は非常に魅力的だったのだろう。
 色々と安心材料を挙げてきたが、レギュラー奪取は確定的だと思っている。
 2人共、村山マダーレッドサフフラワーズで控え選手のまま燻っているよりも余程恵まれた野球人生を歩むことができるはずだ。

「でも、ウチにトレードで来る選手は両方2部リーグのピッチャーっすよね。2人共、1部リーグスタートとはならないんじゃないっすか?」
「まあ、1部リーグの出場選手登録の最大人数29人は埋まっているからな」

 トレード相手が1部リーグの選手だったならいざ知らず。
 倉本さんの言う通り、実のところ村山マダーレッドサフフラワーズ側からは2部リーグの選手を要求させて貰っていた。
 そのため、北海道フレッシュウォリアーズと千葉オケアノスガルズの1部リーグ出場選手登録の面子に直接的な影響を与えない。
 彼らを1部リーグで使うなら、他の誰かを2部リーグに落とす必要がある訳だ。

 リマインドになるが、この2球団は公営の球団なので2部リーグと3部リーグのチームは下部組織ということになる。
 前世で言えば2軍と3軍だ。
 公営球団は1部リーグと2部リーグが支配下登録の選手によって、2部リーグの一部分と3部リーグは育成契約の選手によって構成されている。
 選手の昇格や降格などのやり繰りもまた、おおよそ前世に準じた形で行われる。
 レンタル・トレード直後の立場としては、支配下登録選手ながら1部リーグの選手ではないというところからのスタートになるのは事実だ。
 とは言え、チーム事情は散々述べた通りなので不安視はしていない。

「勿論、最終的な起用法はアッチの球団次第ではあるけど……たとえ2部リーグスタートでも、すぐに1部リーグに昇格してレギュラーになれるさ」
「まあ、秀治郎君がそこまで言うなら問題ないんだとは思うっすけどね。どっちかと言うと、ウチは新しく来る選手が本当に大丈夫かの方が気になるっす」
「ああ。本野選手と茂田選手な」

 高梁さんと長尾さんとのレンタル・トレードによって我らが村山マダーレッドサフフラワーズに期間限定で加入することになる2人。
 北海道フレッシュウォリアーズの本野寿哉選手。
 千葉オケアノスガルズの茂田号太郎選手。
 彼らは1部リーグと2部リーグを行ったり来たりしている、前世で言うところの1.5軍かそれ未満の選手という評価が相応しい立場だ。
 倉本さんが心配する気持ちも分からなくもない。

「2人共、1部リーグ未勝利なのよね?」
「先発ピッチャーじゃないからな。そこはある程度仕方がないだろう」

 美海ちゃんの問いにフォロー気味に答える。
 まだまだ彼らは若手だし、1部未勝利のピッチャーなど腐る程いる。

「けど、中継ぎとしても微妙な成績じゃない」
「まあ、それはな」

 点差がある時は割といいピッチングをすることもあるが、僅差だと逆転される。
 ピンチで能力が低下する【マイナススキル】を持つせいで、火消しは以ての外。
 敗戦処理ならまあ、という感じだ。
 高卒4年目なので長い目で見られてはいるが、そろそろ尻に火がつきつつある。
 そんな選手達だ。

「……成長する余地があるってこと?」
「若いからな。可能性はある」
「秀治郎君らしくないわね。そんなあやふやな言い方」

 幼馴染らしく見透かしたような美海ちゃんの言葉に思わず頬が緩む。
 勿論、そんなフワッとした展望で彼らを指定したりはしない。

「で? 何を企んでる訳?」
「人聞きが悪いな」
「また何か突飛なことをしようってんでしょ?」
「いやいや、今回は割と普通のことだよ」

 美海ちゃんからも不審の目。
 こういう話では信用できないというところで信用されている。
 困ったものだ。
 そう思って小さく嘆息しながら、ちょっと目を逸らして口を開く。

「ちょっと野手にコンバートして貰おうかなってだけの話で」
「はあ?」

 驚きの声と共に「やっぱりか」みたいな感じの視線も向けられる。
 とにもかくにも。
 それこそが村山マダーレッドサフフラワーズ再生工場最初のお仕事だ。
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