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第3章 日本プロ野球1部リーグ編
閑話27 1週間プロ野球(村山マダーレッドサフフラワーズ優勝決定後初回)
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さあ、今週もやって参りました『1週間プロ野球』のお時間です。
先週も話題の尽きない日本プロ野球でしたが、本日取り上げるべきは何と言っても歴代最速のリーグ優勝を決めた村山マダーレッドサフフラワーズでしょう。
と言うことで、定例の1週間ダイジェストコーナーの後は村山マダーレッドサフフラワーズのリーグ初優勝特集をお送りしたいと思います。
司会はわたくし、羽澤朗一。
コメンテーターはお馴染みパーフェクトサブマリンこと綿原博介さん。
ゲストコメンテーターとして、本日も落山秀充さんにお越しいただきました。
お二方、よろしくお願いいたします。
よろしくお願いします。
よろしくお願いします。
それにしても落山さん。
かつてない程、盤石な優勝劇でしたね。
予想通りというところでしょうか。
まあ、優勝に関してはそうですね。
ただ、さすがに8月で決まるとは思いませんでしたよ。
過去類を見ない、正に常識外れの事態ですからね。
恐らく多くの野球ファンの皆様も交流戦が1巡した辺りで確信したのではないかと思いますが、実際のところ私も似たようなものです。
これまでの常識に囚われてしまい、様々な数字が8月優勝の実現を明確に示していたにもかかわらず、どうしても信じ切ることができませんでした。
そうですね。私も全く同じ気持ちでした。
いくら何でもそんなことはあり得ないだろう、という思いが強過ぎて、必ずどこかで失速するに違いないと思い込もうとしていました。
あるいは、そうなることを願ってすらいたのかもしれません。
自分の中にある常識が崩れないで欲しい。
そんな気持ちに引きずられるようにして。
正に時代が大きく様変わりする時の心境ですね。
どうにも素直に受け取ることができない。反発してしまう。
そこに陥った私も、まだまだ精神的に未熟です。
身につまされます。
ありのままを受け入れる心を大事にしたいものです。
節目の時を楽しめるのも今を生きる私達の特権ですからね。
羽澤さん、いいこと言いますね。
正にその通りだと思いますよ。
(羽澤アナが少し照れたような様子を見せる)
……ところで、綿原君は現地に取材に行ったんだよね。
球場の雰囲気はどうだった?
いやあ、今まで見てきた優勝決定試合とは違う、何か特別な空気を感じました。
試合開始前から、スタンドは既に熱狂の中にあったように思います。
先発が野村秀治郎選手でしたからね。
ファンの皆様も試合前から確信があったのではないでしょうか。
野村秀治郎選手は今シーズン38試合目の登板。
試合開始前の時点で37連勝中という状況でしたからね。
初球の170km/hの時点で「今日は調子が悪いかもしれない」という一縷の望みも絶たれ、相手選手も戦意喪失していたように感じました。
気持ちは分からないでもないけど、そこがね。現状の問題でもあるよね。
彼らのような異次元の存在にも何とか食い下がろうって意識が生まれないと。
これから先の日本プロ野球界のためにも。
四球攻め問題の件も含めてね。
とは言え、今シーズン無敗の最強ピッチャーが相手ですからね。
対抗心を持つことすら不遜と思われるレベルじゃないでしょうか。
新人にもかかわらず、もはや生ける伝説ですよ。
うん。日本野球界の歴史は今年、間違いなく変わった。
それでも恐らくは、野村秀治郎選手ですら現在のアメリカ代表には及ばない。
個人の力ではね。
だからこそ、彼自身のためにも。日本野球界全体のためにも。
互いに高め合うことができるライバルが必要というのは絶対だ。
(真剣に告げた落山秀充に対し、綿原博介は神妙に考え込む)
……それで行くと、磐城巧選手、大松勝次選手、山崎一裕選手辺りの突出した選手と別のリーグなってしまっているのはやはり残念でもありますね。
シーズン記録という点では有利と言えるかもしれませんが。
言っちゃ悪いだろうけど、当面は成績も参考記録みたいになるんじゃないかな。
それこそトップクラスの大リーガーが紛れ込んでいようなものだからね。
それがどこまでも一過性のものになってしまうのか、あるいは、彼らのレベルまで日本プロ野球界を引き上げることができるのか。
そういった重要な局面でもあると思うよ。俺は。
願わくは後者であって欲しいものです。
いや、本当に。そう祈るよ。
っと、最初から語りすぎたね。
巻くように指示も出ています。
羽澤アナ、よろしくお願いします。
はい。
では、一先ず今週の日本プロ野球の動向を振り返っていくとしましょう。
(交流戦明け6試合のダイジェスト映像が流れ、順位表が映し出される。
ゲーム差に多少の違いはあれ、順位は交流戦直後と変わっていない。
村山マダーレッドサフフラワーズのリーグ優勝の話題には軽く触れるのみで、各リーグの1週間の動向を伝えていく)
・
・
・
……しかし、私営ウエストリーグは混迷を極めていますね。
うまいこと勝敗を分け合って、どの球団も借金を減らせずにいますからね。
この調子で行くと史上初の全球団借金も現実になってしまうかもしれません。
それは私営ウエストリーグ全体としても避けたいところでしょうが……。
現状、最下位の熊本ヴァリアントラークスにも優勝の可能性がありますからね。
全球団借金とリーグ優勝。
天秤にかけるまでもありません。
どの球団もリーグ優勝を狙って勝ちに行くでしょう。
当然ですね。
選手個人としても、成績は年俸に直結しますから。
全球団借金というのは確かに不名誉な記録ではありますが、そんなものを回避するために手を抜いたりなんかしていられませんよ。普通は。
汚名から逃れようと捻じ曲げた数字こそ恥でしょう。
どの球団も、選手達も、最後の最後まで懸命に戦い抜いて欲しいものです。
村山マダーレッドサフフラワーズのリーグ優勝が既に決まってしまった私営イーストリーグでも、まだプレーオフ争いがありますからね。
その通りです。
更に言えば、プレーオフで勝ち抜けば日本一の可能性も残されていますから。
諦めてはいけません。
村山マダーレッドサフフラワーズが突出すればする程、プレーオフの存在のありがたみが沁みますね……。
(そういったところで1週間ダイジェストが終わり、スタジオ全体の映像に戻る)
さて。皆様、お待たせいたしました。
村山マダーレッドサフフラワーズ初のリーグ優勝。
その特集をご覧下さい。
(まず映し出されたのは交流戦明け4試合目。山形きらきらスタジアムでの村山マダーレッドサフフラワーズ主催試合、9回表2アウトランナーなしの状況だった)
1ボール2ストライクから投じられた最後の1球。
それはその日の初球と同じフォーシームでした。
長野ハイドバックウィーツのラストバッターにインハイのボール球を振らせ、空振り三振によって無四球完封。ゲームセット。
村山マダーレッドサフフラワーズ初のリーグ優勝が決まった瞬間です。
ストライクがコールされると同時に、割れんばかりの歓声が球場を包みました。
それに応じるように、野村秀治郎選手は静かに人差し指を高く掲げます。
……いや、何度見てもクールだね。実に淡々としている。
これは観客のためのパフォーマンスというところかな。
かと言って、こんな段階で大喜びするのも何か違うだろうと。
自分の中で折り合いをつけた結果がこの仕草なのかもしれない。
やはり彼にとっては、リーグ優勝も通過点に過ぎないということなんだろうね。
格上の強敵であるアメリカ代表にもし打ち勝つことができたなら、彼も喜びを爆発させるところを見せてくれるのかな。
今は勝って当然のような雰囲気がありますからね。
ともすれば、スカした印象を与えかねない姿でしたが、その直後に他の選手達から揉みくちゃにされてオチがついた、というような感じでした。
球場の雰囲気は、むしろ全体的によかったと思いますよ。
野村秀治郎選手を囲む輪の傍らでは、手を取り合って喜ぶ村山マダーレッドサフフラワーズ女性陣。野村茜選手、浜中美海選手、倉本未来選手の姿がありました。
その仲睦まじい様子に、多くのファンが微笑ましさを感じていたようです。
とは言え、女性選手がこの場に、と改めて考えてみると物凄い状況ですよね。
これもまた史上初の光景ですからね。
野村秀治郎選手で感覚が麻痺していますが、彼女達もまた新人選手。
にもかかわらず、誰1人脱落することもなく1部リーグトップクラスの活躍をして、こうしてリーグ優勝決定の場面に立ち会っていることに驚嘆を禁じ得ません。
……しかし、元クラスメイトということもあってか仲がよくていいですね。
これを尊いと呼ぶのでしょうか。
とても絵になる光景でした。
そして尾高監督の胴上げです。
球団史上初。数にして8回、宙を舞いました。
末広がりの数字ということで、今後の更なる発展を祈念したとのことです。
2部リーグ、3部リーグでも胴上げ自体はありますが、やはり1部リーグの舞台での胴上げは感慨も一入だったのでしょうね。
尾高監督の目には光るものが見受けられました。
元2部リーグのプロ野球選手が1部リーグの監督となり、更にはリーグ優勝監督までになったのも史上初のことです。
これは野村秀治郎選手にも不可能な偉業でもあります。
野村秀治郎選手は既に1部リーグのトップ選手ですからね。
ただ、その野村秀治郎選手に負んぶに抱っこといった意見もありますが……。
企業チーム時代から一貫して野村秀治郎選手を信じ、半ば自由にさせてきた。
その上でチームには不和を生じさない。
能力のない監督には不可能なことですよ。
揉みくちゃにされていた野村秀治郎選手を見る限り、チームメイトとの軋轢のようなものもなさそうでしたからね。
現役時代の実績には現れない器の大きさが窺い知れます。
球史に名を刻むに相応しい人物だと私は思いますよ。
現役時代1部リーグのトップ選手として活躍された落山さんにそこまで評価いただけたら、尾高監督も監督冥利に尽きるのではないでしょうか。
さて、リーグ優勝が決まれば祝勝会、そして定番のビールかけが始まります。
(映像が山形きらきらスタジアムの職員用駐車場に設営された祝勝会会場に移る)
村山マダーレッドサフフラワーズ史上初のビールかけはメイン会場に20歳未満組、サブ会場に20歳以上組という形で分かれての実施となりました。
20歳未満組はビールを炭酸水で代用していたとのことです。
まあ、厳密には飲みさえしなければ問題はないのですが……。
昨今は中々世間の目が厳しいですからね。
誤飲する可能性もゼロではありませんし。
コンプライアンスに配慮した形でしょう。
幸いにしてと言うべきか、あるいは恐るべきことにと言うべきか。
村山マダーレッドサフフラワーズは20歳未満の選手の割合が多いですからね。
野村秀治郎選手達も蚊帳の外の傍観者とはならずに済んでいます。
サブ会場には野村秀治郎選手と関わり深い球団職員も参加していましたし、むしろ20歳未満組の方が華やかなぐらいでしたよ。
取材班の人数も多く、鈴木明彦球団社長も後半はこちらにいましたからね。
かく言う私もサブ会場の方で取材をさせていただきました。
(お酒が入り、泣きながら野村秀治郎と野村茜に抱き着く鈴木明彦の姿が映る)
野村秀治郎選手は野村茜選手と幼馴染で、鈴木明彦球団社長も子供の頃から知っていることはよく知られた話です。
そんな3人ですが、野村秀治郎選手が幼い頃に当時クラブチームに過ぎなかった村山マダーレッドサフフラワーズを日本一にする約束をしていたとか。
夢への挑戦権を、初年度から得た訳か。
企業チーム、もといクラブチームからトップリーグへの成り上がり。下克上。
日本プロ野球界に大きな刺激を与えた功績は実に大きい。
素晴らしい話だね。
そんな親子の一場面もあった祝勝会、ビールかけではありましたが、翌日、翌々日の試合ではその影響で20歳以上組の一部が欠場となってしまいました。
どうやらビールかけのビールをキンキンに冷やしてしまい、体が冷えて体調を崩してしまったとのことです。
あー……。
氷点下ビールだったりすると氷水みたいなものですからね。
8月の夏真っ盛りとは言え、長時間被れば風邪も引くでしょう。
3部リーグや2部リーグではビールかけをしないところの方が多いからね。
歴史の浅い球団ならでは、という感じの失敗だ。
こういった積み重ねが、球団の歴史ともなっていく訳ですね。
しかし、球団職員の方々はきっと今回のリベンジに燃えていることでしょう。
彼らに名誉挽回のチャンスを与えるためにも、村山マダーレッドサフフラワーズはプレーオフ制覇、そして日本一の栄誉を掴み取らなければなりませんね。
先週も話題の尽きない日本プロ野球でしたが、本日取り上げるべきは何と言っても歴代最速のリーグ優勝を決めた村山マダーレッドサフフラワーズでしょう。
と言うことで、定例の1週間ダイジェストコーナーの後は村山マダーレッドサフフラワーズのリーグ初優勝特集をお送りしたいと思います。
司会はわたくし、羽澤朗一。
コメンテーターはお馴染みパーフェクトサブマリンこと綿原博介さん。
ゲストコメンテーターとして、本日も落山秀充さんにお越しいただきました。
お二方、よろしくお願いいたします。
よろしくお願いします。
よろしくお願いします。
それにしても落山さん。
かつてない程、盤石な優勝劇でしたね。
予想通りというところでしょうか。
まあ、優勝に関してはそうですね。
ただ、さすがに8月で決まるとは思いませんでしたよ。
過去類を見ない、正に常識外れの事態ですからね。
恐らく多くの野球ファンの皆様も交流戦が1巡した辺りで確信したのではないかと思いますが、実際のところ私も似たようなものです。
これまでの常識に囚われてしまい、様々な数字が8月優勝の実現を明確に示していたにもかかわらず、どうしても信じ切ることができませんでした。
そうですね。私も全く同じ気持ちでした。
いくら何でもそんなことはあり得ないだろう、という思いが強過ぎて、必ずどこかで失速するに違いないと思い込もうとしていました。
あるいは、そうなることを願ってすらいたのかもしれません。
自分の中にある常識が崩れないで欲しい。
そんな気持ちに引きずられるようにして。
正に時代が大きく様変わりする時の心境ですね。
どうにも素直に受け取ることができない。反発してしまう。
そこに陥った私も、まだまだ精神的に未熟です。
身につまされます。
ありのままを受け入れる心を大事にしたいものです。
節目の時を楽しめるのも今を生きる私達の特権ですからね。
羽澤さん、いいこと言いますね。
正にその通りだと思いますよ。
(羽澤アナが少し照れたような様子を見せる)
……ところで、綿原君は現地に取材に行ったんだよね。
球場の雰囲気はどうだった?
いやあ、今まで見てきた優勝決定試合とは違う、何か特別な空気を感じました。
試合開始前から、スタンドは既に熱狂の中にあったように思います。
先発が野村秀治郎選手でしたからね。
ファンの皆様も試合前から確信があったのではないでしょうか。
野村秀治郎選手は今シーズン38試合目の登板。
試合開始前の時点で37連勝中という状況でしたからね。
初球の170km/hの時点で「今日は調子が悪いかもしれない」という一縷の望みも絶たれ、相手選手も戦意喪失していたように感じました。
気持ちは分からないでもないけど、そこがね。現状の問題でもあるよね。
彼らのような異次元の存在にも何とか食い下がろうって意識が生まれないと。
これから先の日本プロ野球界のためにも。
四球攻め問題の件も含めてね。
とは言え、今シーズン無敗の最強ピッチャーが相手ですからね。
対抗心を持つことすら不遜と思われるレベルじゃないでしょうか。
新人にもかかわらず、もはや生ける伝説ですよ。
うん。日本野球界の歴史は今年、間違いなく変わった。
それでも恐らくは、野村秀治郎選手ですら現在のアメリカ代表には及ばない。
個人の力ではね。
だからこそ、彼自身のためにも。日本野球界全体のためにも。
互いに高め合うことができるライバルが必要というのは絶対だ。
(真剣に告げた落山秀充に対し、綿原博介は神妙に考え込む)
……それで行くと、磐城巧選手、大松勝次選手、山崎一裕選手辺りの突出した選手と別のリーグなってしまっているのはやはり残念でもありますね。
シーズン記録という点では有利と言えるかもしれませんが。
言っちゃ悪いだろうけど、当面は成績も参考記録みたいになるんじゃないかな。
それこそトップクラスの大リーガーが紛れ込んでいようなものだからね。
それがどこまでも一過性のものになってしまうのか、あるいは、彼らのレベルまで日本プロ野球界を引き上げることができるのか。
そういった重要な局面でもあると思うよ。俺は。
願わくは後者であって欲しいものです。
いや、本当に。そう祈るよ。
っと、最初から語りすぎたね。
巻くように指示も出ています。
羽澤アナ、よろしくお願いします。
はい。
では、一先ず今週の日本プロ野球の動向を振り返っていくとしましょう。
(交流戦明け6試合のダイジェスト映像が流れ、順位表が映し出される。
ゲーム差に多少の違いはあれ、順位は交流戦直後と変わっていない。
村山マダーレッドサフフラワーズのリーグ優勝の話題には軽く触れるのみで、各リーグの1週間の動向を伝えていく)
・
・
・
……しかし、私営ウエストリーグは混迷を極めていますね。
うまいこと勝敗を分け合って、どの球団も借金を減らせずにいますからね。
この調子で行くと史上初の全球団借金も現実になってしまうかもしれません。
それは私営ウエストリーグ全体としても避けたいところでしょうが……。
現状、最下位の熊本ヴァリアントラークスにも優勝の可能性がありますからね。
全球団借金とリーグ優勝。
天秤にかけるまでもありません。
どの球団もリーグ優勝を狙って勝ちに行くでしょう。
当然ですね。
選手個人としても、成績は年俸に直結しますから。
全球団借金というのは確かに不名誉な記録ではありますが、そんなものを回避するために手を抜いたりなんかしていられませんよ。普通は。
汚名から逃れようと捻じ曲げた数字こそ恥でしょう。
どの球団も、選手達も、最後の最後まで懸命に戦い抜いて欲しいものです。
村山マダーレッドサフフラワーズのリーグ優勝が既に決まってしまった私営イーストリーグでも、まだプレーオフ争いがありますからね。
その通りです。
更に言えば、プレーオフで勝ち抜けば日本一の可能性も残されていますから。
諦めてはいけません。
村山マダーレッドサフフラワーズが突出すればする程、プレーオフの存在のありがたみが沁みますね……。
(そういったところで1週間ダイジェストが終わり、スタジオ全体の映像に戻る)
さて。皆様、お待たせいたしました。
村山マダーレッドサフフラワーズ初のリーグ優勝。
その特集をご覧下さい。
(まず映し出されたのは交流戦明け4試合目。山形きらきらスタジアムでの村山マダーレッドサフフラワーズ主催試合、9回表2アウトランナーなしの状況だった)
1ボール2ストライクから投じられた最後の1球。
それはその日の初球と同じフォーシームでした。
長野ハイドバックウィーツのラストバッターにインハイのボール球を振らせ、空振り三振によって無四球完封。ゲームセット。
村山マダーレッドサフフラワーズ初のリーグ優勝が決まった瞬間です。
ストライクがコールされると同時に、割れんばかりの歓声が球場を包みました。
それに応じるように、野村秀治郎選手は静かに人差し指を高く掲げます。
……いや、何度見てもクールだね。実に淡々としている。
これは観客のためのパフォーマンスというところかな。
かと言って、こんな段階で大喜びするのも何か違うだろうと。
自分の中で折り合いをつけた結果がこの仕草なのかもしれない。
やはり彼にとっては、リーグ優勝も通過点に過ぎないということなんだろうね。
格上の強敵であるアメリカ代表にもし打ち勝つことができたなら、彼も喜びを爆発させるところを見せてくれるのかな。
今は勝って当然のような雰囲気がありますからね。
ともすれば、スカした印象を与えかねない姿でしたが、その直後に他の選手達から揉みくちゃにされてオチがついた、というような感じでした。
球場の雰囲気は、むしろ全体的によかったと思いますよ。
野村秀治郎選手を囲む輪の傍らでは、手を取り合って喜ぶ村山マダーレッドサフフラワーズ女性陣。野村茜選手、浜中美海選手、倉本未来選手の姿がありました。
その仲睦まじい様子に、多くのファンが微笑ましさを感じていたようです。
とは言え、女性選手がこの場に、と改めて考えてみると物凄い状況ですよね。
これもまた史上初の光景ですからね。
野村秀治郎選手で感覚が麻痺していますが、彼女達もまた新人選手。
にもかかわらず、誰1人脱落することもなく1部リーグトップクラスの活躍をして、こうしてリーグ優勝決定の場面に立ち会っていることに驚嘆を禁じ得ません。
……しかし、元クラスメイトということもあってか仲がよくていいですね。
これを尊いと呼ぶのでしょうか。
とても絵になる光景でした。
そして尾高監督の胴上げです。
球団史上初。数にして8回、宙を舞いました。
末広がりの数字ということで、今後の更なる発展を祈念したとのことです。
2部リーグ、3部リーグでも胴上げ自体はありますが、やはり1部リーグの舞台での胴上げは感慨も一入だったのでしょうね。
尾高監督の目には光るものが見受けられました。
元2部リーグのプロ野球選手が1部リーグの監督となり、更にはリーグ優勝監督までになったのも史上初のことです。
これは野村秀治郎選手にも不可能な偉業でもあります。
野村秀治郎選手は既に1部リーグのトップ選手ですからね。
ただ、その野村秀治郎選手に負んぶに抱っこといった意見もありますが……。
企業チーム時代から一貫して野村秀治郎選手を信じ、半ば自由にさせてきた。
その上でチームには不和を生じさない。
能力のない監督には不可能なことですよ。
揉みくちゃにされていた野村秀治郎選手を見る限り、チームメイトとの軋轢のようなものもなさそうでしたからね。
現役時代の実績には現れない器の大きさが窺い知れます。
球史に名を刻むに相応しい人物だと私は思いますよ。
現役時代1部リーグのトップ選手として活躍された落山さんにそこまで評価いただけたら、尾高監督も監督冥利に尽きるのではないでしょうか。
さて、リーグ優勝が決まれば祝勝会、そして定番のビールかけが始まります。
(映像が山形きらきらスタジアムの職員用駐車場に設営された祝勝会会場に移る)
村山マダーレッドサフフラワーズ史上初のビールかけはメイン会場に20歳未満組、サブ会場に20歳以上組という形で分かれての実施となりました。
20歳未満組はビールを炭酸水で代用していたとのことです。
まあ、厳密には飲みさえしなければ問題はないのですが……。
昨今は中々世間の目が厳しいですからね。
誤飲する可能性もゼロではありませんし。
コンプライアンスに配慮した形でしょう。
幸いにしてと言うべきか、あるいは恐るべきことにと言うべきか。
村山マダーレッドサフフラワーズは20歳未満の選手の割合が多いですからね。
野村秀治郎選手達も蚊帳の外の傍観者とはならずに済んでいます。
サブ会場には野村秀治郎選手と関わり深い球団職員も参加していましたし、むしろ20歳未満組の方が華やかなぐらいでしたよ。
取材班の人数も多く、鈴木明彦球団社長も後半はこちらにいましたからね。
かく言う私もサブ会場の方で取材をさせていただきました。
(お酒が入り、泣きながら野村秀治郎と野村茜に抱き着く鈴木明彦の姿が映る)
野村秀治郎選手は野村茜選手と幼馴染で、鈴木明彦球団社長も子供の頃から知っていることはよく知られた話です。
そんな3人ですが、野村秀治郎選手が幼い頃に当時クラブチームに過ぎなかった村山マダーレッドサフフラワーズを日本一にする約束をしていたとか。
夢への挑戦権を、初年度から得た訳か。
企業チーム、もといクラブチームからトップリーグへの成り上がり。下克上。
日本プロ野球界に大きな刺激を与えた功績は実に大きい。
素晴らしい話だね。
そんな親子の一場面もあった祝勝会、ビールかけではありましたが、翌日、翌々日の試合ではその影響で20歳以上組の一部が欠場となってしまいました。
どうやらビールかけのビールをキンキンに冷やしてしまい、体が冷えて体調を崩してしまったとのことです。
あー……。
氷点下ビールだったりすると氷水みたいなものですからね。
8月の夏真っ盛りとは言え、長時間被れば風邪も引くでしょう。
3部リーグや2部リーグではビールかけをしないところの方が多いからね。
歴史の浅い球団ならでは、という感じの失敗だ。
こういった積み重ねが、球団の歴史ともなっていく訳ですね。
しかし、球団職員の方々はきっと今回のリベンジに燃えていることでしょう。
彼らに名誉挽回のチャンスを与えるためにも、村山マダーレッドサフフラワーズはプレーオフ制覇、そして日本一の栄誉を掴み取らなければなりませんね。
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